僕のヒーローアカデミア:Be ULTRA 作:マーベルチョコ
ヒーロースーツの一件から数日が経ち、いよいよ雄英高校の入学式となった。
「準備はできたか?」
「うん。できてるよ」
ラフケルが新星の部屋に入ると雄英高校の制服を着た新星の姿があった。
「様になっているな」
「へへっ、そうかな」
褒めてくれるラフケルに新星は照れてしまう。
玄関まで見送りに来てくれるとお手伝いである加瀬さんがある提案をした。
「あっ!そうだわ。どうせなら写真を撮りましょう。晴れの入学式なんだから」
「いや、写真は……」
「いいですね。おじさん撮ろうよ」
加瀬の提案を断ろうとしたラフケルだったが乗る気の新星を見て、断れなくなった。
「…………わかった。撮ろうか」
「よし!」
「それじゃあ2人とも並んでぇ……はい、チーズ!」
2人は並んで写真を撮るとラフケルが新星の肩に手を置く。
「頑張るんだぞ」
「……うん」
ラフケルの応援を受け止めて、新星は雄英へと向かった。
○
最寄りの駅から耳郎と合流して、共に雄英へ向かう。
「合格したって知った時、ウチの親メチャクチャ大騒ぎでさ。近所迷惑で警察と思った」
「ははっ、おじさんとおばさんらしいな」
そんな世間話をしていると自分たちの教室に辿り着く。
教室の扉は優に2メートルは超える扉の前で新星は立ち止まる。
「よし、気合いを入れて行こう。第一印象が大事だからな」
「そんな気を張らなくてもいいんじゃない?変に肩に力入れると失敗しそう」
「そんなことないだろう。同じクラスになるんだから仲良くしようとするはずだ」
そう言って気合いを入れながら扉を開けると目の前に目つきが悪い男子、爆豪と立っていた。
「あっ……」
「あぁ?」
突然のことになると人は動けなくなるが、新星は正しくその状態になっていた。
とりあえず挨拶しようと意識を切り替える。
「え、えーっと」
「どけ、雑魚」
しかし、爆豪はそんな新星を一蹴して肩をぶつけながら、横を通り過ぎていった。
「雑魚って……」
「流石、雄英高校。とんでもない奴もいるね」
初対面で雑魚と呼ばれた新星は驚きで固まってしまい、耳郎は爆豪に皮肉を言って慰めた。
改めて教室に入るとまだ疎らな人数しかおらず、取り敢えず席につこうとすると先日の試験で助けた蛙水が新星たちに話しかけて来た。
「明銀ちゃん。お久しぶりね」
「蛙水さん!合格してたんだ」
「梅雨ちゃんと呼んでちょうだい。貴方も合格できたのね、良かったわ」
新星と蛙水が話していると耳郎が新星の袖を引っ張って誰?と問いかけるように見てくる。
「あっ、そうだ。梅雨ちゃん、彼女は耳郎 響香。俺と同じ中学で友達なんだ。で、キョーカ。この人は蛙水 梅雨さん、俺と同じ試験会場でそこで知り合ったんだ」
「よろしくね、蛙水さん。」
「よろしくね、耳郎ちゃん。私のことは梅雨ちゃんと呼んで欲しいわ」
「じゃあ、ウチも響香でいいよ」
その後も蛙水、耳郎、新星の3人で話していると先程新星と一悶着あった爆豪の辺りが騒がしくなった。
「騒がしいなー。さっきシンセーに突っかかった奴じゃん」
「色々な人がいるのね。さっきから明銀ちゃんに殺気が篭った目を向けてくる人もいるもの」
「だよな。俺なんかしたかな……?」
蛙水が言うように背後で頭にぶどうの実のような髪を生やしている背の小さい男子が明銀を睨んでくる。
新星はなぜ睨まれるのか分からず、首を傾げる。
実のところ睨んでくる男子、峰田は試験前の新星と耳郎の様子を知っており、彼女持ちでさらに女に手を出しているのかと一方的な勘違いと恨みを向けているだけなのだ。
すると、突然教室の入り口から声が響いた。
「お友達ごっこがしたいなら余所の学校へ行け。ここはヒーロー科だぞ」
静かな声だが全員に響き、声のする方を向くとモジャモジャ頭の少年、緑谷の後ろに寝袋に包まれたやる気のなさそうな男性が立っていた。
「え?誰?」
「不審者?浮浪者?」
学校に似つかわしくない人物の登場に新星達を始め、全員が驚くが、男性は驚いている生徒達を放っておいて教壇に立つ。
「皆さんの担任の相澤です」
『担任!?』
まさかの担任だったことにさらに驚くが相澤は淡々と事を進める。
「早速だが全員これ着てグラウンドに出ろ」
相澤は寝袋から取り出した雄英の体操服を見せて、指示を出す。
全員が訳も分からず、取り敢えず体操服に着替えてグラウンドに出ると相澤は説明を始める。
「これから体力テストを行う」
その一言に生徒達は動揺を隠せず、相澤にいきなりの体力テストで入学式やガイダンスはどうなるのか、と疑問をぶつけるが相澤は気にはしない。
