(番外編)もしCCAアムロが一年戦争にタイムスリップしたら 作:BLAUFALK
「なあ中佐、君は怪獣映画を見たことはあるかな?」
いきなり振り出してきたな…
紅茶閣下と俺は式典会場を後にし、一旦の仮拠点及び欧州方面軍の仮本部としてあまりにも映画で見覚えのある物件に来ていた。
何を隠そうSISビルである。着いたときは流石に冗談だろうと疑ったし、機能しているなどという話を聞いたことがなかった。
それは半分正解で名所としてこの時代まで改装を繰り返して保っており、状態が良かったことから流用しようと下階では慌ただしく機材が搬入されている。
上階にある長官室のアンティークな机でゲン○ウポーズを取る紅茶と同じく古めかしい応接セットの椅子に腰掛ける俺。
さて、振り出されたのはすなわちゴ○ラのことだろう。ここは頭頂高18mの物体が目の前で暴れればそうも思うかもしれないが、この宇宙世紀である。宇宙戦艦のマゼラン級や巡洋艦のサラミス級を有する我らが連邦軍がのしのし歩いて破壊光線を撒き散らすゴジ○ごときなぞ問題にならない。ただし…
「怪獣映画ですか。ええ、その昔嗜んだことは」
「む?…昔というより古だが…まあそれはよい。知っての通り映画の中では既存兵器はあまり効果がある描写がない。さんざん暴れるだけ暴れ、壊すだけ壊して海へ還る。それだけだ…さて、何か気づいたかね?」
一頭程度ならともかく、それが大群でいたとしたら映画さながら蹴散らされるのみである。それに○ジラは暴れ終わったら海へ還るが、そう、目下ジオンのMSは違う。あれと違って戦車や航空機からの攻撃が全く効かないわけではないものの、海つまり星の海へ帰らないのである。
「はい、これは侵略でありましょう。敵国にもっともダメージを与えるのはすなわち敵国への侵略です。そこが穀倉地域や資源地域であれ、敵国のリソースを収奪する戦略に他なりません。してMSについてはご存じの通り無敵の怪物ではありませんが、元来デジタルとネットワークの両面に支えられてきた既存兵器ではかなり苦戦を強いられるものと思います」
「うむ…同意見だな」
あれ、意外とあっさり納得したな?
「宇宙艦隊加えて航空機や戦車に至るまで戦闘教義そのものが覆されてしまったとも言える、ミノフスキー粒子下ではな。先日の撤退で数を束ねれば何とか出来ることは身をもって知ったが、地上の至るところで戦闘中の今、それが何度行えるのかは分からん。それで勝てば良いがその保証はない」
おお、逃げ回ってるように見せかけてよく観察している。ちょっとは見直したぞ紅茶…いやこの人咄嗟に腹芸を見せるぐらいは切れ者じゃん。ちょっと否かなり変人なのが残念だが。
「私は将軍の言うMS保有論にはあまり乗り気ではないのだがね。だいいち君が戦ったように絶対に勝てない敵ではない。だがこの戦争に勝つためにはそれも曲げるべきか…その判断のために中佐、貴官を頼りたい」
え゛嫌。すっごく嫌。非常に嫌な予感がする。というか保守派つまり既存兵器派だったのか。てっきり最初からレビル派一択だとばかり思ってたのだが…ああ、脅威を身を以て知ることでレビル派へ加勢し、それでV作戦強行が通ったのか。では俺はどこに必要だ?
「は、小官で宜しければ。何なりと」
好奇心に勝てずオーケーしてしまった。まあ取り組むけど出来ませんでしたもアリ程度の事だろう。どうせ一佐官に重要な話は振ってこな…
「鹵獲したMS-06、ザクIIについてその兵器としての性能を評価したい。昨日やっと修復を請けた電気機器会社…名前を何と言ったか。ハービック社にもウェリントン社にも断られてたらい回しにされたのだがね、とにかく稼働状態にすることができたのだ。明後日それを行う、君にはそのパイロットをやってもらいたい」
出た無理難題。FF-3やFF-6等の戦闘機はともかくしてモビルスーツなんて動かし方なんて知らないぞ!?まま待て落ち着け、その性能評価のデータ如何で紅茶が腹決めるってことだよなコレ!?
そんなことも気にせずHAHAHAと悪戯っぽく笑う紅茶。ここはNOと言えないが俺にできるとは思えないのでこう言う。
「…旧英国に縁ある閣下ならば、映画界が生み出したスターをご存じですよね?」
「うむ?………おお、あの映画か!無論知っている。随分これまた古きものだな?ふむ、秘密兵器のほうが良かったかな」
「潜水艇に変形する車も、ボールペン型の手榴弾も特段欲しいわけではありません。物は扱いきれる者が扱ってこそその秘密兵器たる性能を発揮するのではありませんか」
「そうは言うがね中佐、これは十分なハンデなのだと私は思うのだ。君ならば経験から多少操縦に難があろうとも彼ら相手には丁度良かろう。模擬戦に参加するのはこれから前線へ送られる予定で訓練中の部隊なのだ、デモンストレーションにもなると陸軍には話をつけてある」
まあ…そう言うならどうにかなるかもしれん。問題は流石に今日は遅いので明日一日でどこまでどうにかなるかだが。
「了解しました。あとそれから一つお願いがあります、修復を請けた電気機器会社の担当者と…恐らくこちらも技術士官が立ち合っておりますでしょうか?その方々のサポートが必要です」
「それは心配ない、既に手引き書も修復に合わせて書かせている。…このファイルだ。君の部屋は下階に用意させたが取り扱いにはくれぐれも注意するように」
マニュアルを渡された。数ページ程度しかなく簡素すぎて逆に不安になるがこれが上手く行かなければV作戦がお釈迦になり、ガンダムは大地に立たない。よくて砲撃戦士ガンタンクだろうか、いやそれも駄目だ。
要件も終わったのを見計らい、敬礼をし退出するところを_呼び止められる。
「あの映画はテープ時代のものは最早見れなくてな、ディスク時代のもののみは観たのだ。そうだ、今度時間が取れたならばウォッカ・マティーニを飲みながら語ろうではないか」
「それは楽しみですね、お付き合いさせて下さい」
「よい返事だ…さて私が最初に見たタイトルは何だったか、カジノロワイヤルの次だったと思うが」
「それは慰めの報酬ですね」
「む?…おお!そうだ、それだったな。私も歳だ、なかなか忘れることが多い。ではな」
なかなかユーモアなところがあると俺は紅茶に対する評を改めた。さて明後日か…頑張ろう。