¡Viva España!   作:YJSN

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今回も少し短めで申し訳ございません。





夜間の灯火

バタンッ

 

 

と、扉が閉まる音とともに、私の肩にはドッと疲れが寄せられる。

 

「ぐぬぬ...料理を手伝う事が、どれだけ重荷であったか。」

 

そう、夕食の手伝いを申し入れた所、ラムは快く受諾して戸惑うレムを置いて私に仕事を押し付けてきた。

 

大量のジャガイモの皮むきと千切りが私の手先に疲労を溜めたのだ。

 

カチャッという音と共に私は自前の服をクローゼットの奥へと仕舞い込む。

 

「ふぅぅーー...。」

 

ドタっとふかふかのベッドに頭から飛び入り、余韻に浸る。

 

「それにしても...この屋敷の仕事をたった2人で回す回転率の良さ、要領の良さといい...

 

あの2人で仕事を全うするのはどうもギリギリにしか見えない。」

 

彼らの仕事ぶりに感謝せねばならないほど、この屋敷の整えられた様相は素晴らしかった。

 

「...今日も文字の練習か。」

 

ふとラム嬢の毎日夜遅くまで享受する異教徒の言語を学ぼうの会が私の部屋で開催されることを思い出して早速準備に取り掛かる。

 

「ういしょっ...と。」

 

自室に備え付けられているテーブルの引き出しを開けて、中から昨日の晩も使った幼児向けだろう教科書のようなものを取り出す。

 

が、

 

「...ん。」

 

ふと換気のために開けっぱなしにしておいた窓の外から、胸騒ぎのようなものが感じられた。

 

よく外をグィッと首を乗り出して見つめてみると

 

「...灯り?」

 

南側の、村のある方にあかりが灯されていた。

 

昼間、買い出しに行ったあの村だ。

 

「それにしても変だな、もうこんな時間だぞ...?」

 

バタンッ

 

私がそう言いかけた時と同時に私の自室の扉は例の如く乱暴に開けられて

 

「暇ではないラムの貴重な時間を割いて今晩も教えに来たわよ...そんな所で呆けて何をしているのかしら。」

 

と、イラッとした顔で私が窓の外を眺めているのを見てせっかく来てやったのにと言いたげな顔で言う彼女。

 

が、しかしそれでも反応しない私の姿勢に何か引っ掛かったのか、私の見ている窓際へと近寄ってくる。

 

「どうかしたのかしら。いつもの虚勢がないなんて、イルらしくないわ。」

 

「...って、イル...その変なあだ名をやめろ。私の名はイルパニアだ。」

 

と、私も彼女の言葉に漸く反応して振り返ると、彼女は真後ろから隣へと移動していた。

 

「...それよりも、あれは何なのかしらね、イル。」

 

ラム嬢が指差しながら、真っ暗な暗闇の中うっすらと遠くで明かりを灯す村を言う。

 

私はそれに対して首を傾げながら色々と思考を巡らして

 

「...こんな時間になるまで何かをしている、ということだな...。」

 

「それはどういう...ちょ、ちょっと、待ちなさい!」

 

ラム嬢が私を引き止めようとする前に、私は踵を返してクローゼットを再度開き、先程しまい終わった制服を着直して部屋を急いで出ていく。

 

スタスタと廊下を歩き、この屋敷の玄関へと向かい、ちょっとした階段を下る。

 

「ヘル、そこで止まりなさい。」

 

ラム嬢が後ろから追いかけてきていたようで、玄関口の扉を開けて出て行こうとするや否や、彼女は私を引き留めにかかる。

 

グッと私の手首を掴み、いまだに顔を合わせようとしない私の身体を反転させてラム嬢に向き合うようにする。

 

「...姉様?イルパニアさんがどうかいたしましたか?」

 

その騒ぎを聞きつけてきたのか、レム嬢まで玄関口へと向かってきていた。

 

「いや、レム嬢 これはその、少し村に用事が...。」

 

