海外では着々と、国々がモンスターの地と化してきている。
日本は、怒り喰らうイビルジョーにより、大阪府が壊滅的な被害を受けた。
だいたいのモンスターが、しばらく街を蹂躙した後どこかへ姿を消したり、その場に滞在し続けている。
いつどこで、どんなモンスターに襲われるか分からない恐怖に怯えながら生活する事を余儀なくされている。
これを受けて、政府は自衛隊を対モンスター組織
『イレギオンズ』へと改名し、技術を注ぎ込んだ。
――
『続いてのニュースです。各地のモンスターによる被害は拡大しており、先日、“イビルジョー”と呼ばれるモンスターが、大阪府に壊滅的な被害を齎しました。』
「大阪…すぐ近くじゃねぇか…」
滋賀県 琵琶湖に限りなく近い場所で家族と暮らす中学生、『
中学生、といえば、何でも自分でできると思う時代、思春期真っ盛り、親には平気で反抗し、何でも一人でやり遂げようとする。
典型的な男子中学生だ。
髪は流行りの男らしい髪型に整えている。
今日も窓から琵琶湖が見える、初めて見た時は何故こんなにも大きいのだろうと思ったが、成長するに連れ、そんな疑問も無くなっていった。
「あそこからモンスター来たりしないよな…ま、流石にある訳ないか…」
冗談じみた事を言いながら、スマホをいじり始める。
ニュースアプリを開いてみれば、一面モンスターについてのニュースばかり。
どれだけ国民を不安にさせたいのか、それとも常に報道して国民に危機感を持ってほしいのか分からないくらい、ここ最近そんなニュースばかりだ。
「モンスター…ね。大阪にも現れたとなれば、ここもそろそろ危ないんじゃないか…?」
危機感を持つため、モンスターについて勉強する事にした。
最近は、様々なモンスターの生態や名前などが載せられたサイトが存在する。
そのサイトを開いてみる。
目に入ったのは、最も現れやすいモンスターだった。
ランポス、ゲネポス、イーオス、ギアノス、ジャギィ、ジャグラス――どれも共通するのは、小型の恐竜のような姿をしている事だ。
「集団で襲ってくるのか、恐ろしい奴らだな。」
続いて、危険なモンスター――大型モンスターに属される者達。
真っ先に目に止まったのは、“ラギアクルス”や“ガノトトス”というモンスター達だった。
どちらも、水辺によく現れるようだ。
「こんな奴らが琵琶湖から出てきたら…俺耐えられねぇよ…」
どちらも危険なモンスターであり、遭遇したらひとたまりもない相手だ。
「…なんだよ、こちとら対処法が知りたいのに、どこでも“とにかく逃げましょう”しか書いてないじゃねぇか。」
確かに、逃げるのが一番の手だ。
だが彼が知りたかったのは、より安全な対処法だ。
モンスターの生態や特徴を理解し、それに応じた対応、それを求めていたが、どうやら彼の要望には答えてくれなかったようだ。
――すると、琵琶湖辺りからとてつもない轟音が鳴り響いた。
「な、何だ?!」
龍太は窓から首を最大限まで出して琵琶湖を見た。
雨のような水しぶきが上がり、地面に幾つも打ち付けられた。
“グォォォォォォォォォォォォォォ”
琵琶湖から飛び出て、道路に着地したのは、青い甲殻と白い革が目立つ首の長い竜。背中には無数の突起物があった。
「ら、ラギアクルス…」
スマホで見た、ラギアクルスそのものだった。
「だ、大丈夫…家の中であいつにバレないようにすれば、きっと大丈夫だ…」
窓から離れ、ラギアクルスに見られないよう必死に隠れた。
次に響き渡るのは、またラギアクルスの咆哮。
咆哮と共に放たれた雷の球体は、奴の周りを浮遊しながら、辺りの建物を破壊する。
そして、龍太の家の前で止まったラギアクルスは、尻尾で家を破壊した。
「うっ…うぉぉぉお!!」
崩れた衝撃で地面に仰向けになる龍太。
瓦礫に塗れて姿は見えずに済んだが、目の前に横たわるのは、母親の死体だった。
――
「龍太、これ新しい服買ったけど…」
「いらねぇよ!こんなダセェ服!」
――
数々の記憶が、一気に蘇ってきた。
今まで邪魔だと思っていた母親が本当に死んだ。
彼にとっては凄く複雑な気分だった。
「母…さん。」
衝動で立ち上がってしまった。
ラギアクルスに気づかれ、蒼き落雷が落ちる。
龍太は焦って回避し、全速力で路地裏に逃げた。
ラギアクルスが放つ落雷が、彼の足跡のようになる。
路地裏から抜け出した直後に、ラギアクルスが放つ渾身の落雷が彼の頬スレスレを通る。
速まる鼓動を抑えながら、とにかく逃げる。奴に見つからない場所へ。
「モンスターを発見、排除を試みます。」
イレギオンズが到着した。
さらにモンスター用へと改造された“ キラーアサルト”を構え、一斉に弾丸を放った。
前のアサルトライフルより効果があるように見られる、それも一斉放火、飛び散る血液でその効果は分かる。
しかし、ラギアクルスもただ撃たれるだけでは無く、尻尾を振り回し、イレギオンズを吹き飛ばす。
吹き飛ばされた衝撃で、何人かが命を落としてしまい、負傷者も出ている。
もう長く居られないと思った龍太はその場を離れた。
「クソッ…クソッ!!」
ただただ、日常を得体の知れない物に奪われた事を悔やんだ。
そして、大嫌いだった筈の母親が死んだ事を悲しんでいる自分に、ひたすら動揺した。
日常が壊れるとは、こういう事なのだと、実感する。
「な、何かが凄い速さで動いてるぞ!!」
周りにいた市民の一人が叫んだ。
“グルァァァァァァァァァァァァ”
獣の叫びと共に、道路へ降り立ったモンスターがいた。
青い体毛で覆われ、猫のような耳を持ち、棘が生えた尻尾を威嚇の如く振り回すモンスター“ナルガクルガ”だった。
ナルガクルガは市民を押し倒し、首元に噛み付いてそのまま首を引きちぎった。
それを見た市民達はますます混乱し、逃げ惑う。
“グォォォォォォォォォォォォォォ”
騒ぎを嗅ぎつけたようにラギアクルスもやってきて、ナルガクルガに雷を放った。
ナルガクルガも負けじと尻尾を振り回し、周りの建物を巻き込みながらラギアクルスに反撃する。
ラギアクルスは長い身体を活かし、ナルガクルガに巻き付いてから首元にかじりつく。
痛がるナルガクルガは暴れまわり、さらに建物が倒壊していく。
「市民を発見。救助を優先する。」
「皆さん!こっちです!この車に落ち着いて乗ってください!」
イレギオンズの避難用の車が数台到着した。
市民達は大急ぎで車へと向かう。
龍太は破壊される、育った街を眺めながらゆっくり、ゆっくりと車へ乗った。
ナルガクルガとラギアクルスの争いは激しさを増し、街はほぼ瓦礫で埋め尽くされた。
結果的に、ナルガクルガが逃げ出し、ラギアクルスの勝利という形で争いは幕を閉じた。
たちまち、ジャギィ達が街へやってきて、獲物を求めて彷徨い始めた。
彼らがここで築いてゆく生態系は、どのような物になるのだろう。