起きたら次元将になってたんだが   作:次元獣だもん☆

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突然脳が次元力に満たされエタニティ・フラットを脱したので書きました。


第1話 起きたら次元将になってたんだが

突然ですが皆さんは、ふと眠りから覚めると見慣れない路地裏に座り込んでいた、という経験はおありでしょうか。俺はあります。今まさにこの瞬間。

 

「どこだよここ……」

 

と、思わず口をついて出た言葉。だが次の瞬間にそんなことはどうでも良くなった。

 

「……? なんか声が変だ。あー、あー……!?」

 

適当に声をだしてみると、やはり完全に自分のものではない。気がする。何だこの四天王キャラみたいなボイスは。慌てて喉元に手をやると、伝わってくる感触は鍛え上げられた筋骨隆々の太い首のもの。そしてその手も全く見覚えのない、ゴツゴツした巨岩のような手だった。

 

「なぁにこれぇ」

 

情けない声を上げながら近くに見つけた水たまりに這いよると、そこに映し出されたのは刺青たっぷりの浅黒くゴツイ顔。おまけに髪は深い青色と来た。その顔を見た瞬間、自分が何者なのか、なぜこんなところにいるのか。断片的にではあるが、思い出した。

思い出したのだが……その記憶はどこか他人事のように感じられる。

 

何故なら思い出した自身の名前、次元将ドゥリタラー。

 

「スパロボで名前だけ出てた……本編前に死んでるやつらの片方……」

 

この名前と記憶を、娯楽作品内のものとして知っていたからである。

しかしこのドゥリタラーの名前と記憶が自分のものでないとすると、では自分は何者なのか。これが思い出せない。

次元将という名に対して”スパロボ”なんて単語が出て来るあたり、次元の壁どころかもっといろんなものを超えた場所の住人であることは想像がつくが、いろんな知識はあれど”自分が何者なのか”という点についてはこれっぽっちも思い出せない。分かるのはせいぜい一人称が”俺”であるという事くらいだ。

まあ思い出せないものはどうしようもないので今この瞬間は頭の隅にでも追いやっておく。

 

今気にするべきは自分がこの路地裏で無様に転がっていた理由の方だ。

 

「なんで生きてる……?」

 

俺は……いや、次元将ドゥリタラーは、あの忌々しい”御使い”どもとの戦いに挑み、完膚なきまでに叩きのめされ、死んだ……はずだ。少なくとも今思い出したドゥリタラーとしての記憶の断片からするとそうとしか思えない。

 

「……はあ、生きてるもんは仕方ないか」

 

すぐに先ほどと同じく”今考えても仕方がない”という結論に至り、諦めて立ち上がると路地裏の出口を求めて歩き出した。

 

「追っ手は……来てないな。来られたら詰んでたし助かるが」

 

ドゥリタラーとしての感覚で分かるが、今の俺は次元将のくせして次元獣の一体も従えておらず自身の戦闘用外装兼乗機のヴィシュラカーラも一体化した俺と共に消滅(何故か俺は生きてるが)した。つまり今の俺は生身でモビルスーツと戦えるただのオッサン……めちゃくちゃ強いじゃねーか。

 

とはいえ、奴ら相手ではその程度じゃ全くの無力と何も変わらない。初見のプレイヤーを驚愕と絶望に叩きこんだあのアンゲロイ・アルカ(めっちゃ硬い雑魚)エル・ミレニウム(クソ恐竜)を一体でも送り込まれたら今の俺は詰みだ。

 

「見つけたぜボルフちゃんよぉ! 借金3万G、キッチリ返してもらおうか?」

「3万G!? そ、そんなに借りてねえだろ!」

「利子だよ利子! ずいぶん滞納してくれたしな」

「ふ、ふざ……ふざけんな! そんなの聞いてねえぞ!?」

 

気づけば路地を抜け出して大通りらしき場所に出ていた。見渡せば見覚えのあるオレンジ色の格好をした人物がちらほら。ついでに治安が悪い。

 

「ギルガメスAT用の耐圧服……やっぱりZの世界か……まあ次元将だもんな。そりゃそうか」

 

