Bクラスが体育祭を戦っている頃、Aクラスもまた同様に体育祭での戦いを繰り広げていました。時は少し遡り一ヶ月前、第一体育館で他クラスとの顔合わせの時。
「おい、Aクラス 今回の体育祭は同じ組らしいな」
「り、龍園!?」
「フッ、てめえらに用はねえ。おい坂柳、体育祭のリーダーはお前か?」
有栖は椅子に座り薄笑いを浮かべて龍園くんを出迎えます。
「ふふっ、いいえ。残念ながら体育祭は不参加になります。ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ないです」
「だろうな、で? 誰がリーダーだ、葛城か?」
龍園くんは姿の見当たらない葛城くんを目で探します。
「いいえ、それと葛城くんならあそこに座っていますよ?」
Aクラスの末席に葛城くんは座っていました。今までならあり得ない光景に龍園くんも反応します。
「ククク、なんだ葛城お前。いつの間に坂柳の配下になった」
「龍園、お前には関係のないことだ」
龍園くんは興味が失せたようで有栖に目を戻します
「フッ、まあいい。じゃあリーダーは誰だ、さっさと教えろ」
「今回は真澄さんにお任せしております」
「真澄……? ああ神室か、てめえの側近のやつだな」
「別に側近じゃないんだけど……私が神室よ、よろしくね」
有栖の横から神室さんが渋々と歩いてきました。
その隣には橋本くんもいます。
「よぉ、龍園。作戦会議なら俺も混ぜてくれ」
「てめえもか橋本、まあいい。まず今回の体育祭で肝になるのは参加順だ、参加表を交換してやるから体育祭一週間前に持ってこい」
龍園くんがそのまま立ち去ろうすると、神室さんが声をあげます。
「龍園待って、参加表は渡せない。Dクラスのこと、私たちは信用してないから」
「ほお、ならどうする」
「どうもしない。お互い好きなようにやればいい」
龍園くんが神室さんの言葉を受けて面白そうに笑います。
「クハハハ、おい坂柳。てめえの側近は大丈夫か?」
「はい、真澄さんに全てお任せしておりますので」
「チッ、なら話しは終わりだ。精々がんばることだな、Aクラス」
顔合わせが終わるとAクラスも教室へと戻り体育祭に向けた準備を整え、そして体育祭の当日を迎えました。
Aクラスのメンバーが固まっている横、椅子に座った制服姿の有栖とジャージの神室さんが立っています。
「真澄さん期待していますね」
「……いや、私は別にどうでもいいんだけど」
こうしてAクラスの体育祭は始まるのです
男子100メートル走。
Aクラスは橋本くんや鬼頭くんなど足の速い人は別々にして遅い人と組み合わせる作戦。つまりBクラスと同様の参加順を選びました。
1つ違うところがあるとすれば、赤点を取るような生徒がいない分ペナルティのマイナス10点を気にせずに思いきった編成が取れることでしょう。
「よし、まずは1位とってくるか」
橋本くんが気合いをいれてスタート位置に立ちます。唯一の敵はDクラスの石崎くん。
石崎くんは龍園くんの配下の一人で以前に須藤くんとの喧嘩騒動にもなった不良少年です。
スタートの合図が鳴り、走り出しました。
予想通り橋本くんと石崎くんの一騎討ち。
しかしすぐに状況は一変します。石崎くんの足が橋本くんの足に絡まり二人とも転倒しました。
「わああああああああああ!!」
橋本くんと石崎くんの転倒にグラウンドからは大きな声が上がります。橋本くんは足を負傷した様で、なんとかレースを終える事こそ出来ましたがかなり痛そうな顔をしています。
有栖はそんな光景をただ見ていました。
「ねぇ、あれわざとじゃないの?」
神室さんが有栖に聞きます
「さぁ、証拠もありませんし」
「そう……」
「それより真澄さんもそろそろ出番ではないですか?」
「そうね、行ってくる」
そして女子の100メートル走、神室さんの相手にはBクラスの鈴音とDクラスの伊吹さん。
