非存在の存在証明   作:トブト

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【証明】~予期せぬ反例~その5

 

 

 

 アレカは目撃した。

 

 異形な姿をしたこの世のものとは思えない生物を。

 まるで巨大な手のようなものが生き物のように蠢いているのを。

 

 

 「な……に…アレ!?」

 

 

 あまりの現実味の無さに言葉に詰まる。

 森のさざめきの中心は明らかにそこから発せられている。

 森の悲鳴じみた声は巨大な手のような生物から鳴り響き、そして消えていくのを森と感覚を共有していたアレカにはしっかりと感じられた。

 

 

 「もしかし……て……森の…魔力を……?」

 

 

 それにより巨大な手が辺りの魔力を吸っていることに気づく。

 さらに、その場にはもう一つの影の存在があることにも気づく。

 

 

 「えっ………うそで……しょ!?」

 

 

 そこには黒コートに身を包んだ人族の少年の姿が。

 少年は巨大な手の触腕の如き指を全てギリギリで躱しながら素手や足による打撃技に転じて応戦していた。

 

 

 「たたっ……かって…るの………?一人で!?」

 

 

 あれほどおぞましい敵を相手にひるまず単身一人で挑んでいることにエルフの弓使いは驚いていた。

 しかし、素手や足が接触する際に少年の魔力も吸われており、本人はまだそのことに気づいていないのか、このままでは少年の魔力が尽きるのが早い状態であった。

 

 

 「いけない……!」

 

 

 すぐさま助けに入ろうと駆けつけるもアレカの足はその途中で止まってしまう。

 

 

 

 出来るの?あたしに?

 

 またあの時みたいに余計に状況が悪くなるんじゃないの?

 

 それはエゴなんじゃないの?

 

 別に求められてもいないのに救いの手を差し伸べる意味なんてあるの?

 

 

 

 

 己の葛藤が囁きかける。

 

 

 

 亜人のゴブリンたちを助けた時に学んだんじゃないの?

 

 自分という存在の意義が。意味が。

 

 あなたがいるから周りが迷惑するの。

 

 あなたが余計なことをするから悲劇が生まれるの。

 

 それとも今度はゴブリンたちのようにあの人族の人間にも恩を売って守ってもらうの?

 

 恩着せがましく命を救った者として讃えられたいの?もてはやされたいの?

 

 そうやって周りを巻き込んで、自分は被害者面?

 

 自分勝手。

 

 浅ましい女。

 

 生きてることが悪。

 

 

 

 

 

 あなたみたいなのって存在する意味ある?

 

 

 

 

 

 

 

 「あた……あた………し」

 

 

 アレカの体は震えていた。

 

 

 「あた………し………どう……すれ…………」

 

 

 板挟みにあい、動けなくなり、どちらを選ぶのが正解か分からなくなる苦しみに喘ぐように目から涙が零れだす。

 

 

 

 

 

 「助けられるのに助けないのは気分悪いだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 「っ!?」

 

 

 突然打ち水を食らったように顔を上げるエルフの弓使い。

 アレカの視界の先には今もなお一人で戦い続ける人族の少年の姿が。

 

 

 そうだ……あたしは別に恩を売るためだとか守ってもらうために助けた訳じゃない。

 

 

 ゆっくりと、姿勢を低くして手には何も持たずに弓を構える態勢を取る。

 

 

 あたしはただ……あの時助けたかったから助けただけ。

 

 

 彼女の手元に光が収束しだす。

 

 

 今も……昔も……そしてこれからも。

 

 

 光は形を成し、密集する。

 

 

 あたしはあたしの魂の声を信じる!

 

 

 そして光は決意を表すように強く輝くのだった。

 

 

 

◎◉◎◉◎◉

 

 

 

 少年は目撃した。

 

 

 「……………えっ!?」

 

 

 少年の視界の先にはエルフの弓使いの姿があった。

 

 

 アレカ!?どうしてここに!?

 まさかもう意識を取り戻したのか!?ダメだ!まだ回復しきってないから逃げ…。

 

 

 そこには、弓を構える姿勢のままこちらを見据えるアレカの姿が見て取れた。

 

 

 まさか…。

 

 

 それにより少年もエルフの心中を察する。

 

 

 「こうなったら一か……バチかだ!」

 

 

 少年は迫る触腕が如き指を躱し、巨大な手の後ろを取ると。

 

 

 「全魔力を注ぎ込めぇえええええええええっっっ!!!!!」

 

 

 自身の魔力全てを右拳に集中させた掌底を巨大な手に炸裂させ。

 アレカのいる方向に吹き飛ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

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