チラリと聞こえた借金取りの台詞によると金の単位がギルダンではなくG。たぶんここはアストラギウス銀河の連中が転移してきた後のシンジュクゲットーだろう。日本人らしき顔が何人かいるし間違いなさそうだ。

場所が分かったことで、さてこれからどうしようかと思案しながら大通りを歩く。

 

「払えねえってんならちょっと痛い目見てもらおうか」

「お、お、俺にはすっげえ強い用心棒が居るんだぞ!? 俺に手を出したら……」

「うそこけ。そんなの雇う金があるなら借金返せるはずだよなァ!?」

「あらまあぐうの音も出ない……いや、でもアテが全然ないって訳じゃなくてだな……」

 

今が第2次Zの時間軸であるなら、おそらくドゥリタラーを含む2人の次元将が死んでから少なくとも1万2000年は経っていることになる。追っ手が来ないのも頷けるというものだ。このまま戦いに関わらずひっそり暮らすという選択肢も一応ある。地球の戸籍なんてある訳がないが、幸いそこら中に別次元人がうろついているのでその辺はかなり緩くなってるはずだ。

 

建設現場で汗を流す次元将というシュールな絵を思い浮かべる。まあ悪くはないがよくもない。どのみち戦う力が無ければ次々地球を襲う厄介ごとのどれかに巻き込まれてもう一度死ぬことになるだろう。破界篇くらいならともかく第3次辺りからは最低でも元の力を取り戻してなければ厳しい。なんせゲームバランスという枷があったとはいえ、同僚のヴァイシュラバ(ガイオウ)は再世篇で倒される。第3次に入ってから、地球はそれを成した連中が何度も窮地に陥るほどの修羅の惑星と化すのだから。

 

何よりドゥリタラーの意思に引っ張られているのか、御使いの奴らは絶対にぶっ飛ばさなければならないという強迫観念のようなものが心中に渦巻いている。これでは平和に暮らすなんてできやしない。

 

「どうやら相当痛い目に遭うのがお望みらしいな」

「ひぃ! だぁれかぁ~!」

「待ちやがれ!」

 

人機一体となることや五つの進化、相互理解、共存共栄が御使いどもに対抗する真化の鍵であることを、次元将という立場やスパロボ知識から知っているのは大きい。具体的にどうするのかは手探りでやっていくしかないが……ひとまずはヴィシュラカーラの代わりとなる、なんらかの乗機を早急に手に入れ、操縦法を覚えて手を尽くして強化して……と、なれば傭兵にでもなるべきか? 何とか手に入りそうなロボットは無い物か。

 

「な、なあアンタ! 雇われてみねえか?」

「ナイスタイミングだ」

 

先ほどから言い争っていた男が俺を盾にするように縋ってきたのに対し、ニッという笑顔で返すと、追ってきた借金取りにデコピンをかましてノックアウトする。

 

「はぇ~、すっげぇ……」

「すまんね。返済はもう少し待ってやってくれ」

「こりゃあ、聞こえちゃいねえよ……っと、助かったぜ」

「気にするな……で、稼ぐアテがあるんだろう? 借金がまた増える前にさっさとやってしまおう」

「お、聞こえてたのか! 話が早いねぇ! 俺はマッチメイカーのボルフってんだ。よろしくな!」

「ボルフか。俺は……」

「ん? どうした?」

 

ド直球にドゥリタラーと名乗りそうになって踏みとどまる。流石にそれは無い。

どこから御使いに漏れるかわかったもんじゃない。まあ、傲慢なあいつらなら気にも留めない可能性は十分あるが、それでも馬鹿正直に「生きてました~☆」なんて宣伝する必要はない。いつかはぶっ飛ばすが。

そもそもドゥリタラーの”自覚”があるだけで、この顔が本当にドゥリタラーのものなのかすら分からん。出番ない奴の顔グラなんて一切記憶にないし。そもそも顔グラ自体なかったかもしれん。

次元将として動けなんて言われて上手くやる自信も力も今のところは無いわけだし、適当な偽名でも使わせてもらおう。どうせ次元将としての名前って本名じゃないらしいし。

 

と、いろいろ理由を上げて見たが、一番の理由は”ドゥリタラーって言い辛くていつか噛みそう”だからである。

 

