¡Viva España!   作:YJSN

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今回は少し短めです(いっつも言ってるやん)




魔獣とは犬の事

「何があったんだ。」

 

ドタドタと村の若い青年達が松明を片手に走り回るのを見て、漸く到着して早足の私達が問う。

 

すると、彼らは心底焦った様子で

 

「こ、子供達がいないんです...!...あなた方は昼間の...。」

 

と、向こうも昼間の買い出しの時のことを覚えてくれていたのか、レムと私の顔に見覚えがあるようだ。

 

「村の人達は付近の捜索をしてください。レム達は森の結界を確認しに行きます。」

 

「は、はい!」

 

だが今はそんな悠長な事は言ってられないと、レムは力強く彼らに伝え、彼らも了承する。

 

「イルパニアさん、こちらです。」

 

「了解。」

 

そんなレムと一緒に、村を取り囲むように設置されている結界とやらの確認をしに行くために足早になり向かう。

 

スタスタと、数分真っ暗闇の中を早歩きで確認して回った所、

 

「やっぱり...。」

 

「ここか?」

 

彼女が残念そうに言うのは、最悪の予想が的中したからなのだろうか。

 

目の前の深い森の中への手前の木に括り付けてある緑色の宝石の様なもの、恐らくあれが結界と呼ばれるものを形成している。

 

そしてそれが先ほど通ってきた道で見たものとは違い、全く光を灯しておらず、ヒビが入っていた。

 

「結界が壊されています...誰の仕業なのか...。」

 

レムは明らかに村の中に外敵が存在する事を悟り、怒りに顔を染め始めるが

 

「レム嬢、それよりも私は先に森の中の探索を。」

 

「なっ、こんな時間の中森の中を1人で出歩くなんて危険すぎます!

ちょ、ちょっとイルパニアさん、待ってください!」

 

勝手に森の中へとスタスタと前へ進む私の奇行に待ったをかけるが、

恐らくこの先にいるのであろう子供達の事を想って止まってはいられなかった。

 

「レム嬢も、来たければこれば良い。」

 

私は後ろを振り返らずに黙って森へと入っていく。

 

「...1人でなんて、絶対にいかせません。

それに、レムにはイルパニアさんの監視の役目があります。」

 

それを見て、やはりついてきてくれたのか、レムは後ろから足早に走ってきて、私の後を追う。

 

「...好きにしてくれ。だが結界の方はいいのか?」

 

「大丈夫です。レム達がいた近くの村の人達の数人が、あの結界の欠落に気付くはずです。」

 

と、私の懸念事項は揉み消された。

 

そして、更に彼女は懐から何やらガサガサと物を漁り始めて、

 

ガシャリ...

 

と、禍々しい黒一色に染められた鉄球が鎖に繋がれた、恐らく彼女の武装が出てきた。

 

「ぇ、えっと...レム嬢?」

 

「護身用です。」

 

私が明らかに戸惑いの声をかけるが、彼女は一向にそれ以上の事は説明しない。

 

「だが、その美貌とその武装は明らかに不釣り合いでは...。」

 

「護身用です。」

 

彼女は何と言われようと護身用ということにしておきたいらしい。

 

「...了解、した。まぁ...先行こうか。」

 

「はい。」

 

彼女の戦闘体制は、確かに冷淡で冷酷だった。これならラムが屋敷の戦力として引きとどめておきたいというのもわかる。

 

それにあの鉄球を使って私を殺すこともできた、というよりいざという時は躊躇わずしただろう。

 

それに対して内心恐れ慄きながら、私は先を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

十数分ほど更に森の少し奥深くへと入り込んだ時だった。

 

「いましたッ!子供達です!」

 

そういうと、レム嬢の言った通り、奥の、森の中でも若干開けた方である広場の中に1人、昼間に見かけ戯れあっていた女の子が地面に倒れていた。

 

すぐに走って駆けつけると、彼女は若干熱がある様で、身体が火照っていた。

 

「...レム嬢、その、この森には魔獣がいるんだな?」

 

私が何やら魔法、と言われるものだろうか、それによってこの子を看病しているレムに質問すると

 

「その通りです...イルパニアさんの聞きたい事はわかります。

魔獣の中でも、奴らに攻撃を受け接触した場合、一種の呪術をかけられてしまい、この子の様に衰弱状態になることがあります。」

 

と、彼女は真剣にこの子の看病に当たらながら説明してくれる。

 

「そして、一度その呪術が発動されれば、体内のマナが吸い取られ、枯渇し、...死に行く運命です。」

 

と、彼女は、この子の最後の運命を断言する。マナ、と呼ばれるものは精霊パックから聞いた事がある。

 

