起きたら次元将になってたんだが   作:次元獣だもん☆

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第8話 顔が2つずつたあ奇っ怪な!

「今日から本当にストロングだ、ストロング・カーラ! せええええい!」

 

気合のままに振り抜かれたバトルアックスが手近なガンメンのボディを真っ二つにする。咄嗟に操縦席内で身を屈めて一緒に真っ二つになるのを回避した獣人の反応速度は見事というべきか。慌てて機体から飛び降りて逃げていく様を横目に、次のガンメンにバトルアックスを振り下ろす。

 

正直言って、今の俺はかなりテンションが上がっている。カミナ曰く気合で動くガンメンのパーツと融合した影響か、意思の伝達が驚くほどやりやすくなったうえに単純なパワーまで上がっていると来た。わざわざ攻撃を喰らってやるつもりはないので試せていないが、D・フォルトの防御力も相当上がっているのではないだろうか。

 

「サンダーブレエエエエエク!」

 

全然違うのだが思わず例の技名を叫びながら敵を指さしてしまう。頭部の放電ホーンも電撃を飛ばす事によるまともな威力の中距離攻撃ができるようになった。雷撃を受けたガンメンは黒こげになって崩れ落ち、中から獣人が飛び出し走り去っていく。こいつら異能生存体か何か?

 

これでもまだ降りた方が強いという次元将ボディのデタラメっぷりに呆れつつ、この間の真次元獣戦の体たらくが嘘のようなパワーアップを果たしたストロング・カーラで暴れまわりながら、カミナのグレン起動イベントを待つ。

今のところは気合で何とか動かそうとしてうんともすんとも言わない、という状態。ラガンとヨーコのライフルのおかげで何とかグレンに敵ガンメンの攻撃が届く事態にはなっていないが、そろそろ動いてくれないと厳しくなってくる。

 

「今は俺が頑張るしかないな。撃て! フライダモン!」

 

俺の指示と同時に上空を旋回していたフライダモンがカニの口っぽい部分からプラズマキャノンを発射して何体かのガンメンを吹っ飛ばす。飛べる敵とスナイパーさえいなければ普通に強いなコイツ。できるだけ多くを巻き込めるように撃たせたのでもう少し時間を稼げそうだ。

 

……と、思っていたのだが。

フライダモンが”何かに張りつかれた”感覚を受信し、すぐに急降下して振り落とすように指示を出す。振り落としはうまくいったようで、地面に何かが激突する。よく見てみればそれが何なのかはすぐにわかった。

 

「インベーダーかよ。また厄介なのが……」

 

思わずぼやくが、確かこいつらが出て来るのは原作通りだったか。それで螺旋力=進化のエネルギーを持たないように設計された獣人はガン無視して自軍にだけ突っ込んでくるんだったな。実質獣人の増援みたいなもんだ。ガッデム。

……じゃあ何で人の融合してない半次元獣のフライダモンに張りついて来るんだろうか。納得いかないが襲ってくるなら迎撃するしかない。

 

「このようなバケモノが現れるとは、チミルフ様に報告せねば。だがその前に、貴様だけは仕留める!」

 

チラリと横目で様子をうかがうと、獣人軍団の後方で指揮を執っていたヴィラルが専用ガンメンのエンキでグレンの方に突っ込んでいくのが見えた。

 

「アニキ!」

「馬鹿め、わざわざ死にに来たか!」

「うわああ!?」

 

ラガンが応戦しようとするが、エンキの兜から発射されたビームを受けて弾き飛ばされてしまった。

ストロング・カーラで援護に入ろうにもガンメンやインベーダーが邪魔で間に割って入れない。飛べるインベーダーの乱入のせいでフライダモンが一方的に攻撃できていた状態が崩れたのは痛い。いっそ降りて直接カミナを守りに行った方がいいだろうか。

 

「俺を誰だと思ってやがるキイイイイイイイック!」

 

あ、動けるようになった。

 

「よくも可愛い弟分をパアアアアアンチ!」

「新入りに負けてられるかアタアアアアアック!」

 

謎の新技まで入り混じった猛攻撃でヴィラルのエンキを打ちのめすグレン。これにはヴィラルも驚いたようでいったん距離を取る。

 

「人間がガンメンを動かしただと!」

「見たか、獣人野郎ども!」

 

これならこっちはインベーダーに集中していても大丈夫そうだ。

 

 

 

「喰らいやがれ、ケダモノ大将!」

 

