「その時の堀北くんと言ったら本当にすごくて、って聞いてますか、栞ちゃん!?」
「あっ、はいっ。堀北会長はすごいんですねっ!」
「そうなんです、それでですね……!」
私は今、茜先輩のお部屋で紅茶を飲みながらクラス試験での堀北会長の武勇伝を聞いていました。
間違えました……聞かされていました。
それにしても、茜先輩は本当に堀北会長が好きなんですね~目がキラキラしてますっ。
けどこんな茜先輩のことが私、大好きなんですよねぇ……
ただ、まだ先の話にはなりますが……
3学期の混合合宿で南雲副会長の罠にかかって退学処分になっちゃうんですよね、茜先輩。
結局、堀北会長が300以上のクラスポイントと2000万プライベートポイントを支払って茜先輩の退学を取り消すのですが……
あの時、泣いていた茜先輩の顔は忘れられません。
Aクラスが今後の試験で苦境に陥るよりも自らの退学を望んだ茜先輩と、Aクラスの苦境よりも茜先輩と一緒に卒業する道を選んだAクラス、感動的です。
この未来は一番阻止しなくてはいけませんね。
まぁ、しかしそれはまだ先の話ですし……
今は茜先輩の恋バナにお付き合い致しましょう。
なんたって私、茜先輩の可愛い後輩ですしっ!
「こうして私たちAクラスは試験を乗りきり……あっ、そーいえば栞ちゃん!」
「あっ、はい!なんでしょう!?」
「生徒会員の仕事の副次的な報酬で映画のチケットを2枚もらったのですが、あいにく私は夏休み中も生徒会の仕事で行けなさそうなんです、栞ちゃんにあげますから私のぶんも楽しんできてください!」
映画ですか……
そういえば行ったことないですね、せっかくですし有り難く頂いておきましょう。
「茜先輩ありがとうございますっ」
「いえ、いえ、私は栞ちゃんの頼れる先輩ですからっ!」
私は部屋に帰るとひよりちゃんを映画に誘うために電話をかけました。
「もしもし~ひよりちゃん」
「はい、栞ちゃん、どうしましたか?」
『あのねっ、え「いきますっ」』
『……あの、えっとね、明日え「いきますっ」』
「あっ、はいっ」
こうして私たちは映画を見に行くのです
そして翌日、私はひよりちゃんと映画館に向かいました。
「そういえば今日の映画は恋愛映画なんだけど良かったかな?」
「はい、私は本もそうですが、基本的に物語が好きなので恋愛映画も好きですよ」
「そっかぁ、よかったぁ」
映画館についた私たちは飲み物を買い、映画館の一番後ろの席に座りました。
ブザーがなり映画が始まると私とひよりちゃんは思っていた以上に映画に見入ってしまい、あっという間に映画は終わってしまいました。
「すごく感動した……」
「そうですね……」
言葉にならないくらいの感動を貰った私たちはカフェで休んでから図書館でのんびりと過ごし、夜の帰り道を歩いていました。
「公園……」
「栞ちゃん、ちょっと寄り道をして行きませんか?」
私はひよりちゃんの後ろをついて歩き公園のベンチに腰かけました。
ひよりちゃんはどこから持ってきたのか、線香花火を2本だけバッグから取り出して1本を渡してくれます。
「栞ちゃんと花火がしてみたくて準備していたんです」
ひよりちゃんがイタズラに成功した子供のように無邪気な顔で言います。
私とひよりちゃんは公園にしゃがみ込み線香花火に火を灯します。
真っ暗な公園に2つの光だけがバチバチと揺れる中、私はこの世界に来てからの数ヶ月を思い返していました。
この数ヶ月いろいろな事がありました。
普通に学校に通い、普通に友達と遊び、少し変わった試験を受けて、とても充実した毎日を過ごしました。
3年後の私は何をしているのでしょう……
公園で線香花火を持って、3年間を振り返ってくれているのでしょうか?
儚く消える線香花火を見ながら私はひよりちゃんを見て言いました。
「消えちゃった」
「栞ちゃん、来年もまた一緒に線香花火をしましょうね」
……そうですね。
また来年の夏休み、私がこの世界で1年間を振り返られますように……
「うん、約束するね」
その約束はきっと私自身にした約束。
来年も私が生きてこの場所にいられるように……
そしてひよりちゃんとまた線香花火ができますように。
こうして私たちの夏は終わりを迎えたのです