転生先は大好きな世界でした   作:Monburan

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テスト期間編
お泊まり会


 体育祭が終わって次の日の休日。私は有栖からの急な電話で呼び出されて今、有栖の部屋でチェスをしています。体育祭準備期間中は鈴音とのレースや準備で忙しくてなかなか遊べませんでしたからね。

 有栖は制服のような私服姿でとっても嬉しそうにチェスをしています。

 

「栞さんと二人きりでお会いするのも久しぶりな気がします。今日はお部屋に帰しませんのでそのつもりでいてくださいね?」

 

「えっ、そうなの? チェスしたら帰るつもりだったのに……」

 

 今は夜の8時過ぎ。チェスをして10時くらいには帰ろうと思っていた私はちょっと不満そうにチェスの続きを指します。

 

「栞さん、私は体育祭での靴下事件の事を忘れてはいませんからね? あの後、靴下を振り回していた私を見ていたAクラスの人たちが、微笑ましい顔つきで頷きながら何度も私を見てきた事を今でも忘れられません」

 

「フフッ」

 

 確かにみんな可哀そうなものを見るような、可愛いものを見るようなそんな顔で見てましたもんね。

 あっ、笑ったのはごめんって……

 だから杖でつつかないでぇ。

 

「栞さんは罰として私と今日一日を共に過ごして頂きます。私の言うことには全て従ってください。もし断れば2度と口を聞きません」

 

 有栖はふくれながら杖でつんつんしてきます。

 

「……はぁ、わかったよぉ。だから杖の攻撃は禁止だよ? 杖は没取しますっ」

 

「あっ……」

 

 私が有栖から杖を取り上げると困った顔で宙に手を伸ばしてふらふらさせるので仕方なく返してあげました。

 けどたまには有栖と過ごすのもいいですね。借り物競争ではお世話になりましたし今日は大人しく言うことを聞くことにしましょう。

 

 そういえば原作では体育祭の終了時に有栖が綾小路くんとお話しするシーンがありました。

 実は有栖は綾小路くんの事を幼いときにホワイトルームで見かけた事があり、一方的に知り合いなのです。なんでも、学校の理事長である有栖のお父さんが綾小路くんのお父さんと知り合いでして、その兼ね合いでホワイトルームに見学をしに行ったときに綾小路くんを見かけたとか。

 有栖は天才とは教育で決まるものでなく、生まれた瞬間に決まるものであると信じています。そして何よりも自分の中に存在する母親のDNAに誇りを持っています。

 だからこそ作られた天才である綾小路くんのことを意識してるんですよねぇ。体育祭で有栖が動いた様子はなかったのですが、綾小路くんとの関係はどうなっているのでしょうか……

 聞いてみましょう。

 

「ねぇ、有栖?」

 

「はい、なんですか?」

 

「有栖って今、好きな人とか気になる人っているの?」

 

「……っつ、それは。なんと答えたらいいか」

 

「大事なことだからちゃんと答えて!」

 

 有栖がもぞもぞとしているので私は有栖の隣に移動して目を見て答えを催促します。そんな私に有栖は目を背けながら答えました。

 

「い、います……」

 

「……や、やっぱり。そんなに気になってるの? それは恋愛感情なの?」

 

「は、はい……」

 

 有栖が恥じらっています……

 有栖は綾小路くんことをそんなに思っているのですか!? 

 

「いつから? やっぱり初めて会ったときから?」

 

「……そうですね、気がつけば少しずつ私の中で大きな存在になっていたと言いますか」

 

 有栖は顔を赤らめて反らしながら答えます。

 有栖、そんなに綾小路くんのことが好きだったんだね……

 

「わかったよ、私も有栖の恋を応援するからね!」

 

「……栞さん? それはどういう意味……なんで他人事なんですか?」

 

「他人事じゃないよ、有栖の恋を応援するから!」

 

 有栖は少し考えて口を開きます。

 

「……栞さん、私の好きな人って誰だと思っていますか?」

 

 ここで綾小路くんって答えるのはさすがに不自然ですね。

 

「……えっと、クラスの男子とか?」

 

 有栖は今まで見たことのないような冷たい視線で私を見下ろしながら、杖を握り締めて立ち上がりました。

 

「……どうやら栞さんには体で解からせないとダメなようですね」

 

 えっ、なんで杖を握るの? それってそんな剣道みたいに構える物じゃないよね!? 

