ありふれない旅人は第二の生を歩む   作:九時楽

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えぇ〜まずは、イデオンさん、村人BLACKRXさん、白音さん、星野優季さん、ノエスさん、しじみ243さん感想ありがとうございます!長い間サボっていたのに『第十一歩』を投稿したあと直ぐに感想を頂けて本当に嬉しいです。

それに加えてお気に入り登録700件突破!

これもまた、本当に本当に嬉しいです!

これらを元気にこれからも頑張らせていただきます!


さてさて………では、『第十二歩』スタートです!

因みにまだ立香とハジメは合流しません………


第十二歩 「宿敵討伐されど(ヒロインの)フラグが折れる事は無し」

「むぐ、むぐ……ウサギ肉ってもマズイことに変わりねぇな……はぁ……立香の飯が食いてぇ」

 

 

現在、ハジメは拠点にてモリモリとウサギ肉を喰っていた。そう、蹴りウサギの肉である。かつて自分を見下し嘲笑った蹴り技の達人は、今やただの食料だった。ウサギということで多少はマシな味なのではと期待したハジメだったが、所詮は魔物の肉。普通に不味く、どうしようもなく立香のご飯が恋しくなる。

 

 

 

 それでも丸一匹、ペロリと平らげる。

 

 

 

【胃酸強化】を手に入れてから食べようと思えばいくらでも食べられる気がするハジメ。特に固有魔法を使ったときは物凄く腹が減り、この蹴りウサギを殺った時も使ったので収支はトントンと言ったところだった。

 

神水があれば死にはしないが、使いすぎると再び飢餓感に襲われそうなので考えて使わなければならない。

 

ちなみに、蹴りウサギは罠を張って倒した。スタート地点の川から水を汲んできて蹴りウサギを誘導、爆進して来た蹴りウサギが撒き散らした水の上を通った瞬間、【纏雷】の最大出力で感電させる。

 

全身から煙を噴き上げながらも、案の定、突進してきたので、電撃で鈍ったところを正面からドンナーで撃ち抜いた。

 

流石に、電磁加速された秒速三・二キロメートルの弾丸は避けられなかったらしく頭が木端微塵に砕け散って絶命した。わざわざ感電させる必要もなかったかもしれない。それくらい、ドンナーの威力は凄まじかった。

 

 

「さて、初めて蹴りウサギの肉を喰ったわけだが……ステータスは……」

 

 

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:12

 

天職:錬成師

 

筋力:200

 

体力:300

 

耐性:200

 

敏捷:400

 

魔力:350

 

魔耐:350

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・言語理解

 

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やはり魔物肉を喰うとステータスが上がるようだ。二尾狼ではもう殆ど上がらなかったことを考えると喰ったことのない魔物を喰うと大きく上昇するらしい。

 

早速、【天歩】とやらを調べる。まず一番最初にイメージしたのは、蹴りウサギのあの踏み込みだ。焦点速度が間に合わなくて体がブレて見えるほどの速度。【天歩】の横に[+縮地]とあるのはその技能ではないかと当たりを付ける。縮地といえば、全員が初めてステータスプレートを受け取った時に立香がやった地球でも有名な高速移動のことだ。

 

ハジメは足元が爆発するイメージで一気に踏み込んでみる。体内の魔力が一瞬で足元に集まる。踏み込んだ足元がゴバッと陥没し……ハジメは吹き飛んで顔面から壁にダイブした。

 

 

「痛ッー!? か、加減が難しいな、これ……」

 

 

だが、成功は成功である。これから鍛錬を続ければ蹴りウサギのような動きもできるようになるだろう。銃技と組み合わせれば、より強力な武器になる。

 

次は[+空力]だ。だが、これが中々発動しない。名称だけではどんな技能なのかわかりづらい。あれこれ試す内に、ハジメは蹴りウサギが空中を足場にしていたことを思い出す。

 

早速、ハジメは、踏み出した空中に透明のシールドがあることをイメージする。そして、前方に跳躍してみた。

 

 

 

 顔面から地面にダイブした。

 

