ありふれない旅人は第二の生を歩む   作:九時楽

4 / 13
お気に入り152、評価星10が一人

書かねば(使命感)

本当にありがたいことです。皆さんのご期待に添えるかはわかりませんが、自分頑張ります!

お気に入り登録してくれた方々、評価してくれた星野優季さんに誠に感謝いたします!

そして、今回は立香が少しヤバイ感じに?

まぁ、それも含めて『第四歩』どうぞご覧ください。


第四歩「(今は)最弱とイジメ(るのはこちら側)」

ハジメが自分の最弱ぶりと役立たず具合を突きつけられた日から二週間が経った。

 

 

現在、ハジメは訓練の休憩時間を利用して王立図書館にて調べ物をしている。その手には〝北大陸魔物大図鑑〟というなんの捻りもないタイトル通りの巨大な図鑑があった。

 

なぜ、そんな本を読んでいるのか。それは、この二週間の訓練で、成長するどころか役立たずぶりがより明らかになっただけだったからだ。力がない分、知識と知恵でカバーできないかと訓練の合間に勉強しているのである。

 

そんなわけで、ハジメは、しばらく図鑑を眺めていたのだが……突如、「はぁ~」と溜息を吐いて机の上に図鑑を放り投げた。ドスンッという重い音が響き、偶然通りかかった司書が物凄い形相でハジメを睨む。

 

 

ビクッとなりつつ、ハジメは急いで謝罪した。「次はねぇぞ、コラッ!」という無言の睨みを頂いてなんとか見逃してもらう。自分で自分に「何やってんだ」とツッコミ、再び溜息を吐いた。

 

 

ハジメはおもむろにステータスプレートを取り出し、頬杖をつきながら眺める。

 

 

==================================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:2

 

天職:錬成師

 

筋力:12

 

体力:12

 

耐性:12

 

敏捷:12

 

魔力:12

 

魔耐:12

 

技能:錬成・言語理解

 

==================================

 

 

これが、二週間みっちり訓練したハジメの成果である。「刻み過ぎだろ!」と、内心ツッコミをいれたのは言うまでもない。ちなみに光輝はというと、

 

 

==================================

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:10

 

天職:勇者

 

筋力:200

 

体力:200

 

耐性:200

 

敏捷:200

 

魔力:200

 

魔耐:200

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読

 

高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

==================================

 

 

 ざっとハジメの五倍の成長率である。

 

 

 おまけに、ハジメには魔法の適性がないこともわかった。

 

 

魔法適性がないとはどういうことか。この世界における魔法の概念を少し説明しよう。

 

トータスにおける魔法は、体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎ込み、魔法陣に組み込まれた式通りの魔法が発動するというプロセスを経る。魔力を直接操作することはできず、どのような効果の魔法を使うかによって正しく魔法陣を構築しなければならない。

 

そして、詠唱の長さに比例して流し込める魔力は多くなり、魔力量に比例して威力や効果も上がっていく。また、効果の複雑さや規模に比例して魔法陣に書き込む式も多くなる。それは必然的に魔法陣自体も大きくなるということに繋がる。

 

例えば、RPG等で定番の【火球】を直進で放つだけでも、一般に直径十センチほどの魔法陣が必要になる。基本は、属性・威力・射程・範囲・魔力吸収(体内から魔力を吸い取る)の式が必要で、後は誘導性や持続時間等付加要素が付く度に式を加えていき魔法陣が大きくなるということだ。

 

 

 しかし、この原則にも例外がある。それが適性だ。

 

 

適性とは、言ってみれば体質によりどれくらい式を省略できるかという問題である。例えば、火属性の適性があれば、式に属性を書き込む必要はなく、その分式を小さくできると言った具合だ。

 

この省略はイメージによって補完される。式を書き込む必要がない代わりに、詠唱時に火をイメージすることで魔法に火属性が付加されるのである。

 

大抵の人間はなんらかの適性を持っているため、上記の直径十センチ以下が平均であるのだが、ハジメの場合、全く適性がないことから、基本五式に加え速度や弾道・拡散率・収束率等事細かに式を書かなければならなかった。

 

 

そのため、【火球】一発放つのに直径二メートル近い魔法陣を必要としてしまい、実戦では全く使える代物ではなかったのだ。

 

 

