日本に残された土地はもう少ない。
殆どの地域が、モンスターの地と化し、人口は大幅に激減した。
政府は早めの対策として、4年の月日を掛けて人工島“バンギルガ”を日本から少し離れた所に設立した。
――
人工島 バンギルガ 日本人が多く集まる島。4年という短い期間で人工島と呼べる物が作れるのだから、技術が発展したものである。
バンギルガには、イレギオンズの兵舎が多数存在し、残った土地を守る為に日々戦っている。
「千葉県にモンスターが出現、援護をしにいく。直ちに出動準備をしろ!」
隊長の声が隊舎に木霊する。
マグカップのコーヒーを啜っていた青年が、ため息を付きながら隊服を身に着けていく。
「クソッ…いつになったらあいつらは消え去る…」
『
愛する者をモンスターに奪われ、モンスターに対して恨みを持ってイレギオンズに入った。
彼は常々、モンスターが消える事を強く望んでいる。
キラーアサルトを背負い、必要な物資をポーチに詰め込んで船へと向かう。
乗り込んだ船は対モンスター用に製造された“レギオンR5”
撃ち込むと、しばらくしてから破裂する “裂爆砲”が装備され、甲板にはタレットミニガンが配備されている。最終兵器として、船の先端に、かつてモンスターに有効だったと言われる“撃龍槍”をアレンジした兵器が取り付けられている。
今の日本の資材では、対モンスター用の戦艦はこれが限界だった。
出港したはいいものの、何やら天候が少し悪化してきた。
出港前は問題無しだったのに対し、空が段々と曇り、ポツポツと雨が降ってきた。
「何故だ…?こんなにも急に悪天候になる事など…」
何となく嫌な予感がした。
それは、嵐で目的地に着けなくなる以上に、大変な事が起こる予感だった。
“グアァァァァァァァァァァ”
風を切り裂くような咆哮と共に、大雨となる。
大雨の粒を潜り抜け、モンスターが姿を表す。
黒銀色の甲殻で身を包み込み、二枚の大きな翼を持った龍。
“クシャルダオラ” 報告に間違いがなければ――奴は古龍だ。
「撃てッ―――!!」
炸爆砲が一斉に放たれる。しかし、奴には傷一つ付けられなかった。
クシャルダオラは身体の周囲を風で護っており、その風により、炸爆砲が無効化されていた。
タレットミニガンを乱射する。
ミニガンの鉛玉は、クシャルダオラの鋼鉄の甲殻に着弾するも、無様に弾かれてしまう。
「なんだと…?!」
「やつには弾丸が効かない!!うわぁぁぁぁ!」
ついにクシャルダオラが船に乗り込んできた。船内が大きく揺れ、一部の隊員が荒れた海に呑まれてしまう。
「くっ…」
大砲もミニガンも効かないのなら、残された手は船の先端にある撃龍槍のみだった。しかし船の先端ということあってか、船内に乗り込まれては当てるのは困難だ。
「こっちだ!!化け物め!!」
風希はキラーアサルトを乱射しながら憎しみを込めて叫んだ。クシャルダオラは首を向けるや否や、すぐに風希に飛びかかってくる。
転がって避けながら銃を乱射し、船の先端に向かって走る。
「風希!よせっ!」
「仲間を助けるには…これしかないんです!」
「…撃龍槍!用意!」
風希は船から飛び降りた。同時にクシャルダオラも
船の先端にやってきた。
縄を使ってなんとか船にぶら下がっているが、落ちたら死は免れないだろう。
クシャルダオラが船から降り、飛来しながら風希に向かって突進した。
「撃ッ〜〜!!」
撃龍槍が作動した。その瞬間、赤い血しぶきと、破裂音と共に、クシャルダオラを撃龍槍が貫いた。風希は全速力でロープをよじ登り撃龍槍が直撃するのを免れた。
クシャルダオラは一瞬その場に留まったが、すぐに何処かへと姿を消した。
「風希!!なんて危険な真似を!」
「すいません…」
「でも良い。お前は無事だ。そして奴も撃退できた。」
隊長が彼の肩をポンポンと叩いた。仲間をかなり失ったが、それでも全滅は避けれた。風希は僅かな命を救ったのだ。
「今更引き換えせはしない。覚悟はいいな?」
残った隊員達は、静かに、一斉に頷いた。
霧に包まれた視界に、明かりが見えてくる。しかしそれは、希望の光では無く、絶望の“火”だった。
「街が…いや、大陸が燃えている…?」
まさに比喩するなら、地獄。街どころか、大陸全体が火の海と化しており、辛うじて道がある程度だった。
「まだ声が聞こえる。まだ助けを求める命がある。俺たちが最期にやるべき事は、それを救おうとする事だ。」
隊長を先頭にして、隊員達は炎の中をかいくぐって進む。
“ギィヤァァァァァァァァァッ!!”
炎の海の上を飛来するのは、またもやモンスター。
王者のたてがみを持つ、炎の王。“テオ・テスカトル”
「撃て!!奴に少しでも損傷を与えるんだ!!」
隊員達は空を飛来するテオテスカトルに弾丸をお見舞いする。しかしテオテスカトルは怯む様子も無く、地上に降り立った。
さらに、隊員達の後ろにクシャルダオラが舞い降りる。炎、風、雨。最悪な状況だった。
“ギィヤァァァァァァァァァッ!!”
“グアァァァァァァァァァァァ!!”
テオテスカトルとクシャルダオラは一斉に飛び、空中でぶつかり合う。クシャルダオラの風のブレスがテスカトルに直撃、テスカトルも負けじとクシャルダオラの甲殻を炎のブレスで焼いた。
「今のうちだ!撃て!撃ちま――」
空中に向かって弾を乱射する隊員達を、テスカトルとは比べ物にならないくらいの火力の炎が骨の髄まで焼き尽くした。
空を飛ぶ黒い龍。闇に包まれたその姿は、2体の古龍をも、怯えさせる程だった。