 

 

「ぐぅおおお!?」

 

 

右手で顔面を押さえゴロゴロと地面をのたうち回る。しばらく身悶え、痛みが引くと憮然とした表情で神水を飲む。

 

 

「……まぁ、一応できたな……」

 

 

前方に跳躍して顔面からダイブした原因は中途半端に足場ができたせいだった。要は躓いて転けたのである。どうやら[+空力]は空中に足場を作る固有魔法で間違いないようだ。

 

なんだか一度に二つの固有魔法を手に入れた気分だが【天歩】という固有魔法の派生技能らしい。

 

 

 得した気分でハジメは鍛錬を開始する。

 

 

 

 目標は――爪熊。

 

 

 

おそらく、遠距離からの銃撃で片はつくだろうが、念の為に鍛えておく。あの化け物より強い魔物がふらりと現れる可能性も否定できないのだ。迷宮では楽観視した者から死んでいく。爪熊を倒したら、この階層からの脱出口も探さなければならない。

 

 

 

 ハジメは気合を入れ直した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

迷宮の通路を、姿を霞かすませながら高速で移動する影があった。

 

 

 

ハジメである。【天歩】を完全にマスターしたハジメは、【縮地】で地面や壁、時には【空力】で足場を作って高速移動を繰り返し宿敵たる爪熊を探していた。

 

本来なら立香を探すことを優先すべきなのだろうが、ハジメはどうしても爪熊を殺りたかった。一度は砕かれた心、それをなした化け物を目の前にして自分がきちんと戦えるのか試さずにはいられなかったのだ。

 

 

「グルゥア!」

 

 

途中、二尾狼の群れと遭遇そうぐうし一頭が飛びかかってくる。ハジメは冷静に、その場で跳躍し宙返りをしながら錬成した針金で右足の太ももに固定したドンナーを抜き発砲する。

 

 

 

ドパンッ!

 

 

 

燃焼粉の乾いた破裂音が響き、【纏雷】で電磁加速された弾丸が狙い違わず最初の一頭の頭部を粉砕した。

 

そのまま空中で【空力】を使い更に跳躍し、飛びかかってくる二尾狼に向かって連続して発砲する。全て命中とまではいかなかったが、どうにか全弾撃ち尽くす前に仕留め切った。

 

ハジメは肘から先のない左腕の脇にドンナーを挟み、素早く装填する。そして二尾狼の死骸には一瞥もくれずに再び駆け出した。

 

 

しばらくそうやって出会う蹴りウサギや二尾狼を瞬殺していると、ようやく宿敵の姿を発見した。

 

 

爪熊は現在食事中のようだ。蹴りウサギと思しき魔物を咀嚼している。その姿を確認するとハジメはニヤリと不敵に笑い、悠然ゆうぜんと歩き出した。

 

爪熊はこの階層における最強種だ。主と言ってもいい。二尾狼と蹴りウサギは数多く生息するも爪熊だけはこの一頭しかいない。故に、爪熊はこの階層では最強であり無敵。

 

それを理解している他の魔物は爪熊と遭遇しないよう細心の注意を払うし、遭遇したら一目散に逃走を選ぶ。抵抗すらしない。まして、自ら向かって行くなどあり得ないことだ。

 

 

 

 しかし、現在、そのあり得ないことが目の前で起こっていた。

 

 

 

「よぉ、爪熊。久しぶりだな。俺の腕は美味かったか?」

 

 

爪熊はその鋭い眼光を細める。目の前の生き物はなんだ? なぜ、己を前にして背を見せない? なぜ恐怖に身を竦ませ、その瞳に絶望を映さないのだ? 