ちなみに、魔法陣は一般には特殊な紙を使った使い捨てタイプか、鉱物に刻むタイプの二つがある。前者は、バリエーションは豊かになるが一回の使い捨てで威力も落ちる。後者は嵩張るので種類は持てないが、何度でも使えて威力も十全というメリット・デメリットがある。イシュタル達神官が持っていた錫杖は後者だ。

 

そんなわけで近接戦闘はステータス的に無理、魔法は適性がなくて無理、頼みの天職・技能の【錬成】は鉱物の形を変えたりくっつけたり、加工できるだけで役に立たない。錬成に役立つアーティファクトもないと言われ、錬成の魔法陣を刻んだ手袋をもらっただけ。

 

 

一応、頑張って落とし穴? とか、出っ張り? を地面に作ることはできるようになったし、その規模も少しずつ大きくはなっているが……

 

 

対象には直接手を触れなければ効果を発揮しない術である以上、敵の眼前でしゃがみ込み、地面に手を突くという自殺行為をしなければならず、結局のところ戦闘では役立たずであることに変わりはない。

 

この二週間ですっかりクラスメイト達から無能のレッテルを貼られたハジメ。仕方なく知識を溜め込んでいるのであるが……なんとも先行きが見えず、ここ最近すっかり溜息が増えた。

 

 

いっそ、旅にでも出てしまおうかと、図書館の窓から見える青空をボーと眺めながら思う。大分末期である。

 

 

ハジメは行くならどこに行こうかと、ここ二週間誰よりも頑張った座学知識を頭の中に展開しながら物思いに耽ふけり始めようとした時、自分の目の前から聞き慣れた声が聞こえた………

 

 

「ハジメ〜、今持ってる魔物図鑑、読まないなら貸してくれ〜」

 

 

その声の主はいつもお馴染み藤丸立香(主人公)である。

 

そして立香もハジメと同じように訓練の休憩時間によく図書館にいる光景をハジメは目撃していた。

 

それに疑問を持ったハジメは立香に図鑑を渡して後に聞いてみた

 

 

「ん〜それはね、ほれっ」

 

 

受け取った立香は図鑑を読みながら、ステータスプレートを机の上でハジメの目の前に滑らせるという何気に凄い高等技術を発揮しながらハジメに渡した

 

「何それカッコいい、後で教えて貰お」なんてことを考えつつ立香のステータスを見てみると、

 

 

=============================

 

藤丸立香 17歳 男 レベル:3

 

天職:旅人

 

筋力:23

 

体力:23

 

耐性:23

 

敏捷:27

 

魔力:28

 

魔耐:25

 

技能:魔術(ガンド)・言語理解

 

=============================

 

 

ハジメよりは上昇値が上なものの、やはり立香も刻みまくったステータスだった。

 

 

「見ての通り、成長の見込みがなさそうだったからね、鍛える方向性を肉体面から頭脳面にシフトチェンジした訳」

 

「な、なるほど………」

 

 

自分にとってはあまりに説得力のある理由に思わずどもってしまう。

 

そこでふと、立香のステータスの技能の部分にある『魔術(ガンド)』に目が行き、一瞬聞くか迷ったものの好奇心には勝てず立香に聞いてみると、以外とあっさりと答えてくれた。

 

 

「それね、俺もメルド団長とかに聞いてみたけど見たことも聞いたこともないんだってさ、んで試しに使ってみると黒い球体状の魔力弾が指先から発射されて、物に当たっても何も起きないけど、魔物を含めた生物に当たると動きを停止させる、要はスタン状態にさせることができるのがわかった」

 

「それって結構強くない?」

 

「まぁ、攻撃力は1ミリも無いけどね、ただ、スタンさせた対象以外が何かしらのアクション、ゲームに例えるとスタンさせてから1ターン経過するまではスタンが解除されないのが検証の結果だよ」

 

「うん、割とチートだ」

 

「さっきはゲームに例えたけど、実際は自分以外の味方とかほかのエネミーが対象に何かするのもスタン解除に繋がるけど」

 

「つまり、1対1か1体複数でなきゃその強みが活かせないってことか」

 

「そーゆーこと」

 

「あ、そういえば、縮地の方はどうなったの?」

 

「そっちはあの後、俺が縮地を再現できることで話題になったらしいんどけど、結局技能としての【縮地】の方が強いって判断されて、俺の場合は『多少速いだけの無能』ということになったんだよね」

