非存在の存在証明   作:トブト

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【命題】〜求めるために〜その4

 

 月光が差し込む夜の森の中を颯爽と駆け込んでいく黒コートの少年、オービット。

 常人ではまずあり得ない怖るべき速さで進んでいるにも関わらず、足音ひとつ立てない技巧の高さは少年を只者ではないと思わせるには十分なもので、彼が通り過ぎた後に風だけが草木を揺らすのみ。

 

 

 「!」

 

 

 静かな追走を繰り広げている中でふと、黒コートの少年は何かを感じ取る。

 それと同時に。

 

 グオッ!

 

 少年の左右前方に武器を構えたオークが二体。

 一方は巨木の丸太をそのまま木槌にしたようなものを振り下ろす直前の体勢に、もう一方はこちらも巨大な薙刀の刃を少年の胴体に狙いを定めて振り被らんとしている。

 さらには少年の死角、背後からも拳鍔のようなものを手にはめたオークが迫っていた。

 それらを一瞥すると黒コートの少年はそのまま目の前に迫ってきているオーク目掛けて直進を続ける。

 オーク達も格好の獲物と言わんばかりに我先にと己の武器を少年目掛けて振るう。

 

 ドゴォンッ!

 

 振り下ろされた木槌が大地を揺らす。

 だがそこに少年の姿はなく、何事もなかったかのように通り過ぎていくのが木槌のオークからは見て取れた。

 

 ビュンッ!

 

 それを狙っていたかのように薙刀のオークがその刃で胴体を切り裂かんと横薙ぎに振るも。

 

 スカッ。

 

 刃は少年の体を通過するもその胴を上下に分けることはなく、ただ通り過ぎるのみ。

 

 

 「グギャッ!?」

 

 

 思わぬ肩透かしを食らわされた薙刀のオークはそのまま勢い余って仲間の木槌のオークにその刃を食い込ませる始末。

 そのままオーク達の包囲網を抜けて先に進む黒コートの少年。

 

 ガッ。

 

 その背を捉えて背後から迫っていた拳鍔のオークは地面へと振り下ろされていた木槌を足場に自身の身を屈めると。

 

 ビュオッ!

 

 と、バネのように跳ねて一気にその巨躯を少年まで詰めらせる。

 そして眼前へと迫る小さな対象の背中に己の拳を繰り出さんと──。

 

 キラッ。

 

 一瞬。

 

 拳鍔のオークの視界に何かが月光に晒されて光るのをその目で見た。

 それが何かと思った時には。

 

 シュパンッ!

 

 何かが自分の体に通過する感覚。

 それも一度ではなく何度も通されたように、それを同時に行われたかのような

 自分の身体の違和感を覚えた頃には拳鍔のオークの体は細切れにされたかのようにその身を崩れ落としていたのだった。

 

 

 「ウ、ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!?!?」

 

 

 それを見て恐怖した木槌のオークと薙刀のオークが逃げ出そうと少年に背を向けて走り出そうとした頃には。

 二体の首も地面に転がり落ちていたのだった。

 

 

 だんだんオーク達の数が増えてきてるな。

 

 

 走りながら、オービットは思考する。

 少年の眼、【魔眼・真円の瞳】を通じて視る夜の森では大きな巨体を持った魔力の塊達が続々とこちらに向かって迫ってきているのが確認出来る。

 

 

 これは……さっきの最初の襲撃の時の音を聞いて駆けつけてるのがほとんどだな。動きがない反応はおそらく待ち伏せだろう。オークは嗅覚による魔力探知が出来るから向こうもこちらほどではないにしてもある程度の位置の把握は出来るんだろう。

 一体一体の戦力は大したものじゃないからそこまで苦戦することはないが………問題は数が多すぎることだな。亜人のオークはその数が少ないと聞いたはずだが一体どこからこんなに湧いてくるのだか。

 ともあれこのままじゃこちらも本調子じゃないからいずれは分が悪くなる。透過して親玉のところまで一直線も悪くはないが…………それをするとオークの兵が全部リリアの方に流れちゃうことになりそうだからな。

 

 それは色んな意味で不味い。(汗)

 

 かと言ってこのまま全部を引きつけて相手をするわけにもいかないしな………。

 

 

 そこまで思考を巡らせたところで少年は。

 

 

 「……アレ、試してみるか」

 

 

 と、口ずさんだかと思えばそれと同時に魔眼に浮かぶ三つの輪を一つへ重ね──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 途端、黒コートの少年の姿は森から完全に消えたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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