起きたら次元将になってたんだが   作:次元獣だもん☆

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第6話 つちのなかにいる

「あ、ガヌマ。調子はどう?」

「おうシモン、この通りもうバッチリだ!」

 

ニッと笑ってガッツポーズを決めて見せると問いかけの主、シモンは「そっか」と小さく笑い返したあと、手近な穴の奥へと歩いて行った。村の拡張工事に戻ったらしい。そろそろラガンを掘り当てる頃だろうか。

 

あの悲しいミスリル襲撃および誤解追加事件から数日がたった。あの日俺は巻き込まれた次元震によってここ、通称”暗黒大陸”の地下に飛ばされていた。

所謂”いし(と土)のなかにいる”状態になってしまったのだ。偶然掘削作業中だったシモンが掘り当ててくれなかったら、某サンドボックスゲームのように頭上にパンチしては下に落とした土を踏んで1m上昇、という作業をやる羽目になっていただろう。

ストロング・カーラは無事だったが、フライダモンは厄介なことになった。近くに埋まっていることが感覚で分かるものの、正確な位置は分からず。とりあえずクルツと思しきM9に撃たれた傷を癒しておくように指示はしておいた。完全に回復すれば頑張って地上に這い出すこともできるはずだ。

 

多分フライダモンが治るよりも獣人の襲撃を受けてラガンが天井ぶち抜く方が早いだろうけど、どのみち修復は必要なのでやっておく。その間のヒマ潰しも兼ねてめでたくシモンの故郷、ジーハ村に転がり込むことになった俺は今日も元気に村の拡張工事を手伝っている。

次元将のパワーをいかんなく発揮して壁をガンガン掘り進める……なんてことをしたらほぼ間違いなく大崩落が起きる(というか実際小規模な崩落を起こしてまた土に埋まった)ので、もっぱら荷物とか掘られた土とかの運搬が俺の仕事だ。まだたった数日の付き合いだが、地上ならクレーンを使うような重量物をホイホイ持ち運んでしまえるパワーは結構重宝されており、村の皆の警戒心も少しは薄れてきているのを感じる。閉鎖的コミュニティ極まってるだろうに、いい奴らだ。

 

そしてさらに数日後。結構エンジョイしていた俺だったが、とうとう別れの日がやってきた。運搬の仕事を終えて村の中をうろついていると、村長と言い争っている青髪の青年が目に入る。カミナだ。確かこの直後に獣人が一体、乗機のガンメンと一緒に降ってきて大騒ぎになるんだったな。

俺はすぐにストロング・カーラを動かせるように思念を送って起動させておく。ちなみにシモンに頼んでこいつの存在は内緒にしてもらっている。万が一”村の掘り当てた資源だから解体だ!”なんて言われたら困るので。村の中限定とはいえリヴァイブ・セルなんぞ流通させる気は流石にない。

 

「……おぉっと。やっぱり来たか」

 

ストロング・カーラの起動が完了したと同時に周囲を地響きが襲い、地震だなんだと村民が騒ぎ始めたころ、天井から巨大な顔が降り立った。遠目ながら、実際に見るとすごい絵面だ。間近で見てしまった村長が恐慌状態になって逃げ出すのも分かる。

 

お、カミナが啖呵きってる。原作シーンを実際にこの目で……みたいな感動は意外とないな。遠くて視点も変わらないと、なんというかこう、迫力というか……カメラワークって偉大なんだな。

そんなカミナに攻撃しようとするガンメンを、乱入してきたヨーコのライフル弾が怯ませる光景を尻目に、物陰まで移動させたストロング・カーラに乗り込んでじっと機会を待つ。俺単体なら後に天井に開く予定の穴からジャンプでついて行けるが、こいつを持って出るとなると乗っていくしかない。

 

やがてシモンたちの乗り込んだラガンが天井をぶち抜こうとしたタイミングを見計らって俺も機体を爆走させる。

手に持ったジャンク品のワイヤーを西部劇の投げ縄のごとく振り回して投擲、哀れなガンメンに括り付ける。後は奴が地上までぶっ飛ばされる勢いを利用して俺も一緒に脱出できるという算段である。

流石の螺旋力というべきか。AT一機分の重量が増加したところで問題なく地上に向けて天井を突き進んでいくラガンの雄姿にはいっそ惚れ惚れする。しかし……

 

「うおおおおおおおお! 思ってたより揺れとか衝撃とかやばいぞコレ! やっぱ無茶だったか!?」

 

素直にフライダモンの回復を待ってから出て行く道を選んだ方がよかっただろうか。でもこのタイミング逃すともう出て行きづらいんだよなぁ、想像以上に馴染み過ぎて。

あ、腕の関節から鳴ってはいけない音が。頑張れ、改造マッスルシリンダー!

