¡Viva España!   作:YJSN

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自作の挿絵です。絵を描くのは初めてで下手ですが、どうぞ。

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艦隊司令長官の転生

1588年 7/21 アルマダ沖

スペイン軍中佐 ゾルド・イルパーニャ 死亡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスッ ドスッ ドスッ ドスッ

 

(...。)

 

無言で目の前の奇妙な、伝説上でしか見たことのない龍が荷車を引いている状況を見つめる。

 

「よぉ姉ちゃん、リンガいるか?」

 

「...。」

 

聞かれた事にも唖然として、口を開けっぱなしになる。

 

それに怪訝に思ったのか店の店主は頭を傾げて

 

「おーい、嬢ちゃん。聞いてんのか?」

 

と、こちらに質問してくる。

 

「は...?」

 

口を開けながらその中年の男に聞く。

 

「あのなぁ...リンガだよ、リンガ。買ってかないのか?」

 

どうやら商売人らしい。見てみるとここは露店らしく、店主であるこの男はリンガを売っていると...。

 

いや待て、リンガ?

 

「あ、あぁ...というより、リンガとは何だ?貴様。」

 

「き、貴様って...あのなぁ嬢ちゃん、リンガっていうのはこれだよ、これ!」

 

多少横暴な態度にイラッとしたのか、その店主の男は後ろの並べられているリンガを一つ持ってきて私に見せてくれた。

 

私は咄嗟に見せられたその赤い球体を見て

 

「...リンガ?リンゴだろう。」

 

「はぁーーッ...リンガ だ。わーったら買うのか、買わないのか はっきりしろ!」

 

と、ため息を吐いて私との会話を嫌々そうにする。

 

「リンゴなど買わん。苦いだけだ。」

 

私が率直に言うと、その店主は更に眉間にシワを寄せて

 

「だからリンガだって...いやまぁいいさ。ならさっさと退けって...

 

 

...苦い、だって?」

 

店主は冷やかしだと思ったのか私を追っ払おうと手で叩くが、その私が発した一言に手を止めた。

 

「あぁ、そうだ。リンゴは苦いのだ。誰でも知ってるだろう。」

 

私はカディスで食べた品種改良を行ったリンゴを食べたことがあるが、未だに苦く不味かった記憶を思い出す。

 

まさかあんなものを好んで食べるのか、ここの住民は?

 

「嬢ちゃん...一個食ってみな。」

 

ポイっ

 

店主は私に向けて赤い球体 通称リンガを一個投げてきた。

 

「く、食わん!苦いと言って... 」

 

「いいから食え、その一個はタダにしといてやるから!」

 

と、私に急かす店主。

 

私はこうも言われたら仕方なく店主に従いこの不味そうな真っ赤なリンゴを口に含む。

 

シャリッ

 

そう高い音が口の中で響き、嫌々ながらリンガを噛み砕く。

 

すると...

 

 

 

 

 

 

「あ、甘い...甘いぞこのリンゴッ!!」

 

「だから言ってるだろ、リンガ買うか、買わないのかって!」

 

やっと話の筋が通せたと言わんばかりに店主は私に先程の問いを再びする。

 

「か、買う!こんなうまいもの勿体ない!!」

 

と、私が 三日間何も食べていなかったのもあるが、リンガというものを一生懸命に頬張っているのを見て

 

「ははっ!ならお客さんだ、だが先に金を貰うぜ。」

 

と、店主は気前よく右手を差し出してくる。

 

だが私はふと気付いた。

 

金...

