疾走しそうでしたが、失踪しそうでしたが少しだけやる気を取り戻したので少しずつ少しずつ描いていきます。
名前の発音を変更しました。
エルパーニャ卿 ←ヘルパーニャ卿
✳︎1日と6時間後......
「エルパーニアさん、ほんっっとうにありがとう。」
と、屋敷の玄関口 門の目の前で、彼女 エミリア嬢は深く感謝してくる。
「いえ、屋敷に滞在している間は、少なくとも従者として振る舞うが故に、これが当然のこと。」
「そんな事言って...エルパーニャは無茶しすぎなのよ...。
でも、いずれこのお礼はキッチリさせてもらうわ。」
彼女はやはり、私のことを気遣ってくれてる様だった。
あれから1日ほど経ち、森の中に潜む魔物はほぼ全てロズワール辺境伯によって駆除され、
子供達もパック ベアトリスの二人の活躍により無事回復したと言う。
そうして私は今彼女と村の子供達を視察した後帰ってきていたのだ。
そして、屋敷の玄関口である門を二人で潜り、中へと入っていくと
「あら...お客さんかしら。」
「...初老の御者に竜車...。」
屋敷の目の前には白髪の老いた御者と、竜車が置いてあり、御者は竜車を手入れしていた。
そうして私たちが近寄っていくと
「...これはこれは、エミリア様、お待ちしておりました。急なご来訪、申し訳ございません。
要件はどうぞ中の者にお聞きください...。」
と、初老で白髪の男性は私たちに向き直り、そう語る。
「あ、ありがとうございます...え、えっとエルパーニャさん...これから私は少し大事なお話があって...その。」
「気にせず向かってください。私は休憩がてらに散歩でもしておきます。」
「...わかった、それじゃまた後でね。」
彼女の気遣いをサラリと受け流し、私とエミリア嬢は別れた。
そして、初老の男性の隣へと立つ。
キュッキュッキュッ
と、気持ちいい音を出して竜車を磨く彼の姿は正に御者と言ってよかった。
それに...
「その年にしては良いお身体をしていますね、それに腰の帯剣...中々の技量とお見受けいたします。」
私がそれとなく推察を口にすると、彼もこちらに目配りをしてから
「御明察です。私はこれでも、我が主人の騎士であるが故。」
「ふむ...そうか...。ところでエミリア嬢は一体何の要件で呼ばれているのか、教えてくれませんかな?」
彼は竜車を拭いていた手を止め、こちらに向き直り、
「あなた方の立場がこのお屋敷でどの様な物なのか、はかりかねますゆえに、それについてお答えすることはできません...。
ですが、先程のエミリア様とのやりとりを見て、間柄はさぞ良好な物であるとお見受けしたため、少しだけならば答えれるでしょう。」
と、この老人は私の先程の数言葉の会話から関係性を記憶していた事を述べた。
「ふむ...王選、絡みですかね。」
「...近しいこと、とは言えますな。」
フフッ
と、私は少しばかり笑みを溢してしまった。
この男は嫌いになれない...その態度、風格、推察でしかないがその技量は私も目を見張る物だろう。
恐らく、昼間の間では私と互角に戦えるだろう。
「ヴィル爺〜!待たせたにゃ〜!」
そうこうしているうちに、この御者が待っていたであろう人物が屋敷の中から出てくる。
「フェリス様、お話の方はいかがでしたかな。」
「んー、まあまあってとこねー。...おや?あなたは確かー...。」
クンクン...クンクン
と、この...猫の耳を生やした女...いや女なのか?
まあその女は、私の方を軽く見ると、ジッと見つめ始め、その上匂いまで嗅ぎ始めた。
「...品のない行為は謹んで貰いたい、その...フェリス殿。」
「いやー、ごめんにゃ〜。でも、あなたがエミリア様が言ってたエルパーニアさんにゃ?」
「いかにも。」
あの女、一体私のことを何と話したのだろうか。
少し彼女への評価を落とした中、フェリスと呼ばれるこの猫女は竜車へと向き直り、
「そっか、じゃ、また王都出会いましょうにゃ」
と素朴に返して、竜車に乗って御者 ヴィル爺と呼ばれた彼も失礼するとこちらに一瞥をくべてから、屋敷を出て行った。
「...何なんだ、あの輩は...。」
私は不可解に思いながらも、屋敷の方へと戻って行った。
「ダメ、ダメよ!エルパーニャさんはつい一昨日まであんなに無茶したのに、身体がもたない...それに...。」
今私は屋敷の中で彼女と一悶着している。
「私としては、従者として貴女に付き添い、護衛に奉って申し上げる限りですが...それに。」
「おーそらぁーく、君の言っていた望みの内の一つが叶いそーぉだーからねーぇ?」
「ロズワール!あなたまで...エル、やめて。私は一人で平気だから...。」
そう、ロズワールが最初に私が来た時結んだ約束の一つ 恐らく賢人会への出席が可能、という事を示唆しているのだろう。
あの甲高く、分厚い化粧をした男が私に助言してくれるが、エミリア嬢はそれでもいやだ、という感じだった。
恐らく相当な引け目を感じているのだろう。
これ以上私に助けられてしまえば、彼女としては居ても立っても居られないのだろう。
「王都には、エルパーニャさんがお世話になった人も多くいるらしいですし、
この機会にお礼に参るのも良いかと。」
「いかにも。」
そっ
と、隣にいた私に更に助言をくれたレムにご褒美に頭を撫でてあげる。
彼女の顔は微笑ましいくらいに緩んでいた。
「いいんじゃーぁないかぁな?王選がらみの事、とは別に、エルパーニャ君の世話になった人達へのお礼に、
魔獣を駆除する際に『魔法』を使用するのに必要なゲートを酷使し過ぎたのもあーるしねーぇ?
その休養でもあーるよ。エルパーニャ君は既に
あの娘には会ったかーぁーな?」
と、ロズワール辺境伯は私にゲートの話をする。
ゲートとは、...まぁ、いわゆる魔法を使うとき、使用するマナを自分の体内から放出するのに使う所だ、という。
私があの夜使ったのはゲートではないが...だがそれでも、彼らからしてみれば私の身体は魔法の分野においてかなり傷ついているらしい。
...夜になれば神の権能である《皇帝は月》により修復は可能なんだが。
まあ良い理由 良い口実になると思い、そのことは黙っておく。
実際に誰にでもあるゲート、そしてその私のゲートはひどく傷が入ってるとパックの話では聞かされたし。
「あの子...あの子とはあの耳を生やした猫の様な子のことですか。」
「そのとーぉーり...あの子は王都では一番の治癒魔法の使い手なーんだぁよー?
クセの強い子だから、エミリア様も協力を取り付けるのには苦労したんだーかぁらねーぇ?」
ロズワール辺境伯は彼女、エミリア嬢に向かってそう言う。
「...エミリア嬢、そんな事までしなくても私は平気ですが...。」
「だ、だってだって、エルパーニャさんが傷ついているのは、私のせいでもあって...
これは傷つけたエルパーニャさんの傷への正当な補填なの!」
と、なんとか事をつけて説明するが、本当に根が優しすぎる少女だ、この子は...。
内心ため息を吐きながら、私は王都行きを決意する。