A Wish ~星に願いを~   作:あらほしねこ

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夢三夜『消セナイ罪』

「でさぁ、もうすぐゴールデンウィークじゃん」

「そうだねぇ」

「アカネ、予定とかあんのー?」

「ん~・・・いまのところ、特にないかなぁ・・・」

 学校の帰り道、いつものようになんてことない話をしながら帰る

 連休の予定、かぁ

 でも、本当に予定なんかない

 いつもみたいに

 ちょっと夜更かしして

 たくさん寝坊して

 それをくりかえして

 おしまい

「あのさ、今度の連休でさ、あたしんち、旅行に行くんだ」

「旅行かぁ~、いいなぁ~・・・」

「だっしょ、沖縄いきたいってお願いして、OKもらったからさ」

「そうなんだ、よかったねぇ」

「うん、だからさ。アカネも一緒に行こうよ、あたしからお願いしとくからさ」

「え?」

 いやいやいや

 ちょっとそれ、マズくない?

「えぇ~、いいよ~、なんか悪いしさぁ」

「だーいじょうぶだって、あたしは全然気にしないし」

 いや

 大丈夫じゃないのは

 クマっちのお父さんとお母さん

「いこうよ、アカネー。いっしょにさぁ」

 どうしよう

 でも

 楽しそうだし

「それにさぁ、海とかそうだけど、夜になったら星が超キレイで、天の川もみえるんだって!」

 星

 クマっちの言葉で

 あの時、夢で見た星の海をおもいだした

 そうなんだ

 星、きれいなんだ

 そう思うと、迷っていた気持ちが

 すぅっと軽くなった

 見てみたいな

 それじゃ、バイトしなきゃかな

 でも、今から間に合うかな

 そんなこと考えていたら

 歩道の真ん中で、誰かとすれ違った

 半分白で半分黒の

 変わったカッターシャツを着た人

 その人は、わたしとすれ違った時

 一瞬

 わたしを見て、哂ったような気がした

「どうしたの、アカネ?」

「え?ううん、なんでもない」

 クマっちが、わたしの顔をのぞきこんでくる

「バイトとか、しなきゃかなぁ、って考えてた」

「え、じゃあ、OKってこと!?」

「う、うん、やっぱ、旅行とか、いってみたいし」

「やった!ありがと!アカネ」

 こっちこそ

 さそってくれて

 ありがとね、クマっち。

 

 

 クマっちと別れて、家にむかって歩いてて

 ふと気がついたとき

 向こうに見覚えのある人が立っていた

 白と黒のカッターシャツを着た男の人

 さっきすれちがった

 わたしをみて

 哂ったひと

「やあ、初めまして、新条アカネ君」

 なんで

 なんであなたが

 わたしの名前をしってるの

「そんなに怖がらなくてもいいよ、君にね、話があってきたんだ」

 ヤダ

 なんなの、この人

 イヤな予感がして

 全身からイヤな汗がでる

 なんなの

 なんでわたしなの

「なんなの・・・だれなの・・・なんでわたしの名前をしってるの・・・!?」

 一所懸命落ち着こうとしたけれど

 イヤだ

 だれか

「私の名前はトレギア、君の願いをほおっておけなくてね」

 なに

 なんなの

 わたしの願いって

 いったい、なに言ってるの

 今すぐここから逃げ出したいけど

 膝が震えて、力が入らない

 口の中で歯がかちかち鳴ってる

 唇がふるえてうまく声が出ない

「心配しなくても、何もしないよ」

 トレギア

 そう名乗った人は、楽しそうに哂った

「君には、ね」

 トレギアがそういった瞬間

 すごい風がふきつけてきた

 思わず目を閉じて

 急に静かになって、思い切って目を開けたら

 そこは、なんにもない荒野になっていた

「ウソ・・・」

 そして

 目の前にいたのは

 蒼い仮面をつけた

 黒いウルトラマン

「これで安心したかい?」

 なんで

 そんなわけないじゃん

 なんなのこれ

 また夢を見ているの?

 でも

 今日、学校に行ったことも

 クマっちと、途中までいっしょに帰ったことも

 確かにあったこと

 夢なんかじゃない

 たすけて

 クマっち

 たすけて

 タロウ

「君に、渡したいものがあるんだ」

 わたしに?

 いらない

 あなたからもらうものなんて

 なんにもない

「そう、邪険にしなくてもいいじゃないか」

 黒いウルトラマン、トレギアはあたしに言った

「君が望んでいることを、かなえてあげたいと思っているのさ」

「わたしが・・・望んでいること・・・?」

「そうさ、会いたい人がいるんだろう?帰りたい場所があるんだろう?」

「それは・・・」

 なんで

 なんで、あなたがしってるの

 あの家

 あの町

 あの学校

 そして

 あの日の友達

「私が、全てかなえてあげるよ」

 ちがう

 わたしの家も、町も、学校も、友達も

 みんな

 みんな、ここにある

 約束したんだ

 友達と

「本当に、そうなのかな?」

 トレギアは、そういって首を傾げている

「本当は、会いたがっているかもしれないよ?喜んでくれるかもしれないよ?」

 なにをいってるの

 そんなわけ

 そんなわけ――――――

「君を、待っているかも、しれないじゃあないか」

 そう言って、トレギアは、ゆっくりとこっちに歩いてくる

 やめて

 こないで

「だから、君に、プレゼントがあるのさ」

 トレギアが

 わたしにむかってゆっくり差し出した手

 その手の上に

 ずっと前

 わたしが作った怪獣のフィギュアがあった

「これはね、君とあの世界をつなぐチケットだよ」

 楽しそうに

 トレギアが哂ってる

「ほら、遠慮はいらないよ」

 わたしの目の前にさしだされた怪獣

 懐かしい

 でも

 あのときの

 わたしの心と同じ形

 でも

 でも

 でも

「さぁ、どうぞ。新条、アカネ君」

 耳元をなでていくような声

 全身がふるえて

 寒気がして

 ぞくりと体がふるえる

 でも

 じんわりとわきあがってくる

 おさえきれないもの

 やめて

 心の中で、もうひとりのわたしがそう言ってるのに

 それなのに

 トレギアが差し出した怪獣を

 わたしは

 受け取ってしまっていた

 

 

「・・・あれ」

 気がついたら

 わたしは家の前に立っていた

 あれは、なんだったの

 トレギア

 怪獣

 でも、それはどこにもない

 たしかに受けとったはずなのに

 それなのに

 どこにもない

「なんで・・・?」

 あれは夢だったんだ

 ほっとしたような気持ち

 でも

 なんで

 どうして

 わたしはがっかりしているの?

 

 

 届いた

 届いたよ

 ようやく

 届いたよ

 冷たく暗い闇の中でひとり

 歓喜に震え

 歓喜に哂う

 これでまた

 面白いものが見られる

 地べたを這いずり

 時たま思い出したように

 浅い宇宙をうろちょろする虫けらが

 また

 自分の愚かさを恥ずかしげもなく曝け出して

 一生懸命踊ろうとしている

 さあ

 見せておくれ

 魅せておくれ

 愚かしく

 惨たらしく

 滅びゆく

 最高のショウをね

 

 

 

 君の罪は、永遠に消せやしないんだよ?

 

 

 

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