体内に存在する生命体に必須なエネルギーであり、これが枯渇すればレムが言った通りの結末を辿ることになる。

 

「...発動条件は。」

 

「...魔獣が腹を空かせた時、です。」

 

レム嬢が私の推察に静かに答える。

 

「詰まるところ、非常食にしてやがるということか。」

 

「そうです...お屋敷の人間でも、呪解できるのはエミリア様に仕えている大精霊か、ロズワール様、ベアトリス様くらいです。」

 

レムが策を巡らせると、看病されている女の子が少し意識を目覚めさせたのか、首をこちらに傾け

 

「...お姉、ちゃん...。」

 

「っ、意識を取り戻したか。まっていろ、すぐに屋敷に連れて行く。...そういえば残りの子供達は...。」

 

目の前にいたのは、この女の子ただ1人だけだった。昼間の大勢いた子供達はどこへやら。

 

すると、その答えは彼女が握っていた様で、必死の形相で

 

「たすけて、あげて...まだ奥に...。」

 

と、森の更に奥の方を指差して助けを請う。

 

「...まだ奥に連れて行かれた奴らがいるのか。」

 

「その様です...。」

 

レム嬢と話してる、その時だった。

 

 

...ガサガサ...ガサ...

 

ガルルルルッ...

 

 

「ッ、きました...魔獣です!」

 

「勘づかれたか。鼻のいい下等生物だ事で。」

 

どうやらこうして話している間に、魔獣、と呼ばれる存在が我々を取り囲んでいたらしい。

 

赤く暗闇の中で光った目が複数個森の中の林から見え隠れする。

 

 

ガゥゥウッ!!

 

 

その中の一体が我々の方へと飛び込んできた。

 

が、

 

 

ガシャッ  ギッ  ギチチチチチッッ

 

 

バタッ

 

 

私は瞬時に腰に帯剣していた剣を抜き出し、イヌもどきを数発の剣撃により数切れの肉片にする。

 

「魔獣って、犬型の奴もいるのか。」

 

「イルパニアさん、ダメです...数が多すぎます!」

 

 

ガゥッッ

 

 

グシャッッ ドスッッ

 

 

レム嬢もその鉄球で襲いかかる犬共を後ろにいる女の子を守りながら嬲り殺しにしてるが、

幾らやっても湧いて出てくる様にキリがない。

 

「確かに、私も時間さえあれば一体ずつ相手していきたいが...。」

 

無理そうだな、と私は腹を括る。

 

その様子にレム嬢は顔を少し緩ませて

 

「何か打開策がある、ということですか。」

 

と、自信ありげに聞いてくる。

 

「私を誰だと思ってる?...ただのヘルパーニャ卿だぞ。」

 

案外名はそこまで高くはないが、名乗らないよりはマシだろうと、彼女に自慢しながら、懐から真っ黒な自分の聖書を取り出す。

 

だが、自信満々に私を信用していたレム嬢は、それを見た瞬間に顔色を一気に変えた。

 

「...ぇ...イルパニア...さん......なぜあなたが...

それ、を......。」

 

「...前回もその反応をした人間がいたな。」

 

私は彼女の異常なまでの憎しみを感じ取れた。

 

前回、これとは別に フェルトという女の子もこんな反応をしてひいてたな、というのを思い出す。

 

恐らく彼女は、やはり過去に魔女教関連に何か深いものがあったのだろう。

 

彼女の報復心が見て取れる。

 

「...前に何度か聞いたよ。黒い福音書を持つ、黒装束の集団 魔女教。

 

...安心しろ、これはそんな下手物ではない。

......神からの授かり物だ。」

 

私が高らかに宣言すると、彼女は顔から暗い憤怒の表情を消し去り、私を屋敷に来た当初の如く警戒しながら聞き正す。

 

「神...からの...一体何を言ってるんですか、気が変にでもなりましたか。」

 

「この状況でそれはまずいだろ、う、ッと。」

 

ガシュッッ

 

ドサッ

 

私達の会話の隙を見て攻撃してくる犬の一体を切り落として会話を繋げる。

 

「詳しくは言えないが、私の重んずる宗教の教典の様なものだ。気にするな。」

 

私が彼女の警戒を解くために笑顔でそっと語りかける。

 

「...イルパニアさん、信じてますから...決して裏切らないでください。」

 

彼女は私のその言葉を一応ながらも信じてくれたのか、真剣な顔に戻り、魔獣の対処に集中し始める。

 

「で、だ。こんな状況下で我が聖書を取り出したのには理由がある。」

 

「理由...ッ。」

 

グシャッッ   クゥンッ...

