戦記絶唱シンフォギア 〜魂を秘めた少年達の歌〜 作:Mint or meta
ーー冬の某日の夜 晴れ
コレほどまでにベストな日はない
望遠鏡とデジカメを持って
いつもの公園に向かう、とその前に
今回は"アレ"も持っていかないと・・・
破壊されて間もない住宅街を駆け抜ける
怪我に四苦八苦しながら道を歩く住民達
戦場にて 魑魅魍魎
斬って弾いて 詩詠い
魂 振るった 歌い手共
こうなったのも俺たち一般市民には分からない超常現象が原因
そして、その俺たちを護った人々の戦いの跡
ハッ、ハッ、と走りに合わせて息を吐いては吸う
バテた拍子で呼吸を乱さないようにリズムよく
元弓道部だけどランニングがあったし
そのおかげで呼吸が乱れなかった
重要だなぁと思いながらいつもの公園に着く
よし、始めようか…天体観測
三脚を二つ立てて、望遠鏡をマウントに設置する
もう一つにはカメラを付けて、完成
キャンプ用の折り畳みの椅子に座りながら
魔法瓶に入っていた温かいお茶を飲む
『おまたせー!』
遅い、もう始めてんぞ
『ごめんね、どうしても欲しいCDがあってさ』
ホント音楽好きだよなお前は
『えへへ、だって今回のは
売り切れるかもしれないッ!て感じの奴だからさ
凄く並んでたし大変だったんだよ』
へぇー
『あ!なにさ!
「興味ないですー」みたいな顔!
ホホエミ動画の中でも一位の歌い手さんの
CDなんだからねッ!』
なぁ、歌月…
『なに?星輝くん』
…もうお前とはそんな話も出来ないんだよな
そういって手の中にあるアレ…
初めての天体観測の時に撮った
幼い頃の俺たちの写真を見る
あの"悲劇"でお前は・・・
歌月…
お前、今・・・
何処にいるんだ…?
3年前
「もう中盤だぞ?
まだ来るの難しいか?」
『マジか!?クッソ、急いで向かう!
つーかこの時期に渋滞とか起こしてくれるなよなホントによぉ!』
「ははは!"大丈夫"だ!
ゆっくり来い!二次会もあるから問題ねぇよ
それまでは俺たち2人で良いさ」
『そういうわけには…』
椅子に座りながら溌剌に話す金髪、長髪の男
まるで花婿衣装のようなコートを着こなしている
『今日は、
お前と美月のウェディングライブだろ!』
そう、今日は彼、日本で有名な作曲家兼歌い手の日輪 詩郎と
日本一のソロアイドル、桐山 美月の結婚披露宴を含めたライブだった
そして、詩郎と電話口で話すのは彼の親友であり
相棒の狭間 俊則
「落ち着けって、俊則
お前の気持ちはしっかり受け取ってる・・・
だから大丈夫だ…
気にせずゆっくり来い、
あとでたっぷり冷やかしてやるよ!」
『へっ、じゃあ尚更急ぐわ!
じゃあな!』
「おう!」
『あ、それと』
「お?」
『結婚おめでとう』
「…ありがとな」
詩郎は贈られた細やかな祝いの言葉に
胸が熱くなるのを覚えながら通話を切った
「トシくんは遅くなりそう?」
「ああ、着くのは難しいようだ」
「渋滞にハマるってついてないね・・・」
「あいつは貧乏くじよく引くからなぁ」
ククク、と笑う夫の姿につられ
クスクスと微笑む花嫁
「そろそろ行くか」
「うん、次の曲はみんなで歌う物だから」
ライブ会場 地下
「やはり、反応しているな
2人の歌声に」
「ああ、だが次が1番重要な点だ」
ピピピ・・・
「狭間だ」
そう答えて、応答する男の名は狭間 紀郎
首にかけられている名札には
施設提供者 民間特異災害救助派遣会社
Tunes代表取締役社長と書かれていた
『よう、オジキ
どうだ?異常とかは…』
「フッ、気にするなと言ったろう
お前達は歌とお客達からの祝福を味わえ」
『そっか、何かあったら呼んでくれよ?』
通話が切れる、やれやれと息を吐きながら
目の前の台に乗せられている腕輪を見据える
「きっと良い旦那になるな」
「そうだな…その為にもこの実験
成功させるぞ!」
「勿論だとも」
椅子に座り、コンソールを操作し始める科学者、宮ノ神 京次郎
それに合わせて他の研究員達も端末の操作を早めていく
乗せられている腕輪はとても重要なサンプルだった
そして、本来開発し得ない代物でもあり
この開発に時間と人員、金をだいぶ費やした
Tunesの協力、支援先の特異災害対策機動部
特異災害に対抗する為に作られた、人を護る為の兵器である
二課で開発されたシンフォギアを元に開発された回天式特機装束
FG感応回天式特機装束コンチェルトギア
今回とある仮説を立証するため詩郎の所持していたコンチェルトギア
名前をドロウプニール、北欧の全知全能の神オーディンの腕輪である
「この実験が成功すれば…!」
・・・
地上 控え室
椅子に座りモジモジとする少年は
手に握られた手紙を見つめていた
「大丈夫、大丈夫…」
かつて姉から教わった事だった
胸に手を当てて、深呼吸して
大丈夫と言い聞かせてみて、と
「・・・ふぅ、
ありがとう、姉さん」
記憶の中の姉に感謝する
少年の名前は桐山 歌月
この婚礼の花嫁の弟
「歌月くん?」
「ひゃいっ?!」
「あ、ウフフッ…
ごめんね、もうすぐで歌が始まるから
歌月くんも見たい?」
「は、はい!
