¡Viva España!   作:YJSN

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誤字脱字、荒い文章かもしれません。申し訳なぁいです。(ロズワール風)


【教皇は太陽・皇帝は月】

「備えはしておくものね...。」

 

 

砂埃が晴れると、そこには巨大な氷の塊に包まれたエルザが余裕そうに声を漏らしていた。

 

そして次の瞬間

 

バリッという音と共に、その氷はひび割れ、空気中に分散して消えた。

 

エルザは再びククリナイフを構え直し、

 

ズッ

 

という音と共に床を強く蹴り、まだ名も知らない銀髪の女の子へと跳躍する。

 

「精霊術の使い手をなめない事。」

 

銀髪の女の子が自身ありげに言ったのを確認して、私は彼女にこの攻撃は任せることにし、その場からロム爺の方へと退避する。

 

ガンッッッ

 

やはりその銀髪の女の子は期待通りに両手を翳し、雪状の盾を空気中に展開した。

 

そしてエルザのククリ刀をはじき返し、鈍い音を響かせる。

 

「...魔法...魔女か?」

 

私がふと口にすると、ロム爺とフェルトは顔を真っ青にしながら

 

「ばかもん...縁起でもないことを言うでない。どうやらあの娘はハーフエルフのようじゃ。」

 

「ちょ、ロム爺ッ!銀髪にハーフエルフって... 」

 

と、ロム爺の言葉に反応してフェルトがさらに驚きの顔になる。

 

「いいや、嫉妬の魔女な訳なかろう。今はそんな事より、あの娘についている精霊がどれだけ顕現できるかじゃ。」

 

ロム爺が真剣な顔をして考え事をする。

 

「精霊...伝説上でしか聞いたことはなかったが、顕現に制限があるのか?」

 

私が疑問に思ったことを口にする。

 

「当たり前じゃ。精霊は基本昼に活動するものじゃ。中には夜に特化したものもおるが...。

 

あの精霊はそうは見えんのう。」

 

ロム爺はそう言いながら精霊 パックを見つめる。

 

彼の方を見てみると、眠そうにエルザに対して無数の氷の塊を飛ばしていた。

 

「確かに、もうすぐ日暮れだ。」

 

私はそこがタイムリミットだと気付いた。

 

「ふわぁぁ...ちょっと舐めてかかってた。」

 

精霊 パックはそういうと明らかに眠そうにあくびをして半透明になっていく。

 

「パック、まだいける?」

 

銀髪の女の子が聞くが、パックの反応は著しく低く

 

「ごめん、マナ切れで消えちゃう。」

 

申し訳なさそうに言うと、銀髪の女の方は首を横に振り

 

「ううん、あとはこっちでなんとかするから パックは眠ってて。」

 

そう言われて精霊パックは安心したような顔で消えていった。

 

「...タイムオーバー。」

 

私はこうなって仕舞えば、普通の格闘戦闘であのエルザを殺すことは出来ないと判断し始める。

 

「(...一応、神からの授け物はあるが...。)」

 

それを使用するのは躊躇われる。己の力で異教徒を殲滅したかった。

 

だがその時、ロム爺が背後の酒場のカウンターに置いてあったこれまたドデカイ棍棒を持った。

 

「ここで見ているわけにも行かぬじゃろ。」

 

そう言ってロム爺も決心したかのように立ち上がり、あの銀髪の女とエルザの格闘に入り込んでいく。

 

ドザザァァッッ!!

 

ちょうどその時、あの銀髪の女の子も反応が遅れてしまい、盗品蔵の角に押し倒されて倒れ伏してしまった。

 

意識は...なさそうだ。

 

「お、おい待て爺さん、それはまずいぞッ。」

 

私がそう忠告するにも関わらず彼は突っ込んでいく。

 

「ウォォッ!!助太刀いたすぞ!」

 

雄叫びを上げながらロム爺は棍棒を振り回し、エルザに迫っていく。

 

「あら、ダンスに水を差すのは無粋かしら。」

 

エルザはその巨体が振り回す棍棒をいとも簡単に避けながら机の上を転々と跳躍していく。

 

「そんなに踊りたければ最高のダンスを踊らせてやるッ。」

 

それに追うようにドガンッ ドザッッという強い地響きと共にロム爺がエルザが立っていた蔵内の机を叩き壊していく。

 

が、どれも当たらず。

 

「(...やるか。)」

 

私は決意し、我らが主 キリストに後ろめたく思いながらも、懐から黒い聖書を取り出して

 

