¡Viva España!   作:YJSN

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今回は少し短めです。申し訳ない。
そして森の中での戦闘中のゾルド・イルパーニャです。


【挿絵表示】


聖書を剣にあてがい、黒色の液体をかけて腐敗の権能を剣に纏わせている感じです。下手ですが、どうぞ。




レムへの帰還

ジュッーーー グヂュッ...

 

ガゥゥゥッ...

 

 

「はぁ......はぁっ......。」

 

 

幾らやっても数が膨大だった。

 

この犬共は繁殖に繁殖を繰り返したようで、私の強大な権能である黒色液体を広範囲に撒き散らしながら森の植物を腐敗させてでも殲滅しているが

 

数は減らない一方だった。

 

ガゥゥゥッッッ!!

 

ガルルッ!!

 

ガンッ  ギチッッ

 

液体に絡み取れなかった犬は私に襲いかかりに近寄ってくるが、ソイツらに対しては剣撃で肉片にする。

 

「まずいな...。」

 

私は死にはしないが身体を即時に液体で再生させるには夜間に入る必要がある。

 

影 陰 闇 夜 月 この5つのウチのどれかにいる事が

 

【 教皇は太陽・皇帝は月 】

 

を実現させるためのトリックだよ。

 

だがもう時期夜明けだ。故に権能は教皇側に返上されてしまう。

 

それにこれだけの大規模な液体展開は百年戦争以来で、その疲労と困憊には耐えきれそうにないほどだった。

 

『...あぁ...主よ、すまなかった。』

 

そう私が謝罪を下し、太陽の明かりが東からチラリと見えたのをこの目で確認したのちに、黒色液体の展開を中止され

 

バシャッ

 

ドロッ...

 

全てが地上に落ちてきており、地下へと吸い込まれ地獄へと渡っていく。

 

そしてその液体達は地獄から天へと再び返納されるのだろう。

 

「...レム、私はあと二日ほど帰れそうにないな...。」

 

私はこの犬風情に、恐らく剣撃では対処しきれない数で段々と肉を貪られるのだろう。

 

夜になるまで、私の安全は奪われる。

 

だが、私はもう良かった。

 

「...やってくれ...夜に目覚めようではないか、諸君。」

 

カチャッ  バタンッ

 

と、私は剣を仕舞い込んでから地面に倒れ伏した。

 

ドスンッ...ドスンッ...

 

すると、強力な地響きと共に、何かが近寄ってきている気配がした。

 

首をくるりと回転させてその方向を見つめると...

 

ガルルッ...

 

グルル...

 

周りの犬さえ少し遠ざかり、恐怖すら見せるその個体は、

 

 

ガォォォォォォォォォォッッッ!!

 

 

その巨体から発した強烈な咆哮を私に浴びせてきた。

 

見てみれば、コイツは恐らく犬共の中のカシラのような存在なのだろう。

 

普通の犬よりも強力で巨大な駆体をしているその生物は、黒く、醜かった。

 

「どうせ、死ぬことはないんだ。痛みを...味わう...だけ...。」

 

私はそう言い、全ての意識をシャットアウトさせた。

 

 

 

 

そう、そうする手前の一瞬前のことだった。

 

「おやおーや...随分と私の領地を荒らしてくれたものだーぁねぇ?」

 

その聞き覚えのある陽気な声とは裏腹に

 

 

ゴォォォォォォッ

 

 

と、肌から熱い空気 熱風を感じた。

 

意識を落とす前に、周りを再度、見てみることにすると

 

「あ...アンタ...は......。」

 

「少し遅れてしまったようだぁが...無事で良かったーぁよ?」

 

彼 ロズワール辺境伯は空中を浮遊しながら、炎を手から発しながら、森中の、先程の巨体の犬を含めた魔獣を燃やし殺していた。

 

「ぁ...ぁぁ......。」

 

私はその魔法、であろうその威力に感嘆せずにいられず、そんな声を出して最後の意識を絶った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん...... んぅ......... 。」

 

チュンチュンという、鳥の囀りが聞こえる。

 

ピカっと眩しい光が、重いまぶたの上から目に届き、私は不快感を露わにして顔をしかめながら、暗い意識の中から浮上する。

 

「...っ......!

 

おはようございます、イルパニアさんっ!」

 

ガバッッ

 

「うぇっ...ぇ...っと......。」

 

私は知らない天井を見上げながら重い上半身を起こすと、いきなり抱きつかれた。

 

聴き慣れた声が私の耳に入ってきながら。

 

「ここは......。」

 

「イルパニアさんっ、イルパニアさんっ!」

 

はふはふ、とこの青色の髪の子 レムはメイド着姿で私の身体を嗅ぎ周り子供のように懐く。

 

「わ、私の事を...その...好いてくれているのはわかった。だが何が起こったのだ?」

 

私はこの丸太で作られたごく普通の住居の中のベッドの上で寝ていた。

 

着ていた服は制帽が横に置かれてそのままだったが、昨晩見られた汚れなどは全て落ちている。

 

「順を追って、レムが説明します...ですがまずは、こうしてレムがイルパニアさんを抱きしめる事から始めましょう!」

 

「はぅぅぅ!」と私に抱きつき、かなりの力で涙目になりながら私の起床を喜んでくれるこの女の子...。

 

「か、...かわ、いい......。」

 

私は思わずこの小動物の頭をナデナデと撫でる。

 

