船上試験開幕
「ふぅ…ついに始まりますねっ」
無人島の試験が終わってから3日目。
本日、私たちに学校側からのメールが届きます。
そして明日からこの旅行中2回目の特別試験が行われるのです。
少しだけ思い返してみましょう。
『船上試験』
今回は1年生全員を干支になぞらえた12のグループに分けて行う、シンキングがテーマの試験となります。
各グループに1人ずつ、優待者という存在が学校によって決められます。
そして、その優待者を当てたり守ったりすることでポイントの増減が起こるという試験です。
詳しいルールは後程、担当の先生が説明してくれるでしょう。
原作では結果としてCクラスが一人勝ちになりました。
Cクラス
150クラスポイント
550万プライベートポイント
Dクラス
50クラスポイント
300万プライベートポイント
Bクラス
変動なし
250万プライベートポイント
Aクラス
マイナス200クラスポイント
200万プライベートポイント
という結果に終わります。
しかしこの結果では私のAクラスへいく目的が果たせるか心配です……
今回も前回同様、なんとかいい方向にもっていけるように頑張りたいです!
私たち4人が部屋でのんびりしているとキーンっという高い音が響き渡りました。
学校からの緊急メールが届いたことをお知らせする音です。
ほぼ同時に船内にアナウンスが流れます。
「生徒のみなさんにご連絡いたします。先程全ての生徒宛に学校から連絡事項を記載したメールを送信いたしました。各自携帯を確認し、その指示に従ってください」
私たちは届いたメールを確認します。
「間もなく特別試験を開始いたします。各自指定された部屋に集合して下さい。10分以上遅刻した場合はペナルティを課すことがございます。本日20時40分までに2階202号に集合して下さい。
所有時間は20分ほどですので、お手洗いを済ませた上で携帯をマナーモードか電源オフにしてお越しください」
「つ、月野さん、メール見ましたか?」
「うん、見たよ。特別試験が始まるみたいだね」
「私は18時だってぇ、栞も同じ時間?」
「うぅん、私は20時40分みたい……みんなバラバラな感じなのかな」
「私は……18時20分からだよ」
「まぁ、行ってみればわかることだしねっ、お互いにがんばろう!」
そして20時30頃、私は少し早めに202号室に到着しました。
そして部屋の中には……
「栞ちゃん!」
「月野さんこんばんわ」
「二人ともこんばんわ」
桔梗ちゃんと平田くんがいました。
部屋の中には椅子が3つあって、集合時間まではあと10分ほど余裕がありましたが、すでに二人は到着して座っていました。
そして部屋の奥には真嶋先生が静かに立っていました。
「月野、来たか。少し早いが、全員揃ったようだ。始めても問題ないか?」
「はい、先生。よろしくお願いいたします」
私は先生に返事をして、桔梗ちゃんの隣の席に着席します。
「今回の特別試験では、1年生全員を干支になぞらえた12のグループに分け、そのグループ内での試験を行う。試験の目的はシンキング能力を問うものとなっている」
私たちは黙って聞いています。
「社会人に求められる基礎能力には大きく分けて3つの種類がある。アクション・シンキング・チームワーク。それらが備わったものが初めて優秀な大人になる資格を得るのだ。先の無人島ではチームワークに比重が置かれた試験内容だった。しかし今回はシンキング。考え抜く力が必須な試験となる。そこで今回の試験は12グループに分け、試験を行うとなったわけだ。
ここまでで質問はあるか?」
「先生、質問をよろしいでしょうか?」
「いいぞ、平田」
「今、僕たち3人がここに呼ばれたことには意味があるのでしょうか?」
「そうだ。まず当然のことだが、ここにいる3人は同じグループとなる。そして今この時間、別の部屋でも同じように、君たちと同じグループとなるメンバーに対して同時に説明が行われている」
「また、グループは1つのクラスで構成されることはなく、各クラスから3~5人程を集めて作られている。事前に説明しておかないと混乱を来す恐れがあるからな。まずは部屋を小分けにして説明している」
「あのっ、先生。つまり今回の試験は、他のクラスとも合同のグループになるということでしょうか?」
「そうだ、櫛田。今までクラスで競ってきた中で抵抗はあるかもしれんが、この試験はシンキング。今するべきことは、理解することではなく考えることだ」
「そして君たちの配属される干支グループは『辰』(竜)。ここにそのメンバーリストがある。これは退室時には返却させるので必要性を感じるのであればこの場で覚えていくように」
Aクラス
葛城康平
坂柳有栖
西川亮子
的場信二
Bクラス
安藤紗代
神崎隆二
津辺仁美
Cクラス
小田拓海
鈴木英俊
園田正志
龍園翔
Dクラス
櫛田桔梗
月野栞
平田洋介
二人は真剣にメンバーを覚えようとしています。そして先生は話を続けます
「まず、今回の試験では大前提として、A~Dの関係性を一度無視しろ。そうすることが試験をクリアするための近道であると言っておく」
「関係性を無視する……」
平田くんが呟きます。
「今から君たちはDクラスとしてではなく、竜グループとして行動することになる。そして試験の合否の結果はグループ毎に設定されている」
「特別試験の各グループにおける結果は4通りしか存在しない。例外は存在せず必ず4つのどれかの結果になるように作られている。分かりやすく理解してもらうために、結果を記したプリントも用意してある。このプリントに関しても持ち出し、撮影は禁止されている。この場でしっかり確認しておくように」
『夏季グループ別特別試験説明』
本試験では各グループに割り当てられた『優待者』を基点とした課題となる。定められた方法で学校に解答することで、4つの結果のうち1つを必ず得ることになる。
