本編のスピンオフ的な話ではありますが…、本編より長いボリューミー溢れる作品です。
暇な時にでも読んでくれたら…嬉しいです。
世界の東側に構える、東国 シェルタ帝国。
世界最大の軍事国家である。
辺りは、変種の森に守られているため、他国から領土を侵されることはないが、護衛なしではまともに貿易が出来ない。
変種とは、突如出現した、未知の生物であり、人間を超える能力を有している。
年々数を増し、殲滅を余儀なくされた。
殲滅部隊を結成し、討伐を試みるが、膨大な数の前に、殲滅には至らなかった。
10年以上経った今でも、攻防が繰り広げられている。
「貴方はそれでいいんですか!!」
一人の少年は、部隊を指揮する上官に抗議していた。
今、前線の部隊が変種に取り囲まれるという窮地に立たされている。
「構わん。報告書には、名誉の戦死とでも記載しておく。各部隊、撤収の準備だ」
こうなったのは、この無能な上官のせいである。
少年が提案した作戦は、迂回ルート。
変種の数が知れない内は、探索範囲を広げるべきではなかったのだ。
しかし、上官は自身の名誉のため、直進ルートを押し通したせいで、今に至る。
「味方を見殺ししろと!? ふざけるのもいい加減にして下さい!!」
「あくまで、上官に逆らうか。ならば貴様をここで始末するが?」
上官は、拳銃を抜き、少年に突き付ける。
「ふざけるな」
少年は拳銃を奪い取り、上官の腕を捻ったうえで拳銃を頭に突き付ける。
「今ならまだ救援に行ける! 早く命令しろ」
すると、上官は無線で叫ぶ。
「少尉が私を殺そうとしている! 誰か助けてくれ!!」
近くにいた部隊は、上官の無線を聞き付け、少年にライフルの銃口を向ける。
「部隊長を離せ!」
「それどころじゃない! 味方がまだあそこにいるんだぞ!」
「ふざけてる場合か少尉! 味方は既に撤退している! その銃を捨てろ!」
その言葉に少年は耳を疑った。
救援要請の無線が流れていたはずだ。
撤退などしてない。
少年は、足を撃たれ、取り押さえられた。
「味方が.まだ.」
少年は、隊員の一人に頭を殴りつけられ、軍用車に乗せられる。
後日知った事だが、部隊は撤退しておらず、変種の餌食になってしまった。
しかし、それを知るのは部隊長と少年のみで、他の部隊は、撤退中の戦死として扱われた。
軍法会議で、少年の申し立ては、聞き入れてもらえず、上官に歯向かい、部隊の撤退を邪魔したと濡れ衣を着せられた。
幸い、少年が築き上げられてきた、戦果もあり、極刑は免れたものの、与えられていた権利を剥奪された。
2ヶ月後.
俺は、軍用車に乗せられ、シェルタ帝国第3訓練施設へと向かっていた。
シェルタ帝国の訓練施設は、3学年までありS組からF組までのクラス分けがされている。
俺はS組で、応援派遣として第14部隊へと配属されていた。
だが、S組の権限は剥奪され、最下位クラスのF組送りとなった。
「イズハ。そろそろ着くぞ」
運転してくれている、中年隊員が俺の名前を呼ぶ。
「分かりました」
到着とともに、荷物を手に車から降りる。
「まさか、お前がF組行きとはな。驚きだ」
中年隊員である、オレイ軍曹は残念そうに俺を見ている。
「仕方ないですよ。極刑にならなかっただけマシです。送っていただきありがとうございました」
俺は苦笑いを浮かべ、その場を後にしようとするが、忘れ物に気付く。
「すみません。これもお願いします」
俺は軍服の襟についているS組のバッチを外して、オレイ軍曹へと手渡す。
「元気でな」
俺は軍用車両に敬礼し、見えなくなったところで、訓練施設へと向かった。
訓練施設長の元へと向かい、報告する。
「イズハ二等兵、本日より第3訓練施設へ着任します!」
敬礼すると、老婆の訓練施設長が笑みを浮かべる。
「よく生きて戻って来たね、イズハ。しかし、未だに信じられないねぇ。お前さんがあのような事をしたとは」
老婆の訓練施設長は、溜め息をついている。
この人には、小さい頃からお世話になっている。
名前は、アルケイド施設長。
今は亡き、俺の父さんの上官だった人だ。
「また一から叩き直して来ます」
そう言い残して、施設長室を後にした。
F組の教室へと向かう。
各組の掃き溜めが集まる場所だ。
他の組からは、ゴミクラスと呼ばれている。
一体どんな場所なのやら。
俺は教室に一歩踏み入れると、ナイフが頭目掛けて飛んでくる。
「危ないな」
俺はナイフを指で挟み、懐にしまう。
何かされると予測していたため、反応が出来た。
運が良い。
「ちっ。普通ナイフを取るかよ」
いかにもガラの悪そうな女生徒が、舌打ちで出迎える。
教室は、乱雑なまでに置かれた机に、落書きされた黒板。
銃痕まで、生々しく残っている。
治安が悪いなここ。
挨拶だけでも、適当に済ませるか。
「今日からここに配属された、イズハ二等兵だ。よろしく頼む」
当然……返答はない。
誰も聞く耳は持たないか。
「知ってるよ。流石はS組の元生徒さんだ。律儀に挨拶ってか?」
さっきナイフを投げて来たガラの悪い女生徒が早速絡んで来る。
「ここの挨拶を教えてやるよ。ツラ貸せ」
もう一人のガラの女生徒が、ナイフをチラつかせている。
同じ顔に、同じオレンジ色の髪。
姉妹か。
ということは、こいつらが、アルハル姉妹。
姉のアルは、口よりも手が出る性格で上官を半殺にして、
妹のハルは、不特定多数の上司と肉体関係を持って金品請求で破綻させたんだっけな。
噂は聞いていたが.
