非存在の存在証明   作:トブト

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【実証】〜正しいものとは〜その3

 ザッ、ザッ、ザッ。

 

 

 

 森の奥より姿を現し者。

 

 突然の来訪者にオーク達に緊張が走る。

 

 来訪者の足取りはまるで深夜の散歩にでも訪れたかのように軽く──。

 

 

 「どうした?もう戦いは始まってるぜ?」

 

 

 それが開戦の合図かのように。

 

 それまで武器を構えていたオークたちは目の前に敵が現れたことに初めて気がついたように夢見から覚めた心地の中で己を叩き起こすかのように雄叫びを上げる。

 

 あるオークは木槌を、あるオークは薙刀を、あるオークは鋏を、あるオークは棍棒を、あるオークは槍を、あるオークは石器を、鎌を、鋸を、斧を、刀を。

 

 

 

 ドゴォッ!!

 

 

 

 人族の少年目掛けて己の得物を振り下ろす。

 

 轟音は夜の空を伝い辺りへ鳴り響く。

 

 

 「イークダァーッッッ!!イークガ現レタゾォーーーッッッ!!!」

 

 

 止まっていた時の流れが押し寄せるかのような怒涛の追撃。

 

 その中に巨大包丁を片手に周囲のオークたちより一際声高々に突撃をするオーク。

 

 

「討チ取レェー!!討チ取ッタ者ハ昇進ノ褒賞ヲ王ヨリ賜ル栄誉ガ与エラレルゾォー!!殺セー!!死ニ物狂イデ狩レェー!!」

 

 

 味方のオークたちへ檄を飛ばしながら持っている巨大包丁を振りかぶり、先陣を切っていく。

 

 

 「狩リ殺s」

 

 

 

 スパンッ。

 

 

 

 

 小気味良い音。

 

 喧騒が飛び交う中で聞こえたその音の後、誰よりも意気揚々に突撃していた巨包丁のオークの口より上が切り離されていた。

 中空に浮かぶ顔の部分の目がちょうど、仲間達のオークたちの目と合う。

 

 

 「エ?」

 

 「最初から飛ばすぞ」

 

 

 それを皮切りに、人族の少年は姿勢を低く屈め、その体勢のまま迫り来るオークの軍勢を足元を縫うようにして潜り抜けていく。

 

 

 「下ダ!下ニイルゾ!」

 

 

 すぐに捕捉し見つけるも体格の大きいオークに対し人族である少年は小動物のようなもので素早く動く標的を捕らえるのは容易ではない。

 

 

 「イタ、ゾ!ココ、ダ!」

 

 「殺セ!イーク、ヲ殺、セ!」

 

 

 我先に捕らえんといきり立つオークの波が少年一人を押し潰そうとなだれ込むように襲いかかる中で。

 

 

 「すぅー……、ハッ」

 

 

 オービットは静かに、呼吸を整えていた。

 

 

 「五ノ構え」

 

 

 そしてさらに姿勢を低く構える。

 持っていた軍刀の頭身が淡く光り出す。

 

 

 「『虚空両断・孤月円斬』」

 

 

 長物を持つかのように振りかぶり、横に一閃──。

 

 

 

 ズパァンッ!

 

 

 

 少年が抜き身を放つとその周りとその間合いよりも外にいたオークたちも含め大きな弧を描いた斬撃が発生する。

 受ければ如何なるものでも両断される強烈な一撃がオークたちを襲うも。

 

 

 「ん?」

 

 

 少年は違和感を覚える。

 斬撃を受けたオークはいずれもダメージを負うものはいれど致命傷にまでは至れていなかったのだ。

 

 

 硬い……硬化魔法か……。

 

 

 原因とその構成魔法をすぐさま看破したオービットは間髪入れずに第二撃目を叩き込む体勢に入るも。

 

 

 「コォオオオオオオオオオオロォオオオオオオオオオオセェエエエエエエエエエエエエッッッ!!!」

 

 「っ!?」

 

 

 雪崩のように積み重なるオークの群が少年の頭上より押し迫る。

 反応が一瞬遅れた少年は──。

 

 

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!

