「んっ………」
森の中。
木陰に隠れるようにして眠っていたエルフの弓使い、アレカ。
その金色に凛と伸びるまつ毛を揺らし、徐々に意識を起こしていく。
生き………てる……の?あたし。
未だ朦朧としたような意識の中で、自分が生存していることを確認する。
靄がかった意識が晴れていくように明瞭とする中で、自分が何かの中に包まれている感覚があることに気づく。
それを半ば無意識に手で押し払うように取り除いていく。
「木の…枝………?」
自身を覆っていたものの一つを手に取るエルフの弓使い。
見ると自分を覆い隠すほどの量くらいに葉のついた木の枝が自身の上に密集しており、アレカは自分がその中に埋もれていた事に気づく。
まるで、“なにか”から見つからないよう身を隠すようにして。
「……………?」
まだ意識が朦朧とするのか呆然と木の枝の山を眺める。
どうして自分がそうなっていたのか、なぜ自分がここにいるのかも分からず、アレカは途方に暮れる。
ひとまず、立つ。
ここ……どこなの………?
そして森に彷徨う迷い子のように、あてもなく歩き出すのだった。
◎◉◎◉◎◉
「ハァッ!」
ズパンッ!
鬨の声と共に少年は一刀を振り下ろす
しかし。
ウゾゾッ、グジュッ。
巨大な手のような生物はその切れた端から編み込まれるように切断面より伸びる細い管のようなもの絡ませるとたちまち元に戻ってしまう。
「くっ!ダメか!」
その過程を見た少年は一度距離を取る。
「ハァッ……ハァッ……」
疲労の色が出始める。
少年の額から汗が伝う。
この攻防も何度目のことか。
もはや少年には数える余裕がなくなるほどに繰り返されている。
再生速度の違いがないかそれぞれの箇所に斬りこんだ。
回数による細胞の再生の限界がないか試した。
核となる部分がないか探り当てるようにもした。
だが、いずれの試みも成果らしいものは得られなかった。
各箇所の再生速度がそもそも数秒で戻るために違いの検討などつかず。
細胞の再生回数の限界などまるで予想もつかない。
核に至ってはまずこの巨大な手のようなものが本体なのかどうかも怪しくなってきた。
終わりが見えない。
「ハァッ……ハァッ……」
加えてここまで連戦による魔力の消耗、疲労が少年の限界を近づけていく。対して巨大な手のような生物は疲れなど知らないかのように――そもそも感じる部位があるのか――無尽蔵に蠢きだす。
「ハァッ……ハァッ……ハァーーーッ……」
深呼吸。
少年は長く、息を吐く。
そして軍刀を鞘に納めた。
「フゥーーー…」
そのまま足を前後に開き、左腕を前に縦に、右腕は後ろに引くような構えに入る。
「……ハァッ!!」
途端、少年が活を入れるように声を張り上げると体中から淡い光のような氣を溢れ纏い出す。
「武之型・『攻ノ陣』」
それと同時に巨大な手が少年に迫る。
そしてその手のひらに少年が喰われようというところで。
「鉄甲!!」
ガァンッ!と。
まるで鉄の杭に打ち込まれたかのような金属音と共に巨大な手は少年がいるところとは真逆の後方に吹き飛んでいくのだった。
「斬ってダメなら叩いてみろ…ってね!」
そしてまたも裏返った巨大な手にさらにたたみかけるようにして少年は駆け出すのだった。