転生先は大好きな世界でした   作:Monburan

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大切な話

「栞ちゃん行こっ」

 

「うんっ、待ってぇ、桔梗ちゃん」

 

 現在は放課後、お昼に教室で全30ページからなる『1年女子ランキング(2学期版)』胸の柔らかさランキングで堂々たる1位を獲得した桔梗ちゃんの胸を体感した私は、これからBクラスの女子メンバーでカラオケへ行くことになりました。

 

「なんか月野さんと遊ぶのって久しぶりな感じ」

 

 カラオケに向かう道中、佐藤さんからの声に私と軽井沢さんが振り返ります。

 

「あ~確かに。佐藤さんとは船上の時以来?」

 

「うん、軽井沢さんは最近遊んだことあるの?」

 

「私はこの前DVD一緒に見たかな」

 

「へぇ、なんか月野さんはガード固いイメージなのに軽井沢さんやるね」

 

 私ってガードが固いイメージなんですね、知りませんでした。最近やけにお誘いが少ないと思ってましたがそういう理由でしたか……

 

「ごめんねっ、全然ガード固くないからむしろどんどん誘ってほしいくらいだよ」

 

 軽井沢さんと佐藤さんは目を合わせて苦笑いをしています。

 

「いや~月野さんは良くっても最近は堀北さんも目を光らせてるし誘いにくいっていうか、ねぇ?」

 

 佐藤さんが軽井沢さんに同意を求めています、それってもう私のせいじゃない気がしてきました。

 無罪を主張させて頂きたいです。

 

「堀北さんも誘えればいいんだけど、絶対断られるのわかってるから誘いにくいしね」

 

「軽井沢さん、堀北さんは仕方ないよ。私は栞ちゃんが来てくれただけで満足かな!」

 

 桔梗ちゃんがカバンを後ろに持ちながら私を見て言います。今日は猫を被った大人しい桔梗ちゃんスタイルのようですね。

 普段のクラス内での桔梗ちゃんは社交性100%で男子にも女子にも大人気ですからねぇ。

 

 

「じゃぁ私が受付してくるねっ!」

 

 

 カラオケ店に到着すると桔梗ちゃんが率先して店員さんに話しかけてくれます。

 こういうところは本当に助かる桔梗ちゃんです。

 

「櫛田さんは可愛くていいよねぇ」

 

 そんな桔梗ちゃんの後ろ姿を見ながら、佐藤さんがボソッと呟きます。佐藤さんってちょっと絡みにくそうな雰囲気ですけど、普通に可愛いですし性格もいいと思うんですけど……

 私は自分の思ったことを佐藤さんに伝えました。

 

「佐藤さんも可愛いと思うよっ?」

 

「いやいや、私なんか可愛くないから。櫛田さんみたいに可愛ければ恋の一つもできるのになぁって……」

 

「佐藤さんが恋の話なんて珍しいね、好きな人でも出来たの?」

 

 軽井沢さんの質問に佐藤さんは髪をいじりながら黙っています。そういえばこの頃、原作での佐藤さんって……

 

「222号室だよっ!」

 

 私が原作について思い出そうとしていると、受付を終えて戻ってきた桔梗ちゃんに腕を引っ張られました。

 

「行こっ、栞ちゃん」

 

「うん、行く行く」

 

 私は一度考えるのをやめて、引っ張られるままに桔梗ちゃんへとついて行きました────

 

 

 

 

 カラオケルームに入ると3人がマイクを取ってくれたり、曲を入れる機械を取ってくれたりと慣れた手付きでどんどん場を整えてくれます。私は座っているだけでいつの間にか頼んだ記憶すらないジュースが目の前に置かれています。

 

「じゃぁ私から入れてくね」

 

 軽井沢さんの言葉を皮切りに時計回りで歌い始めていきます。

 

「……みんな歌が上手ですねぇ」

 

 いつもカラオケに通っている3人は歌がとても上手くて聞いてるだけで満足してしまう程でした。

 隣に座っている桔梗ちゃんが褒めて欲しそうにドヤッっとアピールしてきます。

 仕方ない子ですねぇ……

 

「桔梗ちゃん歌上手だねっ」

 

「えへ、毎日歌ってあげるねっ!」

 

 あっ、それはさすがに結構です……

 私も何曲か歌い終えて落ち着いた頃、向かえに座っている軽井沢さんと佐藤さんが何やらお話をしているようでした。先程の恋の話でしょうか? 

