おジャ魔女どれみ パニックマジック   作:レイガース

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天皇寺 龍子。彼女は手に数枚の、あのドクロのカードを持っていた。

龍子はシーズン魔法を唱え、一つは美空中に、一つは目の前にあるカレン女学院に呪いをかける。龍子は他のドクロのカードを胸ポケットにしまい、他のポケットからカードケースを取り出す。

「さあ、始めましょう。藤原はづきさん!」

カードケースに黒いエネルギーが溜まり始めていた。


はづき編
第8話:カレン女学院の暗雲!動き始めた龍子!


話はどれみにかかったあのドクロのカードを取り出し、パソコンに封じ込められた同時刻から始まる。

 

春美は哀しみで満たされたカードケースを開き、シーズンMAHO堂の奥の、地獄の魔女界に繋がる扉を開け、その世界に哀しみのエネルギーを向けて発射する。

 

「どうやら、目的の半分は達成できたようね、春美」

 

春美の後ろに、マジョスプリングが立っていた。

 

「いいえ、ほとんど達成できました。あの春風どれみの心に絆の亀裂を少しでも植え付けられたのですから。にしても」

 

7人で分け合ったカードのうち、まさか一つを奪われるとは思ってもいなかった。

 

「ハーデン様がお呼びよ。扉が開いているうちに、地獄魔女界に赴きましょう」

 

春美が放った黒い光に満たされ、黒い魔法樹はさらにドス黒く輝きを増してきていた。

 

「どうですか、皆さん。あなた方に与えたギルティカードの威力は」

 

ギルティカード。春美たちが持っているドクロのカードの名であり、どれみたちが回収したあのバッドカードの進化系である。ギルティカードは物だけでなく、人にも取り憑く厄介なカードでもあるようだ。

 

「次の計画段階は、誰が引き受けてくれますか?」

 

マジョハーデンの問いに、マジョサマーと天皇寺 龍子が前に出る。

 

「カレン女学院にギルティカードを放ってあります。もう憎しみのエネルギーは半分以上も溜まりました」

 

春美や龍子たちのカードケースには、彼女たちにしか分からない特殊なマイナスエネルギーの量を知るメモリーがどこかにあるかのようだった。

 

「春美ちゃんはどうしますか?」

 

春美は顔を上げる。

 

「しばらく猶予を下さい。いくつか作戦はありますが、春風どれみの行動で動きたいと思います」

 

春美の狙いはどれみを目の敵にしていた。

 

「分かりました。では、第二段階は、龍子ちゃんにお任せいたします。お願いしますよ」

 

マジョハーデンは、黒い魔法樹の後ろにあるたくさんの人が入れるほどの魔法玉にマイナスエネルギーが溜まっていくのを見ていた。地獄の魔女界の女王の狙いはいったい何なのか。それは、春美たちや地獄魔女たちだけが知っていた。

 

どれみのMAHO堂復帰を喜び、さらに夏の暑さに関わらず、第二の新装開店、その名も再びの魔法グッズ店。その二つの喜びを祝して、どれみたちは盛り上がっていた。しかし、いざ、どれみやぽっぷが魔法グッズを作ってみると案の定、ヘンテコグッズの出来上がりである。

 

そんな事をしていると、歌が流れてデラがやってきた。

 

「お待たせ〜。前々から欲しがってた、夏の暑さ対策のクーラー持ってきたわよ〜。ついでに、これは女王様から」

 

クーラーは魔法で設置されたが、テーブルにはどデカイ小包袋が置かれた。しかも、保護者宛はどれみたちで、小包の中身はハナちゃん宛だった。

 

「そういえば、ハナちゃん。ずっとMAHO堂にいるけど、幼稚園は?」

 

どれみが聞くと、ハナちゃんは腕を組んでどう話せばいいか悩んでいた。

 

「もうハナちゃん、四歳でしょ?魔女幼稚園もだいぶ、人数増えてきて、今年大変みたいでさ」

 

うんうん、とももことおんぷは頷く。

 

「その話もあって、これを届けたのよ」

 

魔法文字が読めないので、どれみやあいこはおんぷに渡す。ハナちゃんはデラに開けるよう急かされ、袋を開けると。中身は何と、

 

