Dクラスの教室へ入ると既に多くの人が登校していました。
これから3年間、Aクラスに上がる為にこのクラスメイトたちと多くの試験を乗り越え、他のクラスと戦って勝利して行かなければなりません。
そういえば私って誰かに成り代わっての転生でもないですし、机の数とか足りるのでしょうか?
急に増えたから席がないとかいういじめにあわないか心配です……
一緒に登校した櫛田さんを見ると、早くも自分の席を見つけて鞄を置いています。
どうやら席ごとにネームプレートが置かれているようですね。
「私の席は~」
私も急いで教室を見回します、そしてすぐに教室の机の配置に違和感を覚えました。
……なんでしょう、たしか原作では綾小路くんの席は窓側の一番後ろのはず、その後ろに一個だけ見覚えのない席が増えているのですが……
「とっても嫌な予感がしますが念のためにネームプレートを見に行きましょう」
私は窓側の一番後ろの席へと移動します。
『月野栞』
やっぱりぃ!? 絶対変だと思ったもん だって机の数明らかに増えてるし、しかもこの縦列って男子の列だよね!?
絶対わざとでしょこれ!!
うぅ……とはいってもここが私の席みたいですし、諦めて座ることにします。
「次の席替えまでよろしくお願いします」
私は自分の席を撫でながら仲良くすることにしました。
「月野さん席見つかったぁ?」
「あっ、うん、櫛田さん。あったよ、ちょっと櫛田さんとは離れちゃったけど」
心配して駆け寄ってくる櫛田さんに私は寂しそうに言います。
……櫛田さんはクラスの中心に近くの席なので手を伸ばしても届かなそうですね。
「あはは、けど窓側の後なんて当たり席だよぉ」
「そぉかなぁ。そう思ってがんばるよぉ」
短い会話を終えて、櫛田さんも自分の席に戻っていきます。
よしっ、気を取り直して近くの席の人と交流しよう!
さっそく近くの席の住人をチェックします。
一個前の席には綾小路くん、そして右斜め前には堀北さん。あれっ、二人とも一匹狼タイプじゃん。
やっぱり私もうダメかも……
私が一人落ち込んでいると、前の席から声が聞こえ始めました。
「オレは綾小路清隆よろしくな」
綾小路くんが堀北さんに対して発した声に耳を傾けます。
「いきなり自己紹介?」
「いきなりって言うけど、会話するの二回目だしな。別にいいだろ……それくらい」
どうやら二人は、バスを降りてから一度お話をしていたようです。
その後、綾小路くんが事なかれ主義だって事と、堀北さんが名前だけの自己紹介してるのを聞きながら、静かに時がたつのを待ちました。
あっ、始業のチャイムだ……
『ガラガラガラガラ』
チャイムが鳴るとすぐにドアが開き先生が入ってきました。茶柱先生、クールで綺麗な先生です!
「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく。今から一時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校のルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前入学案内と一緒に配布してあるがな」
うんうん、外部と連絡とったらダメとか禁止事項の紙ですね。
「また、今から配る学生証カード。それを使い、敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店などで商品を購入することができるようになっている。クレジットカードのようなものだな。ただしポイントを消費することになるので注意が必要だ。学校内においてこのポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものならなんでも購入可能だ」
「施設内では機械にこのカードを通すか、提示することで使用可能だ。使い方はシンプルだから迷うことはないだろう。それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっている。お前たち全員に平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。なお、1ポイントにつき1円の価値がある。これ以上の説明は不要だろう」
やったぁ、10万円!けど原作では来月からDクラスの貰えるポイントが0ポイントになっちゃうんですよね……
毎月1日に振り込まれるとは言われているけど、今後も同じ金額とは言っていないという罠。
今から節約しないと……
その事を先にクラスのみんなへ教えてあげる事ができればいいのですが……
きっとそれをやると原作と色々変わっちゃう気がするので今はおとなしく傍観しましょう。
「ポイントの支給額が多いことに驚いたか?この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちにはそれだけの価値と可能性があると言うことだ。だが無理矢理カツアゲするような真似だけはするなよ?学校はいじめ問題にだけは敏感だからな」
つまり私のこの席はいじめじゃなかったんですね、安心しました。
茶柱先生がぐるりと周りを見渡します。
「質問はないようだな。では良い学生ライフを送ってくれたまえ」
それだけ言い残して茶柱先生は教室を出て行きました。
生徒だけの環境になった教室内が急に騒がしくなります、席が近い人でお話をしてるみたいですね。
「帰りにいろんなお店見ていかない?買い物しようよ」
「いいね、色々まわってみよ」
「おい、ゲーム見に行こうぜ」
「おお、学校終わったらすぐ行くか」
みんな仲良くなるの早すぎじゃない!?