『Nuestro Señor, Llevaré la valla de hierro a los paganos。

(我らが主君よ、異教徒に鉄槌を。)』

 

ある段落を読み始める。

 

「ちょ、ちょっとお前ッ!その本...魔女教ッ!!」

 

隣にいたフェルトは唐突な私の行動とその手にする本に恐れ慄き、距離を取ろうとするが

 

「シーっ...だまっていろ。」

 

私が警告すると、

 

「わ...わーったよ...魔女教...には見えないくらい冷静な姉ちゃんを信じるぜ。」

 

フェルトも一応は黙殺したようで、この行為を続ける。

 

そうしているうちにエルザが先ほどパックが大量に放った氷の塊の付近に逃げ込んできており、

 

「踊れや踊れぇ!!」

 

と、ロム爺がそこに全力を出した棍棒を叩きつける。

 

だが今度も外れて、氷が砕け散ったのみに終わった。

 

「なッ...!」

 

「あなたが力持ちだから、こんな事もできるのよ?」

 

ロム爺はエルザがその棍棒の頂点に跳躍していたのを見て顔を驚きに変える。

 

「おやすみなさい。」

 

ヒュンッ

 

エルザのその一声と共に、彼女のククリナイフが彼の頭頂部に向けて投げられる。

 

「やめろォォッ!!」

 

その確定した未来に抗うべく、フェルトは自身の持っていた短剣をロム爺の頭の横へと投げ入れ

 

 

カンッッ

 

 

という軽い音が鳴りながら、そのククリナイフの軌道を変えた。

 

がしかし、

 

 

グサッッ

 

 

という鈍い音が蔵内に響き渡り、爺さんの首のうなじから血が吹き出る。

 

「ロム爺!!」

 

「ぐぁぁ...ぁ...。」

 

ズザザッ

 

ロム爺は床に巨体を倒し、意識を遠のかせていく。

 

フェルトが死を悟った目をして、絶望に打ちひしがれるその時

 

『Perdona el juicio católico , Amén.

(カトリックの裁きを許し給え。)』

 

段落の最後まで福音し終わると、

 

 

 

ポタッ...ポタッ...

 

 

 

天井から黒い液体が落ちてくる。

 

「...来たか。」

 

「な、何してんだよ姉ちゃんッ!

ロム爺が...ロム爺がッ!!」

 

いかにも助けて欲しそうな声でフェルトは私にすがる目をしてくる。

 

「次の遊び相手はあなたかしら?」

 

エルザが床に伏したロム爺を一瞥してから、私に向き直る。

 

 

 

「救い...救済...救世主...。

フェルト 貴女はローマ・カトリックを従教するか?」

 

いきなり真剣な顔をして私が聞くと、フェルトは涙ぐんだ顔で

 

「こんな時に何言ってんだよ 姉ちゃん!!

 

なんでもいい!なんでもいいからロム爺を助けてくれッ...頼む...ぅッ...ぅぅぅぅッ...!」

 

フェルトは私の服を掴みながら泣きじゃくり始めた。

 

「...主は貴様を教徒として認めてくれたようだ。」

 

黒い聖書をパタンっと閉じて私がそう宣告すると、

 

 

ボトトトッッ

 

 

と、蔵の屋上の隙間から、雨も降っているわけでもないのに黒い液体が それも粘度の高いものが大量に降ってきた。

 

サァァァァァァ...

 

その一部は私の剣に取り憑き回る。

 

そして残った粘度の強い暗黒の液体は変形し、形を取り戻す...。

 

『... Destino (宿命を...。)』

 

黒い液体は人の形を取り、スペイン軍採用の灰色の海軍服を着て、剣を構え、私に使命を問いただす。

 

「な、なんだコイツら...!」

 

フェルトは警戒して私達のさらに後ろへと下がるが、

そんな事気にも止めずに私は深く息を吸い込み

 

 

 

 

『果たすべき任はただ一つ 異教の破壊だ。』

 

 

 

 

指令を下すと、皮膚も黒い色ながらも、欠けた片目や骨が見えながらも彼ら

 

たった2名だが それで十分だと空の上の主は判断されたのだろう

 

彼らがかつてスペイン軍として振る舞ったその腕を見せてくれる。

 

「珍しいお仲間さんね?

でも見た目も死体を継ぎ接ぎしたようなお粗末なもの、これが貴女の手札かしら?」

 

エルザは見下すように彼ら2人を舌舐めずりする。

 

が、次の瞬間

 

 

 

ガンッッッ ギギギギギッッ...

