転生先は大好きな世界でした   作:Monburan

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桔梗の花

 カーテン越しに朝の眩しい日差しが差し込みます。目覚ましの音よりも早く目覚めた私は、隣に寝ているひよりちゃんを見つめました。

 ……そういえば昨日の夜、星空を見て帰宅したあと一緒に寝たんでしたね。私がベッドから動こうとすると、ひよりちゃんはその音で目が覚めてしまったようで眠たそうに抱きつきながら足を絡ませてきます。

 

「……おはようございます、栞ちゃん」

 

「おはよう、ひよりちゃん」

 

 ……捕まってしまいました。仕方がないので少しだけこのままでいてあげましょう。

 ……少しだけですよ? 

 そんな少しだけの30分をひよりちゃんと過ごして、私たちは一緒に学校へと向かいました────

 

 

 

 

 

「ひよりちゃん、本を持ちながら歩くのは危ないよぉ?」

 

「わかってはいるんですけど、くせなんです……」

 

 本を両手で抱えながら歩くひよりちゃん。ちょっと見ていて心配になってしまいます。けど転んだりしたところは見たことないんですよね。

 不思議です……

 そんな事を考えながら歩いていると紫色の綺麗なお花を発見しました。

 

「あっ、桔梗の花だ。この時期に咲いてるの珍しいね」

 

「そうですね、秋にはほとんど枯れてしまいますもんね」

 

 秋の七草が一つ、桔梗の花。

 夏が見頃の花で、9月の誕生花。秋にはほとんど枯れてしまうので元気に咲いているのは珍しいです。

 この学校の敷地内は至るところでこの様に花や自然が人工的に手入れされていて、とっても華やかな環境なのです。

 そういえば、戦国時代に本能寺の変で謀反を起こした明智光秀の家紋も桔梗紋でしたね……

 

 

「栞ちゃん呼んだかなっ?」

 

「うぅん、桔梗ちゃんは呼んでないよ?」

 

 ひよりちゃんと桔梗の花について話していると、桔梗ちゃんが私の横に立っていました。

 いつの間に現れたのでしょう……

 

「あれっ、おかしいな……」

 

「桔梗違いだよ、桔梗の花について話してたの」

 

「これが桔梗の花なんだっ、私と同じ名前だねっ!」

 

「うんっ、この時期に咲いてるのは珍しいからすごいねぇって話してたんだよ」

 

 それから3人でお話をしながら学校へと到着しました。ひよりちゃんと別れてBクラスに入ると、私はいつも通り自分の席へと座り授業を受けて、お昼を終え、そして放課後になるのです────

 

 

 

 

 

 

 放課後の勉強会、私たち女子は教室で勉強中です。本日は男子が図書館で勉強をするらしく移動して行きました。

 ……図書館もいいですね、明日は女子が図書館にしてもらいましょう。そして移動し終えた男子グループはさっそく勉強を開始しようとしていました。

 

「さて、勉強会を始めるぞ。まずは先週課題で渡したテストを提出してくれ、採点する」

 

 幸村くんの言葉を皮切りに男子が順々にテストを渡していきます。

 

「ゆ、幸村くん。テスト全然わからなかったよ、ごめんね。こんなんで僕、中間テストを乗り越えられるかな?」

 

 おどおどしながら沖谷くんが幸村くんにテストを渡します。

 沖谷京介くん。勉強が苦手なかわいい系の男子。そのかわいい見た目や行動から女子にも人気があります。

 

「沖谷大丈夫だ、そのための勉強会だからな。テストまでのスケジュールは平田と相談してしっかり組んである。お前は勉強することだけに集中してくれ」

 

「う、うん。わかった、頑張るよ」

 

 幸村くんからの励ましで元気になった沖谷くんは椅子に戻って勉強の準備を始めます。

 

「じゃぁ勉強会を始めるね。わからないところがあれば僕か幸村くんを呼んでね」

 

 平田くんの言葉で勉強会が始まります。みんな集中して取り組んでいる様で、そんな光景を平田くんも嬉しそうに眺めていました。一時間ほどしっかりと勉強した後、池くんが平田くんに声をかけます。

 

「なあ平田、ちょっと聞いてもいいか?」

 

「うん、もちろんだよ。なんだい?  池くん」

 

「平田と軽井沢ってどこまで進んでるんだ?」

 

 思いがけない質問に平田くんは少し困った顔をします。周りのみんなもちょっと気になるのか質問の答えを待っています。

 

「それは軽井沢さんにも関わることだから詳しくは言えないかな。でも学生としてあるべき正しい付き合い方は出来ていると思ってるよ」

 

「くそぉ、模範解答すぎて全然わかんねえ……」

 

