ストーリー オブ ザ 球磨   作:ヤングコーン

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私は伊丹。いとこを探して、最後の目撃情報を頼りに捜索していたら幻想郷という…。
異世界?異空間?どう表現したものか…は分からない不思議な場所に迷い込んでしまった。
そこで球磨という私のいとこと同名の人物に助けられた私はここでいとこを捜索することする。

夜、彼女の家で過ごすにあたってここでの注意事項をいくつか聞いた。基本的に相手が人間かどうかわからない場合は必ず敬意を払う事や、敵わないと分かった相手に対しては丁寧な対応か逃亡を試みるとか、困ったときは神社や寺などを頼ると助けてくれることが多いとか…。

ここでの生活は向こうの世界とは違って毎日がエキサイティングなのだそうだ。
…ところで、球磨さんがここに来たの最近って聞いたけどそれって…まさかね。


28話 球磨と一緒に球磨さがし

私は外の世界でいう所のスーパーの様な場所に来た。外装は大きな駄菓子屋さんみたいだけれど…。何やらごてごての機械がたくさん売ってある。どれも奇抜なデザインで…。

 

店内にはまだ客はおらず、カウンターに2人の少女がいた。1人はカウンターに突っ伏してうなされており、片方はピンク一色のミニフィギュアを少女に向けて並べて遊んでいる。

 

「うーん、うーん……そのキュウリは何もかけんでも美味しいんよ、そんなドレッシングをどばどば掛けたら素材の味がわからんて。お前は何もわかっとらん…」

 

どんな夢を見てるんだろう…。

 

「今、寝言を言ってるのがにとりさん。隣でフィギュアを並べてるのはこいしさん」

 

「最近、存在感が出て来て認識される様になったけど可能な悪戯の幅が狭くなって辛い」

 

こいしさんは何か特別な悩みを抱えている様だった。

 

「おいやめ、やめえや。もうお前きゅうり食うな!ほら、寄越せきゅうり!お前に食われるぐらいなら私が食ったるけ!おいゴルァ寄越さんか!お前を頭から丸かじりにしたろかい、ええ?!」

 

にとりさんと呼ばれる少女の声が段々とドスの利いた声になって来た。超怖い。1人でカウンターの先の空気を腕でわしゃわしゃと掻いている。

 

こいしさんはその様子を見てけたけた笑っている。球磨さんは和やかな表情で眺めている。

 

「おうおうおうナメ腐りやがって、ええ度胸やないけ!◯◯の穴から手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせたろかい!」

 

ついに足までバタバタさせだしたにとりさん。椅子から転げ落ちてしまった。「ふんがっ!」と叫ぶと、跳ね起きて辺りを見渡す。

 

「ゆ、夢か…」

 

にとりさんは目の当たりをこすると背伸びをして椅子に腰をかけた。球磨さんは買って来たきゅうりを渡した。にとりさんはお礼を言ってからそれをボリボリと食べる。

 

球磨さんは私を紹介している。ここでは私も生きるためにお金を稼がなきゃいけない。一通り紹介し終えると、にとりさんは黙って私を見てもう1本のきゅうりをかじる。

 

「あんたもここに来たばかりで右も左も分からないんだろけどねぇ、こっちも賃金を払う立場なんだ。そう黙って棒立ちされたって、ちっとも労働意欲を感じないよ」

 

「私は伊丹と申します!生まれてこの方コンクリートの牢屋で勉学に励んでおりました。そっちのでの知識がどこまでこっちで活かせるかわかりかねますが、何卒雇ってください!」

 

面接なんて考えていなかったので、勢い任せで変になってしまった。先生はとにかく誠意だと言っていた。

 

「勢いは買うけどそれまでだね。こっちだって慈善事業でやってるんじゃないんだ。あんたを雇う事に何のメリットがある。それを教えてくれなきゃ。謙遜と卑下は違う。しっかり長所はしっかりアピールしなきゃ」

 

球磨さんがにとりさんに何か言おうとしたが、私は止めた。ここで食い下がらなきゃ駄目だ。にとりさんはさっきより体勢が前に出ている。相手に人間の仕草に通ずる物があるなら、きっも関心がある時の仕草。ここに入った時からこの広さに対してそれほど店員がいない事について気になっていた。

 

そこから予想をしてはったりを決めよう。

 

「見やればこの店は少数精鋭。各々が役割分担を充分にすればこそ、後回しにしがちな雑務があるのでは。店の掃除、チラシ配り、お茶汲み、客寄せ、届かぬ痒い所は多々あるはず!必ずお役に立てるはず、お願いします!!」

 

「それじゃ、よろしくね」

 

にとりさんはそう言うと私にここで働く許可をくれた。嬉しかった。入学の面接試験の時もやったけど、とても事務的で淡々としていた。こんな面接もあるのか…。あるいは入社試験はこんな感じなんだろうか。いや、今は余計な事はいい。

 

気を引き締めて職務にあたろう。球磨さんも心から歓迎してくれた。そういえば、こいしさんという人にあいさつがまだだった。私はビシッと背筋を伸ばして頭を下げた。

 

「こうし先輩、よろしくお願いします」

 

「んぇ!?、私ここの店員だったの!?」

 

 

 

 