「魔女学校の案内状と、ハナちゃんのために揃える教材の、えーと教科書?」

 

マジョリカはデラに、クーラーの費用をパオのピーズから出して渡す。

 

「もうそんな時期じゃったか。噂じゃ、魔法使い界は男しかいないから、母親が必要ということで、魔法使いの赤ん坊は魔女界の魔女たちが面倒みることになったようじゃが、儂らもこれから大変じゃわい」

 

人間界の小学校を卒業したばかりのハナちゃんにとっては、再びの学校だった。

 

「試験もあるみたいよ。えっーとね、ランク?魔力の強い魔女のハナちゃんは、特別ランク扱いなので、授業数が多いとか、何とか」

 

おんぷは悩みながら、魔法文字を読んでいた。

 

「はあ、また学校か〜。でも、何で試験?」

 

おんぷは頭を掻きながら、手紙を睨んでいる。

 

「女王様からの、お願いらしいみたい。でも、その試験は当日まで分からないみたいね」

 

「とりあえず、夕方にでも魔女界に行ってみようよ。マジョリカ、魔女学校を案内してよ」

 

どれみの勢いに、マジョリカはビクリと汗をかく。

 

「わ、儂も行くのか?」

 

なぜか不安気に言うマジョリカに、どれみたちは気になり出す。

 

「わ、分かったわい。案内すればいいんじゃろう!」

 

ララもなぜかマジョリカと同じく動かなかったが、仕方なく一緒に行くことになった。

 

夕方になると、どれみたちは入り口を通り、魔女界に入る。

魔女界は久しぶりの魔女学校の入学手続きなどで、繁華街などが賑わっていた。途中、魔女幼稚園の園長マジョミラーと会い、ハナを探していることが分かった。

 

「魔女学校に着いたら、大人の魔法を解きなさい。ハナはまだどれみたちと違いますからね」

 

「ちぇっ!分かったよー」

 

マジョミラーに従い、ハナは魔女学校に着いたらすぐに魔法を解く。

 

「ここが魔女学校。文字読めないね。おんぷちゃん、タッチ!」

 

どれみに代わり、おんぷは手紙の内容を確認しながら、受付に行って話を聞きに行った。ハナちゃんはどれみたちに園児用のカートに乗せられ、一緒に辺りを散策する。はづきとももこはおんぷのところに行き、あいこはマジョリカやララと一緒に、無料のパンフを見ていた。

 

おんぷたちが戻ってくると、最初の試験会場がもう用意されているようで、試験会場の場所である一階奥の体育館に向かう。普通の試験会場は別教室らしく、階段の側を通る時にアタリメコを連れたスルメ子とハチ太郎を見つけた。

 

試験会場の体育館は、ハナちゃん専用の特別空間のようで、元老院魔女の試験官マジョサリバンがいた。

 

「受付の係りから連絡をもらっている。お前たち母親も、全ての試験が終わるまでフォローしろ。今日の試験はこれだ。全て女王になるために必要な要素を試すものだ。最初は迷路だ。学校は広いからな。ハナは授業も多い、迷っていては勉強も疎かになるからな」

 

マジョサリバンは指を鳴らし、扉を作る。

 

「魔法文字の読めるおんぷを筆頭に、全てのドアをくぐれ。一つでも同じドアをくぐり間違えると、最初からやり直しだからな」

 

どれみたちやハナちゃんは息を呑み、試験の扉を開ける。

 

魔法の影響か、体育館とは思えないほどの空間が広がっていた。迷路のように、たくさんの階段やドアがあり、どこから入ればいいか迷うほどだった。

 

「あかん、頭が痛くなりそうや」

 

あいこは上まで続く回廊を見上げていた。

 

「とりあえず、目の前のドアを開けてみようよ」

 

どれみがドアを指差す。ハナちゃんを抱き上げ、ハナちゃんにドアを開けさせる。中をくぐると、同じ景色が広がり、目の前のドアもまた同じように存在していた。

 

「ほんと迷路だね。さっきはそこのドアを開けたから、階段の近くのドアを開けてみようよ」

 

