非存在の存在証明   作:トブト

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【例外】〜その力はどこからか〜その1

 

 

 

 

 ところ戻って森奥地の激戦区。

 

 そこで亜人のオークたちは錯乱したかのように当惑しきっていた。

 数分前に対象である人族の──黒コートの少年のニオイが突如として消えたこと、にではない。

 

 むしろ、その、逆。

 

 ニオイが、増えた。

 

 それも多数、同時に。

 

 

 「一体ドウナッテイル……?」

 

 

 オークの内一体が独りごちる。

 

 オークの嗅覚は人族の人間並み以上に優れている。

 そもそもはオーク特有の特性に合わせて備わったものとされているが、その中でも魔力をニオイとして捉えることが出来るのは万種揃えどオーク族のみである。

 

 そもそもの話、オークたちがどのようにして魔力のニオイを嗅ぎ取っているのかは現状では解明されていない。

 魔力というのはとどのつまり魔素の集積したもの。その魔素も自然界に多くありふれたもので、それそのものがニオイのようなものを発したりはしない。

 一説では魔素はその保有者の生命エネルギーとする魔力、つまりはその生物に最も適した系統の性質へと変質する特性がある。

 魔力の系統には火・水・雷・土・風・金の六つの基本属性があり、これらが魔素にも当てはまるとされ、自然界にも存在するとされている。

 この時、魔素もしくは魔力が系統を変質する際の働きをする際に発せられるエネルギーのようなものをオークたちは感覚的にニオイとして感じ取れているのではないかと考えられているのだ。

 魔素の研究者が言うには「フェロモンを感じ取れる感覚に近い」と言う。

 またこれにも個人差のようなものがあるともされており、それによりオークは魔力からでも個人のもの、その魔力が誰のものなのかを特定することも出来ていると推察される。

 

 ともかく。

 

 それほどまでに嗅覚が優れた種族であるオークたちが突然追っていた対象のニオイを見失ったかと思えばその次は別のニオイが複数に同時に現れればどうなるか。

 狩りという生死を懸けた極限状態の中、神経を研ぎ澄ますほどに張り詰めていた中で誰も別の存在が接近していたことに気がつかなかったとしたら。

 

 その心中は如何に。

 

 

 「コレモ……人族ノ…………イヤ、待テ。コノニオイ………マサカ」

 

 

 未だどよめきが絶えないオーク兵の中で一体が何かに気づいたようにその次の言葉を発しようとした時。

 

 パァンッ!!

 

 突如その頭を何かで貫かれたかのようにこめかみから撃ち抜かれる。

 それと同時に目は虚を向くと頭から血を噴き出したままその大柄で屈強な体をズズゥンッ、と地へ崩す。

 

 

 「ナニッ」

 

 

 異変に気付いた周囲のオークたちが厳戒態勢を敷こうと身構えたところで。

 

 

 「撃て」

 

 

 宵闇の森の中。

 少年の声が響く。

 

 

 パパパパパパパァアンッッッ!!!!!

 

 静まった夜の森ではいやに響き渡る鋭い音がオークたちを襲う。

 轟音が鳴ると同時にその場にいたオークたちもまるで糸に垂らされた操り人形のように踊ると一体ずつ体から血を噴き出しながら地面の肥やしとなって還っていくのだった。

 

 

 「ナンダ………!?何ガ起キテイル!!?」

 

 

 運よく難から逃れられたオークが木陰に隠れながら未だ姿見えぬ敵の存在へと警戒する。

 轟音は鳴り止むもその静けさと目の前で繰り広げられた惨劇を目の当たりにして一層不気味さをいや増す。

 

 

 「一先ズ………一度、退イテ、体勢、ヲ整エ、直サナ、クテハ………!!」

 

 

 恐怖か、使命か、いずれにせよ。

 

 状況が未だ掴めずにいたオークの一体がその場からの離脱を試みた。

 

 この判断は言わば戦略的撤退。

 未知なる敵に深追いすれば最悪全滅しかねない。

 そうなれば後続となる主力部隊も自分たちの部隊も二の舞になる。

 

 そこまで考えて見えざる敵へと背を向け、駆け出すオークであったが。

 その先。

 駆け出す方向の先に。

 小さな影が。

 

 

 「コノニオイ……マサカ!!?」

 

 

 その姿を視認するよりも先にまず嗅覚の方でその正体をしり、同時に驚愕する。

 なぜならオークが感じ取ったそのニオイの主は。

 

 

 「ゴブリn」

 

 

 その全貌が明らかになるよりも前に。

 

 パァンッ!!

 

 そのオークの頭が弾け飛ぶ方が早かった。

 

 

 

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