亜人同士の争いが続く一方で。
人族側の方でも動きはあった。
数が増え、食糧難や領土での奪い合い、主導者の権利を懸けたものまでetc.
亜人たち以上に争い、そして苛烈さを増していった人族側の戦いも更なる戦力を求めてどこもかしこも躍起になっているなかで、ある国の人族の者が悪魔的な思いつきを起こした。
人族の戦いに亜人を巻き込もう。
これが、すべての始まり。
元凶。
そもそも、亜人とそうでないものの違いとはなんなのか。
他種族のものでも独自の文化と文明を築いているためにわざわざ戦いの渦中にいる亜人よりも余裕があるそちらに話を持ちかけた方がまだ現実的ではある。
血で血を洗い、心も体も磨耗して疲弊してとても他の戦いに繰り出そうとは思えない亜人よりかは闘争心が燻っている安穏とした日々を送っている方を選ぶ方が賢明ではある。
ではなぜ亜人なのか?
答えは単純。
意思疎通が取れるからだ。
亜人とそうでないものの違いの最たるものは知能にある。
亜人は知能が高いために他種族の文化や言語も理解出来る段階にあり、また道具なども扱える。
一方、そうでないものたちはまず意思疎通の取り方が難解すぎたのだ。
言葉らしいものは発していてもそれによる意味合いは分からず文化と文明もほぼ習性のものに近い。
他種族が扱う道具など用途自体が理解できない。
とてもそのような者たちを引き込もうとは誰も考えないだろう。
故の、亜人なのだ。
彼らは言語を介して意思の疎通が図れ。
こちらが提供する道具の扱いもでき。
そして他種族の特徴をそのまま残している。
そこに人族は目をつけた。
まず人族側は亜人に武器を渡した。
“この武器を使って見たまえ。より多くの敵を屠ることが出来るぞ”
そんな体のいい言葉と共に扱い方も教えて。
そして亜人は渡された人族の武器を戦いに運用した。
結果は歴然。人族の武器の威力は亜人たちにとっては強力そのもので、人族の武器を得た亜人側が勝利を収めるものとなった。
人族側の協力を得た亜人の猛追は留まるところは知らず、停滞を見せ始めた亜人側の戦いに大きな変化をもたらした。
それは人族側も同じで。
武器の提供の代わりに条件で亜人の兵を少しばかり人族側にも提供してもらうということで互いのwin-winな関係を築くことに成功した人族側も、亜人を登用した戦場ではいずれも戦勝を収めるに至っていた。
そしてこれにより亜人を登用する人族側の勢力も増えていくこととなる。
人族側の動きも変わってくる。亜人の協力を得るためにより強力な武器を開発、提供をし、味方につけて戦果をあげ、亜人側は人族に協力した種族が勝ち残るまでになっていく。
いつしか人族側では亜人の取り合いのようなものが始まり、より強い種族の亜人を如何に味方につけるかが重要になってくるようになった。
そしてそれは国家間でも行われ、国同士の戦いでも亜人が繰り出されることが多くなった。
亜人を味方にするために強力な武器の開発が必要となり、そしてそれは皮肉にも人族の文明を劇的に向上させることにも繋がっていった。
そして、人族も亜人も入り混じった大戦は泥沼化していく。
より多くの敵を屠るために作られた兵器は多くの命を奪い去り、亜人の猛威は戦場に立つ者たちに恐怖と安心を与え、いつしか亜人同士の威信を懸けた戦は人族の覇権を懸けた争いに巻き込まれる形となった。
これが、100年も続いたとされる亜人戦争の、史上最悪の戦禍と言われている。
この戦争で人族側の被害は甚大であり。
亜人はその数を半分以下にまで減ったという。