 

 

 

強烈な火花が立ち、金属と金属の摩擦音が聞こえる。

 

見ると、エルザに向かって1人の...かつてのスペイン軍同胞が斬りかかっていた。

 

彼は私と同じように身体を霧状にして瞬く間に移動して切りかかったようだ。

 

「ッ...凄い力ね...圧倒されちゃうわ。」

 

エルザも只者ではないと思ったらしく、そのスペイン軍兵士 いや、亡霊から距離を取るべく後退する。

 

だが

 

 

 

サァァァァ...

 

 

「私を忘れない方が身のためと思うぞ。」

 

「!...その移動 厄介だわ。すごく...。」

 

 

砂のように霧状と化して高速で移動した私は彼女の着地地点で剣を構えて待っていた。

 

そして刹那

 

 

ギッッ

 

 

金属のかち合う音というより、擦れた摩擦音に等しかった。

 

そして剣を一閃交えたのを目に、彼女は我々とは真反対の方に再度ククリナイフと私との剣撃時の反動を利用して跳躍する。

 

スタッという音と共に着地したエルザは私達の方へと向き直り

 

「...っ...!」

 

驚いた顔をして自身のククリナイフを地面へと放り捨てた。

 

「おやおや?私の剣撃に恐れ入って降伏するつもりですかね?」

 

私は挑発混じりにその行為を煽る。

 

なぜならば、その原因を作ったのは私だからだ。

 

ジューッ...

 

よく見てみれば彼女のククリナイフには、黒い液体がへばりつくように付着していた。

 

そしてそれがナイフを溶かしていたのだ。

 

「...腐っている。」

 

「そうだ、私の授かった【腐敗】の権能だ。」

 

エルザのその一言に私が解釈を入れる。

 

「い、いいぞ姉ちゃん、そのままやっちまえ!」

 

フェルトが急いでロム爺を看病しながら茶々を入れてくる。

 

「(...まぁ、これを使えるのは夜間だけなのだが。)」

 

 

 

《 教皇は太陽 皇帝は月 》

 

 

 

ローマ教皇 インノケンティウス3世の生み出した言葉だ。

 

だがこれは教皇権と皇帝権の争いを表してなどいない。

 

これは教皇と皇帝の、神から授けられた権能の解放時間を表している。

 

教皇側に付くものは【太陽】

皇帝側に付くものには【月】

 

この名の通り、我々スペイン帝国はフェルディナント皇帝の元で支配体制を築いてきた。

 

故に我々は、夜間にのみこの権能を解放することができる。

 

今、外はまさに火が沈み、真っ暗闇の夜へと化していた。

 

そうして私と、横に並ぶ2人がそれぞれ黒い剣を構え直し、戦闘態勢に入った時だった。

 

 

 

「そこまでだッ!!」

 

 

甲高い声が再び蔵内に響き渡る。

 

「チッ...邪魔ばかり...。」

 

するとエルザは新しいククリナイフを背中の方から取り出し、構え直す。

 

「これ以上の狼藉は許されない。

ハラワタ狩りのエルザ・グランヒルテ。」

 

そう言って、月明かりが僅かに差し込み、その人物の正体は現れた。

 

「どなたかしら?」

 

エルザが警戒しながらこちらの後ろ側から入ってきた人物に問いかける。

 

「...ラインハルト・ヴァン・アストレア。アストレア家を代表する騎士だ。」

 

(き、騎士ッ...スペインではもはや見かけもしなくなった...騎士...。)

 

私は騎士という言葉に感銘を受ける。

我々スペイン帝国の繁栄の何百年も前に存在した皇帝を守る守護者...。

 

赤髪を揺らしながら、彼は私達の前へと出る。

 

「できれば投降して願いたいのだが。」

 

ラインハルトと名乗る騎士は堂々と彼女 エルザに迫る。

 

「...お断りさせていただくわ。」

 

「ならば...。」

 

彼女の拒否を聞いて、ラインハルトはめちゃくちゃに戦闘によって散らかされた蔵内に落ちていた一つの盗品の剣を拾い、構える。

 

「これからは僕がお相手します。」

 

そう宣言する。

 

「(...正に守護者...この男...。)」

 

私は憧れてしまった。

 

皇帝 フェルディナントに仕えていた者として、そして1人の兵士として。

 

この男は私達スペイン軍の欲する全てを持っている。

 

「...いいえ、残念だけれど、流石にあなたまで連れてこられては勝ち目がないわ。」

 

