(番外編)もしCCAアムロが一年戦争にタイムスリップしたら   作:BLAUFALK

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07 鹵獲ザク(前編)

 本日は3月19日_

 昨夜紅茶から無茶振りされて結局ほぼ眠れなかった。渡された薄い本こと、あまりにページの少ないマニュアル。それに挟まってた現在のMS-06の概略を読めば不安になるなと言うほうが無茶だ。

 

 コックピットは半壊で修復を試みたものの、ドジ踏んで自爆装置が起動…と言っても爆発ではない。ブラックボックスとは分からず取り外そうとしたところ、リレーが働きサージ防護機器をバイパスして高サージ電流がコンソールパネル、OSを完全に破壊してしまったとの事である。

 

 やらかしたのはアナハイム・エレクトロニクスの欧州本社_一年戦争のちに巨大企業となるこの会社は一般家電品を主な商売としている一方、じつは公にされていないがハービック社の下請け的仕事もしている。

 

 何故新兵器であるモビルスーツの修復をハービックとウェリントンがたらい回しにしたのか、その答えはその大手2社の命綱である戦闘機と艦艇にある。

 ハービック社は主に北米キャリフォルニアベースで戦闘機の開発・生産をし、世界各地に整備工場を設けていたが第二次降下作戦による無血開城で目下トップ安の急降下中。

 ウェリントン社はその点、この地上宇宙に唯一つしかないジャブローの宇宙船ドッグを独占しており、特に被害が無いように見えるがそうではない。モビルスーツという新兵器の登場により一週間戦争、ルウム戦役と商売である艦艇が鉄屑にされ、このままでは発注の打ち止めも時間の問題。

 そして両社に共通するのは動くと動かざるとラインの維持コストが洒落にならない点であり、そのうえ天敵であるモビルスーツなんぞ見たくもない_ということと思われる。

 

 で、修復はといえば技官主導で俺の愛機FF-3から強引にシート含め分解のうえ移植。OSが丸っきり異なるものの電気機器メーカーだけあって1週間の突貫で調整を完了したとのこと。特に核融合炉の自動制御も元々のOSが担っていたため調整に手間取ったらしく、ここだけ記述が他に比べて多い。このへんは読んでもあまり分からないため割愛する。

 駆動系である流体パルスシステムは制御系とシステム電源が切り離されており、自爆を免れていたので記述がサラッと書いてあるのみ。MS-06を外観で見た通り五体に駆動箇所がありそこが駆動するといった内容。

 

 さて問題は_戦闘機と大いに異なる点として『動作パターン』という予め設定された挙動があることである。このパターンが入ったソフトウェアについてはコックピット破壊時の断線により自爆を免れていたことからそのまま流用した…とある。解析によれば歩行、走行、ジャンプ、武器の構え等であるとのこと。

 これが戦闘機乗りの俺が扱えるのかが分からない。三次元機動と全く勝手が違う。宇宙ならともかく_いや頑なに宇宙行きを断ったため宇宙での操縦経験はないのでこれも未知数。もし戦場の絆をやっていれば多少マシだっただろうか…時間作ってでもゲーセンに行くべきだった…!

 あとは実践あるのみということになるが慣熟など望める時間が全く無い。それが非常に不安な理由である。

 

 時刻はAM7時前を刻み、そろそろと支度して割り当てられた自室を出る。ビルのエントランスを仮食堂として柱に寄り掛かりつつ将兵らがホットドッグやビーンズのスープを食べている。この場で佐官なのは俺と、やはり情報部関連の場所であるからか08小隊で見覚えのある女性少佐ぐらい。ただでさえメシマズに拍車をかける煙草の臭いの元として一発で分かった。俺自身喫煙者だが、流石に遠慮してもらいたいものだ。しかし下手に突っ込みを入れて火傷したくないので我慢する。

 うぅ…やっぱりマズイ……味が薄いため醤油やマヨネーズといった調味料に溢れた日本、そしてセカンドライフとして育ったアメリカのバーガーがとても恋しい。マメッコーラのほうが幾分かマシだ。あれはウォッカを割るには丁度良いがストレート飲みはマジで頭おかしいと思う。