 

 

「おうおうおうおうおうおう! なんか妙なのがくっついてきてるじゃねえか! あのデカ面の仲間か?」

「あっ! ガヌマのメカ! いつの間に」

「ガヌマ? あのデカい新入りか!」

「う、うん。最初に見つけたとき、あの中にいたんだよ」

「ねえ、なんだかすごいボロボロだけど、大丈夫なの?」

「俺が見たときはあんなにひどくなかったのに……」

 

穴倉の天井を乗機、ラガンご自慢のドリルでぶち抜き、空の青色をひとしきり堪能したカミナとシモン、それと一緒に押し込まれたヨーコはすぐ近くで謎の金属の塊……スクラップ寸前となったストロング・カーラを発見した。その中でそろそろ恒例となりつつある遠い目をしたガヌマはひとまず上に出てこられたことに安堵し、そして戦ったわけでもないのにこの有様な乗機のさらなる強化を心に誓った。流石にD・フォルト込みでこれではこの先話にならない。

 

ガヌマが歪んで開かなくなったハッチを蹴破って外に這い出すと、ラガンの内部にギチギチに詰まった三人は驚きの声を上げる。

 

「ガヌマ、入ってたの!? 大丈夫? 生きてる!?」

「落ち着けシモン! 自分で出てきてんだから無事だ! へっ、なかなか根性あるじゃねえか」

「え~? ……もしかしてこの村、あんたやあいつみたいなのばっかりなの?」

 

心配のシモン、平常運転のカミナ、そしてドン引きのヨーコの三人組に片手を上げて応えた後、近づいて来る多数の気配を察知し、構えるガヌマ。

そのただならぬ様子に周囲を見渡せば、シモンたちの目にもこちらへ向かってくる多数のガンメン達が映った。村に落ちてきた牛頭の物とは違う馬面やグラサンの似合いそうな凶悪顔など、バリエーションに富んでいる。

 

「たくさん来た!」

「おもしれえ! 天井開けろシモン! やいやいやいやい! 聞きやがれデカ面ども――」

「パ ー ツ が 向 こ う か ら 来 た」

「……来る方向間違えたかしら」

 

うろたえるシモンはともかく、対照的に闘志を燃やし、ガンメン達に何やら口上を述べ始めるカミナ、そして唐突に目を怪しい色に輝かせ、生身でガンメン達の方へ走っていくガヌマ。ジーハ村に来てから連続で襲い来る困惑の嵐にヨーコはため息をついた。

 

「って、ガヌマ! 生身であんなのに近寄ったら!」

 

あまりにも迷いなく走り始めたためシモンも一瞬スルーしそうになったが、普通に考えれば遠回りな自殺としか思えないガヌマの行動に顔を青くし、ラガンで援護するべく慌てて操縦桿に力を込める……が、次の瞬間、違う理由で顔を青くすることになった。

 

「さらばだ! ガドライト・メオンサム!」

「うそおおおおおおお!?」

 

ここには居ない誰かの物と思しき名前を叫びながら――流石にあの獣人の名前ということは無いだろう――ガンメンの顔面にドロップキックをかまし、しかもそのまま機体をバラバラに粉砕してしまう謎の光景を目撃したことで、元々限界ギリギリだったシモンのパニックメーターは完全に振りきれた。振り切れすぎて、逃げ出すなどの行動には至らなかったのは幸か不幸か。

 

「やるなあいつ! こうしちゃいられねえ!」

「ダメだアニキ! あれは絶対ガヌマがおかしいだけだよ!」

「そうよ、普通はキックでガンメン倒すなんて無理だから! 仲間がどれだけあいつらにやられたと思ってんのよ!」

 

自分も生身で飛び出そうとしたカミナを必死の形相になりながらヨーコと二人がかりで抑え込む。そのおかげと言っていいのか、少しだけ冷静さを取り戻せたシモンはカミナが暴れるのをやめたところでラガンの操縦に戻り、周囲の状況を確認する。

村で必死に勇気を振り絞ってようやく一機倒した恐ろしい存在がそこかしこにうじゃうじゃとひしめいている。正直言って恐ろしいし、今すぐ逃げ出したい。だが目の前で知っている者が戦っているこの状況で自分だけ逃げだして、もしもそのせいであの男が死んでしまったらきっと、一生後悔するだろう。

 

「パーツ置いてけ。螺旋力だ! なあお前ガンメンだろ! グレンのついでだ。多めに置いてけ!」

「ヒイィ! なんなんだよこの人間は!?」

 

……あの様子では絶対に死なないだろうが、それはそれとして、である。

 

「アニキ。俺、戦うよ。俺を信じてくれるアニキを信じる!」

「それでこそグレン団だ! いけシモン!」

「う、うん! いくぞおおおおおおおおおおお!」

 

今一度勇気を振り絞ったシモンを乗せて、ラガンは巨大な顔と青髪ガチムチの鬼ごっこ会場という地獄めがけて突進していった。




ここから徐々に乗機の魔改造具合が加速していく予定です
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