ポッカ村・湖畔。
うそだ。
アレカの心は荒みきっていた。
仲間を守るために戦うと決め。
そのために人間に託した。
そして人間と共に戦った。
生活も共に過ごすようになり、ここ数日であるものの信頼関係のようなものを築けるようになったと思った。
そう、思っていたのだ。
そのつもりだった。
なのに。
なのに。
なのに。
なのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのに。
それは全て偽りだった。
全て嘘だった。
約束など、最初から守られていなかった。
最初から騙していたのだ。
騙されていた。
裏切られた。
貶められた。
あの屈託のない表情の裏ではいったいどのような感情を隠し持っていたのか。
今ではそんなもの想像もしたくない。
吐き気がする。
頭の中がぐちゃぐちゃにかき混ぜられたよう。
思考が纏まらない。
考えることも難しい。
もうなにも考えたくない。
もうなにを信じればいいのか分からない。
なにを信じて、生きていけば。
信じていたのに。
信じていたのに。
信じていたのに。
「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!!」
気づけば走っていた。
服など纏わず一糸纏わぬ姿のまま。
だがそんなこと気にもしない。
気にする者もいない。
もういない。
誰も、いない。
一人。
そう、一人。
孤独。
途端に込み上げる言いようのない不安。
過去に受けた惨劇。
恐怖。
あの絶望を忘れたことは一日もない。
心細くて、でも失うのも怖くて。
誰か側にいてほしいのに近づくことも出来なくて。
怖い、こわい、コワイ。
もうどうすればいいのか分からない。
どこに行けばいいのか分からない。
どこに向かっているのかもわからない。
今の感情が怒りによるものなのか、悲しみのものか、あるいは清々し過ぎて笑っているのかも。
なにも分からなくなってくる。
自分というものが曖昧になってくる。
現実との境が失われていく。
見えるものが全て暗黒に染まっていく。
何も見えない。
何も感じない。
もう、分からない。
訳が分からない。
自分が生きているのかも───。
「へぇ、こりゃ珍しいことがあるもんだ」
その時、目の前に誰かの顔が逆さに映り──。
◎◉◎◉◎◉
「…………?」
その頃、リリアは何かを感じ取ったかのような素振りを見せていた。
それを見て訝しむオービット。
「どうした?リリア?」
「いえ……まさか……」
いつもならばキッパリとした返答が返ってくるのだがこの時ばかりの召使の少女からの返答は曖昧なものでハッキリとしないものであった。
その様子に異変を感じ取った少年は半ば無意識的に魔眼を開眼させる。
それによって映し出される少年のみが見れる世界の真実。
現実世界に重なるように合わさる物質世界と精神世界。
そこにある現実という表面の裏側を見据えてその範囲を彼らがいる廃屋から始まり、徐々にその範囲を広げ、村を、そしてその外の森にまで伸び──。
そこにそれはいた。
村近く、湖畔より近い森にて。
眩いほどに輝く光の如き魔力の傍にそれを抱えるようにして少年たちのいる村からどんどんと離れていく黒い影のような──。
ギロンッ。
瞬間、影がこちらを覗くように振り向いた。
「!!?」
予想外の反応に思わず魔眼を解いてしまうオービット。
その額には大粒の汗が伝う。
「ご主人?」
主人のただならない様子に召使として気にかけるリリアはその額の汗を拭いに近寄る。
「アレカが連れ去られた」
「え?」
次に出た主人の言葉を聞いて、ゴスロリの召使は思わず手に持っていた手ぬぐいを落とすのであった。