私はトランプタワー5段目を作った。なんでこうなってしまったのか…。初めは出来心だった。客は来ないし、にとりさんは寝ているし球磨さんはでかけていたので私は暇つぶしに空いてる机でたまたま置いてあった外界からのアイテムのトランプを使ってタワーを立ててたのだ。

 

やがてお客さんが来ると、私は接客をしようとした所タワー建設を続けるように言われ、3段目を組み立てたあたりでにとりさんも気が付いてしまう。注意するどころか、悪ノリで私の挑戦を促すにとりさんの言葉でついに5段目まで来てしまった。

 

ついさっきまで足を踏み鳴らし手を叩いて伝説のロックスターの歌を歌っていたこいしさんさえ黙ってこちらを眺めている。お願い、拳を上に突き上げて歌ってください。

 

「でやぁぁあああ!!」

 

窓を突き破って誰かが入って来た。おかげで6段目のトランプタワーが崩れてしまった。その人は新聞紙を片手ににとりさんに渡した。

 

「はい、今週号です」

 

「おい、鴉天狗」

 

にとりさんは私の方を指差した。床に散乱したトランプを見て口元に手を当てて驚く。そして彼女はこちらにやって来てトランプを拾い集めて私に渡してくれた。

 

そして向かいに座ると、どこかのコインを10枚取り出してどさりと机に置いた。

 

「姫海棠はたての魂のコインを10枚賭けよう」

 

違うそうじゃない。

 

そう思っていると入り口からツインテールの少女が入ってきて厚紙でできたハリセンでスパァンと鴉天狗の少女の頭を叩く。そして出ていくと、その少女も後を追って飛んで行った。何だ今の。

 

「この幻想郷では常識に囚われてはなりませんよ」

 

どこからか声が聞こえたかと思うと、人が目の前に現れた。今度はなんだ。

 

「なんで何もない所から早苗が生えてくるんだ」

 

「まるで人を野草みたいに言わないでください」

 

早苗さんは改装された壁の一角を叩くと、中から社が現れた。

 

「分社です」

 

「何勝手な事してくれてんだお前」

 

そういえば、球磨さんが改装費の一部は守矢神社が負担してくれたと言っていた。まさかこういう事だとは…いや、どういう事??理解に苦しむ私を見ていると、早苗さんと呼ばれた巫女服の女性は私に丁寧に説明してくれた。

 

「いいですか、分社というのはですね。オープンワールドゲームでいう所のファストトラベルポイントみたいなもんなんですよ」

 

「えぇ…」

 

衝撃の事実だった。あれファストトラベルとして使えるんだ…。いや、それとも巫女ジョーク???

 

ここでは仕事の事で覚える事が多いが、まずはこの地になれるまでに正気を保っていられるかの方が不安になるのだった。

 

 

 

 

基本的に私の休日は球磨さんと同じ日になっている。というのも、人探しが目的と言う事もあって様々な場所に行かなきゃいけないので一介の人間である私は誰かと同行しなければ自分の身1つ守れやしないのだ。慣れてきたら他の誰かに頼んでもいいかもしれない、とか言っていたが…。

 

今の所、ついていけそうな人がいない。

 

まずは人間の里だった。電気は完全に通っているわけじゃないが、各所に充電ポイントが作られている。電気自動車の充電ポイントの様ではなくて、サイズ別にロッカーの様なものがあって離れらるようになっているようだ。

 

こっちではスマホは使えない。ここから出た時のために節電していたが、私のスマホの充電は変圧器を使えば何とかなるかもしれないらしい。まぁ…ちょっと怖いからどのみち今は使わない方向性で行きたい。

 

人間の里というだけあって人間が集中しているのだが、見渡せば妖精なり妖怪なり半妖なりいろんな物が行き交っている。初めはいつ襲われるかと思ってビクビクしていたけれど、時間とともに思う程相手を恐れなくていいと分かると少し気が楽になった。

 

妖精からは荷物を取られたり、買ったお菓子取られたりして困らせられた。まぁ、貴重な体験かもしれない。そんな風に思う。結局ちゃんと取り返したので問題ない。

 

全部は回れなかったけれど、どんな人に聞いても私の探している球磨という人物は知らない様子だった。

 

村の中で霊夢さんと会った。

 

「探してる人、まだ見つからないの?」

 

「ダメみたいです。幻想郷には来ていないのかな…」

 

「どんな人なの?」

 

「あ、今イラストを描くので待っててください」

 

私は地面に枝でさっさと絵を描いて見せる。彼女は球磨さんの方を向いている。

 

「あんたでしょ」

 

「いえいえ滅相もない」

 

「そうです。私の知ってるいとこの球磨はもっとダサい服を着ていて、漫画みたいな丸眼鏡をしていて、日陰に生えたキノコのように陰鬱な人なんです」

 

霊夢さんはジト目で球磨さんを見ている。球磨さんは何か思いついたように懐から何かを取り出すと、可愛い小包を取り出して霊夢さんに渡した。

 

「あ、これ山吹色のお菓子です」

 

「うむ。苦しゅうない」

 

霊夢さんは袂にしまうとどこかへ行ってしまった。何だったんだろう。

 

「山吹色のお菓子って美味しいんですか?」

 

「ええ。それはそれはとてもとても甘露なものです」

 

食べてみたいなぁ。山吹色のお菓子。

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