ももこが今度は、階段のほうを指差していた。はづきは紙を出して、周りのドアの数や背景を上手く書いて、ぐぐったドアにバツを付けていく。

 

「隣のほうのドアも開けてみましょう」

 

おんぷが次のドアを指す。次のドアをくぐり、今度は上の回廊のドアまで入った。どうやら、先ほどのドアから一つのドアを飛ばして、上の回廊まで移動したらしい。

 

たくさんの回廊やドアを間違えないようにくぐり、ようやく最後のドアをくぐると、試験官魔女のマジョサリバンのところまで戻ってきた。

 

「よく戻りました。まあ、ハナはあなた方の小学校で体験したのですから、このような試験は必要ないと思っていますが、魔女学校は魔法を学び、制御するためにあるので、幼稚園のようにはいきませんからね」

 

マジョサリバンはどれみに手帳を渡す。

 

「育児の試験と似ていますが、次からはこの手帳を持って来なさい。次の試験は、追って連絡します」

 

試験が無事に終わり、ほっとしたどれみたちやハナちゃんだったが、

 

「ハナよ。女王様がお呼びだ。どれみたちと一緒にいたい気持ちは分かるが、今日はお別れだ」

 

ハナちゃんはブーと言うが、魔女界のことはハナちゃんに任せると言い、どれみたちは自分たちの世界に帰って行った。

 

ハナちゃんは城に向かい、女王様の部屋に入る。

 

ハナちゃんの試験から翌日、はづきはカレン女学院の服に着替え、学校へと走る。途中、おんぷが手を振ってくれたので、はづきも笑顔で手を振る。その後、少しの間、どれみたちと合流し、カレン女学院に向かう。

 

はづきはカレン女学院に入ると、急に嫌な寒気を感じた。それもそのはず、はづきには分からなかったが、周りには既に、茨の芽が出来始めていたのだ。

 

不穏な空気の中、ギルティカードに影響されて、カレン女学院は少しずつ崩壊しようとしていた。

 

同じ頃、龍子とは別に、春美もまた美空中学にギルティカードを使っていた。そう、どれみたちをカレン女学院から引き離すためだ。

 

さらに、美空中学には龍子の放った別のギルティカードが存在する。

 

「春美ちゃん、サクセスできた?」

 

ももこを敵対視する同じ帰国子女の奈良時リンゴが近くにいた。

 

「今頃、この美空市周辺で危機が起こっているなんて、あのピュアレーヌたちは知らないでしょうね」

 

「ナイス、春美ちゃん。美空市デンジャラスネ」

 

リンゴが春美にピースする。春美は学校の鐘が鳴るのを聞き、リンゴと一緒に教室へ戻る。

 

美空市の周辺には、数枚のギルティカードが共鳴して黒い茨や暗雲の未来を作り出そうとしていた。分断されるどれみたち。はづきはこれから孤独の中で、龍子と知能戦を繰り広げることになる。

 

はづきは、カレン女学院に入学して以来、龍子の存在を知ってからは、奇妙な不安を感じ取っていた。どれみから取り除いたドクロのカード。まだオヤジーデやハナちゃんからは連絡がない。それに、変な教室の、いや女学院全体から感じ取れる暗い闇。

 

(龍子さんが何かしているのかしら。最近、まさる君の様子もおかしいし、何が起こっているの?)

 

はづきから少し離れたところの場所で、龍子は笑みを浮かべていた。机の中で、龍子はギルティカードの入ったケースを手に持ち、はづきを如何にして追い詰め、どれみと同じような強大な暗い闇を奪うか考えていた。

 

学校が終わっても、MAHO堂同士の戦いは続いていた。おんぷとテンポに頼っている二つのMAHO堂は、どちらも売り上げは並行している。

 

最近では、おんぷとテンポのファン同士がぶつかり、テレビのニュースで喧嘩の報道が流れる始末。ギルティカードが影響しているのは明らかだった。

 

「ところで、ハナちゃん、オヤジーデ。例のカードの詳細分かった?」

 

どれみが、パソコンに見入っているハナちゃんと、パソコンの中でカードをいじっているオヤジーデに近寄って尋ねる。

 

