結城友奈英雄伝説   作:アレクサンデル・G・ゴリアス上級大将

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「何よあんた!こんなところまで来て!私の泣き顔拝みに来たの?!それとも勝ち誇りに
来たの!?」

「いいえ三好候補生。私にはそのような趣味はありません。もしそのような趣味があったら私はとっくの昔に友奈様に捨てられていたでしょう。組手のお礼をお渡しするために参ったのです。」缶コーヒーを置く

「?」

「本来でしたら黒ビールでも良かったのですがここは幼年学校です。何より三好候補生がお好きかわかりませんでしたので。」

「ふん、気が利いてるじゃない。」

「女性の泣き顔を見てしまったお詫びも兼ねています。どうぞ。」

「キルヒアイス候補生・・・だったわよね。史上初の男性勇者。まさか私より強いとは思わなかったわ。でも次は勝つわ!覚えときなさい!」

「勿論です。卿のような強く美しい女性を忘れる筈がありません。」

「・・・そんな下手な口説き文句に私は乗らないわ。次はもっと良く考えて口説きなさい。」

「その割にお顔が赤いのは何故です?」

「そ そんなの、模擬戦終わったばっかりで暑いからに決まってるじゃない!!」

「わかりました。そう納得しておきます。」微笑み

「気に入らないわあんた!次はぎったぎったにしてやるから覚悟しとくことね!」



我が友

ガイエスブルク要塞 大会議室

 

「・・・閣下のご様子は?」

 

「相変わらずだ。キルヒアイスの亡骸をずっと抱き抱えておられる。」

 

「・・・しかし、結城侯にあれほど脆いところがおありとは思わなかった・・・。」

 

「違うなミュラー。俺や卿が死んでもああおなりではあるまいよ。ジークフリード・キルヒアイスは特別だ・・・特別だった・・・。」

 

「それを言っても仕方あるまい。問題はこれからどうするかだ。」

 

「結城侯には立ち直っていただく。立ち直っていただかねばならん。さもないと我ら全員銀河の深淵に向かって滅亡の歌を合唱することになる。」

 

「だがどうやって立ち直っていただく?」

 

「・・・どうすべきか・・・。」

 

「総参謀長閣下、おみえであります!」

 

「何の用だこんな時に。」

 

「卿らの討議も長い割に、中々結論が出ないようだな。」

 

「何!!」

 

「まぁ待てミッターマイヤー。目下我々はNo.1、No.2がおらず、纏め役に欠けるのでな。」

 

「・・・。」

 

「で、参謀長殿には良い思案がおありかな?」

 

「無いでもない。」

 

「ほう・・・。」

 

「東郷大将以下勇者の方々にお願いする。」

 

「現職勇者達か・・・それは我々も考えたが・・・。」

 

「どうやら誰も、報告する役を引き受けなかったようだな。それは私が引き受けるが、卿らにもやって貰うことがある。」

 

「「「?」」」

 

「キルヒアイス提督を殺した犯人を捕らえるのだ。」

 

「「「?」」」

 

「犯人はアンスバッハではないか。」

 

「奴は実行犯に過ぎん。真の犯人は別にいる。大物がな。」

 

「それはそうだが、ブラウンシュヴァイク公は既に死んでおるし・・・。」

 

「ブラウンシュヴァイク公のことではない。」

 

「「「?!」」」

 

「どういうことだ?」

 

「誰が犯人だというのだ!」

 

「帝国副宰相 兼 財務尚書 レムシャイド伯。」

 

「「「!!」」」

 

「この危機を逆用し、潜在的な敵を排除しようと言うのか?」

 

「そうだ。」

 

「卿を敵に回したくは無いものだ。勝てる筈が無いからな。」

 

「財政のほぼ全権を掌握しているレムシャイドは遅かれ早かれ始末しなければならん。それはレムシャイド側とて同じこと。今回のリップシュタット戦役においても奴がブラウンシュヴァイクやリッテンハイムと裏で繋がっていた証拠は既に上がっている。何より今回の戦いを通じて我らの力を削ぎ隙を見せるであろう元帥閣下を機を見て失脚させようと宮廷工作をしているに違い無いのだ。可能な限り迅速にオーディンに戻りレムシャイドを逮捕し、財政権に関する国璽を奪うのだ。さすれば結城侯の独裁権を確実に手中にすることができる。権力とはどのように獲得したかではなくいかに行使したかによって正当化されるのだ。それがわからない卿らではないだろう。」

 

 

 

 

 

「陰謀も詐術もこの際やむを得んな。」

 

「これを機に結城侯の敵を一掃し全権力を奪取する!」

 

「異存は無いな?」

 

「「「応!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦 バルバロッサ キルヒアイスの執務室

 

主を失ったキルヒアイスの執務室にはキルヒアイス麾下の少将以下の幹部たちが集まっていた。 ベルゲングリューン、ビューロー、ジンツァー、ブラウヒッチ、ザウケンである。