「いや、なんでもない。俺の名前はガヌマだ。よろしく頼むぞ、ボルフ」

「おうよ任せとけ! 早速試合をセッティングして来るぜ! ガヌマ、アンタは今から教える倉庫に行ってみな! 極上のATを用意してある」

 

稼ぐアテというのはどうやらバトリング……要はロボット(主にAT)同士のプロレス(レギュレーションによってはマジの殺し合い)の事らしい。まあそうだろうと思っていたのでAT目当てで受けたんだが。聞けば結構な額の動く試合があり、自身もそれなりの額を賭けている……つまりそれに勝てばマッチメイクの手数料などもろもろ合わせて借金を何とか返せる額が入ってくる算段だったようだが、不幸にも時空振動による事故で出場選手が行方不明になったらしい。

 

ボルフの指定した倉庫に行ってみると、そこには黒く塗られたATの代名詞、スコープドッグが降着姿勢で鎮座していた。

 

「いや、このタイプはストロングバックスだったか……?」

 

銃弾よりアームパンチの方がよく飛んでくるバトリングに合わせて改造されているようで、特徴的な頭部ターレットレンズを保護するガードが設置されている。よく見れば肩に威圧的な棘なんかも生えており、これが軍用だと言われれば首を傾げざるを得ない。

え? ザク? グフ? 知らんな。

 

「さて、こいつを試合までに”使える”ようにしないとな」

 

俺はさっそく準備に取り掛かった。

 

 

 

次元将ドゥリタラー改め、ガヌマがボルフと出会ってから数日。とうとう試合の日がやってくる。レギュレーションは”ブロウバトル”というもの。ヘビィマシンガン、バズーカなどの火器は持ち込み禁止、ただし格闘武器は使用可となる。選手たちは派手さを重視し、メリケンサックのついた改造アームパンチ、パイルバンカー、槍、大槌、鉄球、大型チェーンソーまでなんでもござれ。銃火器を使って殺し合うリアルバトルとはまた違った激しいぶつかり合いが繰り広げられる事は必至であり観客からの人気も高い。

 

そんなブロウバトルが行われるとあって観客席は大盛況。既に対戦する2人のどちらが勝利するのか、当日分の賭けが始まっていた。ただし観客はもっぱらガヌマの対戦相手の勝利に賭けており、ガヌマに賭けた客は不利な賭けほど燃える物好きか、そうでなければ何も知らない新参者だと嘲笑の目を向けられていた。

それは対戦相手が伝説の傭兵だとか、連戦連勝の猛者だとか、そういう理由からきているのではない。今のボルフがまともなATを用意できるとは誰も思っていないという理由からだった。

惑星メルキアにいたころならともかく、このシンジュクゲットーに転移してきたことで様々なツテを失った者は多い。ボルフもその一人だった。元々苦しかった状態から借金はさらに膨れ上がり、今まさにトドメを刺されそうな状況にある。この試合に負ければいよいよ首が回らなくなるだろう。

 

「ボルフももうダメかねぇ」

「ATも碌に手に入らず、最近じゃぁKMF(ナイトメア)まで参入してくる始末だしなぁ……」

「イレヴンの赤い悪魔だったっけ?」

「噂じゃ女で、しかもすげえ美人だとか」

「ははは、ねーよ。あの戦い方を一度でも見たら、それだけは絶対にないって分かるぜ?」

 

一部の席でそんな会話をしていた観客たちだが、会場に響き渡った歓声でその声は打ち消される。

選手入場の時間になったのだ。

 

リングの片側から軽快なローラーダッシュで現れたのは、右腕を大きめに改造した紫色のスコープドッグ。見るからにアームパンチの威力に特化したその見た目に、観客たちはその拳が相手ATの頭部をへこませるどころか、吹き飛ばしてしまう様を幻視し、早く現実で見せてくれとばかりに喝采を上げる。スコープドッグに乗ったAT乗りもその声に答えるように足のターンピックを地面に突き立て、その場で一回転しながら急停止。大型化した右腕を見せつけるように天高く突き上げる。

 