 

 

 

かつて遭遇したことのない事態に、流石の爪熊も若干困惑する。

 

 

 

「リベンジマッチだ。まずは、俺が獲物ではなく敵だと理解させてやるよ」

 

 

そう言って、ハジメはドンナーを抜き銃口を真っ直ぐに爪熊へ向けた。

 

ハジメは構えながら己の心に問かける。「怖いか?」と。答えは否だ。絶望に目の前が暗くなることも、恐怖に腰を抜かしガタガタ震えることもない。あるのはただ、純粋な生存への渇望と敵への殺意。

 

 

 

 ハジメの口元が自然と吊り上がり獰猛どうもうな笑みを作る。

 

 

 

「殺して喰ってやる」

 

 

 

その宣言と同時にハジメはドンナーを発砲する。ドパンッ! と炸裂音を響かせながら毎秒三・二キロメートルの超速でタウル鉱石の弾丸が爪熊に迫る。

 

 

「グゥウ!?」

 

 

爪熊は咄嗟とっさに崩れ落ちるように地面に身を投げ出し回避した

 

 

弾丸を視認して避けたのではなく、発砲よりほんの僅かに回避行動の方が早かったことから、おそらくハジメの殺気に反応した結果だろう。流石は階層最強の主である。二メートル以上ある巨躯に似合わない反応速度だ。

 

だが、完全に避け切れたわけではなく肩の一部が抉れて白い毛皮を鮮血で汚している。

 

爪熊の瞳に怒りが宿る。どうやらハジメを《敵》として認識したらしい。

 

 

 

「ガァアア!!」

 

 

咆哮を上げながら物凄い速度で突進する。二メートルの巨躯と広げた太く長い豪腕が地響きを立てながら迫る姿は途轍もない迫力だ。

 

 

「ハハ! そうだ! 俺は敵だ! ただ狩られるだけの獲物じゃねぇぞ!」

 

 

爪熊から凄まじいプレッシャーを掛けられながら、なお、ハジメは不敵な笑みを崩さない。

 

 

 

 ここがターニングポイントだ。

 

 

 

ハジメの左腕を喰らい、心を砕き、変心の原因となった魔物を打ち破る。これから前へ進むために必要な儀式。それができなければ、きっと己の心は「妥協」することを認めてしまう。

 

 

 

そして「妥協」を認めてしまえばもう二度と立香の隣に立つことはできなくなる。

 

 

 

ハジメはそう確信していた。

 

 

 

突進してくる爪熊に、再度、ドンナーを発砲する。超速の弾丸が爪熊の眉間めがけて飛び込むが、なんと爪熊は突進しながら側宙をして回避した。どこまでも巨躯に似合わない反応をする奴である。

 

自分の間合いに入った爪熊は突進力そのままに爪腕を振るう。固有魔法が発動しているのか三本の爪が僅かに歪んで見える。

 

ハジメの脳裏に、かつてその爪をかわしたにもかかわらず両断された蹴りウサギの姿が過った。ハジメはギリギリで避けるのではなく全力でバックステップする。

 

 

 

刹那、一瞬前までハジメがいた場所を豪風と共に爪が通り過ぎ、触れてもいないのに地面に三本の爪痕が深々と刻まれた。

 

 

 

爪熊が獲物を逃がしたことに苛立つように咆哮を上げる。

 

 

 

と、その時、爪熊の足元にカランと何かが転がる音がした。釣られて爪熊が足元に視線を向けると直径五センチ位の深緑色をしたボール状の物体が転がっている。爪熊がそのことを認識した瞬間、その物体がカッと強烈な光を放った。

 

 

 

 ハジメが作った【閃光手榴弾】である。

 

 

 

原理は単純だ。緑光石に魔力を限界ギリギリまで流し込み、光が漏れないように表面を薄くコーティングする。更に中心部に燃焼石を砕いた燃焼粉を圧縮して仕込み、その中心部から導火線のように燃焼粉を表面まで繋げる。

 

後は【纏雷】で表に出ている燃焼粉に着火すれば圧縮してない部分がゆっくり燃え上がり、中心部に到達すると爆発。臨界まで光を溜め込んだ緑光石が砕けて強烈な光を発するというわけだ。ちなみに、発火から爆発までは三秒に調整してある。苦労した分、自慢の逸品だ。

 

当然、そんな兵器など知らない爪熊はモロにその閃光を見てしまい一時的に視力を失った。両腕をめちゃくちゃに振り回しながら、咆哮を上げもがく。何も見えないという異常事態にパニックになっているようだ。

