非存在の存在証明   作:トブト

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【定理】〜彼らに何があったのか〜その1

 

 

 

 オービットが亜人のオーク達と激闘を繰り広げている最中。

 

 そこより少し遠く離れた位置、ポッカ村と町とを繋ぐ遊歩道の道すがら。

 そこに兵含め、オークの王も行進をしていた。

 向かうはポッカ村。

 狙いは人族の人間二人。

 

 

 「……………………」

 

 

 巨体持ちでそこに一体いるだけでもなかなかの存在感を放つオークの行列はそれだけで他を圧倒するほどの力を有しており、それを如実に示すかのように現在森の中にある遊歩道では彼等オークが行進する足音以外何も聞こえない。

 森までもが、オークに恐れを抱いたかのように鳴りを潜めている。

 

 そんな中、亜人のオークの王は行進をする傍らで物思いに耽るように神妙な面持ちでいるのだった。

 

 

 人族…………カ。

 

 

 それは、標的である人族の者たちのことではなく。

 

 もっと大きな規模でのもの。

 

 王である彼が“敵”と見定めているもの。

 

 

 …………思エバ随分ト遠クマデ来タモノダ。

 

 

 空を見上げる。

 そこには雲一つない晴天の夜月が昼の行燈の代理を務めるように燦然と輝いている。

 

 最初はエルフを追いかけて始めた大移動だった。

 それがいつしか他種族との争いから人族との衝突まで迫る戦いに発展していった。

 こんなことは亜人のオークの王の予定にはなかった。

 

 そもそも。

 

 オークの王は力など欲してはいなかった。

 

 ただ生まれついて捕食したものの魔力を己がものとして内包できるというだけで。

 亜人のオークたちは力そのものを求めてはいなかった。

 

 ではなぜここまでエルフであるアレカを執拗なまでに追いかけているのか?

 

 それは今よりずっと昔の話。

 

 

 

 

 

 だいたい100年くらい前まで話が遡る。

 

 

 

 

 

 

◎◉◎◉◎◉

 

 

 

 100年前。

 

 まだ他種族との交流もあまり盛んではなかった頃。

 それぞれがそれぞれの文明を築き、互いに暗黙の不可侵を貫くことを是としていた時代。

 その均衡をある日破る存在が現れた。

 

 彼らは見た目は同じであれど、知能が高く、そして言語を巧みに扱えていた。

 まるで人のように振る舞う彼らをいつしか人族の人間から取って“亜人”と呼ばれるようになった。

 

 “亜人”は同個体の中から生まれた突然変異体とも生命の新たな進化ともされ、ある時期からその数を増やしていった。

 生活形態は元の種族のものを模してはいるものの人のように喋り、知能が高いこともあってかみるみるうちに文明を築いていった。

 ただ、そんな彼らを不気味がる他種族は多く、それは同種族でも同じで次第に亜人はどの種族からも、同胞からも迫害され、孤立するようになっていった。

 それ故か、いつしか別種族同士の亜人たちが互いの拠り所を求めるように合流していき、結果的に亜人の規模が増え、集落は村に、村は町に、町は国にまで迫る勢いになろうと栄え始めた。

 

 だが、ここで問題が生じ始める。

 

 あまりに数が増えすぎたために統率者が必要となった亜人の国。

 そこで誰を王とするかで亜人間で意見が分裂してしまったのだ。

 ある亜人は我こそはと語り、ある亜人は我らの種族こそがふさわしいと謳い、ある亜人は自分たちが最も優れていると見せつけ。

 他種族同士での集まりの弊害がここに来て起こるようになったのだ。

 

 一度生じた亀裂は元に戻ることはなく。

 

 いつしか亜人たちは各種族間同士に分裂する事態に。

 

 最初は論争から始まり、それは個人間での諍いへと転じ、仲間を巻き込んで抗争になるほどまでになり。

 

 そしていつしか種族間での闘争にまで発展した。

 

 元々知能が高いこともあって戦法もそれぞれ各種族に合った個性的なものから兵法を学んで実際の軍隊のように組織化するところもあり、戦いは苛烈さを増していく。

 

 亜人同士の戦いも長く続き停滞を見せ始めたところで、ある種族がその戦いに介入するようになった。

 

 その種族の介入により、亜人たちの戦いは大きな動きを見せることとなる。

 そしてそれは、彼らの命運を大きく左右することにも。

 後に語られる、史上最も長く続いた戦争、“亜人戦争”の発端となるその種族の名は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人族。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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