僕のヒーローアカデミア:Be ULTRA   作:マーベルチョコ

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2. S.S.L

新星はビルの手摺に腰掛け、街の様子を見下ろす。

 

「ふぅ」

 

新星はこうやって個性を思いっきり使った後、高層ビルの屋上から街を見下ろすのが好きだった。

全力で動いた後の開放感は自分が自由になれたと思えるからだ。

勿論ヒーローや警察に見つかれば大目玉を喰らってしまうため、それは見つからないように注意している。

それに新星はただ個性を使いたいから使っているわけではない。

新星の耳に大きなブレーキ音とパトカーのサイレン音が聞こえてくる。

 

「ん?」

 

目を向けるとパトカーから1台の車が逃げていた。

逃走車が逃げる先には多くの人がいる。

 

「やばっ…!」

 

新星はビルを飛び降り、逃走車の方へと向かう。

逃走車は危険な運転で逃げているとちょうど信号で車道を横断している人混みに突っ込もうとする。

逃げることで気が動転していた逃走犯はブレーキを踏むのを忘れた。

ほとんどの人が車が猛スピードで突っ込んでくるのに気づき、慌てて歩道に寄るが1人の女の子が迫ってくる車に固まって動けない。

 

「ミサッ!!」

 

咄嗟に女の子の母親が庇って抱き締めるがこのままいけば2人とも轢かれてしまう。

我が子を抱き締め、目を瞑る母親は死を覚悟するがドンッと音がしただけで衝撃がいつまで経ってもこない。

恐る恐る目を開けると目の前で車を片手で止める新星が目に入ってきた。

 

「ふぅ……間一髪。大丈夫でした?」

 

冷や汗を拭う新星は親子の安否を確認すると気を取り戻した母親が女感謝の言葉を述べた。

 

「ぁ、ありがとうございます!」

「ありがとう!お兄ちゃん!」

 

女の子も母親に続き、お礼を言った。

新星は少し照れ臭そうにしながら凹ませた車を見る。

車は大きく凹み、煙を上げて動かない。

その状態を見て、やってしまったと思っているとパトカーのサイレン音が聞こえてくる。

 

「そ、それじゃあ俺はこれで!あと俺がやったってことは誰にも言わないで!!」

「え?あ、あの……」

「それじゃっ!!」

 

母親が呼び止める前に新星は高く跳躍し、姿を消した。

 

「あのお兄ちゃん、ヒーローだったのかな?」

「どうでしょうね……」

 

母親は困惑したなか、そう答えるしかなかった。

 

新星はこうして時々街で助けが必要な所に現れては人助けを行なっていた。

 

 

新星の家は少し小高い丘の上にあり、庭が広く豪華な家だった。

新星は制服に付いた汚れがないか再度確認して、何事も無かったかのように落ち着いた様子を作ってから玄関をくぐった。

 

「ただいまー」

 

玄関をくぐり、声をかけると奥からモーター音と共に最新型の電動車椅子に座ったラフケルが現れた。

 

「お帰り、今日は少し遅かったな」

 

新星の保護者であるラフケルは6年前の事件で足を悪くし、車椅子で生活するしかなくなった。

 

「おじさん、まぁね。キョーカと少し遊んでたんだ。それよりお腹減ったなぁ。今日は何か、な?」

 

新星はラフケルにバレないように急いで中に入ろうとするがラフケルが新星の腕を掴んで止めた。

 

「制服が汚れてるな」

「えーっと、実は不良に襲われて……」

「手を見せろ」

 

新星は素直に掴まれた手を見せるが、ラフケルは軽く新星を睨む。

 

「反対の手だ」

 

新星はしばしばと反対の手を見せる。

車を受け止めた手は血は出てないが内出血して、赤くなっている。

 

「個性を使ったな」

「おじさん、俺の個性は常時発動型だから使ったってのは……」

 

関係のない話をしてはぐらかそうとするが睨んでくるラフケルに観念した新星は素直に話した。

 

「そうだよ、個性を使った。でも人を助けるために使ったんだ。絶対に人は傷つけていない」

「手の傷を見ればわかる。これは殴ってできる傷じゃない。だが、私は個性を使ったことに怒っているんだ」

 

非難する目を向けてくるラフケルに新星はたじろいでしまうが、人が危険に晒されているのに放っておけと言われているようで嫌だった。

 

「でも、個性を使わなきゃ助けられなかった人がいたんだ。自分にどうにかできる力があるのに見て見ぬふりをしろって言うのか?」

「そうは言っていないが今の個性社会で個性の無断使用は罪だ。学生だからと言って、法に則り裁かれる」

「力があるのに何もしないのも罪だろ」

 

一歩も引かない様子の新星にラフケルは困った表情になる。

そこに助け舟に入る人物がいた。

 

「まぁまぁ2人とも落ち着いて」

「八木さん、来てたんですか」

 

骸骨のように痩せ細った顔と体付きの男性が2人の間に入る。

 

「やぁ、明銀少年久しぶりだね」

「お久しぶりです。今日は何の用で来たんですか?」

「今日は定期診断の日だったんだ。八木、すまなかった。待たせてしまって」

 

