僕のヒーローアカデミア:Be ULTRA 作:マーベルチョコ
場所を変え、戦闘訓練は再開された。
皆、自身の個性を活かして様々な活躍を見せる中、特に大きな成果を見せたのは特待生の一人である轟だった。
彼は一瞬でビル全体を凍らせてターゲットである模型の核爆弾を確保して、圧倒的な実力を見せつけた。
そして新星の番が来た。
「っしゃあ!頑張っていくか!」
「気合い充分だねー」
気合いを入れる新星にペアである芦戸が話しかける。
「よろしく、芦戸さんだよな?」
「うん!呼び捨てでいいよ!私ね、君に興味があったんだよ。明銀くん!」
「興味?」
「ズバリ!耳郎さんとはどんな関係!?」
新星に向かって指をさす芦戸は声高らかに言った。
突然の質問に新星は呆然としてしまう。
「キョーカとの関係って……ただの幼馴染だけど?」
「本当かなぁ?」
「な、何だよ……」
ニヤつきながら見てくる芦戸に新星は少したじろぐが、すぐに意識を授業に向ける。
「そんなことより!戦闘訓練に集中するぞ」
「後で詳しいこと聞くからね!」
2人はビルの見取り図を広げて作戦を練る。
「対戦相手は八百万と峰田か。峰田もそうだけど八百万が一番厄介そうだな」
「体力テストのとき色んなもの出してたよね。それに頭も良さそうだし!」
芦戸は緑谷たちの対戦時にしっかりとした評価を言っていた八百万を思い出しながら言った。
「創れる制限があるかわからないけど、多分ビル中に罠を仕掛けてくる。それに峰田の個性も合わさると凶悪だな」
「ねぇねぇ!先ずはお互いの個性を教えない?何ができるかお互い分からないよね。アタシの個性は『酸』!酸で溶かしちゃう粘液を体から出せるんだ!」
芦戸はそう言って指先から粘液を出し、地面に垂らすとアスファルトでできた地面が溶けて、小さな穴が空いた。
「中々の強個性だな」
「ヘッヘッ〜!そうでしょ〜」
「俺の個性は『超人』。力が強かったり、早く走れたりする」
「……あのモジャモジャ君と似た感じ?」
「モジャ……?あぁ、緑谷か。あそこまで強くない。言っちまえば下位互換って奴だな」
お互いの個性を紹介し合い、作戦を考えているとオールマイトから開始の合図が出された。
『戦闘訓練!スタートォォッ!!』
新星達は先ずビルの入口ではなく、ビルの側面に向かった。
「じゃあ作戦通りに。芦戸、頼む」
「ハイハーイ!溶かしちゃうよぉ」
芦戸は手から粘液を出してビルの壁を溶かしていく。
先ず入口付近には罠を仕掛けられていると考えた新星達はビルの側面からの侵入を試みた。
芦戸によって壁は溶かされ、侵入できるようになった。
「じゃあ、早速行こー!」
「あっ、待て!芦戸!」
芦戸がビル内に足を踏み入れた瞬間、廊下の端に設置された動体検知器が作動し、それに備え付けられていた機関銃のようなものからトリモチ弾が芦戸目掛けて発射された。
ぶつかる寸前に新星が芦戸の襟を掴んで引っ張り、外に引き戻した。
「あ、あっぶなぁ。ありがと、明銀」
「まさか建物中に罠を張り巡らせてとはな。こりゃ上に行くのは難しいかもな」
「一応アタシの個性使えば上に登れるけど……」
「この様子じゃ全部の階に罠は仕掛けられてそうだ」
「うーん……流石特待生の1人。強いなぁ」
対抗策を考えるがどんどん時間が過ぎていく。
「不味いよ〜。このままじゃタイムアウトで負けちゃう!」
「………」
早くも新星達は追い込まれてしまった。
○
新星達が八百万特製の罠に対して考えている頃、作った本人である八百万のチームはハリボテの核爆弾の部屋で次々とバリケードを張り巡らせていた。
「………」
「峰田さん。核爆弾を中心に半径2m程の所にその頭の物を設置してください」
八百万の個性『創造』により創り出されたバリケードを設置しながら、後方にいる峰田に指示を出す。
しかし、当の峰田は八百万の扇情的過ぎるコスチュームを頭と眼球に焼き付けていた。
(ウッヒョー!!たまんねーぜ、オイ!八百万と同じチームで良かったッ!!)