 

「そっか〜」

 

「それで、ハジメの方は何かしらこの世界についてわかった?」

 

 

そこでハジメは自分が得た知識を立香と共有した

 

亜人族は被差別種族であり、基本的に大陸東側に南北に渡って広がる【ハルツェナ樹海】の深部に引き篭っている。なぜ差別されているのかというと彼等が一切魔力を持っていないからだ。

 

神代において、エヒトを始めとする神々は神代魔法にてこの世界を創ったと言い伝えられている。そして、現在使用されている魔法は、その劣化版のようなものと認識されている。それ故、魔法は神からのギフトであるという価値観が強いのだ。もちろん、聖教教会がそう教えているのだが。

 

そのような事情から魔力を一切持たず魔法が使えない種族である亜人族は神から見放された悪しき種族と考えられているのである。

 

じゃあ、魔物はどうなるんだよ? ということだが、魔物はあくまで自然災害的なものとして認識されており、神の恩恵を受けるものとは考えられていない。ただの害獣らしい。なんともご都合解釈なことだと、ハジメは内心呆れた。

 

 

なお、魔人族は聖教教会の〝エヒト様〟とは別の神を崇めているらしいが、基本的な亜人に対する考え方は同じらしい。

 

 

この魔人族は、全員が高い魔法適性を持っており、人間族より遥かに短い詠唱と小さな魔法陣で強力な魔法を繰り出すらしい。数は少ないが、南大陸中央にある魔人の王国ガーランドでは、子供まで相当強力な攻撃魔法を放てるようで、ある意味、国民総戦士の国と言えるかもしれない。

 

人間族は、崇める神の違いから魔人族を仇敵と定め(聖教教会の教え)、神に愛されていないと亜人族を差別する。魔人族も同じだ。亜人族は、もう放っておいてくれといった感じだろうか? どの種族も実に排他的である。

 

【海上の町エリセン】は海人族と言われる亜人族の町で西の海の沖合にある。亜人族の中で唯一、王国が公で保護している種族だ。

 

その理由は、北大陸に出回る魚介素材の八割が、この町から供給されているからである。全くもって身も蓋もない理由だ。「壮大な差別理由はどこにいった?」と、この話を聞いたときハジメは内心盛大にツッコミを入れたものだ。

 

 

ちなみに、西の海に出るには、その手前にある【グリューエン大砂漠】を超えなければならない。この大砂漠には輸送の中継点として重要なオアシス【アンカジ公国】や【グリューエン大火山】がある。この【グリューエン大火山】は七大迷宮の一つだ。

 

 

 七大迷宮とは、この世界における有数の危険地帯をいう。

 

ハイリヒ王国の南西、グリューエン大砂漠の間にある【オルクス大迷宮】と先程の【ハルツェナ樹海】もこれに含まれる。

 

 

七大迷宮でありながらなぜ三つかというと、他は古い文献などからその存在は信じられているのだが詳しい場所が不明で未だ確認はされていないからだ。

 

一応、目星は付けられていて、大陸を南北に分断する【ライセン大峡谷】や、南大陸の【シュネー雪原】の奥地にある【氷雪洞窟】がそうではないかと言われている。

 

 

帝国とは、【ヘルシャー帝国】のことだ。この国は、およそ三百年前の大規模な魔人族との戦争中にとある傭兵団が興した新興の国で、強力な傭兵や冒険者がわんさかと集まった軍事国家らしい。実力至上主義を掲げており、かなりブラックな国のようだ。

 

 

この国には亜人族だろうがなんだろうが使えるものは使うという発想で、亜人族を扱った奴隷商が多く存在している。

 

 

帝国は、王国の東に【中立商業都市フューレン】を挟んで存在する。

 

【フューレン】は文字通り、どの国にも依よらない中立の商業都市だ。経済力という国家運営とは切っても切り離せない力を最大限に使い中立を貫いている。欲しいモノがあればこの都市に行けば手に入ると言われているくらい商業中心の都市である。

 

 

「……てな感じかな」

 

「やっぱり、現状手に入るのはそのくらいか〜」

 

「てことはそっちも?」

 

「俺の方で調べても、手に入るのは全部似たような情報ばっかだね」

 

「う〜ん」

 