「つまりキスやエッチな事はしてないってことか?」

 

 諦めかけた池くんを見て、山内くんが援護射撃をします。平田くんは苦笑いを浮かべながら、何も答えないことで話を終わらせました。

 

「なあ、寛治。平田でさえ一線を越えれてないんだぜ、俺たちどうなるんだよ」

 

「俺の希望は桔梗ちゃんただ一人だぜ。そろそろ告白しようかな……」

 

「いや、無理だろ。やめとけって。俺は佐倉と付き合うけどな、佐倉のやつ俺のこと好きだと思うんだよな。佐倉のこと見てるとたまに目が合うんだぜ!」

 

 そんな二人が話している横で須藤くんだけが真剣に勉強を続けていました。池くんと山内くんがそんな須藤へ話かけます。

 

「おい健、いつまで勉強してんだよ。もう休憩だぞ?」

 

「健のやつ今回のテストやけに気合い入ってんよなあ」

 

 須藤くんはやりかけの参考書から一度目を離して池くんと山内くんの方を見ました。

 

「ああ、実は俺、今回のテストで高得点をとって月野に告白しようと思ってんだ」

 

『はああああああ!?』

 

 図書館の中での大声にクラスメイトがシーッと指で二人を注意をします。池くんと山内くんは手で口をふさいで頷きながら須藤くんに詰め寄ります。

 

「おい、待てよ健。聞いてないぞ、いつの間にそんな話になってんだよ」

 

「寛治の言う通りだ。裏切りはよくないぞ、思い直せ! 今ならまだ間に合う」

 

「ダメだ! 俺はもう我慢できねえ、月野に気持ちをぶつけてえんだよ」

 

「池くん、山内くん、須藤くん。どうかしたのかい?」

 

 騒がしい三人に心配した平田くんが会話に割って入りました。池くんと山内くんが目線を合わせて頷きます。

 

「あのな平田、健のやつが今回のテストで高得点とって月野に告白するって言ってんだけど上手くいくと思うか?」

 

 池くんの質問に平田くんが真剣に悩み始めます。須藤くんはそんな平田くんを睨むように見ながら答えを待ちます。

 

「あくまで僕個人の意見としてだけど……。いきなり告白は少し難易度が高いんじゃないかと思う」

 

「チッ……」

 

 平田くんの否定的な答えに須藤くんは悔しそうに舌打ちをして池くんと山内くんは嬉しそうに頷きます。

 

「だからいきなり告白ではなくてまずは名前で呼んだりとか距離を近づけたほうがいいんじゃないかな?」

 

「まずは名前呼びからか……」

 

「だな、名前呼びなら俺もいいと思うぜ。なあ、春樹」

 

「ああ、そんくらいなら問題ないな」

 

「おし、決めた。今回のテストで高得点とって月野に名前呼びを認めてもらうぜ!」

 

 気合いを入れ直した須藤くんは再び参考書と向かい合い勉強を始めました。それを見た池くんと山内くんもまた、静かに勉強を始めるのです────

 

 

 

 

 勉強会が終わり部屋へ戻ると、私はのんびり一人の時間を過ごしていました。そんな私の部屋にインターホンの音が鳴り響きます。

 

「栞ちゃんあけてほしいなっ」

 

「……桔梗ちゃん?」

 

 私はあけるか迷いながらも、外で待たせるのも悪いと思い部屋のカギをあけました。私がドアをあけると、桔梗ちゃんは両手を後ろに隠しながら玄関へと上がります。

 

「あのね、栞ちゃんにこれを受け取って欲しくて……」

 

 差し出される一輪の花。

 紫色の綺麗な桔梗の花……

 

「私をずっと側においてほしくて」

 

桔梗ちゃんは照れながらも、私が受けとるか不安そうな顔で見守ります。ちょっと弱気な桔梗を見て、私はくすりと笑いながら花を受けとりました。

 

「ありがとう、桔梗ちゃん」

 

「うぅん、どういたしまして!」

 

 私が受けとると花のような笑顔で桔梗ちゃんは微笑み、すぐに帰って行きました。桔梗ちゃんは知っていたのでしょうか? 桔梗の花の花言葉を……

 私はその後ろ姿を見守りますが、振り返ることなく桔梗ちゃんは走り去って行きます。もう届かないと知りながら、私は遠ざかっていく桔梗ちゃんに伝えます。その昔、一人の女性が恋人の帰りを一生涯待ち続けた物語が由来の花言葉……

 

 

 

 

 

『永遠の愛』

 

 

 

 

 

 こうして私の部屋に、一輪の桔梗の花が咲き誇るのです

 

 

 

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