見たいし聴きたいです!」
「じゃあ、ついてきて」
作業員の女性に案内されvipルームに通される
テーブルには料理とジュースが乗せられていた
早速、料理を一口摘んで、一面ガラス張りの窓から会場を一望する
「わぁ…!」
華やかなステージと名ばかりの客席が見える
客席ではテーブルの席につき話をするグループや
ビュッフェの容器から食事を取る客人も見えた
中には芸能関係者と一般の客が気が合ったのか笑い合う姿も見えた
「ここにいる人たち、みんな
姉さんと義兄さんの知り合いなんだ…」
思えばここまで来るのは決して楽ではなかっただろうと思い返した
幼い頃に両親を亡くし、女手一つで育て上げてくれた姉
姉の歌唱力に魅了された教師は芸能事務所に
彼女を強く推薦した
デビューするも人気は伸びず
引退も考えていた頃
出会ったのが同じ悩みを持った詩郎だった
彼の提供した楽曲を歌った美月に観客は沸いた
それからは彼の詩と彼女の歌は日本中に知れ渡った
今ではテレビで見かけないということは無い
そんな2人がとうとう結婚する
ショックも大きいが、祝福も大きかった
その結果がこの会場によく表れている
「色々あったな…」
歌月も苦労がないわけではなかった
姉への嫌がらせで飛び火する事もあり
その度に姉は涙を流した
その涙を彼はいつも拭いていた
これで幸せになってほしいという想いと祝福が
彼のポケットに大事にしまわれた便箋に
込められている
フッと照明が消えた
「あ、始まる!」
ざわめく観客達に呼応するように
舞台にスポットライトが当てられる
ワァァァァァァァァァァ!!
瞬間、湧き上がる大歓声
主役の2人が現れた
『お前らァ!楽しんでくれてるかぁ!?』
オオォォォォ!!
『次の歌は先週ネット公開したあの歌
私と詩郎が作詞作曲した歌だよ!
私と彼の一つの終わり…』
『そして、俺たちと言う始まり!!
この門出という黎明に!!』
『『聴いて!!』くれ!!』
♪レイメイ
凛として爽やかな歌声を響かせる美月
何処となく哀情を感じるが決意の篭った
歌詞を歌い上げる
次の歌詞で詩郎の歌声に変わる
透き通りつつも力強い声は先ほどの美月の歌声と
調和する、その旋律は観客達を魅了させた
興奮の熱にやられたのか観客達も歌い始める
それはVIPルームで聴いている(歌詞を知らないため歌えなかったが)
歌月も例外ではなかった
「スゴイ…!」
(心が躍るッ!血が沸くッ!
こんなに興奮したの久しぶりだッ!)
子供ながらに2人の歌に心奪われる歌月
美月のライブには時折、見に来てはいたが
2人のデュエット初めてだった
美月とはまた違う感動に体が震え
どういうわけか目が潤んだ
それほどまでに2人の旋律に心震えたのだろう
『いつか黎明の元に帰る時まで』
『痛む泥濘の中で祈りを描くよ』
『『
歩き出すの…』』
曲が終わり大歓声の嵐が再度巻き起こる
その歓声に抱き合いながら応える2人、
純白で華やかな衣装も相まってなんとなく神々しさも感じたのか歌月はこう呟いた
「まるで、仲良しな神様と女神様みたい…」
移り変わって 地下
「ドロウプニール、微弱なフォニックゲイン群に反応あり!
実験成功です!」
「よし!」
「ふぅ…やはり仮説通りか」
聖遺物 ドロウプニール
オーディンの持つ腕輪、"滴るもの"と呼ばれ、8つの同じ腕輪を生み出し
最大9つに分かれる、そして一つに重なる
彼らの行った実験はドロウプニールは歌を重ねる〈重奏〉によって力を増す腕輪でもあるという検証だった
本来、そんな物を民間企業が待つべきではないが
彼らTunesは特異災害対策機動部二課への施設援助並びに兵器援助もこなしている為、
今回特例中の特例として幾つかのプロトタイプが京次郎が担当の元、開発されたのだった
「さて、無事に実験も終わった
上に行って祝ってくる…」
「それは良い…」
幸福なこの瞬間は誰もが笑顔になり
至福の時でもある
『ではここで、お二人にサプライズです!』
観客達と美月達が疑問符を浮かべる
「よし…!」
歌月がゆっくりと舞台に上がる
おおぉ?と沸いて
え、なになに?と美月が興味津々に弟を見る
『新婦の弟様、歌月くんからの
お祝いのお手紙です!!』
おおおぉぉ!と感心したと反応が起こり
思わず美月は手を口に当て、
詩郎は照れくさそうに頭を掻いた
『姉さんと義兄さんへ…』
誰もが続いてほしいと思うこの瞬間
それを壊すという運命を定めた神と世界
残酷なのだ
凄まじい地響きと共に盛り上がる床
つんざく悲鳴、怯える声
床から現れたのは今最も世界が人類が恐れる
特異災害
「ノイズだァァァァァァァァ!!!」
使用曲
レイメイ
さユリ×MY FIRST STORY