 

 

その隙を逃すハジメではない。再びドンナーを構えてすかさず発砲する。電磁加速された絶大な威力の弾丸が暴れまわる爪熊の左肩に命中し、根元から吹き飛ばした。

 

 

 

「グルゥアアアアア!!!」

 

 

 

その生涯でただの一度も感じたことのない激烈な痛みに凄まじい悲鳴を上げる爪熊。その肩からはおびただしい量の血が噴水のように噴き出している。吹き飛ばされた左腕がくるくると空中を躍り、やがて力尽きたようにドサッと地面に落ちた。

 

 

 

「こりゃあ偶然にしてはでき過ぎだな」

 

 

 

ハジメとしては左腕を狙ったつもりはなかった。まだそこまで銃の扱いをマスターしているわけではない。直進してくる敵や何度もやりあった二尾狼等、その動きを熟知していない限り暴れて動き回る対象をピンポイントで撃ち抜くことは未だ難しい。

 

 

故に、かつて奪われ喰われたハジメと同じ左腕を奪うことになったのは全くの偶然だった。

 

 

 

ハジメは、痛みと未だ回復しきっていない視界に暴れまわる爪熊へ再度発砲する。

 

 

 

爪熊は混乱しながらも野生の勘で殺気に反応し横っ飛びに回避した。

 

 

 

ハジメは、【縮地】で爪熊を通り過ぎその後ろに落ちている左腕のもとへ行く。そして、少し回復したのか、こちらを強烈な怒りを宿した眼で睨む爪熊に見せつけるかのように左腕を持ち上げ掲げた。

 

 

そして、おもむろに噛み付いた。魔物を喰らうようになってから、やたらと強くなった顎の力で肉を引き千切り咀嚼そしゃくする。かつて爪熊がそうしたように目の前で己の腕が喰われるという悪夢を再現する。

 

 

 

「あぐ、むぐ、相変わらずマズイ肉だ。……なのにどうして他の肉より美味く感じるんだろうな?」

 

 

 

そんなことを言いながら、こちらを警戒しつつ蹲る爪熊を睥睨するハジメ。

 

 

 

爪熊は動かない。その瞳には恐怖の色はないが、それでも己の肉体の一部が喰われているという状況と回復しきっていない視力に不用意には動けないようだ。

 

それをいいことに、ハジメは食事を続ける。すると、やがて異変が訪れた。初めて魔物の肉を喰らった時のように、激しい痛みと脈動が始まったのだ。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

急いで神水を服用するハジメ。あの時ほど激烈な痛みではないが、立っていられず片膝を突き激しい痛みに顔を歪める。どうやら、爪熊が二尾狼や蹴りウサギとは別格であるために取り込む力が大きく痛みが発生したらしい。

 

 

 

だが、そんな事情は爪熊には関係ない。チャンスと見たのか唸り声を上げながら突進する。

 

 

 

蹲るハジメは動かない。あわや、このまま爪熊に蹂躙され、かつての再現となるのかと思われたその時、ハジメの口元がニヤーと裂けた。

 

同時に、右手をスッと地面に押し付けた。そして、その手に雷を纏う。最大出力で放たれた【纏雷】は地面の液体を伝い、その場所に踏み込んだ爪熊を容赦なく襲った。

 

 

地面の液体とは、爪熊の血液のことだ。噴水の如く撒き散らされた血の海。ハジメは拾った爪熊の左腕から溢れでる血を、乱暴に掲げることで撒き散らし、自分の場所と血溜りを繋いだのである。

 

伊達や酔狂で戦闘中に食事などしない。爪熊を喰らったことで痛みに襲われるとは思っていなかったが、最初から罠に嵌めるつもりだったのだ。わざわざ目の前で喰ったのも怒りを煽り真っ直ぐ突進させるためである。多少予定は狂ったが結果オーライだ。

 