カミナの気合に応えるようにして、グレンはその腕を振り上げて眼前のエンキの元へと疾走する。

しかしいったん落ち着きを取り戻したヴィラルは本来そんな直線的な攻撃をさばききれないような半端な戦士ではない。あっさりとグレンの攻撃を凌ぎ、エンキの手に持った二本の刀を振り下ろす。流石に真っ二つになるという事は無かったが、グレンは傷つき、大きく後ろに吹き飛ばされてしまった。

 

「ハハハ! 生身はともかく、メカの扱いはまだまだだな!」

「そんな、アニキがあんなにあっさり……」

 

勝てるわけがない、と頭によぎる。今まではカミナからの信頼がシモンに勇気を与えていたが、カミナが傷つき倒れた動揺はその勇気まで揺さぶってくる。

思わずラガンに逃走させるよう操縦しかけたが、寸でのところでその腕を抑え込む。

 

「いや、ダメだ。俺だって、グレン団なんだ!」

 

逃げるどころか一歩前に出たラガンの姿に、ヴィラルも少し意外そうにほうと息を漏らす。

 

「やれんのか、シモン?」

「怖いよ、怖くてたまらないよ! でもアニキを見殺しにする方がもっと嫌だ!」

「よく言った、兄弟! こうなったら最後の手段だ! アレやるぞ!」

 

弟分の姿を見て嬉しそうに、そして自信たっぷりに告げるカミナの言葉が聞こえた誰もが”アレ”なるものが何なのか、続く言葉を待つ。

 

「アレって?」

 

告げられた本人であるシモンが代表するかのように問えば、カミナは一切の迷いもなく叫んだ。

 

「バカ野郎、アレって言ったら決まってんだろ、合体だ!」

「合体!?」

「合体!?」

「「合体!?」」

「来たか合体イベント!」

 

シモンも、ヴィラルも、後方で援護していたヨーコやダヤッカ達も唐突に飛び出したその単語をオウム返しのように反芻するがやはり意味が分からない。ちなみに言うまでもないが最後のはガヌマである。

ただグレン制作を主導したリーロンだけは冷静に、

 

「無理よ、そんな機能ないもの」

 

とツッコんでくるが、そんな”道理”を気にするグレン団鬼リーダーではない。

 

「やって見なくちゃわかんねえだろ! 来いシモン!」

「わ、わかった!」

 

無茶苦茶としか言いようがない。しかしいい加減慣れてきたのか、シモンは素直にラガンをグレンの元へ走らせる。一体どうするつもりかと誰もが注目する中、寄ってきたラガンをがっしりと掴んだグレンは、そのまま自身の頭頂部に突き刺すようにして固定する。

 

「見たか! これでこっちも顔が二つだ!」

「なにやってんのあいつ……」

 

どこか期待してその様子を見ていた面々の表情は困惑、もしくは呆れに塗り替えられる。

 

「馬鹿め、顔の数がどうした。トドメだ! 死ね!」

「アニキ!」

 

エンキの刀が迫る中、シモンの声に答えるようにラガン内部の螺旋状のディスプレイが緑色の光に満たされていく。それに合わせるようにラガン自体も緑色に発光し始め、ただ不安定に突き刺さっていただけのグレンとの接合部がまるで溶け合うように強固になっていく。

次の瞬間には、まるで初めからそこに頭として生えていたかのように一体化し、ラガンから発生した緑の光を纏ったグレンの右腕がカウンター気味にエンキの頭部へと叩き込まれた。

 

「ぐっ!?」

「ご自慢の兜はいただくぜ、礼代わりに教えてやる!」

 

頭部に衝撃を受けたことで落ちてきたエンキの兜を掴んだグレンとラガンの中、二人の魂の叫びが木霊する。

 

「合体ってのは、気合と気合のぶつかり合いなんだよ! シモン!」

「アニキ!」

 

「男の魂燃え上がる! あ、度胸合体! グレンラガン!」

 

「グレン……」

「ラガン」

「まんまね」

「いいねぇ、グレンラガン! 流石だリーダー!」

 

後方の仲間たちの声に交じって流石にやや興奮気味のガヌマ(オタク)のストロング・カーラがインベーダーをバトルアックスで斬り飛ばす。

 

「何言ってやがる、新入り! お前もやるんだよ!」

「は?」

「空に浮いてるアレは飾りじゃねえだろ! かましてやれ!」

「マ?」

「マジだ!」

 

ここで自分に振られると思っていなかったガヌマは一瞬動きを止めるが、インベーダーが寄ってきているので慌てて困惑を振り払い、フライダモンを自分の元に急降下させる。

 

「ストロング・カーラがデカくなったんでサイズ合うか分からんが……やあってやるぜ!」

 