 

「...な、なぁ店主 少し聞いていいか?」

 

と、顔を気まずそうにしながらこの男に言うと

 

「...まさか金がねぇとか言うんじゃないよな...?」

 

ピクピクと眉間のシワを一、二本増やしながら彼は聞き返してくるが

 

「いや、そう言うわけじゃない。ただ...これで払えるか?」

 

と、私が懐からドゥカート金貨を一枚出す。

 

すると店主は受け取り、物珍しそうにそれをみると

 

「...こりゃぁ俺も初めて見るぜ...変な顔が刻まれてて、なんだいこの金貨は?」

 

「 ウチ の金貨だ。払えないのか?」

 

と、エウロパ世界では随分と流通していた通貨を渡すが店主は怪訝な雰囲気だ。

 

それにこいつ、変な顔と言いやがった...我らが国王 フェルディナント皇帝だぞ。

 

「...ウチじゃ引き取れねぇな、金貨なのは確かなんだが...あ、そうだ。」

 

と、残念なことにこれでは買えないらしい。

 

だが彼は思い出したかのように言葉を紡ぎ

 

「貧民街の盗品蔵に行けば換金してくれるだろうよ。」

 

「ほ、本当か!」

 

と、私が少し残念そうな顔から嬉々とした顔に戻ると彼は

 

「あ、あぁ本当だ。盗品蔵までのルートは紹介してやっていいぜ。」

 

「そうか、恩に着るぞ、神の祝福を!!」

 

と、私がそう言って機嫌を良くすると彼は苦笑いしながら私の発言にはあまり深くは触れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、少しヤバイ女だと思われながら私ことゾルド・イルパニアは盗品蔵に向かっている。

 

そしてその間、道中で冷静になって事を考えていた。

 

「(...ここはみたところ、私の祖国 エスパーニャではない...。)」

 

そう、どう見ても私が目を覚ましたとき、あの露天の前に立っていた時からここは違う場所だと分かった。

 

アルマダ沖での英国艦隊との激戦の末に敗れた私は死んだはずだ...海の中に船と共に...。

 

だがこうして息を吹き返している。いや、死んでいなかったのか?

 

「(...まだ発見されていない未知の、新大陸なのだろうか...。)」

 

色々と憶測をしながら歩く。

 

この場所、この地は...いやこの世界はどこなのかを。

 

「主よ、救い給え...。」

 

そう言い、私は黒い聖書の本を懐から取り出して右手を十字架の形に沿って空中に線を引く。

 

ただの祈りに過ぎない。

 

「(...これも神の思し召しだろう。与えられた布教の天命を果たさねば。)」

 

純粋で、純白で、正当なるカトリックへの誓いを立て、

 

「...よし、盗品蔵に向かおう。」

 

そう再度決意し、私は聖書を懐にしまい盗品蔵に向かう。

 

 

 

 

歩いて数分が経つと、目当ての...ボロ屋は見つかった。

 

「これが蔵ぁ...?ボッロイ...。」

 

と、見るからに何度もずさんな修築を行った後があるこの蔵にお邪魔する。

 

 

コン コン

 

 

「誰かいるかーー!」

 

 

返事はない。

 

 

ドンッドンッ

 

 

「おーーーい!!」

 

 

 

 

「うるっさいわい!

少しくらい時間を寄越せこの嬢ちゃんがっ!」

 

と、怒鳴り声を私のノック音の2倍ほどあげて扉を開けた巨体の男が出てきた。

 

「...あー、中に 入れろ...?」

 

と、余りの人間離れした巨体に私はビビってしまい、命令形なのに疑問形で聞いてしまった。

 

「そんな傲慢な態度で誰が入れるというのか全く...ほら、入れ。」

 

と、愚痴をこぼしながらもこの爺さん 齢は60以上に見えそうなこの巨人は快く扉をあげて中に入れてくれた。

 

「おぉー、中は広いんだな。」

 

「あったりまえじゃ!盗品蔵じゃぞ...。」

 

と、私の感嘆に乗ってくる爺さん。

 

「所で爺さん。やけに体がドデカイが、どうしたんだ、病気か?」

 

と、多少労りの目でこの爺さんを見遣るが、

 

「ばかもん、ワシはまだまだ健康だ!お前さんは巨人族を知らんのか、この生意気な小娘が!」

 

