【閑話:Who are you? ~前提条件~】
尾崎僚大という人間がいる。
いや。
いた。
彼という人物を語るにはあまりに筆舌し難いものがある。
否、なにも彼が歩んだ人生が波乱万丈であった、というわけではない。
その生まれが特別だった、というわけでもない。
何かを成した、ということでもない。
空虚。
それが尾崎僚大という人間を言い表す言葉になってしまうからだ。
彼はいわゆる平均的な人間だった。
何事もそつなく、程々にこなし。
人との付き合いも世間一般なもので。
特に問題となるような行動もしない人物だった。
問題を起こすことも無ければ、何かの功績を残すということも無い。
邪険にされることも懇意にされることも無い。
薬にも毒にもならないような人間だった。
だからなのか。
そんな自分に嫌気が差したのか。
それとも偶発的な何かに巻き込まれたのか。
いずれにせよ理由も経緯も定かではないが。
尾崎僚大という人間は命を絶った。
「………消えてなくなりたいな」
そんなどんな感情とも取れぬ言葉を残して。
◎◉◎◉◎◉
【対象の生命活動の停止を確認】
【破損率78%。修復可能範囲】
【過去のバックアップデータよりメモリの抽出。復元作業に入ります】
【復元率99.9%…】
【要請。「………消えてなくなりたいな」】
【承認。要請より最も近似のシステムプログラムを検索】
【結果。“ノン・エクシズテンス”[世界の消失]】
【実行。システムプログラムのアップデートを行います】
【問題。ストレージの不足を確認】
【復元作業の一時停止。ストレージ内の確認作業に入ります】
【警告。メモリの削除は人格モジュールに深刻な問題を引き起こす原因となり得る】
【推奨。メモリのバックアップをクラウド上に保存。自己修復機能の過程よりクラウドとの接続時の読み込み作業での解決方法の提案】
【容認。メモリのバックアップ作業に入ります】
【完了。“ノン・エクシズテンス”[世界の消失]のシステムプログラムにアップデートに入ります】
【問題。エラー発生。システムソフトウェアの情報不足より“ノン・エクシズテンス”[世界の消失]実行コマンドの非表示】
【解決。不足分の付随システムプログラムのダウンロード】
【問題。ストレージの不足を確認。メモリの全消去を行います】
【完了。不足分のシステムプログラムのダウンロードを行います】
【獲得。“トゥルース”[物事の本質]】
【獲得。“アニマ”[生命の形]】
【承認。“ノン・エクシズテンス”[世界の消失]】
【システムプログラム実行に最適な基盤の作成作業に入ります】
【完了。データを注入します】
【試行テスト。オールグリーン】
【全過程の完了を確認】
【終了】
◎◉◎◉◎◉
そして彼が目覚めた時―――。