幼年学校にある勇者候補生を育成する専門学科。結城友奈、ジークフリード・キルヒアイス、三好夏凜、犬吠埼風、犬吠埼樹、東郷美森、楠芽吹、加賀城雀、国土亜耶、弥勒夕海子、山吹しずくは15期生である。
「・・・帝国の基礎は固まった。もう十分でしょう。乃木さん、私は明後日、クーデターを起こすわ。」
「いきなり何を言い出すんだ千景!」
「私はアスターテの戦いで高嶋さんを援護して私らしからぬミスをして右足左手を失った。
もう勇者として戦えない。伊予島さんをそれなりには補佐できているけれど、それは誰にでもできる。
もう私に価値は無いわ。私は・・・勇者だったからこそ価値があった。価値の無い私には生きる価値は無い。
帝国内に蔓延る不平分子もまとめて私の下にいるから、私共々殺処分なさい。
高嶋さんの為に、私の死を無駄にしないで。私は別に犬死でも良いけど、どうあれ死ぬなら、高嶋さんにだけは納得してもらえる死を望むわ・・・高嶋さんが目を覚まさない今なら尚良い。
後は任せたわ乃木さん・・・いいえ、
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キフォイザー星域
「敵艦隊は横陣で我々の前に対峙しております。数はおよそ4万。ですがかつてのリッテンハイム侯との戦い同様編成が無秩序です。私が800隻を率い横から奇襲します。陛下とお姉ちゃんは私の奇襲の意図が読まれないよう引き付けて下さい。」
「頼むわよ樹。あんたがしくじったらおしまいなんだから。」
「任せてお姉ちゃん!」
「今!
「雑魚ばっかりだからかき氷並に容易く溶けるね~。樹艦隊が通りすぎたら攻撃開始して。」
「通りすぎました!」
「よーし、
「リッテンハイムの艦隊の方がよっぽど強かったわねこれは。」
「ひなちゃんの言う通り偽物だからね。弱いにこしたことはないよ部長。」
首都星オーディン 結城元帥府
「ひなた元帥、キフォイザー星域を解放できたよ!」
「おかえりなさい友奈陛下、皆さん。先日ご説明した通り、これで神樹様がある程度力を取り戻しましたので、2人分新しい勇者を迎えることができます。早速お迎えしましょう!」
ピカッ
「はあ・・・まさか死んで尚神樹様に扱き使われるとは思わなかった・・・久しぶりだなひなた。」
「若葉ちゃん!?」
「うわ・・・よりによって若葉大帝引いちゃった・・・。」
「もう一人は・・・?」
「・・・古波蔵棗。よろしく。」
「うわ~大物ばっか出るわね。大帝とイゼルローン要塞初代駐留艦隊司令官を初っぱなから出すとは・・・。」
「では若葉ちゃんと棗さんは来週までにブラウンシュヴァイク星系とレンテンベルク星系を解放して下さい。友奈さん達はアルテナ星系、リッテンハイム星系を。まずは地道に版図を広げましょう。序盤はそこまで苦労しない筈ですから。来週またここに集合し、休息と会議を開きます。何か質問は?」
「・・・。」手を挙げる
「夏凜さんどうぞ。」
「上里軍務尚書に尋ねたい。どこを解放すればどの勇者が召喚されるのかは承知しておられるのか?」
「ピンポイントに誰とまではいきませんが大まかにはわかります。」
「・・・では率直にお聞きする。キルヒアイスはどこにいる?」
「「「!?」」」
カイザー友奈を除き、キルヒアイスをよく知っている面々は驚愕した。ジークフリード・キルヒアイスと言う名前は、カイザー友奈の地雷そのものであった。三好夏凜はそれを誰よりも心得ていた筈だ。にも関わらず何故こんなタイミングで言い出したのか。
「・・・夏凜ちゃん?」
ほら言わんこっちゃない、と皆は思わずにいられなかった。さっきまで機嫌が良かったカイザー友奈の顔が般若そのものになってしまっているのだ。
「・・・完全に保証はできかねます。が、恐らくガイエスブルク要塞 或いはアスターテ星域を解放すれば召喚可能です。」
「・・・となると、アルテナ→レンテンベルクで抜けて、ガイエスブルク要塞を攻略。それでも出なかったら、更にイゼルローン要塞→ティアマト→ヴァンフリート→ダゴン→アスターテで攻略するか。」
「しかし三好大将、今からいきなり攻略するのは危険だ。補給線が細長く伸びきることになる。せめて帝国領全土を平定してから新領土〈ノイエラント〉攻略に着手すべきだ。」