自らの流した血溜りに爪熊が踏み込んだ瞬間、強烈な電流と電圧が瞬時にその肉体を蹂躙する。神経という神経を侵し、肉を焼く。最大威力と言っても、ハジメが取得した固有魔法は本家には及ばない。

 

二尾狼のように電撃を飛ばせるわけではないし、出力も半分程度だろう。しかし、それでも一時的に行動不能にさせることは十分に可能だ。ちなみに、人間なら血液が沸騰してもおかしくない威力ではある。

 

 

「ルグゥウウウ」

 

 

低い唸り声を上げながら爪熊が自らの血溜りに地響きを立てながら倒れた。その眼光は未だ鋭く殺意に満ちていてハジメを睨んでいる。

 

ハジメは真っ直ぐその瞳を睨み返し、痛みに耐えながらゆっくり立ち上がった。そして、ホルスターに仕舞っていたドンナーを抜きながら歩み寄り、爪熊の頭部に銃口を押し当てた。

 

 

 

「俺の糧になれ」

 

 

 

その言葉と共に引き金を引く。撃ち出された弾丸は主の意志を忠実に実行し、爪熊の頭部を粉砕した。

 

 

 

 迷宮内に銃声が木霊する。

 

 

 

爪熊は最期までハジメから眼を逸らさなかった。ハジメもまた眼を逸らさなかった。

 

 

想像していたような爽快感はない。だが、虚しさもまたなかった。ただ、やるべきことをやった。生きるために、この領域で生存の権利を獲得するために。

 

ハジメはスッと目を閉じると、改めて己の心と向き合う。そして、この先もこうやって生きると決意する。戦いは好きじゃない。苦痛は避けたい。腹いっぱい飯を食いたい。立香と笑い合いたい。

 

 

 

 そして……生きたい。

 

 

 

理不尽を粉砕し、敵対する者には容赦なく、全ては生き残るために。

 

 

 

 そうやって生きて……

 

 

 

 そして……

 

 

 

 故郷に帰りたい。

 

 

 

 立香と一緒に。

 

 

 

 そう、心の深奥が訴える。

 

 

 

「そうだ……帰りたいんだ……俺は。立香と……一緒に帰りたい。他はどうでもいい。俺は……俺達は俺達のやり方で帰る。望みを叶える。邪魔するものは誰であろうと、どんな存在だろうと……」

 

 

 

 目を開いたハジメは口元を釣り上げながら不敵に笑う。

 

 

 

「 殺してやる 」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:17

 

天職:錬成師

 

筋力:300

 

体力:400

 

耐性:300

 

敏捷:450

 

魔力:400

 

魔耐:400

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・風爪・言語理解

 

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「………だれ?」

 

「(戻ってこれたと思ったら明らかに封印されている少女………マジですか)」

 

 

立香がマーリンと別れた(に落とされた)後に最初に邂逅したのは親友であるハジメ………ではなく、某ホラー映画の女幽霊………でもなく、上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ている状態にだいぶやつれいて、垂れ下がった髪が少しばかりの不気味さを出している少女だった。

 

その容姿は年の頃は十二、三歳くらいだろう、長い金髪にその髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗ている。

 

今はその金髪や肌が汚れてしまっているが、もしそれらを綺麗にして身なりを整えれば、幼い容姿ながらも街中で男女関係なく注目を集めることが想像出来る程の美少女だ。

 

 

そんな少女だが、しかし――立香は知らない事だが――其処は真のオルクス大迷宮50階層。そんな場所に封印されている様な状態、誰であろうと怪しみ疑うのが普通なのだが…………

 

 

「(まぁでも、まずは……)俺が誰か、だったね。俺は立香、藤丸立香。よろしく、君は?」

 

 

やはり、この(主人公)は普通などでは無かった。怪しさ満点なこの状況下で平然と自己紹介を始めだした。

 

更に、この場にツッコミ役(ハジメや雫)が居ない為、そのままの流れで進んでしまうのだった。

 

 

「私は……わた…し……は………」

 

「…………」

 

 

