体育祭開幕
『それではこれより高度育成高等学校体育祭を開幕する』
1ヶ月に及ぶ体育祭の準備期間を終え、ついに私たちは体育祭の当日を迎えました。
「それにしてもずいぶんと用意周到ね、監視カメラの数が異常だわ。どう思う? 栞」
「誤審防止とかかなぁ、あと不正行為とか。鈴音も気をつけてねっ?」
合同リレーのアンカーをかけた勝負から数日、私と堀北さん……いいえ、鈴音は名前で呼び合うようになっていました。たまに桔梗ちゃんからの視線が刺さって痛いのですが……
そこは今まで以上にサンドイッチを食べさせてなんとかフォローしていますっ。
グラウンドを見渡せば、既に第一種目の100メートル走がスタートしていました。
Cクラスと参加表を共有した私たちは、お互いに勝ちやすいように順番を調整して万全の状態で今を迎えています。
「あっ、そろそろ私たちも準備しないとっ」
私と鈴音はスタートの準備をします。
100メートルの競技等は1年男子から始まり3年女子まで走って1つの種目が終わります。そして休憩を挟んでから次の種目は1年男子から始まって3年女子へと切り替わっていきます。
各クラス2名ずつ計8名が並び、走り出します。
「うおおおおおおおおおお!!」
大きな歓声が響いてきます
「須藤くんね、圧倒的な差で1位だったわ」
どうやら須藤くんは宣言通り敵をなぎ倒しているようです。その後も男子は平田くんや三宅くんが1位で競技を終え、Bクラスは順調な滑り出しを見せていました。
Cクラスも中々に順調なようで、神崎くんを始めサッカー部の柴田くんも好成績を収めています。
「わああああああああああ!!」
また大きな声が上がりました。
どうやらAクラスの生徒が転んで負傷したようです。
「よしっ、がんばらないとっ」
そして私の番……私も危なげなく1位で切り上げ、小野寺さんも次の組で1位。他のメンバーも4位や5位など当たり障りのない成績で次々と競技が進んでいきます。ふと、Aクラスの集まりの中で椅子に座る有栖と目が合いました。今回の体育祭、有栖は体の都合で不参加。
すぐに私たちの目は離れ、有栖はAクラスの戦いに目を戻しました。
女子の戦いも残り一組。
Aクラスには神室さん、Bクラスからは鈴音。そしてDクラスには無人島試験でスパイにきた武術経験もあり運動が得意な伊吹さんがいます。
接戦が予想される組み合わせ、スタートの音が鳴り響きます。鈴音は最高のスタートダッシュで先頭を走ります。そのすぐ後ろに神室さんと伊吹さんが追走します。
もうすぐゴールというところ、伊吹さんと神室さんが接触しました。二人は転倒し、大事には至らなかったようですがレースでは全員に追い抜かされて最下位でした。
「そういえば高円寺くんは不参加のようね」
100メートル走を終えた私たちは、3年生のレースを見学しながら話をしていました。
「そうみたいだねぇ……」
そういえば原作でも高円寺くんは不参加でしたね。彼は能力こそ高いのですが興味のあることしかやらない人なのです。
「私が櫛田さんのように好かれる人間だったら、彼は動いたのかしら……」
「鈴音からそんな言葉が出るなんてっ、私は感動だよっ」
「茶化すのはやめてくれないかしら?」
「ふふっ、ごめんね。けど高円寺くんは誰が相手でも変わらないと思うなぁ」
「ウオオオオオオオオオオ!!!」
突如、大地を響かせた今までよりも大きな歓声。
3年A組の堀北会長が1位を取った歓声……
「強いね、鈴音のお兄さんは」
「ええ、けど……負けないわ」
次の競技が始まる前に赤組と白組、最初の点数が発表されます。
赤組1982点 白組1920点
白組が負けているものの点数は僅差、私たちの体育祭は始まったばかりです。
2種目めはハードル。この競技については2つのルールがあり、『ハードルを倒す』『ハードルに接触』の2つにタイムペナルティが付けられます。
「えー外村くんいませんかー? いない場合失格となります」
スタート位置の審判からそんな声が聞こえます。
「おい、外村!! なにしてんだ!?」
「せ、拙者、腹痛でござる!」
「いいからハードル全部倒してでも意地で完走しろ!!」
外村くんはハードルを全て倒しながら無事完走していました。
「くそっ、100メートルもハードルも両方7位だ……」
幸村くんが落ち込んでいました。
幸村くん勉強はすごいのですが、運動が苦手ですからねぇ。幸村くんも人一倍Aクラスを目指している分、悔しいのでしょう。
私はハードルも難なく飛び越え1位でゴール、そして次の種目を迎えます。
次の競技は男子限定種目の棒倒し。
シンプルながらも荒々しく少々危険な団体競技。
「お前らいくぞおおおお!! 俺が絶対に棒を守りきる!! 後ろは気にせず前だけ向いて進め!!!」
須藤くんの気合いが乗った咆哮が響き渡ります。
Cクラスの神崎くんや柴田くんも指を鳴らしています。一方Aクラス側には葛城くんや、鬼頭くんに橋本くん……