「まっ、無い物ねだりしてもしょうがないか」

 

「あ、じゃあさ立香さっきも出てきた「ケモミミとマーメイド?」………」

 

「ハジメもある意味素直だよね〜」

 

「だって、ケモミミ無しでは異世界トリップは語れないしマーメイドは男のロマンじゃないか」

 

「否定はしないけど……」

 

「でしょ〜ってやばっ訓練の時間だ!」

 

「あ〜、俺の方はまだ掛かるから先行ってて」

 

「わかった。じゃあ後でね立香!」

 

「はいよ〜」

 

 

訓練の時間が迫っていることに気がついて慌てて図書館を出るハジメ。王宮までの道のりは短く目と鼻の先ではあるが、その道程にも王都の喧騒が聞こえてくる。露店の店主の呼び込みや遊ぶ子供の声、はしゃぎ過ぎた子供を叱る声、実に日常的で平和だ。

 

 

(やっぱり、戦争なさそうだからって帰してくれないかなぁ~)

 

 

ハジメは、そんな有り得ないことを夢想した。これから始まる憂鬱な時間からの現実逃避である。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

訓練施設に到着すると既に何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。どうやら案外早く着いたようである。ハジメは、自主練でもして待つかと、支給された西洋風の細身の剣を取り出した。

 

 

と、その時、唐突に後ろから衝撃を受けてハジメはたたらを踏んだ。なんとか転倒は免れたものの抜き身の剣を目の前にして冷や汗が噴き出る。顔をしかめながら背後を振り返ったハジメは予想通りの面子に心底うんざりした表情をした。

 

そこにいたのは、檜山大介率いる小悪党四人組(ハジメ命名)である。訓練が始まってからというもの、ことあるごとにハジメにちょっかいをかけてくるのだ。ハジメが訓練を憂鬱に感じる半分の理由である。(もう半分は自分の無能っぷり)

 

 

「よぉ、南雲。なにしてんの? お前が剣持っても意味ないだろが。マジ無能なんだしよ~」

 

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

 

「なんで毎回訓練に出てくるわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」

 

「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」

 

 

一体なにがそんなに面白いのかニヤニヤ、ゲラゲラと笑う檜山達。

 

 

「あぁ? おいおい、信治、お前マジ優し過ぎじゃね? まぁ、俺も優しいし? 稽古つけてやってもいいけどさぁ~」

 

「おお、いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無能のために時間使ってやるとかさ~。南雲~感謝しろよ?」

 

 

そんなことを言いながら馴れ馴れしく肩を組み人目につかない方へ連行していく檜山達。それにクラスメイト達は気がついたようだが見て見ぬふりをする。

 

 

「いや、一人でするから大丈夫だって。僕のことは放っておいてくれていいからさ」

 

 

 一応、やんわりと断ってみるハジメ。

 

 

「はぁ? 俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんの? マジ有り得ないんだけど。お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

 

そう言って、脇腹を殴る檜山。ハジメは「ぐっ」と痛みに顔をしかめながら呻く。

 

檜山達も段々暴力にためらいを覚えなくなってきているようだ。思春期男子がいきなり大きな力を得れば溺れるのは仕方ないこととはいえ、その矛先を向けられては堪ったものではない。かと言って反抗できるほどの力もない。ハジメは歯を食いしばるしかなかった。

 

 

やがて、訓練施設からは死角になっている人気のない場所に来ると、檜山はハジメを突き飛ばした。

 

 

「ほら、さっさと立てよ。楽しい訓練の時間だぞ?」

 

 

檜山、中野、斎藤、近藤の四人がハジメを取り囲む。ハジメは悔しさに唇を噛み締めながら立ち上がった。

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

その瞬間、背後から背中を強打された。近藤が剣の鞘で殴ったのだ。悲鳴を上げ前のめりに倒れるハジメに、更に追撃が加わる。

 

 

「ほら、なに寝てんだよ? 焦げるぞ~。ここに焼撃を望む――【火球】」

 

 

中野が火属性魔法【火球】を放つ。倒れた直後であることと背中の痛みで直ぐに起き上がることができないハジメは、ゴロゴロと必死に転がりなんとか避ける。だがそれを見計らったように、今度は斎藤が魔法を放った。

 

 

 

「ここに風撃を望む――【風球】」

 

 

 