「...それは降参、ということで良いのですか?」

 

と、ラインハルトは返すがエルザは首を横に振り、

 

「いいえ、また機会がある時、という意味よ。」

 

そう言い、エルザは

 

 

グンッ

 

 

と、足をくねらせながら盗品蔵の、先程私が呼び出した黒い液体によって溶けた屋根上へと上がり

 

「ではまた、いずれあなた達全員の腹を裂いてみるわ。」

 

そう言って彼女は逃亡した。

 

 

 

 

「...一件落着という事かな?」

 

ラインハルトが再び私に振り返って聞いてくる。

 

「あ、あのっ...ありがとうございました。」

 

が、私が答えを返す前にある者の声が発される。

 

見てみるとそこには意識が回復したであろう銀髪の女の子が立っており、深々と例をしていた。

 

「...それはいいが、あの爺さんは大丈夫なのか?」

 

私が問い返すと、彼女は真剣に

 

「はい。先程私の意識が回復した時、

あなた方が時間を稼いでくれたおかげで治療に専念することができました。」

 

と、再び礼をする。

 

奥に倒れている緊急処置を行われたロム爺の横でフェルトはこちらを一瞥して、「ありがとな!」と叫ぶ。

 

「こ、これはエミリア様...このようなところで何を。お怪我はっ?」

 

と、赤髪のラインハルトは彼女に跪き、親身になる。

 

「い、いえ、私は大丈夫です、騎士 ラインハルト...。

それと、ここにいる訳は話せば長くなるというか...その...。」

 

と、口籠る。

 

「コイツの事だろ?返すぜ。」

 

フェルトが向こう側からそう言って、手に持っていた紀章...それも赤く光っていた紀章をこちら側に投げ渡す。

 

するとエミリアと呼ばれた銀髪の女がそれをヒョィっと取り返し、

 

「はぁ...ようやく戻ってきた...。」

 

と、大事そうに胸でギュッと握りしめる。

 

だがそのさりげない行為に、1人だけ強く反応した。

 

「ッ...それは...竜歴石...しかも反応している...?」

 

ラインハルトは驚いた顔で赤く光るエミリアが握りしめるその紀章を見つめる。

 

「え、えぇ...お恥ずかしい話ですが、これを取られてしまって...。」

 

えへへ、と可愛い気な苦笑いを浮かべながらエミリア嬢は事情を話すがそれに耳も傾けずに

 

彼 ラインハルトはギシッ ギシッと盗品蔵の床を踏み鳴らしながらフェルトの方へと近寄っていく。

 

「え、え...な、なんだよ...ッ!?」

 

フェルトはいきなりのことで訳が分からなくなりながらもラインハルトによって軽々と持ち上げられている。

 

「...やはり、間違いない。」

 

「何が間違い無いだよ、離せよ!このやろ...!」

 

ラインハルトは頑強に抵抗するフェルトにも構わずに彼女の目を見て、何かを確信する。

 

そして

 

「ちょっとだけ眠っていただきますね、フェルト様。」

 

「は、はぁっ?何いきなりわけわかんない事いって... 」

 

ガンッ

 

「ぁがッ...。」

 

ラインハルトはあろうことか彼女の首の根本の後頭部を手加減して叩き入れた。

 

すると、彼女は意識を刈り取られ、暴れることもなくなった。

 

が、しかし、だ。

 

「...騎士 ラインハルト。我らが信徒に手を出すならば、私も容赦はしない。」

 

といって、一度カトリック教会へ救済を求めたその娘 フェルトに害する者なら斬り捨てると宣言し

 

隣の未だに役割を果たしても私に追従する2人の亡霊も剣を構える。

 

「ご安心ください、フェルト様に危害を加えるつもりはありません。

この子に関しては、今後当家でしばらく預からせていただきます。

エミリア様も、それでよろしいですね?」

 

と、ラインハルトは敵対の意思はないことを告げてエミリアにも同意を求める。

 

「え、私っ?私は...別に...その子に危害が加えられないなら。」

 

『...Baja la espada (...剣を下ろせ。)』

 

それを聞いて私も彼との敵対は避けるべき...少なくとも今は、と思い2人に剣を下げさせる。

 

「ご理解いただけたようで感謝するよ。ところで...そちらの方は?」

 

と、エミリアに私達の説明を求める。

 

が、彼女はあたふたとして

 

「えっと...あの方達はたまたま居合わせただけで、その...。」

 