どうやら橋本くんはケガをしているようです。先ほど100メートル走で転倒したのは橋本くんだったみたいですね。そしてDクラスには龍園くんや、石崎くん、黒人のアルベルトくんがいます。
試合のルールは二本先取した方の勝ち。
そして開始の合図。
お互いのクラスが棒を倒しに押し掛けます。須藤くんは意地でも棒を離すまいと耐え抜いています。そして平田くんを中心とした攻撃陣が相手の棒を倒しにかかります。
砂塵の巻く中、結果を確認すると白組の棒が残っています。
「よおおおおおおおおし!!」
「いいか! 次も倒すぞおおお!!」
ここに来て本当に須藤くんのリーダーシップが上がったように思えます。得意な運動系のイベントだけに自分のポテンシャルを最大限に発揮できているようです。
赤組をみるとAクラスの生徒が多く倒れています。
やはり激しいぶつかり合いですのでダメージは大きいようで、橋本くんや鬼頭くんは膝をついています。そして勢いそのまま二本目も先取し、白組の勝利となりました。Aクラスは悔しそうにその場を去っていきます。
龍園くんはほとんど参加していなかったようでニヤニヤしながらその場を後にしていました。
競技は着々と進んで行き次は女子限定種目の玉入れ。
「じゃぁみんな作戦通りにいくね!!」
一之瀬さんが声をあげます。
私たちは予め決めておいた、玉を集める組と入れる組、拾って入れる組に別れて効率を重視した編成をとります。
この日のために入れる組の人は常に同じ位置から入れる練習だけを行い、集める組は基礎体力の底上げを行ってきました。程なくして試合が終わり、係の教師が玉を投げながら1つずつ得点をカウントしていきます。
『合計54個で赤組の勝利です』
健闘したものの一歩及ばず……
これで棒倒しと玉入れの結果が帳消しになってしまいました。
「みんなお疲れ様、惜しかったね」
「ごめんねっ、平田くん。負けちゃったよ」
「大丈夫、まだ体育祭はこれからだよ」
平田くんの言う通り、体育祭はまだ中盤。
ここから本格的な戦いが始まっていくのです。
こうして私たちの体育祭は中盤戦を迎えるのです
体育祭も中盤戦に差し掛かり次の種目は綱引き。
ルールは棒倒しと同じで至極単純、二本先取したほうの勝ちです。
「よし作戦通りいくよっ!」
作戦は小さい順に並ぶ、ただそれだけ。
これによりムラなく力がしっかりと伝わります。
綱引きは男女別となっており、男子は先ほど勝利を収めていました。女子も負けるわけにはいきません!
そして試合開始の合図がなります。
私は全ての力を使って綱を引っ張ります。
その光景はまるで大根抜きのよう、瞬発的に100%の力を発揮されたAクラスとDクラスの生徒は宙を浮くかの如く前のめりに倒れ込みます。
各クラスは何が起こったのか不明のまま、私も知らぬ顔で二本先取を果たし次の競技へと移ります。
次の種目は障害物競走。
男子は次々に好成績を収めていきます。
そして女子の障害物競走。
今回の体育祭で最も気を付けなければいけない競技です。
なにしろ原作で鈴音が龍園くんの陰謀で、陸上部の木下さんと接触するのはこの障害物競走なのです。そして、鈴音の順番……
偶然か狙われたのか、そこには木下さんがいました。Aクラス神室さん、Bクラス鈴音、そしてDクラスに木下さん。100メートル走以来の好カード。
スタートの合図が鳴り、走り出しました。
一番最初の障害である平均台を難なく越えて、直後の短距離を走り抜けグラウンドに敷かれた網をくぐり抜けます。
そして最後の50メートル。鈴音は二人を追い抜き一番前、2位と3位争いに神室さんと木下さん。その差はほぼなくすぐ後ろに木下さんがいます。
ふと神室さんが後ろを振り返りました。
その直後、木下さんが神室さんに追い付き……
絡まるように共倒れになりました。
神室さんと木下さんはその場から立つことが出来ず暫しのあいだ倒れ込んだままでしたが、なんとか足を引きずりつつゴールしました。
「神室さんと木下さんは大丈夫かしら?」
競技を終えて戻ってきた鈴音が聞いてきます。
「どうかなぁ、鈴音は巻き込まれなくてよかったよ」
程なくして二人三脚が始まります。
私は鈴音とペアです、安定したスピードで1位のゴール。その後もBクラスは練習通りの実力を発揮して一度10分間の休憩を迎えます。
休憩後には騎馬戦が控えています。
私は10分間の休憩をのんびりと座りながら過ごし、Aクラスの方に目を向けました。やはり先ほどの神室さんの転倒の影響かAクラスは少しざわついていますね。
……有栖は、いつもと変わらず椅子に座ってその様子を眺めていました。そんなAクラスを見ていたらすぐに10分が経ちます。次は全員参加競技の花形、女子騎馬戦です。
「月野がんばれえええ!!」
「堀北ファイトおおおお!!」
「桔梗ちゃんいっけえええ!!」
「軽井沢がんばああああ!!」
こうして私たちは騎馬戦の時を迎えるのです