「大帝殿はキルヒアイス提督の実力をご存知無いからそのようなことが言えるのです。キルヒアイス提督は我ら幼年学校勇者科15期最強の戦士です。小官と犬吠埼姉妹が組んでかかっても返り討ちにされる程に。その上艦隊戦も負けなし。補給線を絶たれるリスクを負ってでも喚ぶに値する男です。」
三好夏凜はここまでジークフリード・キルヒアイスを召喚するために熱弁する自分を我ながら御しがたいと思った。まさか自分にここまで言わせるとは・・・と思わずにはいられなかったのだ。キルヒアイスやカイザー友奈と違い生まれた時から戦う運命にあり、そういう感情とは自分は無縁だと思っていたし、また生涯カイザー友奈一筋であったジークフリード・キルヒアイスだが、自分自身を含め多くの者が彼に助けられ、魅せられ、愛してしまった。カイザー友奈には及ぶべくも無いが、亡きジークフリード・キルヒアイスに会いたい気持ちは彼女とて同じことだった。
「決を取ろう。危険を冒して大物を喚ぶか、時間がかかるが確実に活路を開くか。」
「私は夏凜さんに賛成です。戦ってみた限りではですが少なくとも帝国本土のバーテックスは勇者の加護が無い通常の艦隊でも撃破できますし、万が一補給線を寸断されても私達勇者で食い破れます。何より大帝陛下は興味がおありでないですか?史上初の男性勇者、15期最強のキルヒアイス提督を?」
「・・・興味が無い訳ではない。一度手合わせしてみたいものだ。」
「・・・私も戦ってみたい。」
「棗もか。」
「「・・・。」」無言で握手
「何よこの戦闘狂共。」
「そう言いながら風も反対しないじゃない。」
「もう過半数が賛成してるのに私だけ反対しても意味無いじゃない!」
「あんたもキルヒアイスが好きだった癖に。」
「夏凜ちゃん?」般若と化したカイザー友奈
「ひっ!?冗談よ冗談!もうそんなにカッカしないの!」
カイザー友奈のキルヒアイスの独占欲も半端ではない。当人が死んで尚これである。キルヒアイスの生前はどうだったかなど推して知るべしである。
「では賛成多数でキルヒアイス提督を優先的に召喚しましょう。棗さんが犬吠埼大将と入れ替わりでアルテナ星系解放に戦力を集中します。前線に行かない組はしばらく首都星オーディンで休息です。」
1800 軍務省 士官用バー “海鷲〈ゼー・アドラー〉”
所変わって海鷲では二人きりの貸し切り状態で奇妙な宴が始まっていた。乃木王朝初代皇帝である若葉大帝と結城王朝初代皇帝(現在の皇帝)たるカイザー友奈の酒を介した会談である。
「「Prosit .」」杯を交わす
「で、私に聞きたいことがあるそうだな。ついでにひなたからも聞いている。150年も経ち新しい王朝の下では私の悪行ばかりがクローズアップされていると。私自身にのみ帰する悪行ならば何も言わんし、私に言う資格等無い。だが我が友ファルストロングやひなたの苦労を侮辱することだけは許さん。」
「それについてはリヒター君やブラッケ君の仕事だよ。私は歴史はあんまり得意じゃなかったし、歴史に基づく作戦立案が必要な時は得意な人に任せてたから。それにいざ皇帝になってみるとわかったこともある。なってみないと分からない苦労もあるというのがよくわかったから私も多くは聞かないけど・・・私はただ一つだけ聞きたいの。」
「なんだ?」
「あなたも私のように何か大切なものを失った?」
「・・・あぁ。ファルストロングを筆頭に本当に守りたい仲間をことごとく失った。後悔は無い。だが反省すべき点は多かった。卿のような過去を反省できる傑出した人物に禅譲した子孫の人を見る眼に感謝している。私には過ぎた子孫だよ。」
「園ちゃんはまだ来てないけど、近いうちにこっちに来る。その時に褒めてあげたら喜ぶと思うよ。」
「・・・あぁ。そうさせて貰おう。」
「・・・思ったより穏健に終わったみたいね。良かったわ。」
「カイザー友奈陛下も皇帝になってみて若葉ちゃんの苦労を知って貰えたことが大きかったですね。」
「では我々は退散しよう。」
現在の勇者部保有戦力
巫女
・上里ひなた 元帥
勇者
・結城友奈(カイザー友奈)
・犬吠埼風 予備役上級大将
・東郷美森 上級大将
・犬吠埼樹 予備役大将
・三好夏凜 大将
新規参加
・乃木若葉 大帝
・古波蔵棗 大将