と、憤慨しながらドスッと店の酒場の椅子に座る。

 

「巨人族...ふふ...ここには面白い異教徒がいるのだな。」

 

そう言うとこの爺さんは少し「ムゥっ...。」という顔をしたが、先程のような朗らかな顔に戻り

 

「異教徒呼ばわりされる筋合いはないわい。魔女教でもあるまいし...。

 

で、アンタ何の用でここにきた?お前さんみたいな貴族がウチに用件などろくな事じゃなかろう。」

 

と、この爺さんも本題に乗り掛かったのか、私の目的を聞いてくる。

 

それに...

 

「お前...私を貴族と呼んだか?」

 

「あぁそうじゃ、お前さんの格好 上品な着物、けっ!貴族の風習じゃろうが。」

 

と、勘違いされていた。

 

盛大な勘違いだが、これは事を優位に運べるチャンスかもしれない。

 

その偽の地位を使ってコイツとの取引を円滑に進ませることもできよう。

 

そう考えた私も早速本題に入る。

 

「あ、...あぁそうだ。私はゾルド・イルパニア卿だ。恐れ入ったか!」

 

「...そう自分から威張る貴族も珍しいもんだ。」

 

この爺さんは白けた目で私を見る。

 

気まずくなった私は勢いよく頭をワシャワシャと振り回し

 

「だぁー、もう、話がこじれる!要点だけ言うわ。」

 

「なんじゃ。」

 

 

 

 

「...換金して。」

 

そう言うとこの爺さんは再び白けた顔で

 

「...最初から素直にそう言えば良いのじゃ...全くフェルトといいこの小娘といい。」

 

ごちゃごちゃと愚痴を垂れ流しながらもこの巨体は私のために色々と動いてくれている。

 

感謝、だな。

 

「(...そう言えばコイツら、言語が通じるのか?私は生粋のスペイン語を話しているんだが...。)」

 

と、ふと疑問に思う。

 

彼らが言っている言葉はスペイン語だ。明らかにそう聞こえる。

 

だが露天の文字はラテン文字とはかけ離れた異様な文字だった。

 

「...何をボケェーっとしとるんじゃ、さっさと換金の品物を出せ。」

 

と、爺さんはグイッと顔を迫ってくる。

 

つい考え事をしてた為一歩反応が遅れたが

 

「あ、あぁすまんすまん、これだ。」

 

 

ジャラ ジャラッ...

 

 

素朴な机の上に置いたのはドゥカート銀貨35枚。

 

金貨の方は恐らく値打ちが高そうなのと、エスパーニャ帝国以外に金貨を流出させるのは損だと判断したからだ。

 

まずは銀貨の取引からだ。

 

「むぉッ...おぉぉ、これはたまげたぞ。」

 

「何か変な事でもあったか?」

 

私が聞き返すとこの老人は目を輝かせながらその銀貨を手に取り見て

 

「...ルグニカに流通している銀貨ではない...じゃがこの奇妙な絵が描かれた純銀の塊...。」

 

そう言うと老人は銀貨を机に置いて少し考えた後

 

「...物好きな輩もおるし、合計で聖金貨10枚ほどの仕上がりにはなるじゃろう。」

 

と、頭の中で計算したのか、私にその値打ちを明かす。

 

「そうか...ありがとう、では早速換金を頼む。」

 

私がそう言うと彼は首を縦に振り、蔵の奥へと向かい、色々とガサガサしてから戻ってきて

 

チャリンッ

 

「ほれ、これが約束の十枚じゃ、持っていけ。」

 

と、この爺さんは聖金貨と呼ばれる十枚の大きな金貨を私に手渡す。

 

「ず、随分とデカいのだな、ここの金貨は。」

 

「アンタがどこから来たのかは知らんが、ルグニカじゃこれが当たり前じゃ。」

 

ゲプッ

 

彼はそう言って酒を片手に飲みながら話す。

 

