起きたら次元将になってたんだが   作:次元獣だもん☆

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第10話 猫と箱

俺の次元獣使役カミングアウトから少し経ち、無事にZEXISが結成された。結成通知の場に何故かゼロやスメラギさんたちと一緒に呼び出され、ボートマンとして現れたエルガンに意味ありげな目でガン見された挙句ため息をつかれたが、それ以外は特に変わったところもなく部隊名も原作通り。

 

その直後にカミナが紅蓮(カレンが乗ってる方)やゼロに噛みつき若干険悪になったところで例の猫によるゼロマスク強奪事件が勃発。現在俺はグレン団の面々(甲児やワッ太も当然のように巻き込まれている)と共に首から上がゼロになった猫の足取りを追っている。しかし俺は捜索という仕事においてほとんど役に立てない。そんなわけで原作通りタケルも巻き込み、超能力で居場所を探ってもらっている。

 

今頃カレン率いる黒の騎士団組にばったり出くわしたルルーシュが奇声を上げて正体をごまかしているところだろうか。ぜひともこの目で見たかったが一応グレン団団員としてZEXISに加入している以上あっちにつくわけにはいかず断念。こちらはタケルが猫を見つけるまでやることがない。一応目視であちこち見て回ってはいるが望み薄だろう。

 

「ちょっといいか?」

 

手近なコンテナとコンテナの間をのぞき込んでいると背後から声を掛けられる。この妙に良い声は……振り返らずとも誰なのかは分かった。

 

「クロウか。真面目に探さないと報酬が別の奴に行っちまうぞ?」

「そいつは困るが、どうしてもあんたに聞いときたいことがあってな」

 

割と真剣なトーンでそう言われたので立ち上がって振り返る。

 

「……ゲットーでタダ飯が食えるスポットが聞きたいって雰囲気じゃないな。どうした?」

「え、その話も割とマジで気になるんだが……ああいや、聞きたいのはこの間少し話したMDって次元獣についてだ」

「混戦の中だってのにわき目も振らず突っ込んできたって話だったな」

「ああ。それで、実はあれを倒すって約束しちまっててな。次元獣について情報収集がしたいって訳だ」

 

エスターの故郷の件だな。俺がそんなこと知ってるのはおかしいので適当にへえ、そうなんだって感じを出しつつ、クロウが差し出してきた端末に映る白いライノダモン級次元獣の映像をのぞき込む。

 

「ああ、このタイプか。とりあえずこいつが角を変形させたら気をつけろ。先端から”当たると凍る炎”を発射して来る」

「なにそれこわい」

 

俺も初見の時は「……?」ってなった記憶がある。次元獣は攻撃方法が独特すぎるんだよな。

ところでこのタイミングではもう普通のライノダモン級出て来てなかったっけ? 暗黒大陸で出てこなかったからてっきりクロウの方に行ってるかと思ったんだが、このクロウの反応は初めて聞いたって感じだ。アイム何やってんだろ。それとも単に灼熱ホーンしか使ってこなかったとか?

 

「それと、どのタイプの次元獣にも言えるが金ピカには気をつけろ。あれはMSで例えたらガンダムだ」

「ああ、この間アフリカで見た奴は厄介だったな」

 

こっちは俺にとっても結構大きい問題だ。破界篇で金ピカの真次元獣が出て来るという明らかに原作とは違う現象が起こっている。それを言ったら俺がここに居るのがそもそも原作とは違うんだが。

真次元獣出現の理由が、ガイオウが原作における再世篇ラストと同等の力を既に取り戻している、というパターンだった場合は結構ヤバイ。月面の決戦で負けるどころかリモネシア崩壊事件の時点で誰かがやられる可能性すらある。第3次の事を考えて第2次の難易度が下がりかねないネタバレはできるだけ避けているが、そのせいで全滅なんて事になったら本末転倒だ。という訳でちょっとだけ先の情報を出してみることにする。

 

「あとは……意思を強く持て。そうと決めたら何を言われてもブレない位にな」

「ん? 急に精神論が出てきたな」

「ああ、精神に干渉して来る奴もいるんだよ」

 

システム的には気力を下げてくる奴。

 

「……そりゃ勘弁してほしいな。まあ、覚えとくぜ。ありがとうよ」

 

次元獣に絡めてもっともらしく言ったが、実際には揺れる天秤のリアクターとして早めに覚醒してほしいという目論見での発言である。SPIGOTの開発がなきゃ無意味かもしれんが、最終決戦での最大火力くらいは上がってくれるかもしれない。

 

「こっちだ!」

 

と、ここでタケルが猫の居場所を突き止めたらしい。超能力すげえな。報酬をちらつかされているクロウは話を中断し、そちらの方へと向かって行ったので俺もそれに続くことにする。この後はブリタニア軍の襲撃があるんだったか。ルルーシュが地面崩落させようとするが、トラブルが発生してカミナがフォローする奴。

 

「やっほおおおおおおおおおおおおお!」

 

