ありふれたIF 香織ルート   作:グラドラル

1 / 1
ご要望があれば続くかも。


プロローグ

「……なんで……何がどうなって……」

 

 

香織は混乱していた。たった今自分は、奈落の底へ落ちたハジメの元へ向かおうとするのを、幼馴染達に抑えられていたはずだ。いつの間にか意識を失っていたことも不思議だが、目を覚ましてみれば自分が眠っていたのは学校の保健室であった。

 

 トータスでの日々が単なる夢であったとはとても思えない。だがそれならば、何故自分は地球へ戻ってきているのか。

 

「……南雲くん……南雲くんは!?」

 

 そうだ。自分が地球へ戻ってきたならばハジメは?奈落の底へ落ちたハジメは一体どうなった?

 それを思い出した香織の目に入ってきた光景。

 

「……ぁ……」

 

 それを見た香織は歓喜のあまり擦れたような声しか出せなかった。

 

 隣のベッドには南雲ハジメが眠っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 程なく目を覚ましたハジメに問いかけ確認できた。

 二人はトータスに召喚されてから、ハジメが奈落に落ちるまでの記憶を持っていたこと。

 

 また養護教諭に確認したところ、体調が優れなかったハジメに香織が付き添い、二人とも眠ってしまったとのことだ。クラスメイトのことも確認してみたが、特別何もなかったという。

 肝心の日付はトータスに召喚された日であった。

 単なる夢であったのか、過去に戻ったのか、平行世界での事を夢として体験したのか。

 どれが正しいのか、間違っているのか。確かめようのないことだった。

 

 

 

 

 

 

 そう結論付けた所で、香織はある決心をした。

 

 一度ハジメを失った経験から、香織は明確にハジメへの好意を自覚した。

 

 その上で今、ハジメは無事な姿で香織の目の前にいる。

 

 香織は自分の気持ちを抑えようとは思えなかった。

 

「南雲くん……」

「はい……」

 

 真剣な表情で自身を見つめてくる香織に、ハジメは目を逸らせなかった。

 

「私はあなたが好きです」

 

 潤んだ瞳と熱を帯びた声に思わず鼓動が跳ねる。

 

「初めて見た時からずっと好きです」

 

 お互いの重ねられた手が途轍もなく熱く感じる。

 

「南雲くん……ううん、ハジメくん……どうか私と……」

 

 ハジメはゴクリと唾を飲み込む。そして香織はその言葉を口にする。

 

「私と結婚して一生傍にいてください!」

「……えっ?」

「……えっ?」

 

 香織が口にしたのはプロポーズの言葉だった。それもさらっと一生なんて重い言葉まで付けてしまった。それを自覚した香織の顔が青ざめていく。いくら何でも恋人を通り越していきなり結婚なんて、心優しいハジメであっても受け入れがたいだろう。

 

 失敗してしまった。そう思った香織は涙が溢れるのを抑えられなかった。

 

 それを見たハジメは、そんな涙は流せたくないと強く思った。

 向けられる好意が若干重い気がしないでもないが、香織に守って欲しいと言っておいて、無茶をした挙句奈落へ落ちてしまったのだ。香織にとってそれがどんなに辛かったか。

 

 それだけ自分を思ってくれる香織を悲しませたくはなかった。

 

「……香織さん」

「……っ、はい……」

「結婚を前提に僕と付き合ってください」

 

 彼女は真剣に自分を思ってくれている。ならば自分はどうなのか。恋人にはなれても結婚は出来ないと言うのか。それはとても不誠実だと思った。これに応えるなら彼女の人生を背負う覚悟が必要だと思った。その覚悟は意外なほどにすんなり決まった。

 

「……はい!」

 

 香織の涙は悲しみのものではなくなっていた。

 

 二人の距離は自然と縮まり唇を合わせる。

 

「…………」

 

 雫はその様子を気配を消しながら頬を赤らめて見ていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。