「いいだろう」
俺は言われるがまま、人気のない校舎裏へと連れ込まれる。
「言っとくが、暴力だったら全力で抵抗させてもらうぞ?」
俺は袖を捲り、挑発する。
ナイフを使っているが、アルハル姉妹は覚醒者だ。
覚醒者は、特殊な能力を使うことが出来る者だ。
炎や氷など、能力な様々。
アルの能力は柔軟。
右手で触れた物を軟らかくする。
ハルの能力は硬化。
左手で触れた物を硬くする。
能力は単純だが、使い方次第ではかなり厄介だ。
「やってみろよ!」
アルがナイフで俺を突く。
俺は手首を掴み、後ろへ回すと、ハルがナイフで切り付けて来た。
アルの手首を離し、ナイフをかわし、ハルを壁に押し飛ばした。
連携は息ぴったしか。
流石は姉妹。
動きも悪くない。
「ちっ! うぜぇな!」
アルが足を踏み込むと同時に、俺はつま先を踏んで押す。
すると、体勢を崩して尻もちをついた。
「死ね!」
ハルが右手でナイフを振りかざしている。
俺は肘を畳むような感じで、ハルの右肩ごと後ろへ回す。
少し力を込める。
コキリ。
という音が鳴った。
「ッ.!?」
肩を外した。
これで動けたら、大したものだ。
右肩を抑えているところを見ると、動けそうにないな。
後は、アルだけだ。
連携がないなら、容易い。
「ハルに何しやがる!」
アルがナイフを握り締めたところをすかさず、蹴り飛ばした。
後ろへ回り込むと同時に左肩を外す。
「まだやるか?」
俺は、アルの背中に膝を押し付け、右肩に手を掛ける。
アルは、俺から逃れようと、必死に抵抗する。
「もう一本、やるか?」
俺は、徐々に力を込めていくと、アルは大人しくなる。
「分かった.! 降参だよ.!」
俺は2人に敵意がないことを伝える。
肩を外しておいてなんだけど。
「くそ! どうせお前もあいつらと一緒だ!」
アルが、殺意の眼差しを向けたまま、俺に吐き捨てるように言い放つ。
「あいつら?」
「お前も、あたしらの噂くらい聞いてるだろ!?」
「一応な。だが、所詮は噂だろ?」
そう。
噂は噂だ。
それを確かめるには、この2人に直接聞くしかない。
「良かったら聞かせてくれないか?」
俺は噂で量る人間じゃない。
「ハルは.上官に襲われそうになったんだ。それでわたしが殴り飛ばした」
なるほどな。
噂はでっち上げられたもの。
無いわけではないが.
「そうだったのか。やっぱり噂はアテにならないな」
俺は溜め息をつく。
「信じるのかよ.」
アルは驚いたような表情だ。
「俺も似たようなものだからな。だから俺はお前らを信じる。だから、お前らも俺を信じてくれ」
「分かった.よ」
「じゃあ、肩戻すか」
俺はアルの肩に手をかける。
あれ.?
「折れてるかも.」
「「ふざけんなぁ──ー!!!」」
艦これの二次創作も書いているので、そちらもぜひぜひ、よろしくお願いします。
読んで下さってる方には、感謝です!