転生先は大好きな世界でした   作:Monburan

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一歩ずつ

千尋ちゃんの告白を無事……無事に乗り越えた私は須藤くんの暴力事件の成り行きを静かに見守っていました。

 どうやら原作通り綾小路くんと堀北さんが須藤くんを助けるために、平田くんや櫛田さんと協力して目撃者を探していること。

 そして、Bクラスの一之瀬さんと神崎くんに協力をしてもらって学校の提示板で情報を集めていること。

 だけど結果として、目撃者も有能な証拠もひとつも見つからないこと。

 

そんな日々が続き、刻一刻と時間は過ぎていきました。

 

 

金曜日のお昼休み。私が廊下を歩いていると、前から怪我をしている3人の生徒と龍園くんが歩いてきました

 

「よぉ、栞」

 

「龍園くん、お久しぶりです」

 

「ククッ、Dクラスは大変そうだな」

 

「そうみたいですねっ、そちらの3人も痛々しいお姿ですね。まるで、須藤くんに殴られたせいではなく、そう見せるため、他の誰かに殴られたような……」

 

3人は体をびくっと反応させて、龍園くんを見ました。

 

「万が一、訴えが虚偽だったなんてことがあれば

……退学かもしれないですね」

 

私は3人を見ながら言います。

 

「おい、栞。被害者はこっちだ。

証拠もねえのに適当なこと抜かすな」

 

龍園くんは私を牽制するように言いつけてきました。

 

「そうですねっ、失礼しましたっ。証拠、見つからなければいいですね?」

 

 

私はゆっくり歩いてその場を離れました。

 

 

そして、月曜日。明日は審議会で判断が下される日です。

 審議会には須藤くんと綾小路くん、櫛田さんが出席することで決まっております。

 

そして、問題の須藤くんですが、今はかなり憔悴しているようです。

 そぉですよね……先週から目撃者も証拠も集まらない上に、逆に須藤くんに対する今までの素行の悪い話。

 例えば、ゴミ箱を蹴り倒した~前の学校で喧嘩して高校の推薦を取り消しになった等が、提示板にたくさん流れているのですから……

 まぁ、私が流したんですけど……

 

須藤くんはクラスメイトからは冷たい視線で見られ、退学はほぼ確定の状態です。

 たくさん追い詰めてあげたほうが今後の改心に繋がるでしょうし、この後も楽ですしね。

 

そしてその日の放課後

 私は須藤くんに初めて自分から話しかけました。

 

「須藤くんちょっとよろしいですか?」

 

須藤くんは私が話しかけてきたことに、めんどくさそうな顔をしながら答えます。

 

「なんだよ?」

 

私は彼の耳元に小声で言いました

 

「私とバスケットで勝負をしませんか?須藤くんが勝ったら退学にならない方法を教えてあげますよ」

 

須藤くんは驚きと疑いの眼差しで私を見てきます。

 

私は彼の答えを聞かずに

 

「ついてきてください」

 

とだけ口にし、屋外へと出ていきました。

 

私は校舎から出ると、後ろをついてきた須藤くんに振り向き、言いました。

 

「勝負は明日の朝、5時。場所は屋外にあるバスケットコート。ボールは持参してください。須藤くんが勝てば、私はあなたの退学を阻止してあげます。その代わり私が勝ったら、なんでも言うことを聞いてください。またこの勝負のことは誰にも話さないこと。どうですか?」

 

須藤くんは不満そうに言います

 

「なんでもってなんだよ?」

 

私は言い返します。

 

「あらっ、負けるつもりなのですか?」

 

須藤くんは舌打ちをして聞き返します。

 

「本当に退学を阻止できるのか?」

 

「はい、必ず」

 

私は彼の目を強く見て言いました

 

「わかった。明日の朝、5時にいく」

 

「はい、お待ちしてますね」

 

 

 

こうして私は初めてのバスケットボールを始めるのです

 

 

 

次の日の朝5時、私は須藤くんとバスケットコートに立っていました。本日は審議会の日。須藤くんが退学になるかどうかが決まる日でもあります。

 

「須藤くん準備はよろしいですか?」

 

「おぉ、いつでもいいぜ」

 

勝負は1on1。お互いに攻めと守りを交互に行い、今回は先に3回ゴールした方が勝ちというルールです。

 