 気になりますね……

 

「ねぇねぇ、さっきの恋の話?」

 

 私は桔梗ちゃんを一人置き去りにして軽井沢さん達の方へと移動します。

 

「うんっ。ちょっと、ね……」

 

 佐藤さんは困ったような顔をしながら私の質問に答えてくれます。佐藤さんの意味深な間がとっても気になりますが、あんまり話したく無さそうですし深入りし過ぎるのもよくないですよねぇ……

 私がそう考えていると軽井沢さんが話を進めてくれました。

 

「佐藤さん、月野さんにも相談してみたら? 月野さんってモテるし恋愛相談得意かもだし」

 

 先程の表情とは打って変わった佐藤さんがキラキラした眼差しでこちらを見つめてきます。

 え? そんなに期待されても……私、自慢じゃないですが恋愛経験0の付き合った人数0で恋愛なんか小説でしか読んだことない夢見る少女なんですけど……

 それでも良いなら是非とも相談に乗りましょう! 

 

「実はね……ちょっとクラスで気になる人がいてね」

 

 気になる人……? あっ、思い出しました! 

 原作のこの頃、佐藤さんが好きになった人って確か……

 

「綾小路くんって彼女とかいるのかな~って……」

 

 だよねっ、綾小路くんですよねぇ。

 確か原作では綾小路くんが体育祭のリレーで活躍した事から気になり始めて、よく見たら顔も良いし、大人しくて優しそうだし、みんなからもノーマークだし、と佐藤さんの気持ちがどんどん大きくなっていった結果、クリスマスに告白をして振られるという展開でした。

 

 原作とは違って綾小路くんはリレーに出場していないのですが、それでも佐藤さんは綾小路くんを選ぶのですね…… 

 これは応援してあげたいところです。

 

 

「綾小路くんは彼女いないと思うよ、女の子の友達も少ないみたいだし」

 

 

 私の答えに佐藤さんはホッと息をはいて私と軽井沢さんを交互に見ます。

 

「軽井沢さんと月野さんだから話したんだからね? もうすぐ高校2年にもなるのにデートしたことないとか、周りに言ったら絶対バカにされるしさ、遅すぎるって」

 

 えっ、そうなんですか? 

 私もまだデートしたことないんですけどバカにされるんでしょうか……

 デートしたことないのは誰にも言わないようにしましょう。そもそもよく考えて見たら軽井沢さんと平田くんの恋愛も偽のカップルですし、私も恋愛未経験者ですしこの3人で話し合っていて上手く行くのでしょうか……

 心配になってきました。

 

「でもそれだけ本気で好きになれる人がいなかったってことじゃない? 自分を大切にしてるってことでもあるしね」

 

「そうだよっ、私は佐藤さんの気持ちを応援するよ!」

 

 軽井沢さんのフォローに乗っかり、私も応援する意思を伝えます。

 原作で綾小路くんが佐藤さんを振った理由は、自分の駒の軽井沢さんよりも佐藤さんのほうが価値がないと判断した為でした。今は原作と大きく変わって来ていますし、軽井沢さんと綾小路くんの接点もありません。

 佐藤さんの健気な恋愛が上手く行くように、これからサポートしていきましょう────

 

 

 

「じゃぁまた明日」

 

「またね~」

 

「うんっ、おやすみ佐藤さん、軽井沢さん」

 

「また誘うねっ! おやすみ~」

 

 久々のカラオケを楽しんだ私たちは、そのまま学生寮へと戻りました。佐藤さんと軽井沢さんはそれぞれの部屋へと帰っていきます。

 

「じゃぁ私も帰るね、おやすみ桔梗ちゃん」

 

 私も自分の部屋へ帰ろうと歩き出すと、桔梗ちゃんが袖をつかんで引き留めてきました。

 

「ちょっとだけ私の部屋に来てほしいなっ。大切な話があるの……」

 

 ……大切な話ですか。いつもより真面目な表情の桔梗ちゃんを見て、私は桔梗ちゃんの部屋に行くことを決断します。

 そういえば桔梗ちゃんの部屋に行くのって初めてですね、桔梗ちゃんは私の袖を軽く掴みながら歩くので私も同じ歩幅でついていきます。

 

『ガチャ』

 

 部屋の鍵があいてそのまま中へと引っ張られていきます。

 

「お邪魔します」

 

「いらっしゃい栞ちゃん」

 

 私が部屋に入ると桔梗ちゃんはすぐに私の袖を離して振り返り、お互いの胸が触れるくらいの距離まで近寄って来ました。

 

『ガチャ』

 

 そしてすぐ私の後ろに手を伸ばして桔梗ちゃんが鍵を閉めます。私は桔梗ちゃんとドアに挟まれた状態で動けずに桔梗ちゃんを見上げました。

 

 

 

「あのね、栞ちゃん……私ね」

 

 

 

こうして私たちは大切な話を始める事になるのです

 

 

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