観客の興奮が最高潮に達したころ、対戦相手であるガヌマの入場曲が流れ始める。勇ましく重々しい曲に合わせるように、相手とは対照的に一歩ずつ地面を踏みしめてゆっくりと入場して来るその姿に……その機体の異様な見た目に観客たちは静まり返る。

 

「あ、あれ……AT、なのか?」

 

誰かが思わずそう漏らす。全体的なシルエットはATに違いない。だがその青みがかった黒と銀色のボディの装甲表面には虹色のラインが血管のように張り巡らされ、肩には虹色の結晶が棘のように数本並び、本来四角い箱のような形をしているハズのつま先は獣のソレのように三つに分かれ鋭く尖っている。何より特徴的なのは頭部に生えた、闘牛を思わせる二本の角、そして背中のマント、右手に携えた巨大なバトルアックス。これらの要素が合わさり、機体から”ATらしさ”とでもいうべきものが削ぎ落されている。

 

確かにバトリング選手というものは己を誇示するため、自機に装飾などを施すが、これはそんなレベルではない。化け物がATに擬態している最中であると言われた方がしっくりくるほどの変貌ぶりだ。

 

「次元獣……?」

 

次元獣。この様々な宇宙の混ざり合った世界を数年前から荒らしまわっている災害級の化け物たち。

誰の言葉か、どこかからぽつりと聞こえてきたその例えに、会場の誰もが同意した。そしてこれから始まるであろう二者の試合……否、襲い掛かる怪物に名もなきAT乗りが見せてくれるであろう決死の抵抗に、期待と恐怖の入り混じった不思議な緊張感を抱き呼吸も忘れて今か今かと試合開始のゴングを待つ。

 

(……ドン引きじゃねえか。やっぱATにこういう改造はナシ? 数秒後にブーイングとか飛んでこないだろうな……)

 

この場で唯一、当事者の片割れ(怪物の側)だけは緊張感ゼロだったが。




好評なら続きます。

今回の機体
機体名:ストロング・カーラ

失ったヴィシュラカーラの代わりを求めて、ストロングバックスをベースにジャンクパーツとリヴァイブ・セルで数日かけて強化した、次元将ドゥリタラーの新たな戦闘外装。ミッションディスクと操縦桿ではなく、リヴァイブ・セルを通じて送り込んだ思念によって操縦する。そのためガヌマは操縦席内で腕組みしながら微動だにせず鎮座している。
見た目通りATに次元獣ブルダモンの角(放電ホーン)が生えた程度の強さ。
ブラスタに襲われたらボコボコにされる。ストロングとは。
ぶっちゃけまだ降りた方が強いレベルだが真化を目指す以上は機体とシンクロする練習をしなければならないので頑張れ。
ちなみに今回歩いて登場したのはローラーダッシュに慣れていないからというダッッサイ理由がある。威圧にはなったので結果オーライ。

”今のところは御使いから隠れて力を蓄える”という一応の方針をわずか数分で忘れるという奇跡的な所業が無ければこんな見た目にはならなかった。

キャラ紹介
・ガヌマ(次元将ドゥリタラー)
憑依系オリ主。
知識と意識だけをもってドゥリタラーの遺体に乗り移ったスパロボプレイヤー。乗り移る前の自分が何者なのかについての記憶はない。
今回のAT魔改造からも分かる通りリヴァイブ・セルをある程度応用して使える。
今後「これもリヴァイブ・セルのちょっとした応用だ」とか言い出すかもしれない。
次元獣を作ると強さがそこで止まるという致命的弱点を彼も元のドゥリタラーも分かっているので自機の強化以外に使う予定は今のところない。

・ボルフ
登場作品:機甲猟兵メロウリンク
原作でも借金で困っていたところをエセ次元将ではなく、我らがメロウリンクが通りかかり、彼のバトリング、戦友の仇とのリアルバトル(実弾解禁の実戦形式。負け=死と思っていい)をマッチングすることになる。ちなみにメロウが返り討ちに合うと思って対戦相手に賭けていた。
wikiによると実はゴウトの知り合いらしいし、メルキアの連中が転移して来るならこいつも来ているかもしれないという思いで登場させてみた人。
ガヌマがノした借金取りはゼニトリーのおっちゃんとは関係ないモブなのでご安心を。
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