織田信奈の野望 相良では無く加藤が戦国時代に   作:皐月の王

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加藤和正 戦国時代へ

加藤和正、高校一年生はハトが豆鉄砲を食らったような表情を浮かべていた。

 

「はぁ?どうなってんだよ、これ……」

 

自分がさっきまで居た自室とは異なる世界が目の前に広がっていた。

 

川沿いの草原に、槍や旗を持って叫んで、押し合いをしている……足軽?

その光景は、テレビやゲーム、漫画などで見たことのある光景だった。

 

「戦国の合戦か!?夢じゃねぇのか……?夢にしても、リアルすぎるつーか……ってて!夢じゃない……!」

 

自分の頬をつねって夢じゃないかを確かめた。目が覚めることはなく、頬の痛みがヒリヒリとする。訳は分からないが、合戦中とならば、旗を見て家紋を確かめる必要があるなと考えたが……そんな余裕は直ぐに無くなった。

 

和正の今の姿は学生服、言わいる学ランだ。その黒い服装。時代に不相応の服装に身を包んでいる和正は両軍の足軽から

 

「なんだぎゃ、あの格好は?」

 

「南蛮人か?」

 

「新手の敵だみゃ!」

 

と双方の足軽から勘違いされ、左右同時に襲いかかってきた。

 

「うお!?危ねぇ!!ちょっと待ってくれよ!俺は兵士じゃないぞ!ただの通りすがりだ!」

 

「みゃああ!!」

 

「だぎゃあああ!!」

 

「容赦ないかよ!仕方ねぇ!一発我慢してくれよ!」

 

突き出された槍を体を捻り避け、右手で槍の柄をつかみ思いっ切り引っ張る。引き寄せて顔面目掛け右拳を振り抜く

 

「んぎゃああ!!」

 

殴られた足軽は引き寄せられる勢いと、殴り抜けれる勢いで、威力を上手く殺すことが出来ず大きく後方に吹っ飛ぶ。その光景に、他の足軽は呆然する。その隙を見逃さず走り出す。人を殴った感触に歯を食いしばりながら。

 

「戦慣れしているおら達が追いつけないぎゃあ!逃げ足が速いみゃあ!!」

 

「速くなかったら困るわ!毎日鍛えて、新しいランニングシューズに変えたっていうにな!」

 

軽装と重装、そして元の足の速さも相まり、距離を離して何とか撒くとことに成功した。

 

「……ッはぁ!なんだって言うんだよ……こんなことがあるのかよ!」

 

苛立ち混じりに、石を蹴る。いきなり命を狙われるハメになるわ、自衛で人を殴るハメになる。和正からすると、最悪なことこの上ない。

 

「とりあえず、何処か安全な所に……」

 

再び歩き出した時。突如後ろから手で突き飛ばされる 。突然のことで何も言うことも出来ず、前のめりに倒れる。

 

「っ……!今度は……なん……だって……」

 

後ろを振り返り、自分を突き飛ばしたであろう人物をみた。目の前には、倒れている小柄な足軽が居た。

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

「……流れ弾に当たったみゃあ……運がなかったみゃあ」

 

「流れ弾って……今あんた俺を突き飛ばして……助けてくれたんじゃないか!」

 

目の前で人が死ぬ。ゲームとかなそう簡単に人は死なない。でも、こんなにあっけなく死ぬのが現実なのかと目の前の光景を見る。和正の顔色は青くなっていく。震えながら、道の脇、地蔵があったので、隣に寝かせる。

 

「そ、そうだ!おっさん名は?命の恩人なんだ。それくらい教えてくれ!」

 

「わ……わしは木下藤吉郎じゃ……さらば坊主……」

 

そして目の前の小柄な足軽の瞼はゆっくりと閉じる。

 

木下藤吉郎……後の羽柴秀吉、豊臣秀吉となる人物にして、加藤清正が仕えた人物だ

 

「死ぬな!おっさんが死んだら、日本の歴史がおかしくなる!だから」

 

慌てて何を言おうが、死んだ人は蘇らない。天下人になる筈の、日本の三英傑の一人、豊臣秀吉になるはずだった木下藤吉郎は無名の足軽のままひっそり死んでしまった。

 

学校で学んだ歴史、ゲームで見た歴史とは違う世界が目の前に広がって居る。未だ響く馬蹄の音と種子島の発砲音、足軽の叫び声。夢とは到底思えない現状、和正はどうするべきかを考えようとしていた。

 

何処かの村に紛れて、一生を無難に過ごす方がいいと思ったり、未来の道具を商人に売りつけてそれを元手にし商売人になるのもいいと思った。とりあえず戦場から脱出しないと行けない。

 

「そうか。木下氏が死んだか……南無阿弥陀仏、でござる」

 

「はい?」

 

背後で、幼い少女の声が響いた。振り返ると鎖帷子と忍者服で全身真っ黒の忍びが立っていた。その忍びは子猫のように華奢で、現代なら小学生中高学年くらいだろうか、と和正は思った。

口元はマスクに覆われていたが、目は露出している。瞳は東洋人とは思えないほど赤い瞳だった。

 

「拙者の名前は、蜂須賀五右衛門でござる。これより木下氏にかわり、ご主君におちゅかえするといたちゅ」

 

どうやら木下藤吉郎の仲間だった娘らしい。でも、今言ったのは和正にお仕えするという文言だ。

 

「仕えるのは勝手だけど、俺は無一文で、帰る場所も行く宛もないぞ?」

 

「織田家に士官すれば良いでござるよ。あそこは俸禄の支払いがいい」

 

「俸禄?……給料の事か……」

 

和正はもう他の道がないのかと、俯き考える。織田に士官するということは、足軽になり人を殺す事だ。現代人の加藤和正にとってはくるものがある。

 

「ご主君、名をなんと申す?」

 

ふと名を聞かれ、そう言えば名乗ってなかったなとこれまでの会話を思い返し名乗る。

 

「和正……加藤和正だ」

 

「加藤氏、髪の毛一本いただく」

 

五右衛門は、和正の頭から髪を一本引き抜くと、胸元から取り出した藁人形の中に詰め込み始めた。

 

「んだよそれは?呪うつもりか?」

 

「我が宿主になっていただく契約でござる」

 

「そう言う契約もあるのか……奇妙なだな……」

 

乾いた笑いを浮かべ、藤吉郎の亡骸を見る。自分を庇って死んだ偉大な人物になる筈だった、自分の先祖に関わる重要な人物……藤吉郎という未来の英雄を欠いた織田家のこれからの運命がどうなるかなんて、和正には分からない。和正が知る歴史は変わってしまった。それだけは事実だ。

 

「加藤氏、合戦まだ続いているでござる。織田家の旗竿を持って槍働きするが良い」

 

「……こんな事のために……俺は今まで鍛えてきたわけじゃねぇ」

 

ボソリと呟き、拳を硬く握る。藤吉郎の亡骸から刀を手に取り、ベルトの間に挟む。

 

「けど、五右衛門達を食わして行くには、これしかないか」

 

少し遠くの合戦の声、音を聞きながら静かに覚悟を決める。

 

「五右衛門。これから宜しくな」

 

「勿論でござる。加藤氏ご武運を!」

 

五右衛門は木の葉を巻き上がらせると同時に何処へと消えていた。

 

「たく、とんでもない事になった……でもやるしかない。ふぅ…加藤和正……!行くぞ……!」

 

加藤和正の戦国での戦いが今始まる。

 

 

 

 

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