「ヒーローになるならそんな悠長な行事なんて時間の無駄だ。雄英は自由な校風が売り文句だ。当然、それは先生側にも適用される。覚えておく事だな」
その一言に生徒達は黙らせられ、相澤は1つのボールを取り出し、首席合格者である爆豪にボール投げを試しでやらせる。
しかも、ただの身体能力を測るのではなく個性を利用した全力での投球だ。
個性使用を許された爆豪はニヒルな笑みを浮かべて、自身の個性である『爆破』を利用した投球を見せる。
「死ねェッ!!!」
「中学の頃は公正を期すために個性無しで行うがヒーロー科に入ったなら、まずは自分の限界を知らないといけない」
爆豪が投げたボール遥か遠くまで飛び、その結果は776mと驚異的な数値となった。
それを見て楽しそうと沸き立つ生徒達を見て、相澤は意地悪い笑みを浮かべて衝撃の言葉を告げた。
「楽しそうか……そんな心持ちでヒーロー科でやっていけると思うか?そうだな、体力テストで最下位の者は除籍処分としよう」
波乱の体力テストの幕開けだった。
○
最初の50m走の順番を待っていると不安そうな表情をしている耳郎が新星に話しかけてきた。
「はぁ、さっきの話本当かな?」
「さっきって……相澤先生の除籍の話か」
「ウチ、そんなに体力とかないし、不安しかないよ……」
「ここまで来て後悔なんてしたくないだろ?やるなら全力でやって喰らい付こう」
不安そうな耳郎の肩に手をそっと置いて、励ます。
新星の言葉に少しは心が軽くなった耳郎は我ながら単純だなと思いながらも感謝した。
「ありがと、シンセー」
「おう。俺の番だな、行ってくる」
新星がスタートラインに向かうのを耳郎が見送ると背後から声をかけられた。
「ねぇねぇ!耳郎?さんだっけ?」
振り返るとピンクの髪に桃色の肌の女子、芦戸 三奈と服が浮いているように見える透明の葉隠 透が何故かワクワクした様子で立っていた。
「そうだけど……アンタ達は?」
「私!芦戸 三奈!よろしく!」
「葉隠 透だよ!よろしくね!耳郎さん!」
同じ女子同士、仲良くなるのはそう問題ではないがそれより芦戸達2人は気になることがあるらしい。
「それでさぁ、耳郎さんと明銀君って付き合ってるの!?」
「…………はぁ!?」
芦戸の唐突な質問に一瞬頭が追いつかなかった耳郎だが、理解すると急に顔を赤くして慌てだした。
「ちょっ、何言ってんの!?」
「だってあんなに親密なんだもの〜」
「私見たよ!受験前に耳郎さんとあの男の子が見つめあってたの!」
「あ、アレは違うから!」
「「ほんとうに〜?」」
「本当だって!」
「あいつら何騒いでるんだ?」
「さあ?」
質問責めされて顔を赤くする耳郎とそれを見てニヤつく芦戸達を見て新星と同じく走る尾白は首を傾げた。
新星の結果は3秒29と上位に食い込む結果だった。
その後も体力テストを進めていく新星だが、個性『超人』のおかげで体力テストは余裕の気持ちだった。
そして、反復横跳びになった時、同じく測定する峰田が新星に話しかけてきた。
「おい、彼女持ちィ……!」
「え、彼女持ちって俺のこと?」
「お前しかいねぇだろうがよ!あんな公然の前でイチャつきやがって!この猥褻野郎め!」
「なんでだろう、お前だけには言われたくない」
よくわからないことを言う峰田に新星も呆然としてしまう。
2人は前後に並び、峰田は前に立つ新星を睨む。
(お前にはこの種目だけは負けねぇぞ……!)
完全な逆恨みを向けてくる峰田に新星は顔は見ていないが視線をヒシヒシと感じていた。
(なんで恨まれてるんだ?)
結果としては峰田は個性を利用して脅威的な結果を出して、ドヤ顔で新星を見てくる。
そんな峰田を見て新星はなんとも言えない気持ちになる。
○
全ての体力テストが終わり、結果として除籍処分は相澤の生徒のやる気を出させる合理的虚偽で全員が呆気に取られていた。
そして帰り道で新星と耳郎は帰り道も同じであるため、一緒に帰っていたのだが、不自然なくらいに耳郎は新星と距離を置いていた。
「どうしたんだよ、キョーカ?」
「な、なんでもない」
耳郎は体力テスト時に芦戸達に言われたことを意識してしまい、新星の隣にいることが気恥ずかしくなってしまった。
「そういやあの背が小さい奴のこと覚えてるか?」
「ああ、あの何故かシンセーを睨んでた奴?」
「うん、そいつにさ。彼女持ちって言われたんだ。どうやら俺とキョーカがそう見えたらしくて」
「えっ!?」
芦戸達に続き、他の者達にもそう見られていることに耳郎は驚いた。
「俺らただの友達なのになー」
「そ、そうだね……(なんでだろう。嬉しいような、悔しいような)」
耳郎は新星の能天気さに安心したが、そこまでハッキリ友達と言われ、少し残念な気持ちになった。