金髪の少女は立香に自分のことを問われ語ろうとしたが辛そうな顔となり、言葉が小さく途切れていき、最後には黙ってしまった。そんな表情を見た立香はこの空間や少女の状態から全てでは無いにせよ少女の過去が辛いものである事を察したのだろう、この空間に来て初めての行動を起こし、少女――と言うよりは少女が埋まっている立方体に近づいていった。

 

 

「ま、何はともあれ、先ずは君をそこから出さないとね」

 

「助けて、くれるの?」

 

「そんな顔をした君を見捨てるなんて出来ないからね、それに事情を聞くにせよそんな状態じゃ聞くに聞けないでしょ」

 

 

そう言いながら立方体に掌を当て解析する為に魔力を流し……しかし、魔力がうまく通らず弾かれてしまった。その結果に少しばかり目を見開いたが、すぐに切り替え、今の結果から立方体が持つ効果の仮説を立てる。

 

 

「恐らく魔力の浸透率が悪くして更に抵抗力を付けることによって魔法や技能による拘束の解除をほぼ不可能にしたって所か………少し面倒だな」

 

「……大丈夫?」

 

「ん? あぁ問題無い、大丈夫だよ」

 

 

立香が語っているのを聞いて不安になったのだろう。その感情そのままに立香に問うが立香は依然として表情を曇らせることなく優しい声音で少女を安心させるように話す。

 

 

「とは言え、あんまり時間を掛けたくないし………よし! ねぇ君」

 

「?」

 

「少しだけ揺れると思うけど我慢できる?」

 

「?? んっ、大丈夫」

 

「そっか、まぁ君が傷つくことは無いようにはするから(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

少女をどう助けるのかが決まったのだろう、未だ理解し切れていない少女にそう言った立香は立方体から一歩分離れると、左足を前に出し右足を後ろに引き、右手を振り絞る。そうそれは………

 

 

セイッ!!

 

 

 

 ドゴオオオォォォォォオオオン!!!

 

 

 

 

正拳突きだった。

 

 

「ふぅ〜、やってみればできるもんだな〜」

 

「…………」( ゚д゚)ポカーン

 

 

今まで自分がどれだけやっても抜け出すことが叶わなかった立方体がただの(?)正拳突きによって砕け散ってしまった事実に立方体から抜け出すことが出来た喜びよりも驚愕が上回ってしまい、少女はしばらく呆然としていた。

 

 

閑話休題(しばらくお待ちください)

 

 

少女が驚愕から立ち直り、先程のことを聞こうと立香の方を向いた瞬間ふわっと黒い布のようなものが体に掛けられる

 

 

「これは?」

 

「『万能布ハッサン』って言ってね、色んなことに使える便利な布でね、流石にずっと裸っていうのは女の子的に、ね?」

 

「………んっ、ありがとう……暖かい」

 

 

立香の言葉を聞いて顔を赤くし、立香にジト目を向けるがハッサン布の暖かさが心を少し癒やしたおかげだろう、立香に告げる言葉は感謝のみだった。

 

 

「それは良かった。それで……聞いてもいいかな、君のこと」

 

「ん、わかった」

 

 

 

そうして立香は少女の過去を聞いた。

 

曰く、少女はとある国の王族であること

 

先祖返りの吸血鬼であること。

 

不死身であり、怪我などもすぐ治り、首を落とされてもその内に治るものであること。

 

魔力を直接操ることが可能であり、陣も不要であること。

 

その力で国の皆のためにと様々な事をしたこと。

 

しかし、ある日叔父がこれからは自身が王であると告げられ、家臣達からも少女はもう必要ないと言われたこと。

 

少女はそれを受け入れたが、少女の力を危険視しけれど殺すことが出来ないからとこの場所に封印されたこと。

 

 

 

少女の話を聞いて立香は「なるほどね~」と一人納得した。

 

 

立香の場合は自身の魔術回路を用いることによって技能の【魔術】を発動している為、陣や詠唱を不要としているが一般的には適正があっても直径十センチほどの魔法陣や長い詠唱を必要とする。

 