「うっ...酒臭いぞ、昼間からなど...。」

 

職務怠慢もいい所だ。だがこの爺さん、そんな事気にするそぶりもなく

 

「うるっさいわい!酒でも飲まんとやってららんわい

ングビっ...プハァァ〜。」

 

「(...全く、怠惰だな。教皇が見ればさぞ驚くだろう。)」

 

心の中で少し悪態をつきながら用は済んだと言わんばかりに私は席を立つ。

 

「なんじゃ、もういくのか?」

 

「あぁ、長居は無用。それに今後の生活資金も手に入った。」

 

「そうか。」

 

そう会話をして立とうとした時だった。

 

ガチャッ

 

扉がバタンっと開けられ、勢いよく低身長の誰かが入ってくる。

 

「ったくロム爺!ドアくらい開けてくれてもいいだろ。」

 

「そう言うでないフェルト、今取引をしておったのじゃ。」

 

...コイツがさっき爺さん...ロム爺といったな、ロム爺が言ってたフェルトか。

 

その低身長のチビに目を合わせると、ソイツも私の事を少し訝しんだようで

 

「取引って...ロム爺、コイツ 私の案件を買い取りたいって腹か?」

 

と、いきなり小声になってロム爺に聞く。

 

だがロム爺は首を横に振って

 

「そんな事あるかい!この嬢ちゃんは換金を求めてただけじゃ。」

 

「なーんだ、そうだよな!勘違いして悪かったな、姉ちゃん。」

 

と、私への態度を改めて謝礼をする。

 

「...爺さん、コイツがさっき言ってたフェルトって奴か?」

 

「あぁ、そうじゃ。ワシの孫のような存在じゃな!」

 

と、朗らかな笑顔で自慢の娘を私に語りかけてくる。

 

「ちょ、ちょっとロム爺!しらねぇ奴に勝手に話してんじゃねぇよ!」

 

「まーそう硬い事を言うな、フェルト。」

 

と、問答を始める。

 

だが私は少し気になった。

 

「案件...と言ったかな?」

 

私が首を傾げると彼女は「! そうだった。」と言うように懐からあるものを取り出した。

 

「これさ!」

 

と、自慢げに取り出したのは、中央に宝石が埋められた小さな紀章だった。

 

「なんじゃ、アンタも話だけでも聞いてくか。」

 

と、ロム爺は私に持ちかける。

 

「...話、だけなら。」

 

私はそう言うと適当なテーブルに座った。

 

「おー、姉ちゃんよくぞ言った!この後デカい大口の客が来てるんだ。

ソイツの話を聞く限りじゃ、聖金貨をガッポリくれるってんだ!」

 

と、自信満々に話すこのフェルト。

 

そんな甘い話があるものだなと、少し呆れた。

 

「だが...そんなものに価値があるのか?本当にそうなら、怪しい案件だ。」

 

と、私が懸念を示すと、

 

「心配せんでええわい!その為のワシって訳じゃ。」

 

ロム爺が自身げに言う。

 

「...たしかに、ロム爺殿は用心棒なら多少は安心だな。」

 

私は彼のそのたくましい体を見て改めてこの子 まだ幼いフェルトの保護者としては適任だと確認した。

 

 

 

 

 

そうして時を過ごすうちに、

 

「見つけたッ。」

 

と、再び新たな来客...?が蔵の中に入ってきた。

 

「げぇッ、アンタまだ追いかけてきてたのか!」

 

と、フェルトは勘弁願いたいといい気に引き下がっていく。

 

よく見てみると、その新たな来客は銀髪に、白い着物を着こなした耳の長い女の子だった。

 

「お願い、それだけは譲れないの。今なら酷い事はしないであげるから、返して。」

 

と、彼女は言葉からして過激な行為にも出ると宣言していた。

 

「...フェルト、と言ったな。お前、もしかして案件と言っていたが、盗んできたのか?」

 