 風の塊が立ち上がりかけたハジメの腹部に直撃し、ハジメは仰向けに吹き飛ばされた。「オエッ」と胃液を吐きながら蹲る。

 

魔法自体は一小節の下級魔法だ。それでもプロボクサーに殴られるくらいの威力はある。それは、彼等の適性の高さと魔法陣が刻まれた媒介が国から支給されたアーティファクトであることが原因だ。

 

 

「ちょ、マジ弱すぎ。南雲さぁ~、マジやる気あんの?」

 

 

そう言って、蹲うずくまるハジメの腹に蹴りを入れる檜山。ハジメは込み上げる嘔吐おうと感を抑えるので精一杯だ。

 

その後もしばらく、稽古という名のリンチが続く。ハジメは痛みに耐えながらなぜ自分だけ弱いのかと悔しさに奥歯を噛み締める。本来なら敵わないまでも反撃くらいすべきかもしれない。

 

しかし、小さい頃から、人と争う、誰かに敵意や悪意を持つということがどうにも苦手だったハジメは、誰かと喧嘩しそうになったときはいつも自分が折れていた。自分が我慢すれば話はそこで終わり。喧嘩するよりずっといい、そう思ってしまうのだ。

 

 

そんなハジメを優しいとい言う人もいれば、ただのヘタレという人もいる。ハジメ自身にもどちらかわからないことだ。

 

そろそろ痛みが耐え難くなってきた頃、突然、

 

 

ドゴッ!

 

「カハッ!」

 

 

さっきまでハジメを蹴っていた檜山がふき飛んだ

 

そして、そこに立っていたのは

 

 

「まったく、遅いよ……立香」

 

「ゴメン、ハジメ……さて」 

 

 

その表情はまるで…………

 

 

「「「ヒィ!」」」

 

 

 

 

 

「次は、どいつだ?」

 

 

 

 

 

 

自分達の命を刈り取る死神のようだった、と彼らは後に語った。

 

 

 

 

 

そこからは一方的な蹂躙だった。ステータスに大きな差がある筈なの彼らの魔法や武器による攻撃をことごくかわし、時に拳で、時に蹴りで、一分もしない内に四人は倒れた。しかし、立香が手加減していたのか、四人は懲りずに立ち上がり、

 

そうして、四人は一斉に立香が襲いかかろうとした時、

 

 

「何やってるの!?」

 

 

と女の子の声がした。

 

 

その声の方向を向くと「やべっ」という顔をする檜山達。それはそうだろう、そこに居たの女の子は檜山達が惚れている香織だったのだから。しかも香織だけでなく雫や光輝、龍太郎もいる。

 

 

「いや、誤解しないで欲しいんだけど、俺達は、南雲達の特訓に付き合っただけで……」

 

「藤丸くん!」

 

 

檜山の言葉を無視して、香織は、ゲホッゲホッと咳き込み蹲るハジメに駆け寄る……のでは無く。ハジメを介抱していた立香の方に駆け寄った。悲しい事に、襲われそうな状況の立香の様子を見た瞬間、檜山達のことだけでなく、怪我をしているハジメのことまで頭から消えたようである。

 

 

「特訓ね。それにしては随分と一方的みたいだけど?」

 

「いや、それは……」

 

「言い訳はいい。いくら藤丸と南雲が戦闘に向かないからって、同じクラスの仲間だ。二度とこういうことはするべきじゃない」

 

「くっだらねぇことする暇があるなら、自分を鍛えろっての」

 

 

三者三様に言い募られ、檜山達は誤魔化し笑いをしながらそそくさと立ち去った。

 

一方香織の方にでは

 

 

「藤丸くん大丈夫!? 怪我は? 痛いところは? どんな傷でも私が治すからね!」

 

「ありがとう白崎さん。でも大丈夫。どこも怪我してないし、痛くも無いから。だから、俺じゃなくてハジメを治してあげて。」

 

「あっうん。わかった」

 

 

立香の言葉でようやく始まった香織の治癒魔法によりハジメが徐々に癒されていく。

 

 

「あ、ありがとう。白崎さん。助かったよ」

 

 

 苦笑いするハジメに香織は首を振る。

 

 

「いつもあんなことされてたの? それなら言ってくれれば」

 

 

不安そうな顔で檜山達が去った方とハジメの顔を交互に見る香織に、ハジメは誤魔化すことにした。

 