いつの間にそんな友達増えたのっ!
「みんな少し話を聞いてもらってもいいかな?」
騒がしかった教室が静かになります。
その穏やかな声は思ったよりも響き渡り、ほぼ全員が彼に注目します。
平田洋介くん、原作でDクラスの中心人物。
容姿に学力、運動に社交性と全ての偏差値が高く、どうしてDクラスにいるのか不思議に思える人物です。
「僕らは今日から同じクラスで過ごす事になる。だから今から自発的に自己紹介を行って、一日も早くみんなが友達になれたらいいと思うんだ。入学式まで時間もあるし、どうかな?」
賛成だよ、平田くん!
声に出していう勇気はないけど心の中では大賛成だよ!!
私はようやく自分の存在がアピールできる場が出来る事に心の中で喜びます。
平田くんは多くの人の好意的な眼差しを受けてそのまま続けます。
「それじゃぁ、まず僕から自己紹介するね。僕の名前は平田洋介。中学では普通に洋介って呼ばれることが多かったから、気軽に下の名前で読んでほしい。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きで、この学校でもサッカーをするつもりなんだ。よろしく」
『パチパチパチパチ』
「もし良ければ端から自己紹介をはじめて貰いたいんだけど……いいかな?」
平田くんの提案で順番にみんな自己紹介をしていきます。
これで私も存在をアピールできるよ!
あっ、櫛田さんの番です。
「私の最初の目標として、ここにいる全員と仲良くなりたいです。みんなの自己紹介が終わったら是非私と連絡先を交換してください」
さすが櫛田さん、スケールが大きいですね……
「じゃぁ次は…」
促すように次の生徒に視線を送る平田くんに初めて反対の声が上がりました。
「俺らはガキかよ、自己紹介なんか必要ねえ、やりたいやつだけでやれ」
ひぃ……あ、あれが須藤くんですかぁ、髪も赤いしほんとにヤンキーって感じですね。
「僕に強制することはできない。でもクラスで仲良くしていこうとすることは悪いことじゃないと思うんだ。不愉快な思いをさせたのなら謝りたい」
平田くんはなんも悪くないのに優しいなぁ……
けどこの先、軽井沢さんっていう女の子とニセコイするからあんまり近づき過ぎない方がいいのかなぁ。
私が平田くんを見ているうちに、結局須藤くんは自己紹介することなく教室を出て行きました。
そして堀北さんや数人の人も続くようにいなくなってしまいます。
それから残った人で順番に自己紹介しつつ、残りは綾小路くんと一番後ろの私の二人だけ。
あれっ……私、最後なんだ。
なんか緊張してきたよ……
それに確か綾小路くんの自己紹介って……
「ガタッ!」
綾小路くんが勢いよく立ち上がります。
あまりの勢いの良さに全員が集中して綾小路くんを見つめました。
「えーえっと、綾小路清隆です。その、えー得意なことは特にありませんが、みんなと仲良くなれるようにがんばりますので、えーよろしくおねがいします」
勢いの割に普通すぎた自己紹介に、苦笑いのような拍手が場を包みます。
あっ、私も拍手しなきゃ。
『パチパチパチパチ』
そうでした……綾小路くん一世一代の自己紹介で頑張りすぎて失敗しちゃうんだった。
そんな微妙な空気の中、平田くんが目線で私に自己紹介を促してきます。
えっ?この空気の中、最後の自己紹介してって?
やっぱりこの席は罠だったんですね……
「みなさん、はじめまして。月野栞といいます。あまり自分から話しかけるのが得意ではないので話しかけてくれると嬉しいです。3年間よろしくおねがいします」
『パチパチパチパチ』
ふぅ……自己紹介緊張しました。綾小路くんのこと言えないですね。
私は自分なりの精一杯で自己紹介を終えて、心から願います。
『友達がたくさんできますように!』
そして、自己紹介が終わった私たちはそのまま入学式へと向かい、ありがたいお言葉を頂戴したのちにそれぞれ解散となりました。
こうして私はDクラスの一員となったのです
氏名 綾小路清隆
クラス 1年D組
学籍番号 S01T004651
部活 無所属
誕生日 10月20日
評価
・学力C
・知性C-
・判断力C-
・身体能力C-
・協調性D
担当官からのコメント
積極性に欠け将来への展望なども持ち合わせておらず、現段階では期待の薄い生徒だと言わざるを得ない。協調性や個性と呼べるものも感じられない。受け答えそのものは高校生として許容範囲内ではあるものの、現段階での学力と身体能力は平均をやや下回る。特別な資格もないこと、別途資料による事情等からDクラスへの配属が適正であると判断。友人関係の構築、教師との関係に注意しつつ生徒個人の成長を望む。