「こんな夜中になってから行くのは危険よ。翌朝でもいいじゃない。

それにラムはこの屋敷の守備をロズワール様から言いつけられているわ。不用意に屋敷を危険に晒すわけにはいかない。」

 

そう言って私の手首を掴む力を強めて絶対に外出させないと言わんばかりに拘束しようとするラム嬢。

 

だが私にとっては、例え異国の地であろうと、エンコミエンダ制の如くその地に住む先住民をキリストの加護の元守らねばならない。

 

私、ヘルパーニャ卿の信条のひとつが強く表情に出ていたのか、レム嬢はこちらに近寄ってきて

 

「なら、レムもご同行させていただきます。」

 

と、なんと自らも私と同伴すると言い出した。

 

「いいえ、あなたは屋敷にいた方がいいわ レム。あなたにもしもの事があったらいけないもの。」

 

「姉様っ...。」

 

ラム嬢としてはレム嬢はかなりの戦力として認識しているようで、屋敷に引き留めておきたいらしい。

 

こんな口論をしているうちに、新たに人影がレム嬢の後方から出てきており

 

「えっと...イルパニアさん?それにレムも、ラムも...。」

 

屋敷の階段から降りてきたエミリア嬢が私達の喧騒に気づいたのだろう、こちらに近寄ってくる。

 

「あー、エミリア嬢、これから私は村に調査に向かいます。この時間になるまで村の灯りがついているなどとは不審でしょう?」

 

と、私が彼女に説明していこうとするが、やはりラム嬢は私の外出に顔を歪めて

 

「もしそれが大した事でもないなら、あなたは鞭打ち100回の刑よ、イル。」

 

と、とんでもない毒舌を出してきた。

 

「ちょ、ちょっとラムっ!イルパニアさんにそんな事言っちゃダメよ!」

 

それを聞いたエミリア嬢は私達の普段の会話を聞いておらず慣れていないためか驚いた顔をしながら注意を促す。

 

流石にお屋敷の当主に支えられている王候補となろうお方にはラム嬢も逆らおうとは思わなかったのか、素直に礼をして

 

「申し訳ありません、エミリア様。ですがこの女が...。」

 

と、彼女に懸念事項である私の村行きを伝えようとする。

 

するとエミリア嬢は、私の前まで近寄ってきて

 

「イルパニアさん...村に行くのは構いません。ただ、絶対に無茶をしないでください いいですね。」

 

と私に真剣な顔で心配していることを伝える。

 

「えぇ、勿論ですともエミリア嬢...

それに無茶をするなと言われても無茶はしたくなるものです。」

 

それに対して、私はニヤリとした顔で腰の剣を

カチャッと見せつける。

 

すると、彼女はその剣幕に「はぁ...。」と、深いため息をつきながらも

 

「わかりました、ラムもそれでいいわよね。」

 

と、彼女の賛同を求めてくれた。

 

もちろんラムも

 

「エミリア様がそう言われるなら...。」

 

と、彼女の意見を尊重した。

 

「では...それからレム、本当についてきてくれるのか?」

 

隣にいた立ちっぱなしで話を聞いてくれていた彼女の事も一応確認を取っておく。

 

「はい、レムはイルパニアさんについていきます。」

 

「...監視、兼屋敷周辺の警備ってことにしてくれ、ラム。」

 

私が少し含ませたようなことを言って彼女 ラム嬢に伝えると、多少表情に陰りがあったものの

 

「...えぇ、そういうことにしておくわ イル。」

 

と、彼女自身も流石に私への監視と警戒をしているというのがバレていると気付いたようで、頬を緩ませて快諾してくれた。

 

「では...屋敷の事は任せた エミリア様 ラム嬢。

 

レム嬢、こちらに御手を。」

 

「はい、イルパニアさん。」

 

私はレム嬢の手を取り、ギィィッと屋敷の扉を開けて村へと向かいに行くのであった。

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