元々ストロング・カーラを輸送するために作っているので納めることは可能のはずだ。戦闘中にそれは意味があるのかという考えは蹴っ飛ばし、カミナに言われるままフライダモンの頭上、接合部分にストロング・カーラを飛び乗らせる。

 

「またしても乗っただけ……いや、グレンラガンとやらはそこから統合された。まさか!?」

 

ヴィラルが最大限警戒する中、ストロング・カーラを乗せたフライダモンはゆっくりと浮上しながら()()()()()()。結晶めいた虹色の装甲は金で縁取られた黒色に変わり、その形も大型化したストロング・カーラが収まるように変形していく。

 

「おい、この形……」

 

空中に浮いているため他の者は下から見るしかないが、主たるガヌマはその形状が脳内で立体的に理解でき、それが記憶の中のとある機体と似通っていることに気づく。

 

「コレ、ショボいゲールティランだ」

 

またの名をヴィシュラカーラ。ドゥリタラーが失った次元将の乗機を無意識に模しているようで、終いには機体同士の接合部に玉座のようなものがせり出してきた。ガヌマはごく自然にそこにストロング・カーラを座らせる。

次の瞬間、ストロング・カーラがラガン同様緑色に光り出し、玉座を通してそれを受け取ったフライダモンが次元獣特有の鳴き声をとどろかせる。

脳内のドゥリタラーまで歓喜に震えているのを感じながら、それにつられるように高揚した心のまま、ガヌマも叫び声を上げる。

 

「新入りだからって畏まらねえ! とどろかせるぜ男の浪漫! 次元合体! フライング・カーラ!」

 

言い終わると同時にストロング・カーラの角部分から雷が迸る。その勢いは内部から湧き上がる緑色の光を吸い上げるようにして増大していき、収まる頃には周囲のインベーダーとガンメンを黒焦げに焼き尽くしてしまった。それでもかなりの数が残っているが、フライング・カーラの周囲には誰もいない空間が台風の目のごとく形成される。

 

ガヌマとカミナは操縦席内で互いの顔も見えていないが確かにニヤリと笑い合い、シモンも巻き込んで大地のグレンラガン、空中のフライング・カーラで縦に並び立ち、ヴィラルに向かって大見得を切る。

 

「俺を!」

「俺たちを!」

「お、俺たちを!」

「「「誰だと思ってやがる!!!」」」

 

グレンラガンの気迫が幻視させる炎、フライング・カーラの物理的に発する雷に気圧されたようにヴィラルのエンキは一歩後ろに下がる。

 

「この声、蒼い変態! ……変態どころではない。グレン団とやら、奴らは災害だ!」

 

ヴィラルは強敵を前に武者震いのようなものを覚えたが、陽の傾きやエンキ含む部隊のガンメンの破損状況を見て歯ぎしりしつつ撤退を選択する。

 

「勝負は預けるぞ人間ども! せいぜいそのバケモノに殺されないよう足掻くんだな!」

 

どういう訳か獣人を徹底的に無視して来る謎の怪物(インベーダー)たちを横目にヴィラルは踵を返してその場から離脱した。

 

「出たな公務王……」

 

というガヌマのつぶやきは幸いにも聞こえなかった。

 

 

 

それから少しあと。現れたインベーダーの殲滅を終了したグレン団の面々を遠くから眺めるその存在はその中の一体、フライング・カーラを見て口元に笑みを浮かべる。

 

「これは面白い物を見られました。楽しみですね。陽光は花を焼き尽くし、カエルに睨まれた蛇は仲間を癒す。そして聖者は神に裁かれる」

 

発言の意味は彼自身分かっているのかいないのか。それだけ呟くと男はその場から姿を消した。




ハーマル君遊んでないでレポート早よ(無慈悲)

今回の機体
フライング・カーラ
ストロング・カーラがガンメンの部品で強化されてよりガヌマの思念を伝えやすくなったことでドゥリタラーの持つヴィシュラカーラの記憶がインプットされて変質した、例えるなら下級ゲールティラン。アグリッサのプラズマキャノンは健在。ガヌマは気づいてないが本人を核に不完全なヴァイオレイションを引き起こしており、扱いとしては半次元獣からエスターのような人造次元獣くらいまで引き上げられている。ただし時間制限があり天秤と水瓶が頑張るまでもなく勝手に戻るし本人の力でヴァイオレイションを維持しているためそもそも自由に戻れる。
ちなみに強化ストロング・カーラも同様の限定ヴァイオレイションが起こっており、今回から急に強くなったのはこのため。気づけガヌマ。

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