元々性に対して欲求が素直過ぎる峰田にとって、A組女子のパツパツスーツは目の保養になり、幸運だった。
その中でも一際際どい八百万と同じチームになれたことはさらに幸運だった。
「峰田さん!!聞いていますか!?」
「お、おう!聞いてるぜ!てかさ、下の階にあんなに罠を張り巡らせたのにオイラの個性の出番ってあるか?」
峰田は5分間の僅かな作戦時間で1階に罠を張り巡らせた光景に少し引き気味で見ていたことを思い出しながら話す。
「何事もあらゆる想定をしておくものです。明銀さんの個性は身体能力の増強系の個性。これに関しては私の罠と峰田さんの個性で足止めできます。問題は芦戸さんの個性のほうですわ。恐らく粘液を出す個性ですがどのような性質があるかわかりません」
「粘液……!」
「……? 故に注視するべきは芦戸さんですわ。そのために万全の準備を整えておきませんと」
八百万の粘液という言葉に反応してしまう峰田を不思議に思ったが話を続ける八百万はバリケードを作り終え、非常食のカロリーメットを食べて、自身の武器を作り出して構える。
「例え授業であろうと手を抜きませんわ!」
(今、おっぱい揺れた!)
気合いを入れる八百万と目が血走る峰田だった。
○
作戦を考えるがいい案が思い浮かばない新星達にオールマイトから放送が入る。
『ヘイ!ヒーローチーム!立ち止まって5分経過だ!残り10分だぞ!』
「どうしよう!?残り10分だよ?やっぱり真正面から突撃する!?」
焦り出す芦戸に黙っていた新星が動き出す。
「そうだな。真正面から突撃しよう」
「じゃあ、アタシが酸を出しながら前に立った方がいい?」
「いや、俺が行く」
新星は芦戸が開けた穴の前に立つ。
「え?でも、明銀の個性じゃさっきの罠に当たらない?」
「避けながら、ぶっ壊せばいい」
「そんなことできるの?さっきの罠結構な数あるかもよ?」
「大丈夫。あれくらいなら避けられると思う」
新星は両腕をクロスし、以前S.S.Lで身体検査をした時のラフケルの話を思い出した。
○
「新星、お前の個性『超人』だが身体能力の部分だけがお前の個性じゃない」
「どういうこと?」
「時折、服や靴が壊れることはなかったか?」
「あー、あったなぁ。強度が高い物使ってるのに靴とかよく壊れたなぁ。なんか穴とか燃えたみたいに壊れてた」
「アレはお前の身体機能に耐えきれず、壊れたわけじゃない。別の力が働いて壊れたんだ」
「へ?」
そこにタブレットを操作しながら生目 ジュンが話に入ってくる。
「君の体にはあるエネルギーがある。それが原因で服や靴が壊れたんだと思う」
「エネルギー……?」
「君のお父さん、明星さんにもそのエネルギーはあった」
「父さんにも?」
「私たちそのエネルギーを『スペシウム』と名付けた。そしてお前のULTRAMAN SUITにはそれを活用した武器を付ける。……明星のことをよく見ていたお前ならその武器はわかるだろ?」
○
腕に備え付けられたアームが展開し、新星はクロスした腕を下に勢いよく広げる。
すると腕にレーザーが出現し、ブゥゥゥンと重低音を響かせる。
「『スペシウムカッター』、俺の武器だな」
「へぇー」
芦戸は青白く光るレーザーを物珍しそうに眺め、触ろうとすると新星が腕を引っ込めた。
「触ると危ないぞ。鋼鉄を簡単に斬り裂けるみたいだから」
新星は姿勢を低くして、走り出す構えを取る。
「いくぞ」
その一言の後に新星は飛び出す。