「オヤジーデが盗んだ、っていうバッドカードに似ているってことは分かったみたいだよ」

 

オヤジーデがハナちゃんに、パソコンから例のカードを渡す。

 

『でもですね〜。バッドカードみたいに、不幸になる効力がほとんどないんですよ〜。まるで、何かに吸い取られたみたいに』

 

オヤジーデの言葉に、おジャ魔女一同があることを思い出す。オヤジーデは唖然とするが、

 

「確か、あの春美が、どれみちゃんからカードを抜いた後に、そこから出た何かをケースに吸い取ったの見たなぁ」

 

あいこが思い出しながら、ハナちゃんの持っているカードを見る。

 

『名前は、ギルティカード。あいこっちの情報を加えますと、

 

物だけでなく、人にも取り付く。

 

偶発的に散らばったのではなく、誰かによって意図的に取り憑いている。

 

深い哀しみの茨を出現させることができる。

 

などなど、バッドカードに無かった力があるみたいですよ』

 

どれみたちは、腕を組んで考える。

 

「ギルティカードか。彼女たちが、そのカードを持っているのは明らかだね」

 

どれみたちは頷く。しかし、そのギルティカードの力が、もう既に近くで使われていることは、どれみたちも気付いていない。けれど、はづきは何となく気付いていたのは確かだった。

 

そのはづきの感覚は、ギルティカードの力が高まれば高まるほど、カレン女学院の門を通るたびに増していた。カレン女学院構内で、事故や事件が相次ぎ、はづきはバイオリンの稽古もろくに出来ず、MAHO堂でいつも溜め息をついていた。

 

どれみたち三人も、ギルティカードが影響していると感づいており、原因を探ってはいるが、春美たちの邪魔が何度も入り、まだ探すことができなかった。

 

「最近、美空市全域の中学校、女学院中心に、異変が起きているのは確かね。復帰した芸能人の何人かも体調不良で出れない人が多いみたい。

それに引き換え、あの夏野テンポは出番が多くなってるの。あの子だけ元気なんて、やっぱりおかしいわよ」

 

そして、この頃の天気も悪い予報ばかり。日中は涼しいが、夕方や夜は雨がよく降り、雨が降っていなくても雷雲が響き、魔女界に繋がる扉が開くことがあまりなくなっていた。

 

はづきはMAHO堂の帰り道、矢田まさるがトランペットを吹いているのを見かける。しかし、はづきの目に止まったのは、その隣にいる人物だった。

 

「やっぱり、小学校から吹いているだけあって上手ね。私のバイオリンも似たようなものですけど」

 

バイオリンを手から降ろしたのは、何と天王寺 龍子であった。

 

「俺は別に、一人で練習していただけだ。藤原となら、話は別だけどな」

 

そこに、はづきが土手の下に降りてくる。

 

「あら、藤原さん、お仕事帰りかしら?」

 

はづきは龍子にムッと来る。

 

「お邪魔のようですし、まさるくん、例のお話考えてくださいね」

 

龍子は去り際に、まさるの油断もあってか、頰にキスされた。まさるは赤くなり、龍子に怒る。はづきは怒り心頭気味になっていた。

 

しかし、龍子は笑みを浮かべる。

 

はづきと龍子は、この一件以来、顔を合わせるごとに、お互いに張り合うようになっていた。張り合う内容は、常に龍子が動き、はづきがそれに対抗する展開だった。

 

その頃、美空中でも、不信な出来事をまとめて、その集中している箇所を調べた結果、ギルティカードがその原因を作っていることが分かり、どれみ、あいこ、ももこが見習い服に着替えようとするところを、春美たちが邪魔して三人同士が睨み合いになった。

 

「ギルティカードが見つかったは、想定の範囲内ですけど、今はそのカードを取らせるわけにはいきません。隙を見て、そのカードを取ったとしても、他の場所は出遅れかもしれませんね」

 

美空中のチャイムが鳴り、ギルティカードを取り損ねたどれみたち三人。ハナちゃんはMAHO堂で、ぽっぷは美空小、おんぷは遠近学園。三人以上揃わないとできないマジカルステージに対し、自分の思うように使うことができるギルティカードを持つ春美や龍子たち。