 

 

 

 

 地鳴りと共に巨体の山が形成される。

 

 一瞬の静寂。

 

 

 「ッ」

 

 

 下敷きとなった対象の沈黙を見ると。

 

 

 「……討ッタゾォオオオオオ!!!!イークヲォオオオオオオオオ!!!!」

 

 

 各々自身の武器を掲げ、雄叫びを上げる。

 亜人のオークたちが勝利の美酒に酔いしれ、互いの健闘を称えていく中。

 巨体の山。

 

 その中より。

 

 

 「よし、撃て」

 

 

 光が遮られた闇の中──何かの合図を告げる声が響く。

 

 間も無く。

 

 

 

 タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッッッ!!

 

 

 鉛の嵐が巨体の山へ襲いかかる。

 

 

 

◉◎◉◎◉

 

 

 

 「作戦の概要はこうだ」

 

 

 突入数分前。

 

 作戦決行前に敵の数の多さに萎縮する亜人の小ゴブリンたちに統率する少年は作戦の内容を伝えていく。

 

 

 「僕が一人で先陣を切る。みんなは後から合図を出したら援護射撃をしてくれ」

 

 

 それだけ。

 

 それだけしか、言わなかった。

 

 

 「ア、エッ……」

 

 

 小ゴブリンたちの反応は尤もなもので。

 不安はより増していく。

 

 

 「ヒ、一人デ……!?」

 

 

 オービットの強さは小ゴブリンたちも知るところではある。

 先の戦いもないしここ数日で少年から訓練を受けた彼らにその実力を疑う者はいない。

 それでもなお、黒コートの少年がいくら強かろうが向かう先はオーク。しかも本陣。敵本拠地なのだ。

 そこに単身で突っ込んでいくというのはいくらなんでも無謀としか言いようがない。

 そんな小ゴブリンたちの心配をよそに当の本人はというと平然とした様子で続けていく。

 

 

 「問題ない。今の僕一人なら全員を相手にするのは無理でもしばらく凌ぐくらいは準備運動と同じだよ。それに……」

 

 

 少年は小ゴブリンたちを一人ずつを確かめていくように見ていく。

 

 

 「みんなが後ろについてくれている。こんなに心強いことはない」

 

 

 真っ直ぐとした目。

 憂慮することなど無いかのように語りかける。

 

 一年も共に過ごしてきたアレカと違い、少年と亜人の小ゴブリンたちの交流は長くはない。

 その短い期間で過ごしてきた中でも両者間には信頼のようなものが築かれているのは確かであった。

 

 

 「僕が一人で突っ込んだ後、奴らは一斉に僕を取り囲み襲うはず。そうなればタイミングを見てこの通信機から合図を出すからそしたら僕もろともでいいから一斉射撃を頼む」

 

 「エ……デモ……」

 

 「ワカッタ」

 

 

 小ゴブリンの中には戸惑いの色を見せる者もいたが精悍な顔立ちをした小ゴブリンがそれを諌めるように先に承諾をした。

 

 

 「サー、ダガ、ソレデハ、一斉射撃、ノ後ニ、奴ラガコッチ、ニ流レ込ンデクル、ノデハナイ、カ?」

 

 

 精悍な小ゴブリンの言うことは最もで、ひとたび小ゴブリンたちが近くにいることをオークたちが気付けばすぐさま蹂躙しに狙うオークもいるだろう。

 魔導銃がある小ゴブリンたちといっても単体で狙われてしまえばたちまち格好の獲物となる。

 しかしそれに対しても少年には何か考えがあるようで。

 

 

 「それに関しても対策はしてある。もし奴らがみんなの方に狙いを定めた時は……」

 

 

 と、少年は言いながらに悪戯をする子どものような笑みを浮かべながらにどこからかあるものを取り出した。

 

 

 「コレを使おうと思う」

 

 

 それは────。

 

 

 

 

 

 

 

 

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