罠は現れた新星に反応し、一斉に攻撃を始める。
しかし、新星は迫り来るトリモチ弾を身を翻して避け、罠に一瞬で近づき腕のスペシウムカッターで切り裂いて破壊する。
更に発射されるトリモチ弾を新星は壁や天井に跳び付いて、全て避けて、罠を殴って、蹴って、スペシウムカッターを使って破壊する。
その動きは素早く、スペシウムカッターの光が残像として残り、光の軌跡が出来る程だ。
たった数秒で一階全ての罠を破壊し尽くした新星は芦戸の所まで戻り、一息ついた。
「とりあえず、一階の罠は全部壊した。核を探しに行こうぜ」
声をかけられた芦戸はハッと気づき、新星に詰め寄る。
「何今の動き!スゴイよ!本物のヒーローみたい!」
「お、おう、落ち着けよ。時間もあまり無いし、早く行こう」
新星は詰め寄ってくる芦戸にたじろいだが、仕切り直して核爆弾を探しに行った。
○
一方戦闘訓練を見ていたモニター室では新星の動きに皆、驚いていた。
「何だ、今の動き!?」
「本物のヒーローみたい!」
「明銀ちゃん、入試試験の時もあんな動きをしていたわ。改めて見ると凄いわね」
「まーた才能マンか……みんなスゲーなぁ」
A組の1人、上鳴 電気の呟きにオールマイトは内心で考えていた。
(才能?いや、違う。あの動きは長年訓練を積んでできたものだ。新星少年、私は知っているぞ。君はお父さんである明星が死んでから、その背中に追いつこうと努力していたことを)
オールマイトが八木としてラフケルの家に出向いた時、新星が山の中で訓練していたのを見ていた。
山に生えている木を使って縦横無尽に移動する動きを身につけようとしていたのだ。
そして今、その成果が身を結び彼に力を与えている。
○
新星が八百万の罠を破壊し、芦戸は酸で峰田のモギモギを溶かして一気に核爆弾があるであろう場所に着く。
「あそこにだけ入口にバリケードがあるよ」
「あそこにありますって言っているようなもんだ。一気に片付けるぞ」
新星はバリケードを一瞬で破壊し、中に入る。
芦戸が先頭に来ると考えていた八百万は突然現れた新星に驚いて固まってしまう。
「核爆弾発見!」
「え、あ、みょ、明銀さん?」
「げっ!?もう来たのかよ!八百万!どうすんだ!?」
「はっ、はい!迎撃してください!峰田さんの個性なら拘束できるはずです!」
峰田は八百万の指示に従い、モギモギを新星に向かって投げるが新星の背後から芦戸の酸が飛び出し、峰田のモギモギを溶かす。
「させないよ!」
芦戸は続けて床に向かって強酸の液体を広げるとモギモギと共に床を溶かして穴を開ける。
「何を……!?」
自分たちの足場をなくしたことに疑問を感じた八百万だが、そう思った瞬間には新星が核爆弾目掛けて飛び出していた。
「うりゃぁぁぁっ!!」
峰田が新星目掛けて矢鱈滅多に投げてくるのを空中で身を翻して避け、前に立っていた八百万の前に着地する。
「え、あ……」
ヘッドギアの目から光を放ちながら目の前に立つ新星に威圧感を感じ取った八百万は体が固まってしまう。
新星は腕を上げ、八百万に向かって伸ばす。
八百万は咄嗟に目を閉じてしまうが、新星の腕は八百万を通り過ぎ、核爆弾に触れた。
『ヒーローチーム!ウィィィン!!!』
オールマイトからの勝利宣言に新星は安心し、ホッと肩を撫で下ろした。
「終わったな」
「え、ぁ……終わって、しまいましたのね……」
逆に八百万は肩を落として気落ちした様子だった。
こうして新星の初の戦闘訓練はあっさりと終わってしまった。