 

はづきは親友たちと分断されて、何もできずに悩んでいたのだった。それでも、MAHO堂では、シーズンMAHO堂が起こす騒動について、7人の魔女見習いは仕事をしつつ、議論し合っていた。

 

「おそらく、彼女たちの狙いは、人の心の闇の収集だと思うわ。最初の悲しみの茨の一件から、どれみちゃんを集中して狙った理由も全部、その心の闇を何かに利用しようとしていることが分かるわ」

 

とりあえず、パソコンは一台しかなく、春美たちが邪魔して来るのは確実と思ったので、一度に別々の場所でギルティカードを取り除くのは不可能だと分かる。

 

そこで、ある人物が提案を出す。

 

美空中の昼休み、あいことももこは例のギルティカードのある場所に向かう。しかし、マジカルステージを阻止すべく、春美、鬼頭レイラ、リンゴが立ち塞がる。5人は睨み合い、その場に固まる。

 

おんぷの楽屋を見張るテンポ。おんぷが仲間の下に向かうのを阻止するために、おんぷが一人でいる時はストーカーに似た感じで終始見張っていた。

 

ぽっぷの通う美空小学校は、春美の妹の北風シャープの策略により、玉木えりかを囮にしてぽっぷは足止めを食らっていた。

 

どれみとハナちゃん2人ではマジカルステージができないという、分散作戦により、誇らしげに高笑う春美たち。

 

しかし、ある提案を示した者による陽動作戦は功を奏して、どれみに駆けつけたハナちゃん、おんぷ3人はマジカルステージでギルティカードを取り出すことに成功する。

 

前日ーMAHO堂ー

 

「なら、陽動をかければよいではないか?奴らの注意を逸らし、ギルティカードを取り出すといい。おそらく、奴らは2人以内に分散して、取り出せないようにしてくるはず。そこで、ここから一人、分からぬように抜け出して協力してほしい」

 

これを提案したのはマジョリカであり、テンポが楽屋で見ていたのは、おんぷに変身したロロだった。

 

遂に、ギルティカードを取り出すことに成功したどれみたち。しかし、空の上で見張っていたサキにより、ギルティカードから出てきた悲しみの力を回収される。

 

「皆さん、ご協力ありがとう。この悲しみのエネルギーは、ありがたく使わせていただきます」

 

キャハハハ、と笑いながら、サキは箒で飛んでいく。ギルティカードを取り出す作戦を、悲しみのエネルギーを取り出すための策略に上書きされてしまい、先の先を読まれたどれみたち。

 

夕方のシーズンMAHO堂から、地獄の魔女界で、シーズン見習いのサキと春美は、ケースから悲しみのエネルギーを黒い玉がたくさん並ぶ大樹に与える。数個の玉にエネルギーが溜まる。

 

「春美ちゃん、サキちゃん。ご苦労様でした。龍子ちゃんのお手伝い、引き続きよろしくお願いしますね」

 

地獄の魔女界の女王マジョハーデンが、2人にお礼を言う。

 

「はーい」

 

とサキは言い、春美もありがとうございますと頭を下げる。

 

同じ頃、MAHO堂で、オヤジーデにより二枚目のギルティカードの解析が行われた。

 

「あっちゃー、相手の方が上手やったかー」

 

あいこは、片手を顔に当てて椅子に寄りかかり凹んだ。

 

「ごめんね、みんな。ハナちゃんが、サキちゃんのこと、すっかり忘れていたから」

 

ハナちゃんも、ぐったりとテーブルに寄りかかる。

 

「でも、これで分かったわ。あの人たちの狙いは、悲しみのエネルギーの回収で、そのエネルギーを回収するための力があるということ。

 

それに、残念だけど、私たちにはカードを回収するくらいしかできないこと」

 

おんぷの言葉に、ももこが反応する。

 

「けど、エネルギー取られちゃ意味ないんじゃない?」

 

そこで、どれみが思い付く。

 

「だったら、溜まる前に回収したらいいんじゃない?」

 