「エミリア嬢とは無知の関係だよ、騎士 ラインハルト。」

 

と、私が釈明を入れる。

 

「...そちらのお二方に関しては、いろいろ気になることがありますが お聞きしても?」

 

ラインハルトは私の隣にいる2人の亡霊について聞いてくる。

 

「...詳細はお答えできません。」

 

と、私が丁寧に答える。

 

「そうですか...ですが、敵意は無さそうですね。

ならば、少しは安心できそうです。」

 

彼は残念そうだが、それよりも腰に抱えている気絶させられたフェルトの方を見つめる。

 

「...そういえば自己紹介が遅れたな。

 

私の名はゾルド・イルパーニャ卿。

 

隣にいる彼らは神聖なるローマ・カトリック教会の従教者だ。

異教徒共よりも優れ、異教徒を排除し、異教徒を撲滅する使命を帯びている。

 

この世で最も純粋で、純白で、正統なる大正義キリストの元で我等は仕えている。」

 

私は簡潔に自己紹介を済ませる。

 

「そうですか...イルパニア卿。

所であなた方が言うその...カトリック教会というのを、僕は存じ上げません。

...ですが魔女教、でないならばぼくは何もお咎めいたしません、ご安心を。」

 

ラインハルトは若干怪訝な目で我々を見ながらも、なんとか納得してくれたようだ。

 

「それと、エミリア様 イルパニア卿。

私がここにいたことは内密にしてもらいたいのですが...。」

 

ラインハルトは一気に顔色を変えて申し訳なさそうに振る舞う。

 

「...複雑な事情を抱えていそうですね。わかりました。」

 

エミリア嬢は彼の状況を何となく察して、快く了承する。

 

「私もそれで構わない。できれば国内でのカトリックの布教を... 」

 

「その宗教的な事柄に関しては、一介の騎士の僕では決めかねます。

賢人会にでもご出席なられれば良いかと。」

 

と、ラインハルトはそれとこれとは別だと言いたげに返してくる。

 

「...騙されない屈強な男だ...気に入った。」

 

私はそう言い残し、懐から聖書を取り出す。

 

するとラインハルトは再び顔を顰めて、私の聖書に反応する。

 

「...それは、福音書、ですかね?」

 

ラインハルトは再び質問をしてくる。

 

「っ...!」

 

隣のエミリア嬢も、気絶していたのもあって取り出していたのを見ていなかったようで驚いた顔をする。

 

「そう質問ばかりされては困るよ、これは福音書などという紛い物ではない。

 

聖 書 だ。」

 

「「聖書...?」」

 

私がそういうと2人とも、声を出して唖然とする。

 

「そうだ、カトリックとキリストに仕える者に与えられる教典だ。

 

これに従って、我らは過ごしている。」

 

「...無粋なことを聞いて失礼した、ヘルパーニャ卿。」

 

ラインハルトはその説明を聞いて納得し、お辞儀をする。

 

「大したことではない。そう一々形式張らないで欲しいよ、はは。」

 

私は笑いながら彼の謝礼を聞き流す。

 

そして

 

 

『Mi amigo de guerra, la vida celestial se ha cumplido!!』

(戦友達よ、天命は果たされた!!)

 

そう言い、私は彼ら2人を解放する。

 

彼らはかつてスペイン軍に仕えていた普通の、私と同じ兵士だ。

 

だが悔いあって戦死すれば、彼らはキリストに仕える復讐者となり、

 

異教徒の絶滅とキリストの天命を果たすべく死してなおこの様に現世に復活させられ、戦う。

 

 

グヂュッ...ジュワッーー...

 

 

私が聖書を福音すると、彼らは無言でその身体の形を崩し、元の黒い液状になり、地面へと吸い取られていった。

 

こうして地面へと、地中へと沈んだ彼らの魂である黒色の液体は再び天へと還る。

 

私は聖書を持ちながら、片手で自分の身体に十字架を描き、祈る。

 

 

 

ラインハルトとエミリア嬢はその様子をじっと奇妙な目で見つめていた。

 

こうして、私は異教徒の排除をこの世界で初めて成した。




挿絵です。今回の戦闘中を描きました。下手ですが、どうぞ。


【挿絵表示】



有名な映画、パイレーツ・オブ・カリビアンに登場するスペイン軍の曲があるんですが、いっつもそれ聴きながら執筆してます。
良ければURL貼っとくのでYouTubeででも聞いてみてください〜。(布教活動)
英語ですが( ; ; )

https://youtu.be/pBew8pAYPaQ

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