 

「栞さん覚悟してください」

 

「あ、有栖まって、話せばわかるの……

 まっ、にゃあああああああ」

 

 

 

 こうして有栖の杖さばきは上達していくのです

 

 

 

 有栖の杖からなんとか逃げ切った私は部屋の隅で有栖のご機嫌を伺っていました。

 

「有栖ぅ、機嫌直してよぉ」

 

「もう知りません、栞さんが償ってくれるまでもう知りません」

 

 ……償うって私は何をしたらいいんだろう。とりあえず撫でてあげたら喜ぶかな? 

 

 私はふて腐れている有栖の後ろに座って後ろから撫でてあげました。

 

「ぐっ、それくらいのことでは許されませんからね……」

 

 有栖はちょっと姿勢を崩して、女の子座りでプイッと私の方を振り返ります。

 

「有栖ごめんねっ?」

 

 私は有栖の耳元に顔を近づけて囁きました。

 

「……っつ」

 

 有栖は急に体をくねらせて耳を遠ざけます。

 あっ、そぉいうのが好きなんですか? 

 そうですかぁ。仕方ないですねぇ……

 私は遠ざけた有栖の耳を追って息をフーッと吹き掛けてあげました。

 

「……っあ」

 

 有栖は足をもじもじさせながら耐えています。私は逃げようとする有栖の体を後ろから抱きしめて押さえつけます。

 

「有栖、許してくれないなら許してくれるまで続けるよ。いいのぉ?」

 

 私は有栖の耳に息をフーッと吹き掛けます。有栖は息が吹き掛けられる度に小さな声をあげて、体をくねらせます。

 

「……ひ、卑怯です、栞さん。こんなのは反則です」

 

 ただ息を吹き掛けているだけなのに反応する有栖が面白くて、私はどんどんいじめたくなってしまいました。

 

「許してくれないなら次はこっちの耳だねぇ」

 

 私は逆の耳にも息をフーッと吹き掛けます。有栖は女の子座りのまま足をぴくぴくとさせながら耐えています。

 

「ゆ、許しません……」

 

「いいよぉ、許してくれるまで続けるからぁ」

 

 それから30分間。息絶え絶えで我慢していた有栖が「……こ、これ以上は」と言うと、くるりと後ろを向き目を潤ませながら私に抱きついて来ました。

 

「……栞さん、もうむりです。許しますから、もう許してください……」

 

 あっ、ちょっとやりすぎちゃったようです。

 私は有栖の髪を撫でながら少し反省します。

 

「ごめんね、有栖っ。つらかったかな、大丈夫?」

 

「は、はい。大丈夫です……。そ、それよりもちょっとシャワーを浴びてきます」

 

 有栖はいつもよりも機敏に杖を掴んで浴室へと歩き出しました、そして浴室前の脱衣場の椅子に座って服を脱ぎ始めました───

 

 

 

「栞さんは、私をど、どうする気なのでしょう……。もう少しで取り返しのつかないことになるところでした」

 

 有栖は靴下を脱ぎながら声をあげました。そしてスカートを履いたまま下着に手をかけ、ゆっくりと途中まで下げます。

 

「し、栞さんのバカ……」

 

 有栖は急いで洗濯機の中に下着を入れると、服を脱いでそのままシャワーを浴び始めました。

 

 

 こうして私たちのお泊まり会は続くのです

 

 


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