現場に到着すると奇声を上げながら一人で突入していくルルーシュの後ろ姿を拝むことができた。こんなん草生えるわ。

 

「そう笑ってやるなガヌマ。学生なんてやってるといろいろあるんだよ」

 

必死で笑いをこらえていると赤木に注意された。そういえば防衛大出てるんだったっけ。ストレスやプレッシャーは半端ではなかっただろうし、気持ちは分かるってやつだろうか。さっきのルルーシュの場合はそういう訳じゃないんだが、まさかあれがテンパったゼロ本人だとは思うまい。

 

ではみんなで突入しようか、というところでゼロの格好をしたC.C.(シーツー)が現れ全力ですっとぼけたことで猫追跡イベントは強制終了し、原作通りブリタニア軍接近の報せが届いたことでみんな出撃準備のため各々の持ち場に帰っていった。後ろでは無事に仮面を回収したルルーシュがC.C.と会話していることだろう。ここで落とし物したフリして引き返したらルルーシュの”ほわぁ!?”を聞けるかもしれんが多分ギアス掛けられるのでやめておく。御使いにも通用するチート能力に抗える気はしない。

”今のは忘れろ”程度のことで一回しかない命令権使ってくれるならそれもアリだが”服従しろ”とか、流石にないと思うが”死ね”だったら詰みだ。

 

 

 

「エルガンからの贈り物ぉ?」

 

ストロング・カーラの操縦席で待機中のガヌマは思わず、と言った様子で素っ頓狂な声を上げつつ、先ほど渡された謎の箱をいろんな角度から見てみる。アタッシュケース型の機械らしきそれの側面には小さい穴。そこがスピーカーになっておりなんらかの音声をここから発するのだと分かるが、それが録音された物なのか通信によるものなのかは実際に聞いてみないことには見当もつかない。ただ言えることはそのどちらであったにしても手のひらサイズの機械で事足りるものであり、対するこの装置は大仰すぎるという事だ。

 

最初こそガヌマの方から接触しようとしていたとはいえ結局関わりはほとんどないはずのエルガンがわざわざ名指しでこんなものを送ってきたというのはガヌマを困惑の海に叩き込むには十分な事態であった。

思い当たる節があるとすればZEXIS結成の瞬間に何故か呼び出された件だろうか。結局あの場ではほとんど何も言ってこなかったのだが、その時の意味ありげな視線とため息の行きつく先がこの謎の贈り物という事なのだろう。

 

「爆弾ってことは無いよな……?」

 

仮にあの視線が殺意によるものだったとしても流石にそういう直接的なことをする男ではないはずだ……ガイオウに躊躇なく発砲していた気がしたが、あれは緊急事態ゆえだろう。

 

『誰が爆弾ですか、失敬な』

「キェェェアァァァ!! シャァベッタァァァ!!!」

 

薄々そんな予感はしていたので反応が最大限わざとらしくなったが、一応本気で驚いたガヌマは突如として女の声で喋り出したそれを両手で持ってのぞき込むように向かい合う。

 

『頭ハッピーセットな反応をありがとうございます。早速本題に入ってよろしいでしょうか』

「思いっきり地面に叩きつけていいか?」

『失言でした。謝罪しますのでお許しを……まずこうして何の脈絡もなく登場した私の正体ですが』

「自分で脈絡とか言っちゃったよ」

『端的に言えばAIです。愛嬌の無いハロのようなものと思っていただければ。自分で飛んだり跳ねたりできないのでついて行くには運んでいただく必要がありますが』

 

ガヌマの突っ込みは軽くスルーして自身の解説を続ける謎のアタッシュケース。発言に合わせて表面に走ったラインが緑色に発光しており、何となく第3次から登場するユニコーンガンダムを連想したガヌマは軽く顔をしかめる。ラプラスの箱関連の事件が今後来ると分かっている身としては今から気が重い。この先、もっと気が重い案件も目白押しなのだが。

 

「大体わかったが、なんでエルガンはお前を俺に?」

『それは簡単です。私が希望しましたから』

「……じゃあその理由を聞いていいか?」

 

嫌な予感を憶えつつガヌマが問えば、ケースは何でもないことのように軽く答える。

 

『あなた、()()()()()()()()()()()じゃないですか』

「……マジかよ」

 

外がブリタニア軍と機械獣軍団の鉢合わせで混沌とし始め、艦内に出撃要請の通信が鳴り響く中、遠い目になったガヌマは数秒間天を仰いだ。




出来れば戦うところまで行きたかったけど前回から時間開いてるのでとりあえず投稿しました

キャラ紹介
・謎の箱
本人(?)の言う通り原作には登場しない謎のアタッシュケース。緑の光を発しながら喋る。ガヌマ搭乗機の強化パーツスロットを許可なく一枠占拠して来る。ハロ並の恩恵があるのかどうかは定かではない。
クール系敬語毒舌キャラで行こうと目論んでいたが、わずか数秒で暴力に屈した。やはり暴力は全てを解決する。

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