転生先は大好きな世界でした   作:Monburan

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入学編
転生します


校門の前に爽やかな風が吹きます。

 

『高度育成高等学校』

 

それが私の目の前にある学校名。

 生まれてから15年間、私の目指してきた学校。

 そして私の本当の人生が始まる学校。

 

「おっ、俺はDクラスか」

 

「やぁ、君もDクラスかい?僕も同じクラスなんだ。これからよろしくね」

 

屋外の提示板に張り出された各クラス毎に分けられた自分の名前を見つけて、それぞれの生徒がそれぞれの出会いの形を繰り返していく。

 そして、それは私も同じ事で……

 

「……Dクラスですか」

 

クラス毎に出席番号順で並べられた自分の名前を見つけて、私は確認するかのように小さく声をあげて先ほどの二人を見ます。

 

「……彼らと同じクラス」

 

目の前では先ほどの二人がDクラスの教室へと話ながら足を運んでいきます。

 

「月野さん、私もDクラスだよ。同じクラスなんてラッキーだね、これから仲良くしてねっ」

 

ふと、私の名前を呼ぶ声に気がつき、声のする方へと振り返ります。櫛田桔梗ちゃん、先程バスの中で知り合った私の初めてのお友達。

 

「うんっ、これからよろしくね。櫛田さん。」

 

私は櫛田さんの声に答えると、周りの景色や人々を確かめるように眺めながらゆっくりと歩き出しました。

 

初めて訪れた学校、初めて知り合った人たち、そして初めて迎える高校の入学式。

 ……だけど私は知っています。

 私だけが一方的に彼らや彼女の事を。

 それは現実ではなく本の中で、何度も出会い、何度も見てきた存在だったから。

 前世の、今とは違う世界の中で──────

 

 

 

 

目を覚ますと真っ白な空間でした。

 

「ここは…」

 

目の前にはまるで神様のような神々しいお爺様が宙に浮いていて、この状況を肌で感じるように私はすぐに理解しました。

 

「あ~私は死んだのですね」

 

私、月野栞(つきのしおり)は子供の頃から体が弱く、22才のつい先程まで、ずっと病院の中で過ごしていました。

 幸いなことに自由な時間はたくさんあり、読書や勉強など好きなことに時間を使うことができ、学力も大学卒業くらいのレベルはあります。

 

「目が覚めたようですね、月野栞さん」

 

「はい。神様でよろしいのでしょうか?」

 

お爺様は優しく頷いてくれて、私は理解したはずの疑問を独り言のように声に出していました。

 

「私の人生は終わったのですね」

 

「うむ、しかしずっと病院での生活も退屈であったであろう。その事を考慮し栞ちゃんには二つの選択肢をあげよう」

 

突然の出来事に戸惑いながらも私はどこか冷静で、神様の言葉をそのまま受け止めます。

 二つの選択肢、ですか……天国と地獄でしょうか?

 それなら天国がいいです。

 

「一つはそのまま天国へ行くこと。そしてもう一つは君が大好きだった、ようこそ実力至上主義の教室への世界へ転生することじゃ」

 

えっ、今なんて……

 私は神様の想定外の言葉に一瞬驚きますが、すぐに転生という言葉の意味に辿り着き、繰り返すように同じ言葉を発しました。

 

「ようこそ実力至上主義の教室への世界に転生できるんですか!?」

 

私が病院生活の中で読んでいたラノベで一番好きだったのが、ようこそ実力至上主義の教室への世界でした。

 登場人物やその人の特徴に能力または各種イベントに至るまで、何度も読み返したおかげで余すことなく覚えています。

 そんな大好きな世界に転生できるなんて夢のようです。

 

「転生します!」

 

私は迷うことなく神様に自分の意思を伝えます、神様は微笑みながら頷き言葉を返してくれました。

 

「うむ、転生じゃな。それでは転生するにあたり、何か一つ栞ちゃんが望む転生特典をあげよう」

 

……転生特典!?