 

レム嬢は油断せずに襲ってくる魔物を対処しながら私の話を聞く。

 

「本当に、時間があれば調理して食ってやったのに...残念だよ、犬ころ共...。」

 

「イルパニアさん...?」

 

レムが心配する様なその言葉と共に、私は聖書のあるページを開く。

 

『La protección de España.

Las represalias de Reconxta.』

(スペインの加護を。       )

(レコンキスタから始まりし報復を。)

 

と、詠唱をする。

 

『キリストはローマの元にあり。』

 

最後の一言で、この詠唱は終了した。

 

その瞬間、

 

 

 

 

 

 

グゥゥゥゥゥンッッ

 

 

 

 

 

と、大地が揺れ動く感覚が襲った。

 

「な、何ですかッ...これは...。」

 

それは魔獣やレム達も一緒の様で、地震にあったかの様に咄嗟に床に平伏す。

 

そして周辺をよく見てみると...

 

「...ッ、イルパニアさん...これは、どういう...。」

 

「おや、言ってなかったかい?

 

《 教皇は太陽 ・ 皇帝は月 》

 

インノケンティウス3世より受け継いだ神との信条、忘れてはならないよ。」

 

「は......?......何を言って......。」

 

ここにいない遥か昔の主人に対しての言葉でもあり、レムへの理解不能な回答を答え、

 

地面から湧き出し、突如として現れた周囲の禍々しい真っ黒の、液体か固体かもわからない我々を囲っている物体を操作する。

 

これはこの前、盗品蔵で我々の助けとなった黒き液体と同質だ。

 

【 外を見よ 暗闇だ。

 

イルパニア卿、わかるか

 

〔我々〕が 支配者だ 教皇は眠っている。】

 

『破壊者に、異教徒に、劣等生物に、死刑を。』

 

私が指令すると、この液体は周囲に屯していた犬共 およそ20匹に覆い被さる。

 

 

ドロロッ......ドロッ...ビチャ......ピチャ......

 

 

 

ジュゥゥゥーーーーッ

 

 

ガゥゥゥッ!! ガルルッ!! ガゥンッッッ...

 

 

 

その液体は酸の如く彼らの肉体と、皮膚組織 細胞を溶かし、食いつまんでいく。

 

彼らの悲鳴と、痛みが、天への土産物 献上になる。

 

その肉が、我々の糧となるのだ。

 

そうして周囲の魔物を溶かし、蹂躙して数分が経過して、黒い液体を私の周りへと移動させて外敵がいなくなったと確認してから、

 

「ではレム、その子を連れて、先にいきましょう。」

 

パタンっと開いていた聖書を閉じて、地獄から天へと受け渡され、天から地上へと送られた黒い液体を配下に置きながらレム嬢に手を差し伸べる。

 

「ぁ...ぁ...ぁぁあなたはッ...一体......!!」

 

レム嬢は未だに私の行動を信じられない、という目で見つめ、畏怖の顔をしていた。

 

誰しも最初はこう言う反応をするものだろう。

 

自分がわからない、理解できないモノへの恐怖と嫌悪 それはどの世界でも共通だ。

 

「...レム、レム、レムレム、ラムはその様な無様な姿を見て非常に残念だわ。

レムレム、あなたはヘルの監視を任されているのよ。

レムレム、何をボーッとしているの、行きなさい。

 

...ラム嬢なら、こう言うだろうな。」

 

ならば、と私が彼女の前進への動機を形作るために、彼女の、反応からして恐らく最も愛おしい人物 彼女の姉 ラムを持ち出す。

 

「......よくも......姉様を......その様な口で......。」

 

すると、その私の液体への怯えた表情は若干消え去り、へこたれていた足を直立させて私の目の前に再び足を立たせる。

 

「姉様を...姉様を語る資格は、イルパニアさんにはないッッ!!」

 

「そうだ、だが貴様は足を手に入れた。」

 

彼女の憤怒は、利用され、彼女の再起動に役立った。

 

恐怖から解放されたレム嬢は はッと、周囲と自分の置かれた状況を理解した様で

 

「......今は、子供達の安全が最優先です。イルパニアさん、この事は後できっちりお話しさせていただきますから。」

 

と、冷静に判断してくれた様で、私の強力な権能には深く触れないでくれる様だ。

 

「それは助かるよ。...話せる事は少ないが。」

 

と、私もそれに笑顔で返す。

 

彼女もそれに釣られて、若干顔を緩めるが、すぐに元のキリッとした顔に戻り

 

「では、いきましょう。」

 

と、私に先を急かすのであった。




レコンキスタからのスペイン帝国成立 世界史をとっていた時、胸熱でした
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