 

*****

 

 AM9時前、ラコタを借りて元ヒースロー空港跡、現連邦空軍基地に赴く。基地は鉄条網に囲われつつ、鉄条網添いの道路を行くと一角に足場を組んでシートで覆った場所が見える。さながら函館のMig-25のようだ…あれよりはかなり大きく、いや、MS-06の丈より2倍くらいは縦に長く、横に1.5倍長い。高さはだいたい8m程だろう。

 当然ハンガーはあるもののやはり空軍にとっては厄介者のようでどうやら使わせてくれないらしい。それでも敵国の最新鋭兵器であることから衆目に晒されまいと隠したつもりのようだが却って目立っている。

 道路には野次馬やどこかの背広の連中がカメラを持ってその姿を納めようと張り付いている、もう何日目なのだろうかは知らないが非常に邪魔くさい。

 

 ゲートで手続きを済ませるが明らかに下士官の面々からの嫌な視線が射すのを感じる。この基地の大将でもない偉方が来る理由なんぞ唯一つ、モビルスーツしかないためだ。俺はニュータイプではないと思うがむしろその視線に気づかなかったらあまりに鈍すぎると思う。

 だがそんなもん気にしてる暇はない、とっとと通してもらってMS-06と対面するため直行する。

 

*****

 

 「お待ちしておりました!この機体についてのファイルはお読みになりましたか?!」

 

 ええっと…どちら様?

 到着して開口一番のご挨拶である。うーむ…士官か、目がギンギンである。見た感じ三十路か四十路手間だが原作キャラにこんなのいたっけ…?

 

 「ワイアット閣下からね、昨夜受け取って読んだばかりだ。まあなんだ…あとはレッツトライというわけだ。ジョンとでも呼んでくれ、貴官は?」

 

 「は、はあ…ではジョン中佐と。小官はフランクリン・ビダン中尉であります」

 

 顔には出さないが内心ギョッとした。ガンダム屈指のダメ親父の一人。こんなスマートな体型じゃなかったはず。顎の肉もそれほど出てないし精悍な印象がある…まそれは大した問題ではない。

 

 「さて、時間は非常に少ない。フランクリン中尉、早速だが要約して頼む」

 

 「はい。鹵獲した本機MS-06F、ザクIIF型はジオンのものと区別するためにグレーとダークグリーン、動力パイプにイエローを配色しております。機体チェックについてはまだマニュアルが書き上がっていませんので省略します。起動済みですから、まずは立たせてみましょう」

 

 「左肩が赤いが…?」

 

 「左肩については対艦・対戦闘機を主眼としていると思われる本機にしては不可解な装備であるため塗りわけました…決して趣味で塗ったわけではありません」

 

 言いつつ横たわっているMS-06Fに乗り込み、マニュアルを読んで覚えた操作を実行して起き上がって、立たせる。足場との余剰スペースがあるおかげでぶつからず、このまま寝かせることも可能だろうが…

 

 「次は?」

 

 「次は歩行してみましょう、その場で足踏みを」

 

 こちらも操作を行い、その場で右足を上げ下ろし、左足も同様に。腕もそれぞれ振る…なるほど素直なマシーンだ。何よりコックピットレイアウトが元愛機のものを流用しているのでグラスでない点と操縦桿が増えている点以外は落ち着く。

 

 こんな調子で次は立ち膝、次はメインカメラの移動、次はマシンガンを構えた想定で構え、次は右肩のシールドの構えと基本動作を行っていく。

 愛機から大きく変わったのはレーダー有効範囲である。愛機のそれはミノフスキー粒子下を想定していないもので非常に広く、かつデータリンク前提のものだったが、このMS-06Fはレーダー範囲が非常に狭い反面、ミノフスキー粒子下の使用に耐え得るものとして設計されている。なるほどそうきたか、ジオン脅威のメカニズム…

 

 その他演習場所のマップ情報インストール等を行って本日は切り上げた。これはいけるかもしれない。

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