花組の性事情   作:chikurin-ss

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花組の性事情【後編】

「ふぅ、レッスン終了~。……何だ? 3人してこっち見て」

 

レッスン後の休憩室。

志穂はスポーツドリンクを飲もうとしていた手を止め、妙な視線を送ってくる3人をいぶかしんだ。

 

「え、いや別に……」

 

ほのかが視線を逸らす。

 

「レッスン中にも思ったが、今日はどうも3人から妙な視線を感じるな。何か言いたいことがあるならハッキリ言え」

 

言いながらドリンクに口に運ぶ志穂。

舞花の声が飛ぶ。

 

「志穂ってさ~、セックスしたことある?」

 

「ぶぼぁ!!」

 

志穂の口に含まれたドリンクが床を濡らした。

 

「いやだから舞花! 単刀直入なんだってば!」

 

「ごほっ、かはっ、うぇ……」

 

「し、志穂ちゃん、大丈夫!?」

 

「な、何なんだいきなり。わけが……うぇ……わからないぞ」

 

陽菜の時と同じく、ほのかが事情を説明する。

 

「ごめん志穂、別にからかうつもりは全く無いの。この機会に避妊とかそういう、性のことについてもちゃんと勉強した方がいいよねっていう話になってて……」

 

「将来のためにも、演技の幅を広げるためにも、人生の先輩からいろいろ教わりたいっす! お願いします! 志穂先輩!」

 

深々と頭を下げる舞花に、困り顔の志穂。

 

「(う~む……。単にからかおうとしているわけではなさそうだな。グループ最年長としての威厳もあるし、みんなの真面目なお願いを無下にはできないか……)」

 

「くるしゅうない。そういうことであれば、私が教えられることは教えよう」

 

「(……ちょうど最近、私の大学でも性に関する講義があったからな。そこで得た知識でこの場は乗り切るとするか……)」

 

「では、話題にあがっていた低用量ピルの話だが、よく言われるデメリットは血栓症のリスク増加だな」

 

「ケッセンジョウ?」

 

舞花の頭に、はてなマークが浮かぶ。

 

「血栓症(けっせんしょう)。血が固まって血管がつまってしまうことだ」

 

「それは……怖いね」

 

「でも、そこまで心配しなくてもいいって聞くけど……」

 

具体的な話に怖がるほのかと、自前の知識と照らし合わせていく陽菜。

 

「リスクが高くなると言っても、確率としては0.01~0.09%とかそういうレベルだからな」

 

「それなら……確かに心配しすぎなくてもいいのかも」

 

具体的な数字に安心するほのか。

 

「だが持病の有無や肥満、喫煙によっては深刻なリスクにもなりうる。生活習慣に気を配り、病院の先生にもちゃんと相談した上で使うべきだろうな」

 

「そもそもどこで手に入るの? 薬局とかに売ってる?」

 

舞花が率直な疑問を投げる。

 

「いや、売ってない。日本の場合は病院やクリニックといった医療機関を受診して処方してもらう必要がある。値段はひと月分で3000円弱とかが一般的だな」

 

「うへぇ。安くはないし、いちいち病院行くのも面倒そう……」

 

舞花がうめく。

 

「値段はともかく、外国では薬局で買えるのが当たり前だったりする。日本でも薬局販売の是非については議論されてるから、将来的には変わるかもしれないな」

 

「へぇ。すごいね、志穂ちゃん。詳しいんだね」

 

「すごい勉強になるよ。ありがとう、志穂」

 

「大学生だからな。このくらい当然だ」

 

素直に志穂の知識量を称賛する陽菜とほのか。

一方で、なんだか腑に落ちないといった様子の舞花。

 

「ん~、勉強にはなったけどさぁ。元々聞きたかったのってこういう話じゃないよね」

 

「は?」

 

事なきを得たと思い安心しかけていた志穂の口から間抜けな声が漏れる。

あらためて舞花が問う。

 

「結局さ、志穂はセックスの経験があるってこと?」

 

「…………」

 

沈黙の中、3人の視線が志穂を捉える。

 

「(ぬぅ。上手く煙に巻けたと思ったが、ダメか。まぁ……3人とも初心な感じだし、最年長だからと言って変に見栄を張るのも良くないよな……)」

 

「いや……まだ経験したことは無い」

 

「なぁんだ。いろいろと詳しいから、てっきり経験済みだと思ってたのに」

 

「なぁんだ、ってなんだ。素直に答えてやったというのに。まったく、失礼なやつだな、舞花は」

 

みんなから肩の力が抜ける。

陽菜を除いて。

 

「ま、まぁほら、志穂だってまだ18歳なんだし、気にすること無いよ!」

 

「別に気にしてないんだが……。そういうみんなはどうなんだ。経験あるのか?」

 

ほのかのありがたみの無いフォローに苦い顔をしながら、志穂が反撃とばかりに問い返す。

 

「(あ、あれ? そういえば……舞花ちゃんとほのかちゃんって経験あるのかな……?)」

 

陽菜の肩に一層の力が入る。

 

「私とほのかはまだ無くて、陽菜は経験済み!」

 

舞花の放った答えによって、この場で誰を問い詰めるべきかがハッキリしてしまう。

 

「なるほどな……。初心な顔して話を聞いているから、私はてっきり……。やってくれたな、陽菜」

 

志穂のジトっとした瞳が陽菜を突く。

 

「ちょ、ちょっと? みんな目が怖いよ?」

 

「舞花が欲しているような面白い話なら、陽菜からたっぷり聞けそうじゃないか」

 

「そうだよ! 陽菜から詳しく聞いてなかったじゃん!」

 

詰め寄る舞花に、後ずさる陽菜。

 

「面白くもなんともないから! あ、あれは私の性欲が強すぎたってだけの話で……!」

 

「……え? どういうこと?」

 

苦し紛れに放たれた陽菜の一言に、ほのかが敏感に反応する。

 

「これは……面白い話が聞けそうじゃないか。ほのかもそう思うだろ」

 

「うん……ごめん陽菜。正直……私もすごい気になる」

 

ほのかと志穂が舞花に劣らぬほど好奇に満ちた目を陽菜へと向ける。

 

「あはは……。あ! 亀井さんのエサを買って帰らなきゃ! 先に帰るね! お疲れ様!」

 

陽菜は本日二度目のエサの買い出しをしに休憩室を飛び出していった。

 

 

≪完≫

 

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