私が疑問を口にすると

 

「ったりめーだバカ!ここは盗品蔵だぞ!?」

 

と、語気を荒げてこの状況に苛立った様子を見せる。

 

「(なるほど、持ち主が追ってきて相当焦っている様子か。)」

 

これはお手上げだな、とフェルトに同情してしまう。

 

まあ私には関係ないが。

 

そう思って私は彼女 銀髪の女の子に近づいていく。

 

ズッ、ズッ、と地面の木床に硬いブーツが摩擦を起こし音を響かせる。

 

すると突然の私の行動に彼女も警戒したようで、こちらに両手をかざして

 

「あなたは止まって。それ以上近寄らないで。」

 

「お話の途中で悪いが、私はここに換金に来ただけだ。通してくれるか。」

 

事情を説明すると彼女もその顔を緊張の顔から唖然とした顔となり

 

「え...あなた、仲間じゃないの?」

 

「すぐ仲間扱いするものじゃないと思うわよ...。それに、争い事になる前に抜け出したいもの。」

 

と、少し彼女の懸念と私の意向とを伝えると

 

「...ごめんなさい、私が悪かったわ。」

 

と言って、私に謝りながら道を開けてくれた。

 

これで一見落着と、彼女のいる盗品蔵の玄関口の扉に向かおうとすると

 

 

 

 

 

 

ヒュッ...

 

 

 

 

 

その風切り音を始めとして、私は悟った。

 

目の前の女は 確実に 死ぬ。

 

 

 

 

そう思った瞬間の私の行動は早かった。

 

腰に挿してある剣を抜き出し

 

 

 

 

ガンッッッ!!!

 

 

 

 

「えっ...。」

 

この銀髪の女の子の茫然とした声と共に金属と金属のかち合う音が鳴り響き、

 

私は黒い霧を身体に纏わせながら彼女の背後に立ちはだかった。

 

「あらぁ?随分とお早い動きをするのね、あなた。」

 

すると私の異常な速度での移動...いや、身体を霧状にさせ、再び銀髪の女の子の背後に出現したその行為に警戒したのか

 

その襲撃を仕掛けてきた相手は、初撃を私に防がれて盗品蔵の中に咄嗟にスタッと後退し、

 

蔵の中に置いてある机の上に飛び乗り、女らしい色気のある声でネットリと姿を表す。

 

突然のことで、皆事態が把握できていないが、フェルトやロム爺も緊急事態に対応すべくそれぞれ身構える。

 

「はじめまして、私はエルザ・グランヒルテ。貴女...相当な腕前のようねぇ?」

 

と、私の身体を下から上まで、そして最後には顔とお腹を交互に舐めるように見回す。

 

私はその態度に、その戦闘の姿勢とは思えないこの女の傲慢さに苛立った。

 

「...初対面の女性の身体を舐め回すように見るのは、淑女として端ないと思わないのか?」

 

と、私はガチャッと自分の剣を片手で構える。

 

「あらぁ?淑女呼ばわりなんてされた事なかったわ。

あなたのお腹を切り裂いて見たいわ...きっと綺麗な子宮に卵の形...そしてピンク色の腸でしょう?」

 

と、彼女は私のお腹を更に見つめ、舌でペロリと自身の口を舐め回す。

 

「ッ...やはり異教徒...神に仕える教典も知らぬ風情がッ...。」

 

誰にも聞こえないように小声で異民族 異教徒共に罵声を浴びせる。

 

「ちょ、ちょっと待てよッ!話が違うぞ!?

紀章を買い取りにくる約束だったろ!」

 

と、フェルトがこの女 エルザに詰問する。

 

が、彼女はフェルトを見下す様に顔を上げて

 

「持ち主まで連れてこられちゃ、商談も何も成立しないわよ?