スタートの合図が鳴り、走り出します。
鈴音がスタートダッシュを切り神室さんと伊吹さんは二番手争い、そしてゴール直前、伊吹さんが神室さんに接触してきます。
「なっ、ちょっと」
神室さんはバランスを崩して伊吹さんと共に倒れます。
「痛った……」
二人は立ち上がってゴールしますが全員に追い抜きされてしまい最下位でした。
レースを終えて神室さんはAクラスの陣営に戻ります。
「真澄さん大丈夫ですか?」
有栖が気持ちの込もっていない声で聞いています。
「普通に痛いけど、もう棄権してもいい?」
「ふふっ、ご冗談を」
神室さんはため息を吐きながら、次々に移り変わる競技を眺めていました。
そして棒倒し。
「お前らいくぞおおおお!! 俺が絶対に棒を守りきる!! 後ろは気にせず前だけ向いて進め!!!」
「ちっ、須藤のやつ随分と気合い入ってやがるな」
「橋本、作戦通り俺らは攻めにいく。鬼頭と一緒に守りは任せた」
「あぁ、この足じゃ走るのはきついしな……ちっ、石崎の奴わざとぶつかりに来やがって」
橋本くんが石崎くんを見ると、石崎くんは「あ?」とガンをつけて睨んできます。
「ククク、おい橋本。人聞きの悪りいことを言うな、ありゃあ事故だろ」
「龍園……!!」
Aクラスのメンバーが龍園くんを睨みます。
『一年生棒倒し開始』
「ちっ、今はいい! 棒倒しに向かえ!!」
平田くんのBC連合軍が向かってきます。砂塵の巻く中、混戦が繰り広げられます。
「ダメだ、橋本! あいつら勢いがすげえ!!」
「くそっ、なんとか守れ! あ? おい、なんで龍園がここに……」
「ぐっ……!?」
龍園くんがケガをした橋本くんの足を蹴りつけました。
「て、てめぇ……どういうつもりだ」
砂塵の中、近くを見るとDクラスの生徒がAクラスの生徒を審判にバレないように攻撃しています
「ククク、ああ、すまねえな。敵かと思ったぜ」
鬼頭くんもアルベルトくんに膝蹴りを受けてうずくまっています。
「き、鬼頭……! おい!? 龍園!! こんなのただじゃすまされねえぞ!」
「あっ? 何いってんだ橋本。この砂塵の中、激しい棒倒しの競技だ。多少の接触があるのは当然だろうが、てめえらはおとなしく砂でも舐めてろ」
2回の棒倒しを終えて、ほとんどのAクラスの男子はその場に膝をついていました。
「……くそっ、龍園のやつ。最初からAクラスを狙ってたってことか」
「……嘘だろ、同じ組だぞ? 狂ってんのかよ」
Aクラスの陣営に戻った男子は棒倒しでのDクラスの行動をうけてすぐに話し合いに入りました。このすぐに切り替えられる強さがAクラスの持ち味の一つでしょう。
「だが橋本、気を付ける以外にはないだろう。今から施せる策はないはずだ」
「……あぁ、悔しいが里中の言う通りだ。参加表を渡した時点でもう順番の変更は叶わない。今はそういう状況だ、鬼頭……ケガは大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
『合計54個で赤組の勝利です』
玉入れのアナウンスが流れます。
「女子の玉入れが終わった、今からAクラス全員で作戦会議だ」
「……そう、じゃぁ私にぶつかってきた伊吹もわざとの可能性が高いわけね」
女子が競技を終えAクラスに戻ると、次からの中盤戦に向け短い時間での作戦会議が始まりました。
橋本くんが話します。
「あぁ、だが男子で既に話し合ったが今から施せる策はない、Dクラスに注意するだけだ……」
「だが……なぁ神室。そもそも都合が良すぎないか? 伊吹に神室、橋本に石崎。こちらの情報が漏れている可能性はないのか? 参加表は本当に交換してないんだよな?」
里中くんの疑問にみんなが神室さんを見ます。
「……それはない、参加表は交換してない」
こうしてAクラスは体育祭中盤戦を迎えるのです