 転生できるだけでも嬉しいのに特典まで貰えるんですね。 

 とっても嬉しいです……

 

どうしましょう、迷います。

 そもそも私ってずっと寝たきりだったのですが、体力とか大丈夫なのでしょうか?

 私が生き抜いていく上で転生特典はとても大切なものになるでしょうし慎重に決めなくてはいけません。

 

「神様、質問よろしいでしょうか?」

 

「うむ、よいぞ」

 

「私ってずっと寝たきりの生活だったのですが、転生先で体力とかは大丈夫なのでしょうか?」

 

「転生先では今の記憶や能力も引き継ぐ形になるのじゃ、つまり体力もとい身体能力も今のままじゃ。更に言うと高校の入試までは今と同じで病院生活を余儀なくされ、入学してからも運動はかなり厳しいのう」

 

えぇぇぇ、どうしよう!?

 思ったよりもハードモードでした。

 つまり中学3年の終わり頃までのおよそ15年間、また病院のベッドで生活をするのですね……

 そして入学してからも運動が厳しい状態でスタートですか、せっかく転生したのに何もできずに人生終了していまいそうです。

 

 

「それでは特典は身体能力の強化にしていただけませんか?」

 

 

せめて次の人生では自由に動きたいという願いから、少し考えて私は身体能力の強化をお願いしました。

 特にようこそ実力至上主義の教室への世界でしたら、運動が必要な試験も多く存在するので必須な能力と言えます。

 

「うむ、わかったぞ。では身体能力を強化しようぞ。ただ、この能力が発揮されるのは入学初日からとなるから気を付けるのじゃ」

 

ピカーっと私の体が一瞬光ったのちに元に戻りました。入学初日から……それまでは堪えるしかないようですね。

 

「では引き続き転生について大切な話をしておこう」

 

大切な話、なんでしょう?

 

「実は転生するにあたりなんの試練もなく転生することはできないのじゃ」

 

そうなんですね、転生ってすごいことですもんね。

 納得しつつも試練という言葉が気になり、どきどきしながら話を聞きます。

 

「よって転生した世界でAクラスで卒業すること。これが今回の試練となるのじゃ」

 

……Aクラスでの卒業

 

ようこそ実力至上主義の教室へでは、各学年にA~Dの4クラスが存在しています。各クラスはポイント制で、より高いクラスポイントを保持しているクラスから順に一番上がAクラス、そして一番下がDクラスと毎月クラス単位で変動します。

 ポイントは期末試験や中間試験等の学力が試される試験や、体育祭や合宿等の運動能力が試される試験など数多く用意されており、その結果に応じて変動します。

 そしてこのシステム上、3年間クラスメイトは同じとなり、入学時に同じクラスになったメンバーと3年間Aクラスを目指して戦い続ける事になるのです。

 

そういえば私はどのクラスからのスタートなのでしょうか?

 入学時のクラス分けはAクラスに比較的優秀な生徒が集まり、逆にDクラスは問題児や特殊な人が集まるようになっています。

 そんな私の心を読んだかのように神様が答えてくれました。

 

「ちなみに栞ちゃんはDクラスからのスタートじゃ」

 

どうやら一番どん底のクラスからAクラスへと這い上がる必要があるようですね……

 私がDクラスである事に懸念を抱いていると神様が更に追い討ちをかけます。

 

「あと、Aクラスでもし卒業出来なかった場合はそこで人生終了じゃ」

 

うっ……せっかく転生したのに動けるようになって3年で人生終了は嫌です。絶対にAクラスで卒業して見せます、頑張ります。

 

「ちなみに退学の場合はその場で終了じゃ」

 

うぅ……私、生きていけるでしょうか。次々に突き付けられる条件に段々と心が折れてきた私は、神様に一つお願いをしました。

 