「では、須藤くんからどうぞ」

 

私は須藤くんにボールを渡します。

 須藤くんはドリブルを始めて私に近づきます。

 その瞬間、私はドリブル中のボールを奪いとりました。

 

「あ、なんだいまの!?」

 

ふふっ、わたしの身体能力様にかかればこんなのハエ叩きの要領と同じなのです。

 ボールが地面と相手の手の間にある時に奪ってしまえばいいのですからっ。

 

「次は私の攻撃ですね」

 

私はボールを持つと、そのボールを須藤くんとゴールの間に投げてから、全速力でボールを取りに行き、ゴール前でシュートします。

 無事ゴールに入りました。

 

そんなことを何回か続けているうちに3-0で私が勝ちました。

 須藤くんは悔しそうな、納得できなさそうな顔をしていますが諦めてほしいです。

 

「私の勝ちですね、これで須藤くんは退学です。残念でしたね」

 

須藤くんは得意のバスケットボールで女子に負け、地面に座り込んでうつむいていました。

 

「須藤くんはどうして退学になりたくないんですか?」

 

「俺はバスケットでプロになりてえんだ。そのためにここに入った。だからこんなところで退学になるわけにはいかねえ」

 

須藤くんは拳を握り締めて言いました。

 

「じゃぁ、とりあえず素行を直した方がいいと思うよ?このままじゃいくらバスケットが上手くても退学になっちゃうよ?それに、須藤くんがプロになったときに暴力を振るうプロなら私は応援したくないな。プロになるくらいの人なら、みんなが憧れるような優しい人がいいよ!」

 

須藤くんをはうつむいたまますこし考えて言います

 

「…そぉーかもしんねぇな」

 

私は須藤くんの目の前にしゃがみこみました。

 

「今からでも間に合うんじゃないかな?」

 

須藤くんは私のことを見ながら言います。

 

「けど、オレは負けて……」

 

「須藤くんがこれからの高校生活で今までの素行を改めて、バスケットだけでなく、人としてもしっかりと自分を見直してくれるなら、今回は助けてあげるよ?」

 

……そして長い沈黙のあと

 

「わかった。約束する。喧嘩はもうしねえ」

 

「うん、もし破ったら今度は私が退学にさせてあげるから安心していいよっ」

 

「ちっ、そりゃ勘弁だぜ」

 

須藤くんは笑いながら答えます。

 

「あ、もちろん。勉強もだから、ね?」

 

須藤くんの笑いは消えました。

 

 

須藤くんとのバスケットが終わったあと、私は一度寮に戻ってシャワーを浴びてから学校に向かいました。

 そして、ひよりちゃんから聞いた龍園くんのアドレスにメールを送りました。

 

「お元気ですか?龍園くん、月野栞です。今回の事件の証拠を持っています。訴えを取り下げない場合は、審議会で使わせて頂きます。審議会終了後、この証拠は10万ポイントで買い取ってください。それでは失礼します」

 

ふぅ、これでいいでしょう!

 あとは念のために審議会に参加する櫛田さんに、いつでも証拠の動画を受け取ってくれるように準備してもらえばいいですねっ。

 

 

 

そして、審議会。

 Cクラスは訴えを取り下げてくれたようで、何事もなく終わりました。

 あっ、龍園くんも10万ポイントで証拠のペン型カメラの動画を買い取ってくれましたっ!

 ちゃんと再度の訴えを禁止することと、証拠の複製の禁止も契約してきたので安全です。

 

その後、須藤くんは教室でみんなに迷惑をかけたことを謝り、これからは態度を改めることを誓っていました。

 

 

 

こうして私たちは一歩ずつ成長していくのです

 

 

 




氏名 須藤健

クラス 1年D組

学籍番号 S01T004672

部活 バスケットボール部
 
誕生日 10月5日

評価

・学力E

・知力E

・判断力D+

・身体能力A

・協調性D


担当官からのコメント

学力、生活態度共に多々問題があり、入試結果では学年最下位を記録する。この結果は当校設立以来ワーストとなり、Dクラス配属以外に検討の余地はない。ただし、スポーツ特にバスケットボールの技量においては中学生の段階から高校生級と評価されており、本年度よりスポーツ分野に更なる力をいれている当校においても、今後に大きく期待できると言える。特に精神面での成長を求める。
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