 

「いや、そんないつもってわけじゃないから。大丈夫だから、ホント気にしないで」

 

「でも……」

 

 

それでも納得できなそうな香織に再度「大丈夫」と笑顔を見せるハジメ。渋々ながら、ようやく香織も引き下がる。

 

 

「南雲君、何かあれば遠慮なく言ってちょうだい。香織もその方が納得するわ。勿論あなたもよ、立香」

 

 

渋い表情をしている香織を横目に、苦笑いしながら雫が言う。それに礼を言うハジメと肩をすくめる立香。しかし、そこで水を差すのが勇者クオリティー。

 

 

「だが、南雲自身ももっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしていては強くなれないだろう? 聞けば、訓練のないときは図書館で読書に耽っているそうじゃないか。俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛錬にあてるよ。南雲も、もう少し真面目になった方がいい。檜山達も、南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」

 

 

何をどう解釈すればそうなるのか。ハジメは半ば呆然としながら、ああ確かに天之河は基本的に性善説で人の行動を解釈する奴だったと苦笑いする。

 

天之河の思考パターンは、基本的に人間はそう悪いことはしない。そう見える何かをしたのなら相応の理由があるはず。もしかしたら相手の方に原因があるのかもしれない! という過程を経るのである。

 

しかも、光輝の言葉には本気で悪意がない。真剣にハジメを思って忠告しているのだ。ハジメは既に誤解を解く気力が萎なええている。ここまで自分の思考というか正義感に疑問を抱かない人間には何を言っても無駄だろうと。

 

しかし、そこで終わらないのも勇者クオリティーなのだろう。

 

 

「それにこれは藤丸にも言えることだぞ。」

 

「ん?」

 

「どうやら藤丸も訓練がない時は読書してるらしいからな。俺達は世界を救う立場(・・・・・・・)である自覚をしっかり持つべきだ。それに俺達は魔人族から世界を救わなきゃならない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。だからこそ、一人一人が努力すべきなんだ。」

 

「…………」

 

「聞いているのか? 俺は藤丸の為に言って「ハジメ、立てるか? もうすぐで訓練が始まる、行こう」おい!」

 

「ねぇ、天之河………」

 

 

いつもと違う立香にその場にいた全員が底知れぬ不安に駆られる

 

 

「な、何だ」

 

「少し、黙ってくれない? 思わず………

 

 

そして、次の瞬間

 

 

 

燃やしてしまいそうだから

                 」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

息をすることすら忘れてしまう恐怖が全身を襲った

 

 

“燃やす”という言葉はありふれたものだ。地球にいた頃も小説やテレビ、教科書なんかでも見たり聞いたりしてきた。トータスでは魔法という存在によって更に言葉にする機会が増えた。

 

にも関わらず、立香の放った【燃やす】という言葉に信じられないような重みを感じたのだ。まるで、【燃やす】という言葉に自分達が知る以外の【ナニか】があるような気がして。

 

 

あの後、立香がその場からいなくなったことによってようやく五人が動けるようになった。

 

ハジメ、香織、雫、龍太郎が立香を追いかけると訓練施設の隅で右手でネックレスを握り締ている立香を見つけた。少し怯えながら立香に近づくと、それに気づいた立香はいつもの様子に戻っており、「怯えさせてゴメンね」と謝ってきたので怯えることはなくなったが、訓練が終わるまで立香に対する心配は拭えることはなかった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。

 

 

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

 

 

そう言って伝えることだけ伝えるとさっさと行ってしまった。ざわざわと喧騒に包まれる生徒達の最後尾でハジメは天を仰ぐ。

 

 

 

(……本当に前途多難だ)

 

 

 

 

 

 




『第四歩』の細かい解説

・立香withオタク文化
元々日本人ということもありオタク文化には理解があったが、カルデアに来てからおっきーやくろひーなどのオタク系サーヴァントと触れ合い、結果、常人以上の技術、知識を持ったオタクとなった。

・立香の地雷
前世に関わることで少し地雷がある、いつもは抑えられるが今回はハジメが傷つけられていたのと光輝の言葉によって抑えきれずに殺気を纏わせた言葉を放つ……しかし、どうにか理性で抑えたのとお守りとしての役割()持つネックレスで精神を安定させた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。