「神様……ちょっと自信がなくなってきました、何でも結構ですのでもう一つだけ転生特典ほしいです……」

 

神様は膝立ちで両手を組みながらお願いする私を見て渋りながらも願いを聞き届けてくれました。

 

「むむむ、仕方ないのぉ。では何でもではないが、このガチャの中から出た特典を一つあげよう」

 

やりました!言ってみるもんですね、急に目の前に現れたガチャの装置を見ながら、私はガチャを回す手に力を入れます。

 ふと、回す前に気になったことを神様に聞いて見ます。

 

「神様、このガチャってどんな内容の特典が入っているのですか?」

 

「うむ、色々入っておるぞ。例えば……」

 

・Aクラスからスタート

・一度だけ必ず告白に成功する

・足が速くなる

 

「などがあるのぉ」

 

最後のはいらないですね、Aクラスからスタートとか嬉しいです。あと告白成功も嬉しいです。新しい人生なので、青春も謳歌したいですし。

 私はAクラスからスタートを夢見てガチャを回します。

 

「神様ガチャ回します!」

 

「うむ、がんばるのじゃ」

 

お願いします、いいの出てくださいっ。両手を組んで目を瞑りながら祈る私。そして……

 

『ガラガラゴロゴロ……パカッ』

 

「うむ、こ、これは……」

 

「こ、これは……?」

 

「同性に好意を持たれやすくなる。という特典じゃな」

 

えっ?同性に好意を持たれやすくなる……同性に?

 それって使い道があるのでしょうか?

 

あっ、でも友達が作りやすくなるって考えたらいいですね。登場人物のヒロインの人や他の人ともたくさん仲良くしたいですし。 

 私がポジティブに受け取っていると神様が慌ただしく動き始めました。

 

「そ、それではそろそろ時間なのじゃ。栞ちゃんの新しい人生を楽しみに見守っておるぞ」

 

「あっ、はい。ありがとうございました」

 

そこで私の記憶は途絶え次に目が覚めたとき、私は病院のベッドの上でした。体は自由に動かず、声を出そうにも泣き声を上げることしかできません。

 ただ記憶はしっかりしていて、前世の記憶や転生した事、そして……これから私のやるべき事は全て、既に頭の中で動き始めていました。

 

 

それから15年後……

 

 

「お母さん、行ってきます」

 

「栞、本当に体は大丈夫なの?」

 

「うんっ、もう大丈夫だよ。お母さんも見たでしょ?ちゃんと走ったりだって出来るんだから!」

 

先日から急に体が動くようになった事もあって心配そうに見送る母に、私は満面の笑顔で答えます。

 そんな私を母は不安そうに見つめながらも優しく見送ってくれました。

 

「そうね、学校行ってらっしゃい。これから寮生活になるんだし無理はしないようにね?」

 

「うんっ、行ってきます。無理はしないから心配しないで、しっかり卒業して帰ってくるね」

 

見送る母に手を振り私は学校に向かうバス停へと歩き出します。

 これから3年間、原作がスタートする今日この日から、ようやく私のAクラスで卒業するための戦いが始まります。

 願わくば今までの人生で経験出来なかった数多くの青春を、そして多くの仲間と共にAクラスで卒業できますように……

 

 

そんな希望を胸に抱きながら。

 

 

 

『ようこそ実力至上主義の教室へ』

 

 




氏名 月野栞

クラス 1年D組

学籍番号 S01T004750

部活 無所属 
 
誕生日 1月16日

評価

・学力A

・知性A+

・判断力A

・身体能力E-

・協調性E-


担当官からのコメント

小、中学校と入院がちで、ほとんど出席がなく情報がない生徒。
しかしながら、本年度における筆記試験と面接試験で満点を記録するなど非常に優秀な生徒でもある。
学年トップレベルの知性ながらも、長期間の欠席と身体能力及び協調性が不明な点を憂慮しDクラスへの配属とする。
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