 

貴女は仕事を全うできなかった。口だけは達者で、仕事はお粗末 所詮は貧民街の住民ね。」

 

明らかにフェルトの失策が原因だった様だが、それにしてもこのエルザの対応は酷いものだと、心内で思ってしまう。

 

「ここにいる関係者は皆殺しよ。そのあとで紀章をいただくわ。」

 

「そうはさせないね〜。とりゃーっ。」

 

と、先ほどまでいなかった誰かの声が蔵の中に響き渡る。

 

その瞬間、鋭いナイフの先端の様な形になった氷の塊がエルザに向けて一気に振り注ぐ。

 

だがその巨大な氷の矢はエルザには命中しなかった様で、彼女は後ろに跳躍して下がる。

 

「あらぁ、精霊...精霊ね...ふふっ。」

 

いきなりの攻撃にも関わらず、この女は微笑む。

 

気味が悪い。正に聖書で言うルシファー格の悪魔に似ている。

 

「精霊のお腹はまだ裂いたことがなかったのよ。見させてもらうわッ!」

 

と、エルザは全力で隣の銀髪の少女に突進していく。

 

その速度は先程の私の移動防御よりかは遅いが、それでも人の目に留まるほどではない異常な速さで迫る。

 

 

 

 

 

ガッッッ!!

 

 

 

私は再び彼女らの間に入り、剣をエルザの...東方で見かけたことのある、

ククリナイフのような物の肢を叩き割ろうと弾く。

 

「ッ...また貴女は邪魔を...。」

 

と、彼女はこちらを睨んだ後にすぐに後退した。

 

「悪いかしら...異教徒の、それも殺人鬼...生かしては置けないと存じ上げるわ。」

 

私はそう言って再び銀髪の少女の前で剣を構え直す。

 

「おぉ〜凄いね君。」

 

ぱちぱちと、後ろの少女の肩の横で浮いている小さな猫の様な生き物が拍手をしながら褒めてくれる。

 

「...あなたが先ほど言っていた精霊...?」

 

私もその猫の方を向いて聞くと、彼...?も頭を縦に振ってうなづき

 

「そうだよ、僕の名前は大精霊パック。名前だけでも聞いて 逝ってよねっ!」

 

と、この猫はいつの間にか会話の隙に作り出していた大量の氷の矢をエルザに向けて放つ。

 

この猫の下にいる少女は両手を翳しながら盾のような防御陣を手の何もない所から生み出している。

 

「攻撃と、防御、か。」

 

なかなかに素晴らしいコンビナチオン...いや、英表記ならコンビネーションだな。

 

2人二役 銀髪の彼女に仕える大精霊パックは相当な攻撃力を保有している。

 

「うげぇッ!!」

 

「フェルト、早くくるのじゃ!」

 

と、ロム爺達も流石にこの状況を理解したのか、すぐ蔵の中の酒場のカウンターの方に退避していった。

 

「ッ...足が...。」

 

エルザは再び避けようと足に跳躍の力を入れようとするが、

その足を見れば先ほどパックが放った氷の矢の中に包み込まれていた。

 

「闇雲に撃っていたわけじゃないんだよ?

 

じゃ、さよなら〜。」

 

そしてその秒後、

 

 

 

 

ズッ ドドッ!! ドンッ! ドスッ!!

 

 

 

 

という強烈な音と共に猫の形をした精霊 パックが氷の矢を放つ。

 

エルザに向けて放たれた無数の矢はチリ埃を蔵内にたてながら、凄まじい勢いで突き刺さっていく。

 

その様子は外側からでは見られず、どうなったかはチリ埃が晴れてから。

 

そしてその状態が10秒ほど続き、ようやく氷の塊が撃ち尽くされたのか、パックの攻撃が止んだ。

 

「や、やったか!!」

 

ロム爺さんが愚行にもその言葉を発する。

 

「それはやれていない、の合図だ ロム爺殿。」

 

と、私がロム爺に言うと、その予想通りに

 

「...備はしておくものね。」

 

エルザの声が再び蔵内に響き渡るのだった。

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