それに対しこの少女のように魔法適性があれば、周りがチンタラと詠唱やら魔法陣やら準備している間にバカスカ魔法を撃てるとするならば、正直、勝負にならない。しかも、不死身。おそらく絶対的なものではないだろうが、それでも勇者すら凌駕しそうなチートである。

 

確かに自身が王になろうと企てる奴らにとっては最大級の障害となるだろう。

 

立香が一人で思索に耽り一人で納得していると、自身の手に柔らかい感触が伝わる。視線を向ければそれは少女の両手であり立香の手を包むように握っていた。

 

立香が「どうしたの?」と問うと無表情ながら、その奥にある紅眼に彼女の気持ちを溢れんばかり宿し。

 

 

そして、先ほどとは違う、震えていて小さく、しかしはっきりとした声で少女は告げる。

 

 

 

「……ありがとう」

 

 

 

その言葉を聞いた立香は優しい微笑みを浮かべながら握られていない手で少女の頭を優しく撫でる。

 

撫でられたことに一瞬体を震わせるが繋がった手はギュッと握られたままだ。いったいどれだけの間、ここにいたのだろうか。少なくとも立香の知識にある吸血鬼族は数百年前に滅んだはずだ。この世界の歴史を学んでいる時にそう記載されていたと記憶している。

 

話している間も彼女の表情は動かなかった。それはつまり、声の出し方、表情の出し方を忘れるほど長い間、たった一人、この暗闇で孤独な時間を過ごしたということだ。

 

しかも、話しぶりからして信頼していた相手に裏切られて。よく発狂しなかったものである。もしかすると先ほど言っていた自動再生的な力のせいかもしれない。だとすれば、それは逆に拷問だっただろう。狂うことすら許されなかったということなのだから。

 

そんな事を考えていた立香は自然と手に力を入れて握り返す。少女はそれにピクンと反応すると、再びギュギュと握り返してきた。

 

 

そんな少女の愛らしい行動を見ていた立香は「……あ、そういえば」と言いながら思い出したように少女に問う。

 

 

「今更だけどさ、君の名前は?」

 

 

少女は、問われた名前を答えようとして、しかし思い直したように立香にお願いをした。

 

 

「……名前、付けて」

 

「ん? 付けるって。もしかして忘れた……とか?」

 

 

長い間幽閉されていたのならあり得るかもと聞いてみる立香だったが、少女はふるふると首を振る。

 

 

「もう、前の名前はいらない。……立香の付けた名前がいい」

 

「……成程、名前、名前ねぇ〜」

 

 

おそらく、前の自分を捨てて新しい自分と価値観で生きる。この女の子は自分の意志で変わりたいと思い、その一歩が新しい名前なのだろう。

 

女の子は期待するような目で立香を見ている。立香はう〜んと、少し考える素振りを見せて、彼女の新しい名前を告げた。

 

 

「なら、“ユエ”なんてどう? ネーミングセンスに自信ないからお気に召さないなら別のを考えるけど……」

 

「ユエ? ……ユエ……ユエ……」

 

「あぁ、ユエって言うのはね、俺の故郷で『月』を表すんだ。最初、君とき、君のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたから……どう?」

 

 

思いのほかきちんとした理由があることに驚いたのか、女の子がパチパチと瞬きする。そして、相変わらず無表情ではあるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。

 

 

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

「うん改めて、俺は立香、よろしく」

 

 

ユエは「立香、立香」と、大事なものを内に刻み込むように繰り返し呟いた。

 

そうして、場が和みつつあった状況下で立香は自身の両手をユエから離れさせた。それに対しユエは「あっ」と寂しそうな声を出すが直ぐにその声は途切れることとなる。

 

何と立香がハッサン布の上からユエをお姫様抱っこしたのだ! これには思わずユエも顔を赤くするが、これもまた直ぐに顔の色が変化し青くなってしまう。

 

 

立香がユエをお姫様抱っこして立ち上がり移動を始めたのとソレが天井より降ってきたのはほぼ同時だった。

 

 

咄嗟に、立香は全力で技術による『縮地』をする。一瞬で移動した立香が振り返ると、直前までいた場所にズドンッと地響きを立てながらソレが姿を現した。

 

