(番外編)もしCCAアムロが一年戦争にタイムスリップしたら 作:BLAUFALK
「君に。我が故郷、最大の栄誉を与える」
片膝をついた俺の右肩、次いで左肩を剣で叩き、左右に翼を拡げ中央に地球を模した金属製の勲章とそれを収めたケースを手渡される。
言わずもがな、西暦時代までは続いてた勲章の授与である。対面で満面の笑みを浮かべるはワイアット中将。英国の伝統だコレ。記憶を辿ると王室が叙任する、有名どころではナイトの称号とかの。
いや王家も既に無いしアンタは王族じゃないだろとツッコミを入れたいがそれは野暮というもの。何せ左腕に報道の腕章を填めたフェデレーション・ポストという連邦系の新聞社を筆頭に、式典会場の左右にはカメラ、そしてラジオ放送局と言ったマスメディアが囲んでいる。
意味するはプロパガンダ。初戦より敗戦を重ねた地球連邦軍と地球侵攻によって政治基盤を喪いつつある欧州系政治家を焚きつけようというものである。オデッサ撤退戦で負傷しつつも夜襲を跳ねのけ、侵略軍であるジオンを返り討ちにしたエースパイロット…などと紹介されている。
よせやい。同じ空軍ならのちのちサミュエラとかリド・ウォルフとかテキサン・ディミトリーといったエースパイロットが出てくるし、そっちのほうが華々しい戦果を上げている。では何故かというならば話は1週間前に遡る。
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「は、は…ぶえっくし!!」ガァン!!
痛ってぇ!何かに頭をぶつけた!
くしゃみとともに勢いよくとても酷い寝覚めだった。真っ白なシーツで完璧に整えた病院のベットの上に。眼前にはベット据え付けの移動テーブルがあり、ナースが慌ててのける。目を白黒させつつ状況を確認すると掛け布団のシーツを交換しようとしてたようだ。
日付を聞けば3月12日の昼間、オデッサから既に2週間近くが経っており失血による昏睡状態だったとのこと。そしてここは旧英国領、ロンドン郊外の病院。なんてこった、紅茶の根拠地じゃねえか!1マイルでも前線に近い野戦病院にしてくれ…などとも言ってられない。
俺をわざわざ引っ張ってきたのは紅茶だろう。やはりSu-33を掻っ払ったのはまずかったか、空軍からつまみ出されたであろう今となっては。そこを拾われたんだろう、いやアンタのせいだが。
ラジオ放送を聞けば昨日キャリフォルニアベースが陥落したという。第二次降下作戦だ、間違いない。俺の知る機動戦士ガンダムの年表通りに事は進んでいる。
右手は…駄目だな、まだぎこちない。数時間は経ったか、しばらくしてチーズにビーンズにパンとレモンティーというこれまた英国風の質素な食事が運ばれる。病院食どこいった。空腹に唸る腹は味は二の次とにかく食べろと言ってくるので味は無視し、がっついて食べ、流し込むべくグイ飲みする。それが注意を疎かにしたのだろう、声を掛けられるまでいつの間にか目の前にいる男に気づかなかった。
「据え膳食わぬは、という古の言説もあるがね。もう少し品良くできんか…」
危うく噴き出す寸前で飲み込み、思いっきり噎せる。なんでここにいるんだ紅茶!?
「ゲッホゴッホ…失礼しました、お見苦しいところを。御身が此処に在らせられるとは露知らず、いえ…愚問でしたね、ワイアット閣下」
「うむ。理解が早いか。手際といい空軍には惜しい男ゆえ私のもとに置いたのだよ、あの旧き戦闘機の件は君の予備機だとはぐらかされたがね。そう言うならばとあれも引き上げさせておいた。これほど長く眠るとは思いもよらなかったのだが、むしろ今はその状態でありながら駆けつけてくれたこと、嬉しく思う」
紅茶的に俺へ借りを作ったと捉えたんだろう。空軍が邪険に扱ったからこそ、得ることのできた味方に。いや十中八九アンタのせいだろうが。つかアレ貰ってきたのかよ、なんというジャイアニズム。これで俺は空軍には戻れなくなったわけだ、いくら佐官であれ今後連邦軍で頑張っていくには紅茶の忠臣になる他に選択肢はない。陸軍も海軍も勘弁だ、せいぜい扱き使われてMSにノミのように潰されるが関の山であろうし。
「閣下は多忙を極める立場。恐れながら、早速御用件を伺っても?」
まさか見舞い程度でわざわざやってくる殊勝な性格ではあるまい、大方モビルスーツに対抗する手段関連の話だろうが、何の要件かと訊ねる。ここでウッカリ戦闘機でも戦えないことはない、などと口を滑らせてしまったら機動戦隊コアファイターだの爆撃戦隊デプロッグに番組が変更されてしまう!それは駄目だ!絶対に!!
「お茶の用意を。紳士とはいつも余裕を持つものだよ。私はダージリンがいいな、君も同じものを?」
廊下に待たせているであろう従卒へ呼び掛ける。本題に入る前に待ったをかけたのは派閥に来る気があるかという確認の意があるのだろう。では。
「は。閣下と同じものを戴きます」
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…そしてその一週間後の今である。どうしてこうなった。必要性は分かっていても…うん駄目だな、文化に頭が馴染めていない。あれは何だったんだ、俺の一人相撲かよ。バシャバシャと写真を撮るカメラに微笑みを向けるがひきつっていないだろうか心配だ。やっと式典が終わり解放され、目からハイライトの消えつつある俺へ告げる。
「さて、待たせたな。本題だ」
余裕ぶっこきすぎだろ!