これまでこんな求愛行動に惹かれる事などなかったというのに、この猫のように懐く子は...。

 

すると、撫でられた彼女もぎゅっ、と私を抱きしめ返してくる。

 

「...これも、快楽 だな......。」

 

私は十数分間、彼女との女同士の感動と快感を感じ合った。

 

 

 

 

 

 

そうして時が経ち、レムも冷静になった頃、話は進んだ。

 

「まず...急遽騒ぎを聞きつけてお屋敷にお戻りになられたロズワール様が森の魔獣を狩り尽くしてくれました。

 

それによって、子供達や...イルパニアさんにも噛まれてかけられていた呪術は一応は呪解されました。」

 

レムは落ち着いた声で私の身を案じてくれるように語る。

 

「なるほど、わたしにもあの魔獣とやらの呪いを受けていた、ということか。」

 

だから、あの夜 あんなにも気怠く恐ろしい程眠気があったのだ。

 

夜明けになる頃には死に物狂いで意識を保っていたくらいだった。

 

「その通りです。村の結界はお姉様が再度見直しを入れてもらい修復しました。

 

なので、もう安心です...お帰りなさい、イルパニアさん!」

 

ガバッ、と再び私の胸で柔らかくダイブするこの子は明らかに私の事を大切に思ってくれていた。

 

そんなこの子のことを思って、私も声をかけ

 

「...自力で帰れなくてすまなかった...。」

 

と謝罪をするが、レムもそれを聞いて慌てたかの様に首を横に振り

 

「とんでもありません!寧ろあの数の魔獣をイルパニアさん一人に押しつけて、

その後無様に逃走を図った末に助けに迎えなかったのはレムの方です...どうかお許しを...。」

 

と、深々と頭を下げるこの子。

 

「...お前にもっと、その慈悲深さと共にある力があれば良いのにな...私の様な輩より、君が相応しかったのだろう。」

 

「えっ......?」

 

私は彼女に聞こえない様に言ったつもりだったが、バッチリ聞かれていた様で彼女は怪訝な顔をして

 

「そ、そんなことありません!レムなんかよりも

 

ずっとイルパニアさんの方がッ

 

イルパニアさんの方がずっとッ!!」

 

「やめなよ、君ら無様だよ〜?」

 

そのレムの私への過大評価を止めるために、誰かが聞いたことのある声でストップをかけた。

 

「...パック、か。久しぶりだな、お前も。」

 

「アンタもね〜イルパニア〜。今朝は大変だったんだから、リアをこき使わせちゃダメだよ。」

 

と、パックはそこまで言うと俯いたレムの肩に手を置き、

 

「っ...パック様...何か...。」

 

「あんまり彼女を虐めないであげてね。」

 

と、彼女に私を案じる様な事を小声で言いつけた。もちろん私には聞こえていたが。

 

「っ...わかっております、そんなこと...。」

 

「ならよし!僕からも事情を説明するね〜。」

 

と、向こうの話は終わった様で、私に再び振り返って話を進める。

 

「まず、今朝君が運ばれてきてから、生命に必要なマナを大きく吸い取られていた君は、即刻エミリアの治癒魔法にかけてもらったんだ。」

 

「エミリア嬢がっ...。」

 

私と彼女の接点はここまでそんなになかったはずだが、あの盗品蔵での恩を余程思っていたのか、彼女は私にそんなに親身になってくれていた。

 

「そう。それで今リアは疲労困憊で寝てるよー。」

 

「...お手を煩わせてしまい申し訳ない。」

 

私はその事実を知った途端、彼女に対して申し訳なさと罪悪感を感じた。

 

本来なら、異教徒・害虫駆除は自身の力で全てを解決し、従教者を増やさねばならないというのに

 

それを怠った罰は重い。

 

「罰は、なんなりと......。」

 

「なら、これでも食らえーっ!」

 

 

ペチンッ ペチンッ ペチンッ ペチンッ

 

 

パックはそういうと、私のほっぺをその猫特有の肉球パンチで引っ叩いてきた。

 

「っ...。」

 

レムはそれを見て一瞬暗い、あの心底憎しんだ顔をしたが、それが単なるお戯れだと気づくとホッとした感じになり元の顔で微笑み出した。

 

「レムと話してたの聞いて、そのウジウジとしたハッキリしない態度 ムカつくぞっ!

 

リアの前でそんな後ろ向きな事ばっか言ったら承知しないからなーっ。」

 

ぷんぷんと怒りながら私のほっぺをぺちぺちするこの猫も、レムに劣らず可愛いものだ。

 

「......はぁ、了解した。」

 

「よろしい、じゃぁぼくはリアのところへ戻るね〜。ヘルも顔出しなよー。」

 

すると、彼はこの丸太小屋から扉を魔法か何かで開けて退出して行った。

 

「...イルパニアさん。」

 

「なんだ?」

 

レムがそれを確認して、私に真剣な顔で話しかけるのを、私は靴を履き直して支度する準備を整えながら聞く。

 

「エミリア様に治癒魔法をかけて疲労やマナ不足を和らげてもらったとはいえ、まだまだ体内のマナの補充には時間がかかります。

 

だから、今は安静にしておくべきです。」

 

そう言って、私にもう無茶はやめろという目で手を取ってくるレム。

 

「...それも了解した......。」

 

「...もう、私の前からいなくならないでくださいね...っ。」

 

そうして再び、私達は二人だけで小屋の中で暖まりあった。

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