その魔物は体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。

 

一番分かりやすいたとえをするならサソリだろう。二本の尻尾は毒持ちと考えた方が賢明だ。立香が最後に相対したベヒモスとは最早比べることすら馬鹿らしいと感じる程の強者の気配を感じる。

 

部屋に来た時から感覚による気配感知ではなんの反応も捉えられなかった。だが、今はしっかり捉える事ができている。

 

ということは、少なくともこのサソリモドキは、ユエの封印を解いた後に出てきたということだ。つまり、ユエを逃がさないための最後の仕掛けなのだろう。つまり、ユエを置いていけば立香だけなら逃げられる可能性があるということだ。

 

 

しかし………

 

 

「ま、そんな事、たとえ3度目があってもするわけ無いんだけどね」

 

 

そう言いながら絶賛お姫様抱っこ中のユエをチラリと見る。彼女は、サソリモドキになど目もくれず一心に立香を見ていた。凪いだ水面のように静かな、覚悟を決めた瞳。その瞳が何よりも雄弁に彼女の意思を伝えていた。ユエは自分の運命を立香に委ねたのだ。

 

 

その瞳を見た瞬間、立香の口角が吊り上がり、いつもの優しげな笑顔とは違う不敵な笑みとなる。

 

その笑みのままユエを下ろすとユエの手を握りそのまま………

 

 

 

「【霊子譲渡】」

 

 

 

と告げる。すると

 

 

「!?」

 

 

衰え切った体に活力が戻ってくる感覚にユエは驚いたように目を見開いた。

 

立香は見違えるように状態の良くなったユエに目を合わせユエの手に白い動物のぬいぐるみを握らせる。

 

 

「見ていてユエ、『完膚なきまでに完全な勝利』ってやつを見せてあげるから」

 

 

そう言うと立香はサソリモドキと戦うために向かっていく。しかし、ユエは動かない。

 

 

それは恐怖によるものか――否

 

それは絶望によるものか――否

 

それは諦めによるものか――否

 

 

それは信頼だ、立香なら絶対に勝てるという絶対の信頼があるからこそそこから動くことなく見届けるのだ。

 

 

 

信頼の眼差しを受け止め、立香は始める為に(戦うた為に)瞳を閉じて思い出す。

 

 

 

普段は常にクールだが、自分の料理やジャンクフードを食べている時はクールな表情が崩れ笑みを溢し。

 

 

戦場では黒き(ドレス)を纏い禍々しくも美しい黒き聖剣を振るう一人の少女(騎士王)を。

 

 

そして告げる、己が紡いだ()、それを形にする言葉を。

 

 

 

 

 

  「【結縁霊装・クラス:セイバー】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「【アルトリア・ペンドラゴン[オルタ]】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉が空間に響いた瞬間

 

 

 

 

 

空気が震え

 

 

 

 

 

圧倒的強者となった立香が現れた

 

 

 

 

立香の姿は黒き鎧を身に纏い黒き剣を手にし。

 

漏れ出る威圧感で敵対者(サソリモドキ)に無意識に一歩、後ろに下がらせるという。

 

今までの立香とはまるで違う、正に戦う者としての姿と表せる出で立ちとなった。

 

 

 

 

 

そんな立香がギチギチと音を立てながら怯えを表すサソリモドキに向けて開戦の宣言を叫ぶ。

 

 

 

 

 

「さぁて、始めるとしようか!」

 

 

 

 

 

今ここに暴虐の時間が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『第十二歩』の細かい解説

・【霊子譲渡】
効果自体は立香の魔力を他者に供給するという技能。

シンプルだが、立香とこの技能があれば何時でも何処でもどんな方法でも(・・・・・・・)急速的な魔力の回復が出来るというもの。

・【結縁霊装】


立香が紡いだ縁は形となり


敵を屠る矛となり


大切なモノを守る盾となる


そう、これこそが


立香と彼女達を繋ぐ


一つの在り方であり………


■の一つである


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