長い一瞬
「ん~っ、いい天気だぁ!」
2週間に渡る豪華客船の旅を終えた私たち1年生は学生寮へと帰ってきて、残り1週間の夏休みをそれぞれに楽しんでいました。
私も帰ってきた次の日こそ疲れて一日中寝てしまいましたが、今日は以前から約束していたお出掛けの日なのです!
遅刻すると拗ねられてしまいますので早めに出掛けようと思います、そして、私は寮のロビーへと向かいました。
「栞ちゃ~んっ!」
「千尋ちゃんおはよぉ~はやいねっ」
そうですっ、今日は千尋ちゃんとお出掛けなのです。
抱きついてくる千尋ちゃんを撫でながら私たちは目的地へと出発しました。
バス停につき、私と千尋ちゃんは空いている一番後ろの席に座り窓から外を眺めています
「遊園地楽しみだねっ」
「うん、遊園地もだけど栞ちゃんと二人きりなのが嬉しいです」
今日の目的地、それは先月に新しく増設された遊園地ですっ!
長期の連休や土日祝の休日だけ営業するらしく、バスで数十分。
私たちは無人島や船上試験のこと、千尋ちゃんの部活のことを話していました。
実は千尋ちゃん部活をしていて美術部所属なんですっ、絵が上手らしいですね。
そんな話をしながら気がつけば目的地へと到着していました。
「大きいですー」
「だねぇー」
遊園地は私たちの想像するよりも遥かに大きく、迷子になると帰れなくなりそうなくらいの広さでした。
私と千尋ちゃんは軽く手を繋いで遊園地の中へと入って行きました。
「栞ちゃんはどこに行きたいですか?」
「ん~っ」
欲を言うならば全てまわってみたいです。
けれども全部は無理ですね、とりあえず本の世界でよく見かけたジェットコースターやおばけ屋敷でしょうか。
「ジェットコースターに乗ってみたいっ!」
「じゃぁ行きましょう!」
私と千尋ちゃんはジェットコースターに乗るべく列に並びました。
本やテレビでしか見たことがなかったので楽しみですっ、どんな感覚なのでしょうか。
「栞ちゃん次だよ!」
「うっ、うん。なんか緊張してきたよ」
千尋ちゃんが手を繋いで引っ張ってってくれます。
千尋ちゃんは私の隣に乗りシートベルトをしてレバーを下げてくれます。
どうやらこれを掴んでいたらいいみたいですね……
「栞ちゃん動くよ」
「うっ、うん」
ゆっくりと動き出すジェットコースター……
あっ、これなら余裕ですっ。
ドキドキして損しましたっ!
そしてゆっくりと上に上がっていきます。
「千尋ちゃん、ジェットコースター楽しいね!」
「えっ、何いってるんですか、栞ちゃんこれからですよ?」
あれっ、止まりました?
下に落ち……「キャァァァァァァァァ」
こうして私た……うぐっ、あっ、具合悪いのでこのまま続き行きます。
初めてのジェットコースターを終えた私は魂が抜けたような顔をしながら千尋ちゃんとおばけ屋敷に向かいました。
「栞ちゃん大丈夫ですか?休みます?」
「千尋ちゃん、大丈夫。ちょっとびっくりしただけっ。次はおばけ屋敷だよね?静かそうだしぴったりだよ!」
「ぐすっ、うぅ……怖かったよぉ。なんで急に人が出てくるのっ……心臓止める気なの?」
「栞ちゃんよしよしっ、こういう栞ちゃんも新鮮でいいですね。守りたくなってきました」
その後も遊園地を満喫した私たちはそろそろ帰る時間も近づいてきたので、最後に観覧車に乗ることにしました。
そういえば本とかでもデートの最後は観覧車が多かった気がします。
千尋ちゃんは私を連れて観覧車の中へと歩いて行きます。
観覧車はとても大きく、あの一番上から見える景色は、きっと私が知っているどの景色よりも遠くて、広くて、そんな世界が広がっているのでしょう……
私は静かに進む観覧車の中から外を見つめて
……いつの間にか
「千尋ちゃんありがとう。初めて遊園地に来たけど本当に楽しかったよ」と、心からそんな言葉が出ていました。
「私も、楽しかった。栞ちゃんと2人きりで遊べて……私、本当はね、あまりに強いライバル達に心が負けそうになることもあるんだ。だって私は、坂柳さんみたいに頭も良くないし、椎名さんみたく綺麗でもない。櫛田さんみたいに胸も大きくないし、可愛くだってない でも……栞ちゃんを想う気持ちは一番だって、私は……私自身のこの気持ちを誰よりも信じてる、だから」
千尋ちゃんが私の手に指を入れて繋いできます。
お互いの手は重なり合い、私の顔の両側近くへ。
観覧車は静かに動き続け一番上。
きっと今が私の生きてきた中で最も空に近いところにいるこの一瞬。
私と千尋ちゃんは長い口づけを交わしたのです。
こうして私たちは長い一瞬を味わうのです