「でもなぁ、どれみちゃん。バッドカードと違うて、ギルティカードは不幸だけじゃないんやで」

 

オヤジーデはパソコンに付きっ切りで、解析に専念していた。

 

何も考えが思い付かないまま、MAHO堂での仕事は終わり、それぞれが自宅に帰ることになった。しかし、はづきは気付いていた。まだ回収していないギルティカードの存在を。

 

カレン女学院では、夏の体育祭に向けて、一年生から三年生全生徒が部活動含め、走り込みやバトンの受け渡しに専念していた。

 

はづきがギルティカードの影響に気付かなかったのは、バッドカードとは違い、チャペルの枯れはなく、不幸の連鎖も起こってはいなかったらである。

 

だが、はづきが一番気にしているのは、天王寺 龍子がまさるに色々と接してくるということだった。なぜ、龍子はそうまでして、別の学校にいるまさるに絡もうとするのか。はづきは、まさると龍子が2人でいるのを見かける度に、怒り心頭気味に近寄って、2人を引き離す。

 

地獄の魔女界では、マジョハーデンが巨大な黒い樹木の前に立っていた。

 

黒い人が入れるような大きな玉に、いくつかエネルギーが必要以上に溜まり、マジョハーデンは溜まっている数個の玉を魔法を使って、別の場所であるドーム型の樹楽園へ置く。

 

「数千年前の恨み、このマジョハーデンが叶えてみます。我が母上が、数千年前にそうしたように」

 

マジョハーデンの後ろには、サキが静かにして立っているだけであった。

 

MAHO堂の売り上げは、美空中学のギルティカードを取り除いたことにより、少しだけ活気づいてきていた。人々に笑顔が見れ、シーズンMAHO堂の動きは息を潜めている。

 

カレン女学院にあるギルティカードも、美空中学のギルティカードの影響が消えたことで力は衰え、悪い話が消えていった。

 

まさると龍子の接近にも不協和音が訪れ、はづきはまさるとの関係にようやく安堵がやってきた。

 

そうした中、息を潜めているシーズン魔女見習いたちは、マジョハーデンの下に集まっていた。

 

「全て、私の想定内で動いています。藤原はづきは、カレン女学院のギルティカードの存在に気付いていますが、その存在ばかりに気を取られ、もう一方のギルティカードに気付いていないようです」

 

ドーム型樹楽園に、暗い光が輝いているのが見え、春美たち魔女見習いは、いよいよだと真剣な眼差しを見せた。

 

「あの魔女見習いたちには、ギルティカードの回収をさせて、春美ちゃんたちはエネルギーの回収をお願いします。最後に勝つのは私たちです」

 

強い魔力を秘めたギルティカードは、一つのギルティカードが取り除かれても、効果は持続している。これまで姿を見せなかったギルティカードも、美空市全域を暗い悲しみにへと全土を覆おうとしていた。

 

魔女界でも、人間界への道が閉ざされたことにより、時期女王候補であるハナちゃんの安否が騒ぎを呼んでいた。今はまだ、マジョトゥルビヨンが代理となって魔女界を護ってはいるが、現魔女界の女王の不在が、魔女元老院たちに不安を募らせていた。

 

魔女界に通じる扉を閉ざされたゆき先生は、魔女界に戻ることができず、人間界に及ぶ不穏な予兆を感じていた。何か得体の知れない者が、影で動いている。そう思うしかなかった。

 

どれみたちは、一時の明るい静かな世の中に、少しばかり不安を抱いてはいたが、夏真っ盛りの時期を楽しんでいた。

 

しかし、一方。天の魔女界の扉は閉ざされたが、反対に地獄の魔女界の扉はあちこちに開き始めていた。

 

「これで、春美ちゃんたちも、心置き無くマジョスプリングたちと会うことができるでしょう。長年の間、天の魔女界に牛耳られた人間界も、あと数年で」

 

地獄の魔女界にある黒い巨大な大樹に、開かれた扉からギルティカードからもたらせる悲しみのエネルギーがどんどんと集まってくる。

 

「まだ足りない。もっと、もっと多くの悲しみがなければ、我々の世界は救われない!」

 

【ー第9話に続くー】

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