骸骨のような人物の正体は現日本におけるNo. 1ヒーロー、オールマイト。

ヒーロー時の周りに希望を与える頼もしい姿とは打って変わって見窄らしい姿だが、これは5年前のある敵との戦いで傷を負ってしまい、このような姿になってしまった。

それ以来、友人でもあり研究所を経営しているラフケルの元に定期健診に来ている。

八木がオールマイトであることは新星は知らない。

 

「いや、いいんだ。それより明銀少年、ラフケルは君を心配して怒っているんだ。個性社会で個性の無断使用は犯罪だ。もし君が罪を犯したら君の夢から遠のいてしまう。ラフケルはそれが心配なんだ」

「それは……わかってますよ」

 

少し納得がいっていない表情をする新星にオールマイトは話を続ける。

 

「ヒーローというのは人を助けて、悪に勝ち、人々に希望を与えるものだ。ヒーローは善だが一歩間違えれば悪にもなる。だから、ヒーローは法に則って活動しているんだ」

 

ヒーローは個性を行使して人々を助ける。

だが、それは法に則ってるからだ。

法を無視してヒーロー活動をする者達も中にはいるが彼等は『ヴィジランテ』と呼ばれ、ヒーローに追われている身だ。

 

「……わかりました。ごめん、おじさん」

「いや、わかってくれるなら良いんだ」

 

ラフケルは新星の肩を軽く叩き、労わる。

 

「加瀬さんが料理を作ってくれている。先に食べていなさい。私は八木に診断結果を伝えてから食べる」

「なら待ってるよ。家族なんだし一緒に食べた方がいいだろ?」

「……そうだな」

 

新星の家族という言葉にラフケルは少し口角が上がりそうになるのを我慢して、新星を見送った。

 

 

ラフケルとオールマイトは家の地下にあるラフケルの研究室に入る。

ラフケルの研究室には様々な検査機器、医療機器が揃えられており万全の状態で検査を受けられる。

オールマイトは研究室の機材を感心する。

 

「流石はS.S.L(特別科学研究所)の社長だ。よくこれだけの機材を揃えたね」

「国から仕事を貰っているからな。個性で犯罪を犯す人間がいる限り、私の生活は安泰だ」

「HAHAHA!!ヒーローとしてはその発言は見過ごせないな!」

 

オールマイトはラフケルの軽いジョークに突っ込む。

ラフケルは特別科学研究所、通称S.S.Lの社長兼研究所長をしている。

S.S.Lとは主に個性に関しての研究を行なっており、世界初の個性抑制装置を開発した。

そのおかげで国から発注の依頼が止まらず、大儲けしている。

S.S.Lはその他にもヒーロースーツ、サポートアイテムの開発、ヒーロー事務所を開設するなど手広くやっている。

ラフケルは空中投影型モニターを展開し、オールマイトに見せながら口を開く。

 

「単刀直入に言おう。八木、いやオールマイト。このままいけばお前は死んでしまう」

「………」

 

死ぬと言われて動揺を見せるはずだが、オールマイトは微動だにせず聞く。

 

「まず君の体だが、もうとっくに限界を過ぎている。内臓をいくつも欠損してあそこまで活動できているのが奇跡だ。胃の摘出で必要な栄養が取れなくなり、体は衰える一方で個性によりマッスルフォームの維持と活動。……個性を使う度に体には大きなダメージが残り蝕んでいく」

「どうすればいい?」

「……一番は引退することだ。まっ、できるわけないと思うが」

「まだ平和の象徴を辞める訳にはいかない」

「そう言うと思ったさ。他にも人造臓器を移植することも考えたが今の君の体が手術に持ち堪えられる可能性が低い」

「………」

 

黙り込むオールマイトにラフケル錠剤が大量に入ったケースを渡す。

 

「取り敢えずはこの薬と栄養価が高い携帯食を渡しておく。本格的なことは後日考えよう。私も資料を探しておく」

「ああ、ありがとう」

「……オールマイト、私はもう友人が死ぬのは見たくない。そろそろ引退してもいいんじゃないか?エンデヴァー、ホークスとお前の後を任せられるヒーローも多くいる。バアル、AFOは消えた。お前が心配することはない」

「………後継か」

 

オールマイトはボソッと思い詰めた表情で呟いた。

 

「何か言ったか?」

「いや、何でもない。私は生涯現役でいるつもりだよ!」

「生涯、ね……」

 

自分の体を顧みないオールマイトにラフケルは少し呆れた様子だった。

その後、オールマイトは必要な物を貰って帰ったがラフケルは食卓には戻らず、研究室で書類を纏めていた。

作業が終わると虚空に向かって声を出す。

 

「起きろ、シーラ」

 

突然薄暗くなり、虚空に人の顔を象ったホログラムが投影される。

 

『おはようございます。ラフケル博士』

「今日、四丁目の交差点で起きた交通事故における新星がいたという証拠を全て消せ」

『承知しました。現在31件の情報を捕捉。消去します』

「あの子の存在をバレるにはまだ早い……」

 

ラフケルは思い詰めた表情でそう呟くのであった。

 

 

そして月日が流れ、新星達が雄英高校の入学試験に臨む日が訪れた。

 




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