◯試験開始当日午前8時に一斉にメールを送る。『優待者』に選ばれた者には同時にメールでその事実を伝える
◯試験の日程は明日から4日後の午後9時まで(1日の完全自由日を挟む)
◯1日に2度、グループだけで所定の時間と部屋に集まり1時間の話し合いを行うこと。
◯話し合いの内容はグループの自主性に全てを委ねるものとする。
◯試験の解答は試験終了後、午後9時30分〜午後10時までの間のみ優待者が誰であったかの答えを受け付ける。なお、解答は1人1回までとする。
◯解答は自分の携帯電話を使って所定のアドレスに送信することでのみ受け付ける。
◯『優待者』にはメールにて答えを送る権利が無い。
◯自身が配属された干支グループ以外への解答は全て無効とする。
◯試験結果の詳細は最終日の午後11時に全生徒にメールにて伝える。
◯結果1
グループ内で優待者及び優待者の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合、グループ全員にプライベートポイントを支給する。(優待者の所属するクラスメイトもそれぞれ同様のポイントを得る)
◯結果2
優待者及び所属するクラスメイトを除く全員の答えで、一人でも未解答や不正解があった場合、優待者には50万プライベートポイントを支給する。
「この試験の肝は1つだ。それを理解すれば何のことはない。その肝とは『優待者』の存在だ。グループには必ず優待者が一人だけ存在する。
そしてその優待者の名前が試験の答えでもある。簡単な話だ。例えば平田が優待者として選ばれたとしよう。竜グループの答えは『平田』となる。後はその答えをグループ全員で共有するだけ。そして試験日3日目の最終日午後9時に試験が終わったあと、午後9時30分~午後10時の間にだけ解答を受け付けるため、グループ全員が『平田』と記載して学校にメールを送ればいい。それでグループの合格、結果1が確定し全員が報酬50万ポイントを受けとるという仕組みだ。更に優待者には結果1に導いた褒賞として倍の100万ポイントを支給する」
「そして結果2だが……これは優待者だと学校に知らされた者が試験終了時までその正体を誰にも悟られず、隠しきった場合に適用される。自分が優待者であることを誰にも教えない。あるいは嘘によって他の者を優待者だと思い込ませる。その場合、文面に書かれているように、優待者にのみ50万ポイントが与えられる」
「これは、優待者になれるかどうかで大きく行動が変わって来そうだね……」
「まずここまでは理解したか?良ければ次に進むぞ」
『はい、お願いします』
私たちは頷いて答えました。
「グループ内には一人だけ優待者が存在すると説明したが、いち早く優待者を暴き出すことで第3・第4の結果が新たに現れる」
以下の2つの結果に関してのみ、試験中24時間いつでも解答を受け付けるものとする。また試験終了後30分間も同じく解答を受け付けるが、どちらの時間帯でも間違えばペナルティが発生する。
◯結果3
優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ正解していた場合。答えた生徒の所属クラスはクラスポイントを50ポイント得ると同時に、正解者にプライベートポイントを50万ポイント支給する。また優待者を見抜かれたクラスは逆にマイナス50クラスポイントのペナルティを受ける。及びこの時点でグループの試験は終了となる。なお優待者と同じクラスメイトが正解した場合、答えを無効とし試験は続行となる。
◯結果4
優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ不正解だった場合。答えを間違えた生徒が所属するクラスはクラスポイントを50ポイント失うペナルティを受け、優待者はプライベートポイントを50万ポイント得ると同時に優待者の所属クラスはクラスポイントを50ポイント得る。答えを間違えた時点でグループの試験は終了となる。なお優待者と同じクラスメイトが不正解した場合、答えを無効とし受け付けない。
「今回学校側は匿名性についても考慮している。試験終了時には各グループの結果とクラス単位でのポイント増減のみ発表する。つまり優待者や解答者の名前は公表しない。また、望めばポイントを振り込んだ仮IDを一時的に発行することや分割して受け取ることも可能だ。本人さえ黙っていれば試験後に発覚する恐れはない。もちろん隠す必要がなければ堂々とポイントを受け取っても構わん」
「そしてこれは禁止事項が記載されている紙だ」
禁止事項には試験への不参加はポイントを差し引かれること。他人の携帯を盗んだり、脅迫することによって優待者に関する情報を確認することや、勝手に他人の携帯を使って答えをメールする行為などが記載されていました。
「君たちは明日から、午後1時、午後8時に指示された部屋に向かえ。当日は部屋の前にそれぞれグループ名の書かれたプレートが掛けられている。初顔合わせの際には室内で必ず自己紹介を行うように。また、室内に入ってから試験時間内の退室は基本的に認められていない。トイレなどは済ませておくように。万が一我慢できなかったり体調不良の場合にはすぐに担任に連絡し申し出るように」
「それからグループ内の優待者は学校側が公平性を期し厳正に調整している。優待者に選ばれた、もしくは選ばれなかったに拘らず変更の要望などは一切受け付けない。また、学校から送られてくるメールのコピー、削除、転送、改変などの行為は一切禁止とする。この点をしっかりと認識しておくように」
「これで試験の説明は終わりだ」
そして私たち3人は部屋を退室しました。
後程、他のクラスメンバーに聞いたところ、やはり全員同じ説明をされたようです。
無人島の試験を終えてから3日目……
船上試験の開始はすぐそこまで迫っていました。
こうして私たちの船上試験が始まるのです