 

「・・・俺達ばかりずっと落ち込んでいても仕方ない。生きている俺達はもうヴァルハラにおられるであろうキルヒアイス閣下の御為にも早く立ち直り元帥閣下をもり立てていかねばならん。」

 

「そうだな、ビューローの言う通りだ。一応確認しておくが俺以外にキルヒアイス提督から小袋を託された者はいるか?俺はひとつ預かっているが?」

 

「ベルゲングリューン俺は二つ預かっている。卿も同じような命令を受けただろうが俺はキルヒアイス提督から自分が何かあった際はそれを開けるようにとご命令を受けている。」

 

「俺も同じだ。なら開けてみるか。」

 

3つの小袋の中身は遺書だった。ベルゲングリューンのものは麾下の幹部達に対する感謝の言葉と先に置いていってしまった自分のミスに対する謝罪の手紙だった。一方ビューローのものは・・・

 

「『私、ジークフリード・キルヒアイスは フォルカー・アクセル・フォン・ビューローを代理人としオーディン膠原病研究所に対し我が財産の半分を寄付すると共に残りの半分を両親に配分することをここに宣言する。

帝国暦156年8月15日 ジークフリード・キルヒアイス』だそうだ。」

 

「ビューローに任せたのか。最後まで信じられていたなビューロー。」

 

「そうだなベルゲングリューン。ありがたいことだ。」半泣き

 

「しかし、何故膠原病研究所に寄付なのだ?」

 

「わからん。だがオーディンに戻ったら遺漏無く執行しよう。」

 

「あぁ。最後の中身は何なのだ?他二つに比べて少々大きいが。」

 

「・・・元帥閣下への遺言が入った木箱だ。こいつは中身を見ずに閣下にお渡ししよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイエスブルク要塞 大広間

 

「・・・。」

 

結城友奈は打ちひしがれていた。対勇者鎮圧剤といっても所詮麻酔銃、弾速は大したことないのだ。避けることは容易かったし、何よりキルヒアイスの性格から暗殺者の排除より身を挺して自分を護ることを選択することに疑う余地は無い。なのに動けなかった。艦隊戦はともかく勇者としては鉄火場を離れすぎていたが故に野生の勘が鈍ってしまっていた。否、鉄火場といっても基本キルヒアイスにヘイトを頼み自らは止めを刺していただけだった。信頼できる“家族”はまだいる。彼ら彼女らの為に自分はまだ戦える。だがもう最大の親友は去り、自分の膝枕で冷たくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「閣下、ビューローであります。キルヒアイス提督の命により遺言を預かっております。ご確認いただけますか?」

 

「・・・。」黙って受け取る

 

「では失礼します。」敬礼

 

 

 

 

 

 

友奈様、こうして私の手紙をお読みになっているということは、既に私はこの世にいないでしょう。それと私の遺言を遺漏なく執行してくださったベルゲングリューン准将とビューロー准将に後でお礼を言っておいていただけると幸いです。重ねて申し上げます友奈様、勝手に貴女の下を去ったことをお許しください。そしてお礼申し上げます。

12年前、私を拾ってくださり本当にありがとうございました。貴女の隣で戦えたことをとても名誉に思います。そしてお願いです。友奈様に秘密で私は膠原病研究所に投資を行っておりました。これは私の勘に過ぎませんが友奈様のお父君も早くに亡くなってしまわれ、その原因は遺伝系の疾患ではないかと考えていたのです。友奈様も同じ轍を踏むことがないように状況が落ち着き次第膠原病研究所に問診に出かけてくださいますよう謹んでお願い申し上げます。それと宇宙を手に入れた後のことなのですが、レンネンカンプ提督とロイエンタール提督をなるべく友奈様から離さないように、手元に置いておくようお願いいたします。レンネンカンプ提督は強い上司に手綱を握られてこそ能力を発揮するタイプですし、ロイエンタール提督の場合、彼は友奈様を裏切ることはないと信じたいですが野心がある人物でありまたそれにふさわしい実力を備えています。どうかこの両名を信用することはあっても手元から離さないようお願い致します。

そして帝国臣民たちに対しては優しく太陽のように統治してくださいますようお願いいたします。適者生存・優勝劣敗など乃木若葉以降150年続いてきた乃木王朝で十分です。友奈様が帝冠を被った暁にはそのような苛烈な統治をなさらないようお願いいたします。

先に逝った身で申し上げることではありませんが、前を向いてお進みください。無力ながらヴァルハラから貴女を見守り奉っております。

 

 

 

今まで本当にありがとうございました。我が愛する主君、親友、友奈様。

 

ジークフリード・キルヒアイス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん。わかったよジーク。ジークは約束を守った。私も誓約を果たそう。後ろばっかり向いたりしない。東郷さんと皆で前に進むよ。」




次回、結城友奈英雄伝説『ジークフリード・キルヒアイスは勇者である』

銀河の歴史がまた1ページ
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